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第25話 あかりとヨウカ

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 無事冒険者高校を卒業する事が出来た。
 正直卒業するメリットは薄い様な気もしたが、日本で冒険者として生きていく場合、冒険者高校を卒業したかどうかの肩書は大事だ。

 本来冒険者としての力は冒険者資格で証明する。
 だが、いまだに最終学歴を聞いてくるご年配の方がいるのだ。
 仕事をする上で面倒なやり取りをショートカットする為だけに冒険者高校を卒業した。

「やっと卒業できた」

 俺とあかりは一緒に学校を出る。

「お兄ちゃんと一緒にパーティーが組めるね」
「あかり、回復魔法が使えるならどこにだって就職で来ただろ?」
「いいの!お兄ちゃんと一緒に冒険者になるの!」

 俺もあかりも就職せず、フリーの冒険者となった。
 俺はFランクなので企業からお呼びがかかる事は無かった。
 だがあかりには就職のスカウトが何人も訪問して来た。

 あかりはDランクウィザードで回復魔法すら使いこなす。
 企業にとっては欲しい人材なのだ。
 それでもあかりはすべてのお誘い部断わった。

「異界の魔法陣に行こう」
「うん」

 卒業後、すぐに異界のヨバイ村に行く事が決まっていた。

『お兄ちゃんが何をしてるか教えて!』

 何度も何度も何回も聞かれて根負けした。
 今までの経緯を話すと、あかりが見に行きたいと言い出したたのだ。
 異界に続く魔法陣に乗ると、人だかりが起きていた。

「ケモミミだ!」
「狐タン萌え~!」
「こっち向いて!」

 男性冒険者がヨウカに魔道スマホやカメラを向け、カシャカシャとシャッター音を鳴らす。

 異界に住んでいた人達が国に発見され『亜人』と呼ばれるようになった。
 国は慎重に協力を模索する方針を打ち出したが、亜人を保護した家に石が投げられるなど混乱も見られる。
『亜人のせいでモンスターが発生した』とよく分からない話を持ち出す人間は一定数いるのだ。

 異界が現れる前だってコ○ナウイルスに感染した人の家が特定されて石を投げられ家に被害が出る事件は発生している。
 異界が出現しても人はそう簡単に変わらない。

「ヨウカ、待たせたな」
「ユウヤさん、帰りましょう」

 ヨウカが俺の腕に絡みつく。

「お兄ちゃん、村に着いたらヨウカさんの事も教えてね」

 あかりの顔が少し怖い。
 気にしないことにしよう。

「分かった、前も行ったけどヨウカのいるヨバイの村は異界に入ってから結構かかる」

 ヨバイの村は異界に入ってしばらく歩き、更にダンジョンに入って迷路を抜けた先にある。

「お菓子や食べ物を一杯持って来たよ」
「うん、入ったらモンスターが出るから、村に入るまでは油断しないで行こう」

 俺達は異界に続く魔法陣に入った。
 無視していたがヨウカとあかりに吸い寄せられるように男性冒険者が入って来た。

「撒くか」

 俺はあかりをおんぶした。

「ヨウカ、走るぞ!」

 そう言って俺は走る。


「モンスターがいた!後ろから追いかけてくる男たちにぶつける!」

 俺達はモンスターを素通りして走る。
 
 後ろを振り向くとカメラを持った男たちが怒り出す。

「邪魔するなよおおおお!」
「きつね巫女タンが離れて行く!スライム共がああ!殺す!ぶち殺す!」


 追っ手はカメラから武器に持ち替えてモンスターを倒していた。
 ヨウカが俺に抱きついた瞬間、そして俺があかりをおんぶしているのを見た時の顔に殺意を感じた。
 
「撒くぞ!速度を上げる!

 俺達の姿が木に隠れた瞬間、俺は速度を上げて奴らを引き離す。



「おっし、ダンジョンに入るか。あかり、走れるか?」
「……私、体力がないからおんぶしてもらう」

 ヨウカが俺とあかりを見た。

「……」
「……どうした?」

「私の席です」
「ん?」
「私がユウヤさんにおんぶされたいです」

「でも、ヨウカの方が体力があるから」
「そうだよ、ヨウカさんはファイターだけど、私はウィザードで体力がないの」

「あかり、走れますよね?」
「私はウィザードですぐ体力が無くなるの」
「でも走れますよね?」

「……お兄ちゃん、話ばかりしてたら進まないよ。早く進もう」
「あかり、おんぶされたいだけですよね?」
「それはヨウカもでしょ?」

 ヨウカは俺に前から抱き着く。
 あかりをおんぶして、ヨウカを抱っこする。

「これは、体勢的に無理が無いか?」
「私は大丈夫です。体は丈夫なので無理な態勢でも平気です。ユウヤさん!行きましょう」

「走れない事も無いけど」
「ヨウカ、そういう冗談は良くないよ」
「ユウヤさん!行きましょう!」

「ヨウカ、体勢的にきつくないか?」
「行きましょう!」

「分かった。苦しくなったら言ってくれ」
 
 俺は速度を上げて走った。
 速度を上げて苦しくなれば2人共降りるだろう。

「ん、ん、ユウヤさん、凄いです!こんなの、初めて」
「あ、あ!振動、が、あん!」
「走ってるだけなんですけど!!」

 さっきから両耳にヨウカとあかりの吐息と声が聞こえてくる。




 俺は二人に抱きつかれたまま、ヨバイの村にたどり着いた。
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