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第103話

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 このままでは兵士と冒険者がやられる!

「エース以外はここから退避しろ!」

 ライターは大楯を構えてルンバの標的になろうと前に出る。

「ライター!無理するな!あれはガトリングの様なものだ!ライターでも耐えられない!」
「だがこのままでは皆の命が無いのだ!」

 力を使って消耗するのはいいが、この攻撃は予想していなかった。

「くそ!エステルも下がれ!下がって重症者の治療だ!それとリリスとエムルも下がれ!」

「分かりましたわ!」
「無理は駄目だよ。終わったら契約があるんだ」
「ゲットなら、出来る!」

 3人が下がっていく。

 俺も円盾を構え、ファイアシールドを使って前に出る。

「どうです?すごいでしょう?私に近づく前に2人とも死にますよ!」

 その時、後ろからクレアとアリシアがルンバに斬りかかった。
 ルンバの背中から少しだけ血が出る。

「いつの間に!」

 クレアとアリシアは高速で動き弾丸の致命傷を避けつつルンバを攻撃する。

「ぐは!ぐああ!なんですか!そんな速度で走れるわけがない!何をしたんですか!」

 2人のスキルだ。
 ダンジョンの試練で2人は一定時間素早く動けるようになるスキルを手に入れた。
 だが、タイムリミットはどちらも1分。

 クレアとアリシアがルンバを翻弄している間に俺とライターはルンバに接近する。

 4人でルンバを攻撃するが、ライターが狙われた。

「ライタああああああ!あなたを最初に殺します!」

 ルンバの魔法弾が無数にライターの大盾にヒットする。
 大盾がボロボロになり、ライターの体にヒットして膝をついた。

「私の攻撃も有効範囲なのだ!呪いの炎!」

 ルンバの体がを黒紫色の炎が包んだ。

「熱くない?効かない?な、何をしたのですか!?」
「いうわけが無いのだ!もう、私を殺してもその炎は消えないのだ!」

 ライターは倒れながら笑う。

 試練でスキルを授かったが、ライターだけはどんな能力か教えてくれなかった。
 俺は、いやな予感がした。

 ライターは試練の後様子がおかしかったらしい。
 今のライターは死に急いでいるように見える。

「ライター!大丈夫か!」

 ライターは何も答えず倒れながら笑った。
 嫌な予感がさらに強くなる。

 クレアもアリシアも速度上昇の効果が切れて魔法弾を受ける。
 もう倒れる寸前だ。

 俺はルンバに接近してスキルを使う。

 俺は、ゼスじいのようになりたかった。

 ゼスじいにスキルを教えて貰えて誇らしかった。
 
 ガルウインと戦った時悔しかった。
 ゼスじいが若ければあんな結果にはなっていない!
 全盛期のゼスじいなら絶対に負けない!

 俺の求めた強さを今使う!



「スキル『ゼスじい』発動!」

『スキルレベルが1分間2倍になります』
 
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおがああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 ルンバにメイスがヒットする瞬間、メイスの先からファイアを発動させる。
 インパクトの瞬間にファイアを爆発させた。
 ルンバだけでなく、俺の体も焼かれていく。

 関係ない。

 俺はメイスを連続でヒットさせ、ヒットする瞬間にファイアを使い続けた。
 爆音が連続で鳴り続ける。
 大地が震動する。
 ゼスじいに初めて教えてもらった魔法。
 俺のすべてを叩きこむ!

 MPが切れた。
 関係ない。
 MPが切れてもメイスで殴り続ける。
 
「ぐらあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

『ゼスじいの効果が切れました』

 それでも俺はメイスを振り続けた。
 肩がおかしい。

 もう2度とメイスを振れなくなってもいい。
 ルンバを倒せるなら、腕を失ってもいい。



 腕を振る力が弱くなると、剣を失ったルンバがよろけながら拳で殴って来る。
 円盾で受け止めてメイス、が振れない。
 左腕がもう動かない。

 右腕の円盾を外して右手にメイスを持つ。
 半身に構え、メイスを振る。
 お互いにじわじわと削り合い、両腕が上がらなくなってくる。

「私の勝ちです!あなたが早く倒れる!」
「倒れるまで戦う!ゼスじいならそうする!!」

 終わりなのか?

 勝てないのか?

 もう、両腕が上がらず、握力が無くなる。

 メイスが地面に落ちた。

 俺はルンバに何度も殴られて地面に転がった。

 その時、ルンバの膝が折れる。
 ルンバの変身が解け、体が枝のようになっていく。
 まるで老人のようなルンバが倒れていた。
 ルンバが黒い霧になって倒れ、俺に乗り移ろうとしてその霧も消えた。

 黒い霧がスターダストオーブとなって地面に落ちる。

 タイムリミットか。

 俺は、時間に救われたのか?

 俺は立ち上がる。

「はあ、はあ、アリシア、無事か」
「……生きてるにゃあ」
「クレア、大丈夫か?」
「は、ははは、立てませんが大丈夫です」

「ライター……。ルンバにどんなスキルを使った?ライターのスキルを使ってからルンバが一気に弱くなった」
「ルンバの体力と魔力を奪い続ける、スキルなのだ」

 ライターの声が小さい。
 弱っている事が分かる。

 俺は、ライターに救われた?
 嫌な予感がした!

 ゼスじいが倒れた時と同じだ!

「ライターの何を消費するんだ?」
「ああ、大した事は無い。私の命だ」

 俺は、ライターのそばで膝をついた。
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