25 / 48
第25話 あかりとヨウカ
しおりを挟む
無事冒険者高校を卒業する事が出来た。
正直卒業するメリットは薄い様な気もしたが、日本で冒険者として生きていく場合、冒険者高校を卒業したかどうかの肩書は大事だ。
本来冒険者としての力は冒険者資格で証明する。
だが、いまだに最終学歴を聞いてくるご年配の方がいるのだ。
仕事をする上で面倒なやり取りをショートカットする為だけに冒険者高校を卒業した。
「やっと卒業できた」
俺とあかりは一緒に学校を出る。
「お兄ちゃんと一緒にパーティーが組めるね」
「あかり、回復魔法が使えるならどこにだって就職で来ただろ?」
「いいの!お兄ちゃんと一緒に冒険者になるの!」
俺もあかりも就職せず、フリーの冒険者となった。
俺はFランクなので企業からお呼びがかかる事は無かった。
だがあかりには就職のスカウトが何人も訪問して来た。
あかりはDランクウィザードで回復魔法すら使いこなす。
企業にとっては欲しい人材なのだ。
それでもあかりはすべてのお誘い部断わった。
「異界の魔法陣に行こう」
「うん」
卒業後、すぐに異界のヨバイ村に行く事が決まっていた。
『お兄ちゃんが何をしてるか教えて!』
何度も何度も何回も聞かれて根負けした。
今までの経緯を話すと、あかりが見に行きたいと言い出したたのだ。
異界に続く魔法陣に乗ると、人だかりが起きていた。
「ケモミミだ!」
「狐タン萌え~!」
「こっち向いて!」
男性冒険者がヨウカに魔道スマホやカメラを向け、カシャカシャとシャッター音を鳴らす。
異界に住んでいた人達が国に発見され『亜人』と呼ばれるようになった。
国は慎重に協力を模索する方針を打ち出したが、亜人を保護した家に石が投げられるなど混乱も見られる。
『亜人のせいでモンスターが発生した』とよく分からない話を持ち出す人間は一定数いるのだ。
異界が現れる前だってコ○ナウイルスに感染した人の家が特定されて石を投げられ家に被害が出る事件は発生している。
異界が出現しても人はそう簡単に変わらない。
「ヨウカ、待たせたな」
「ユウヤさん、帰りましょう」
ヨウカが俺の腕に絡みつく。
「お兄ちゃん、村に着いたらヨウカさんの事も教えてね」
あかりの顔が少し怖い。
気にしないことにしよう。
「分かった、前も行ったけどヨウカのいるヨバイの村は異界に入ってから結構かかる」
ヨバイの村は異界に入ってしばらく歩き、更にダンジョンに入って迷路を抜けた先にある。
「お菓子や食べ物を一杯持って来たよ」
「うん、入ったらモンスターが出るから、村に入るまでは油断しないで行こう」
俺達は異界に続く魔法陣に入った。
無視していたがヨウカとあかりに吸い寄せられるように男性冒険者が入って来た。
「撒くか」
俺はあかりをおんぶした。
「ヨウカ、走るぞ!」
そう言って俺は走る。
「モンスターがいた!後ろから追いかけてくる男たちにぶつける!」
俺達はモンスターを素通りして走る。
後ろを振り向くとカメラを持った男たちが怒り出す。
「邪魔するなよおおおお!」
「きつね巫女タンが離れて行く!スライム共がああ!殺す!ぶち殺す!」
追っ手はカメラから武器に持ち替えてモンスターを倒していた。
ヨウカが俺に抱きついた瞬間、そして俺があかりをおんぶしているのを見た時の顔に殺意を感じた。
「撒くぞ!速度を上げる!
