上 下
16 / 48

第16話 酒乱

しおりを挟む
 俺はヨウカをおんぶして走ってヨバイの村にたどり着いた。

「ユウヤさん、ありがとうございます。あんなに速い移動は初めてです!凄いです!」

 違う、ヨウカをおんぶしているとむらむらしてくる。
 それを戒めるための全力ダッシュだった。

 後ヨウカの口癖である『凄すぎます』と『こんなの初めてです』はエチエチ妄想しか浮かんでこない。

 それとヨウカの体術は基本蹴りだ。
 丈の短い巫女服で蹴り技を使われるとヨウカの生足が気になってしまう。
 巫女服の裾が舞い上がるのに目が行ってしまうのだ。
 性欲を戒めるための全力ダッシュなのである!

 なのである!

「まあ、早かったわね。ふふふ、少し休んでいきなさい」

 ユキナは動きの1つ1つがきれいでボディタッチが多い。

「ユキナ!お酒を買ってきました」
「……いいわね。夜になったらみんなで飲みましょう」
「私の家で飲みましょう。おつまみも用意しておきます」

「ユウヤも飲むわよね?」

 世界標準に合わせて日本も18才で飲酒もOKになっている。
 異界が発生してから法律が変わったのだ。

「あまり酒は飲まないけど、つまみって何なんだ?」
「イカや魚の乾物、燻製肉、枝豆と、後はお漬物です」
「うまそうだな」
「食べるだけでも良いと思うわ。私も料理を手伝うわね。行きましょう」

「2人共、酒が好きなのか?」
「好きですよ」
「好きよ」

「分かった。全部ヨウカの家に酒を出しておこう」
「どんなお酒があるのかしら?」
「ふふふふ、色々ですよ。容器も綺麗で美味しそうなんです」

 ヨウカとユキナはずっと酒の話をしていた。


 俺はヨウカの家に上がって収納から酒を取り出す。
 100本以上の酒が並ぶ。

「凄い量ね」
「料理をたくさん作りますね」

「俺はモンスターを倒してくる」

 休息は必要だ。
 だが俺はもっと強くなっておきたい。
 ヨバイの村の周りにいるモンスターを倒しておきたい。
 帰って来る途中、モンスターと多く遭遇した気がする。 
 モンスターが増えている。
 たくさん倒しておきたいのだ。

「たまには休みましょう」
「いや、もっと強くなっておきたい。行って来る」

「分かりました。おいしい料理を作って待っていますね」
「あまり遠くに行っちゃ駄目よ」
「分かった。行って来る」

 俺は走って村を出た。
 ここは異界の中にあるダンジョンだ。
 モンスターとの遭遇率が高い。

 そのおかげで探索に時間を使わなくてもモンスターを発見できるメリットがある。

 イエロースライムだ。
 周りには取り巻きのスライムもいる。

「ホーミング!ショット!」

 ホーミングとショットで邪魔な取り巻きを倒しつつイエロースライムと距離を詰める。

「セイバー!」

 剣を発生させて連撃を叩きこんだ。
 イエロースライムが大量のドロップ品を吐き出す。

 イエロースライムは強敵ではなくなった。
 倒すと多くの生命力を吸収できる経験値だ。
 後、スライムの素材を必ず複数ドロップする。
 イエロースライムを1体倒すだけでスライム100体分を倒したのと同じドロップ品が手に入る。

 イエロースライムは当たりくじのような存在に変わっていた。

「おっし、当たりだ!」

 俺はドロップ品を回収する。
 さらに進むとイエロースライムが5体いた。

 今日は大漁だ。

 俺はイエロースライムを狩った。

 モンスターの生命力を吸収してセイバーの扱いに慣れてきた。
 そうするとセイバーの連撃数が少なくてもイエロースライムを倒せるようになってきた。 
 俺はセイバーの連撃数で自分が強くなった事を実感できる。
 それが楽しい。

「一発で倒せるようになるまで強くなる!」

 俺は狩りを続けた。


 
 ◇



「帰るのが遅くなったか」

 ヨウカの家が騒がしい。
 宴会が始まっているようだ。

 中に入ると声がかけられる。

「「お帰りなさい!!」」

「た、ただいま」

 ヨウカとユキナだけではなく、他の女性も集まっていた。
 女性が1つの家に詰め込まれている。

 全員服を着崩している。
 ユキナさんでさえ着物がはだけている。

 酒瓶が何本も転がり、他の家から持ってきたと思われる布団にダウンした女性が雑魚寝している。

「最初に風呂に入って来る」

 一旦避難しよう。
 心を落ち着かせるのだ。

 脱衣所に入るとそこにも女性がいた。

「ユウヤ君お帰り、今から入るの?」
「そう、思っていましたが他の人がいるようなので後にします」

 数人が俺の服を掴んだ。

「いいからいいから、入りましょう」
「私が洗うね」

 そう言いながら俺の服を脱がせていく。
 皆完全に出来上がっている。

 俺に抱きついてくるし、4人で俺を抱えて温泉に運ぶ。

 温泉に入ると本当に俺を数人掛かりで洗い出した。
 洗うと女性が後ろから抱き着いてくる。

「恥ずかしいから目を隠すね」

 そう言って後ろから俺に抱きつき目を覆った。
 目隠しされたまま俺は、一緒に温泉に入った。

 ここは、桃源郷かもしれない。



 ◇



「はあ、はあ、ゆう、や、くん。ありがとう」
「い、いえ、こちらこそ」
「たくさんシテ疲れ……まだ元気そうだね」

「あ、上がります!」

 俺は強引に温泉から出て素早く着替えた。

「おそーーいですうう!」
「ユウヤ、座りなさい」

 ヨウカは完全に酔っ払い、ユキナは隣の席をポンポンと叩いた。
 ユキナの隣に座ると、ユキナが俺にもたれかかって来た。
 説教モードかと思ったが、行動が読めない。
 ヨウカも俺にもたれかかって来る。

