ゲーム序盤で死ぬモブ炎使いに転生したので、主人公に先回りしてイベントをクリアしたらヒロインが俺について来た

第97話

　白い床がどこまでも続く空間に、俺はゲットとしてフル装備で立っていた。

　目の前の空間が歪み、そこにクグツが現れた。
　嫌いな相手、か。
　いや、人を人と思わないクグツと、人と関わらない俺、同族嫌悪の部分があったのかもしれない。

「ひーひっひ！歪んだ貴様の魂事斬り刻んでやろう」
「歪んでいるのはお前も同じだ」

　クグツが双剣を抜いた瞬間に地面からガーゴイルが生成される。

「いけ！ガーゴイル！ゲットを殺せ！」
「エクスファイア！」

　ガーゴイル事クグツを焼く。

　そして一気に距離を詰めてクグツにメイスの連撃を叩きこんだ。

「ごびょおおお！！！」

　クグツが消える。



　空間が歪んでダストが現れる。
　連戦か。

「おい！てめー！俺のレベルは１００だ。今から爆速で殺してやるからよお！」
「そうか」

　俺は一瞬で距離を詰めてダストにメイスを叩きこむ。
　ダストが倒れて消える。

　ダストが、とても小さな存在に見えた。
　転生前の両親やパワハラ上司に、俺は反応し過ぎていたのかもしれない。



　目の前にブルベアが現れる。

「ファイアエンチャント！アイスエンチャント！」
「硬化ああああああ！」
　
　魔法攻撃をした方が有利なのは分かっている。
　でも、近距離で戦いたいと思った。
　こいつには1度殺されている。

　それでも、接近戦で戦う！
　ブルベアも真空波を出さずお互いが拳とメイス、拳と円盾で削り合う。

「ぐりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい！」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお！」

　だが、すぐに俺が一方的に攻撃をヒットさせるようになり、ブルベアは押し込まれ続けて倒れる。
　復活しそうになったブルベアの腹にメイスを叩きこみ起き上がったブルベアをメイスで追い詰めて倒した。

「はあ、はあ、はあ、はあ」

　俺の中に、恐怖が残っていたのが分かる。
　ブルベアが出てきた、それならば俺の恐怖の象徴は！

　ガルウインが現れた。
　魔法攻撃を得意とするガルウインは魔法防御が低い俺にとって戦いたくない相手でもある。

「サイクロン！」

　俺に向けて巨大な竜巻を放って来た。
　弱体前のガルウインか！

　俺がサイクロンを何とか躱すと、そこにウインドの魔法が連射される。

「ファイアシールド！」

　その瞬間魔法攻撃が一瞬やんだ。

　まずい！

　ガルウインが剣に風の魔法を込めていく。

「疾風剣・連牙！」

　ガルウインが連続で剣を振り、無数の風邪の刃が俺に襲い掛かって来る。

「エクスファイア！」

　衝撃がぶつかり合い爆発する。

　俺はファイアを、連射して俺はガルウインに迫る。
　ガルウインはウインドを連射して俺から距離を取っていく。

『ファイアエンチャントの効果が切れました』

『アイスエンチャントの効果が切れました』


　俺は後ろに下がるガルウインを追い続けた。

　何度も魔法を使い、ガルウインの魔力の切れた。
　ガルウインの腹にメイスを叩きこむ。
　剣を円盾で受け止め、メイスで突く。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！」

　メイスの連撃でガルウインを倒した。

「ガルウインだけは、時間がかかったか」

　ガルウインを倒したことで俺の恐怖が小さくなるのを感じた。

『試練をクリアしました。求めるスキルをイメージしてください』

「俺のイメージは決まっている、それは……」



　◇



　俺が目覚めると、皆が心配そうに見ていた。
　エステルとアリシア、そしてクレアが俺に抱きつく。

「心配したにゃあ！」
「いきなり試練を受けるのはやめてください！」
「無茶はもうやめるのですわ」

「ああ、心配をかけたな」
「ゲット、表情が穏やかになりましたわね。少しゼス卿に似てきましたわ」
「そう、か。少しだけ、考え方が変わった。それだけなんだ。そうだ！試練の内容は、俺の過去の記憶を見て、そしてクグツ・ダスト・ブルベア。ガルウインと闘いスキルを手に入れた」

「強敵ですわね」
「多分、戦いに勝つ負けるは試練に関係ないと思う。精神の成長、のようなものが大事なんだと思う。その為の試練だと、そう感じた」

「では私が試練を受ければ、違う人間だ出てくるかもしれないのだ。次は私が行こう」

　俺はベッドから起き上がり、地べたに横になった。

「寝ていただけなんだけど、眠い。しばらく、眠る」

　俺は、眠った。



　◇



　目が覚めるとテントの中にいた。
　皆が運んでくれたのか。
　俺は急いでテントから出た。

「試練！みんなは無事なのか！」
「大丈夫だよ。でも、ライターだけは試練が終わった後異常に汗を掻いて手が震えていたんだ」

「ライターは今どこだ！？」
「眠っているよ。それと、試練の事はしばらく聞かない方がいいと思うよ」
「そう、か。そうだよな。皆、みんな無事ならいいんだ」



　全員が試練をクリアし、そしてスキルを手に入れた。
　全員の試練が終わると転移陣が出現した。

　ライターは試練の後３日間ほど体調を崩した。

「ライター。まだ休もう」
「いや、いいのだ。私の体調は関係ないのだ」
「あるだろ！」

「転移陣に乗るだけなのだ。きついと思ったらすぐに帰ればいいのだ」
「もっといい状態で臨みたい」
「そろそろ一旦帰る時期でもあるのだ。文献通りなら戦闘は無いはずなのだ」
「分かった。明日だ。明日、これ以上は早くしない！」
「……分かったのだ」

　いつもと違いライターは焦っているように見えた。

　頑張って頑張って少し休むくらい、いいだろう。
　俺達はその日ゆっくり休んだ。


　次の日、俺達は休息を取り、そして転移陣の上に乗った。