俺達の姿が木に隠れた瞬間、俺は速度を上げて奴らを引き離す。
「おっし、ダンジョンに入るか。あかり、走れるか?」
「……私、体力がないからおんぶしてもらう」
ヨウカが俺とあかりを見た。
「……」
「……どうした?」
「私の席です」
「ん?」
「私がユウヤさんにおんぶされたいです」
「でも、ヨウカの方が体力があるから」
「そうだよ、ヨウカさんはファイターだけど、私はウィザードで体力がないの」
「あかり、走れますよね?」
「私はウィザードですぐ体力が無くなるの」
「でも走れますよね?」
「……お兄ちゃん、話ばかりしてたら進まないよ。早く進もう」
「あかり、おんぶされたいだけですよね?」
「それはヨウカもでしょ?」
ヨウカは俺に前から抱き着く。
あかりをおんぶして、ヨウカを抱っこする。
「これは、体勢的に無理が無いか?」
「私は大丈夫です。体は丈夫なので無理な態勢でも平気です。ユウヤさん!行きましょう」
「走れない事も無いけど」
「ヨウカ、そういう冗談は良くないよ」
「ユウヤさん!行きましょう!」
「ヨウカ、体勢的にきつくないか?」
「行きましょう!」
「分かった。苦しくなったら言ってくれ」
俺は速度を上げて走った。
速度を上げて苦しくなれば2人共降りるだろう。
「ん、ん、ユウヤさん、凄いです!こんなの、初めて」
「あ、あ!振動、が、あん!」
「走ってるだけなんですけど!!」
さっきから両耳にヨウカとあかりの吐息と声が聞こえてくる。
俺は二人に抱きつかれたまま、ヨバイの村にたどり着いた。
正直卒業するメリットは薄い様な気もしたが、日本で冒険者として生きていく場合、冒険者高校を卒業したかどうかの肩書は大事だ。
本来冒険者としての力は冒険者資格で証明する。
だが、いまだに最終学歴を聞いてくるご年配の方がいるのだ。
仕事をする上で面倒なやり取りをショートカットする為だけに冒険者高校を卒業した。
「やっと卒業できた」
俺とあかりは一緒に学校を出る。
「お兄ちゃんと一緒にパーティーが組めるね」
「あかり、回復魔法が使えるならどこにだって就職で来ただろ?」
「いいの!お兄ちゃんと一緒に冒険者になるの!」
俺もあかりも就職せず、フリーの冒険者となった。
俺はFランクなので企業からお呼びがかかる事は無かった。
だがあかりには就職のスカウトが何人も訪問して来た。
あかりはDランクウィザードで回復魔法すら使いこなす。
企業にとっては欲しい人材なのだ。
それでもあかりはすべてのお誘い部断わった。
「異界の魔法陣に行こう」
「うん」
卒業後、すぐに異界のヨバイ村に行く事が決まっていた。
『お兄ちゃんが何をしてるか教えて!』
何度も何度も何回も聞かれて根負けした。
今までの経緯を話すと、あかりが見に行きたいと言い出したたのだ。
異界に続く魔法陣に乗ると、人だかりが起きていた。
「ケモミミだ!」
「狐タン萌え~!」
「こっち向いて!」
男性冒険者がヨウカに魔道スマホやカメラを向け、カシャカシャとシャッター音を鳴らす。
異界に住んでいた人達が国に発見され『亜人』と呼ばれるようになった。
国は慎重に協力を模索する方針を打ち出したが、亜人を保護した家に石が投げられるなど混乱も見られる。
『亜人のせいでモンスターが発生した』とよく分からない話を持ち出す人間は一定数いるのだ。
異界が現れる前だってコ○ナウイルスに感染した人の家が特定されて石を投げられ家に被害が出る事件は発生している。
異界が出現しても人はそう簡単に変わらない。
「ヨウカ、待たせたな」
「ユウヤさん、帰りましょう」
ヨウカが俺の腕に絡みつく。
「お兄ちゃん、村に着いたらヨウカさんの事も教えてね」
あかりの顔が少し怖い。
気にしないことにしよう。
「分かった、前も行ったけどヨウカのいるヨバイの村は異界に入ってから結構かかる」
ヨバイの村は異界に入ってしばらく歩き、更にダンジョンに入って迷路を抜けた先にある。
「お菓子や食べ物を一杯持って来たよ」
「うん、入ったらモンスターが出るから、村に入るまでは油断しないで行こう」
俺達は異界に続く魔法陣に入った。
無視していたがヨウカとあかりに吸い寄せられるように男性冒険者が入って来た。
「撒くか」
俺はあかりをおんぶした。
「ヨウカ、走るぞ!」
そう言って俺は走る。
「モンスターがいた!後ろから追いかけてくる男たちにぶつける!」
俺達はモンスターを素通りして走る。
後ろを振り向くとカメラを持った男たちが怒り出す。
「邪魔するなよおおおお!」
「きつね巫女タンが離れて行く!スライム共がああ!殺す!ぶち殺す!」
追っ手はカメラから武器に持ち替えてモンスターを倒していた。
ヨウカが俺に抱きついた瞬間、そして俺があかりをおんぶしているのを見た時の顔に殺意を感じた。
「撒くぞ!速度を上げる!