「ヨウカ!力が強くないか!」
「ヨウカは酔拳のスキルを持っているのよ」

「ええええ!!初耳なんだけど!」

 ユキナが俺に抱きついて右耳に囁いた。

「そんな事より、食べましょう。スキルは明日話すわね」

 ヨウカもユキナのように抱きついて2人同時に囁いた。

「「食べちゃいましょう」」

「しょ、食事だな。温泉に入ってお腹が空いていたんだ」
「すんすん、ユウヤさん、サーラとエリス、それと他の人の匂いもします」

 俺は聞こえない振りをしつつ無言で握り飯を食べた。
 パンもあってそれも食べつつ、つまみを食べる。

「えへへへ、おなかいっぱいですか?」
「そうだな」
「温泉にも入ったわよね」
「そう、だな?」

「ユウヤさん、もっと熱くなりましょう」
「ん?」
「ヒートハート!」

 俺の体に赤い光が吸い込まれていく。

「なん、だ?体が、熱い」

「私を見なさい。チェーンハート!」

 ユキナの魔法で俺の体に氷の鎖が巻き付いて消えた。
 ユキナを抱きしめたい衝動に駆られた。
 だが、俺の能力値は上がっている。
 魔法にはかからない。

 後ろの女性も俺に魔法を使う。

「ファンタジードリーム!」
「エクスタシー!」
「ヘブン&ヘブン!」

「そういう冗談は、やめ!ちょ、やめろ!」

「リーズンブレイク!」
「インスティンクトアップ!」


「ユウヤ、無駄よ。溜めすぎは良くないわ」

 ユキナが俺を撫でながら言った。
 この状態で撫でられたら、まずい!

「チェーンハート!」
「がは!」

 まずい!ユキナとヨウカの魔法は強力だ。

「ユウヤさ~ん、我慢は駄目ですよ」

 ヨウカが俺を両足で挟み込む。
 それもまずい!

「全部、受け入れましょう。ヒートハート!」

 俺は、暴走した。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

LucifeR
ファンタジー
                その日、俺は有限(いのち)を失った――――  どうも、ラーメンと兵器とHR/HM音楽のマニア、顔出しニコ生放送したり、ギャルゲーサークル“ConquistadoR(コンキスタドール)”を立ち上げたり、俳優やったり色々と活動中(有村架純さん/東山紀之さん主演・TBS主催の舞台“ジャンヌダルク”出演)の中学11年生・LucifeRです!  本作は“小説カキコ”様で、私が発表していた長編(小説大会2014 シリアス・ダーク部門4位入賞作)を加筆修正、挿絵を付けての転載です。  作者本人による重複投稿になります。 挿絵:白狼識さん 表紙:ラプターちゃん                       † † † † † † †  文明の発達した現代社会ではあるが、解明できない事件は今なお多い。それもそのはず、これらを引き起こす存在は、ほとんどの人間には認識できないのだ。彼ら怪魔(マレフィクス)は、古より人知れず災いを生み出してきた。  時は2026年。これは、社会の暗部(かげ)で闇の捕食者を討つ、妖屠たちの物語である。                      † † † † † † †  タイトル・・・主人公がデスペルタルという刀の使い手なので。  サブタイトルは彼の片目が魔王と契約したことにより鉐色となって、眼帯で封印していることから「隻眼」もかけたダブルミーニングです。  悪魔、天使などの設定はミルトンの“失楽園”をはじめ、コラン・ド・プランシーの“地獄の事典”など、キリス〇ト教がらみの文献を参考にしました。「違う学説だと云々」等、あるとは思いますが、フィクションを元にしたフィクションと受け取っていただければ幸いです。  天使、悪魔に興味のある方、厨二全開の詠唱が好きな方は、良かったら読んでみてください! http://com.nicovideo.jp/community/co2677397 https://twitter.com/satanrising  ご感想、アドバイス等お待ちしています! Fate/grand orderのフレンド申請もお待ちしていますw ※)アイコン写真はたまに変わりますが、いずれも本人です。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

呪われ姫の絶唱

朝露ココア
ファンタジー
――呪われ姫には近づくな。 伯爵令嬢のエレオノーラは、他人を恐怖させてしまう呪いを持っている。 『呪われ姫』と呼ばれて恐れられる彼女は、屋敷の離れでひっそりと人目につかないように暮らしていた。 ある日、エレオノーラのもとに一人の客人が訪れる。 なぜか呪いが効かない公爵令息と出会い、エレオノーラは呪いを抑える方法を発見。 そして彼に導かれ、屋敷の外へ飛び出す。 自らの呪いを解明するため、エレオノーラは貴族が通う学園へと入学するのだった。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

【完結】勇者学園の異端児は強者ムーブをかましたい

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、pixivにも投稿中。 ※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。 ※アルファポリスでは『オスカーの帰郷編』まで公開し、完結表記にしています。

処理中です...