俺達の姿が木に隠れた瞬間、俺は速度を上げて奴らを引き離す。
「おっし、ダンジョンに入るか。あかり、走れるか?」
「……私、体力がないからおんぶしてもらう」
ヨウカが俺とあかりを見た。
「……」
「……どうした?」
「私の席です」
「ん?」
「私がユウヤさんにおんぶされたいです」
「でも、ヨウカの方が体力があるから」
「そうだよ、ヨウカさんはファイターだけど、私はウィザードで体力がないの」
「あかり、走れますよね?」
「私はウィザードですぐ体力が無くなるの」
「でも走れますよね?」
「……お兄ちゃん、話ばかりしてたら進まないよ。早く進もう」
「あかり、おんぶされたいだけですよね?」
「それはヨウカもでしょ?」
ヨウカは俺に前から抱き着く。
あかりをおんぶして、ヨウカを抱っこする。
「これは、体勢的に無理が無いか?」
「私は大丈夫です。体は丈夫なので無理な態勢でも平気です。ユウヤさん!行きましょう」
「走れない事も無いけど」
「ヨウカ、そういう冗談は良くないよ」
「ユウヤさん!行きましょう!」
「ヨウカ、体勢的にきつくないか?」
「行きましょう!」
「分かった。苦しくなったら言ってくれ」
俺は速度を上げて走った。
速度を上げて苦しくなれば2人共降りるだろう。
「ん、ん、ユウヤさん、凄いです!こんなの、初めて」
「あ、あ!振動、が、あん!」
「走ってるだけなんですけど!!」
さっきから両耳にヨウカとあかりの吐息と声が聞こえてくる。
俺は二人に抱きつかれたまま、ヨバイの村にたどり着いた。
0
お気に入りに追加
359
あなたにおすすめの小説
玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~
やみのよからす
ファンタジー
病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。
時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。
べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。
月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ?
カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。
書き溜めは100話越えてます…
逆行転生したので両想いだった子に告白して人生やり直す!
やまいし
ファンタジー
社会人としての生活に絶望している主人公―裕哉は、暗い記憶に悩まされていた。特に恋愛面では失敗続きで、今や出会いすらなくなっていた。思い出すのは約10年前の小学生時代。あの頃は、女友達も多く、両想いだった子もいた。裕哉は、あの輝かしい日々を再び取り戻したいと願う。
そしてある日、奇跡が起こる。裕哉は目を覚ますと、小学生時代に逆行転生していた。あの頃に戻れるなら、今度こそ人生をやり直せると信じ両想いだった子に告白する決意を固める。しかし、順調に見えたはずの計画は思わぬ方向へ進む――彼に好意を寄せるのは、1人だけではなかった。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
世界⇔異世界 THERE AND BACK!!
西順
ファンタジー
ある日、異世界と行き来できる『門』を手に入れた。
友人たちとの下校中に橋で多重事故に巻き込まれたハルアキは、そのきっかけを作った天使からお詫びとしてある能力を授かる。それは、THERE AND BACK=往復。異世界と地球を行き来する能力だった。
しかし異世界へ転移してみると、着いた先は暗い崖の下。しかも出口はどこにもなさそうだ。
「いや、これ詰んでない? 仕方ない。トンネル掘るか!」
これはRPGを彷彿とさせるゲームのように、魔法やスキルの存在する剣と魔法のファンタジー世界と地球を往復しながら、主人公たちが降り掛かる数々の問題を、時に強引に、時に力業で解決していく冒険譚。たまには頭も使うかも。
週一、不定期投稿していきます。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しています。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
悪役令嬢の騎士
コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。
異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。
少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。
そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。
少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる