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第88話

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【シャドウジャイア視点】

 城でワインとチーズを楽しんでいると兵士が報告に来た。

「ガンズ・ペンセイバーの抵抗はほとんどなく、周辺領地の切り取りは間もなく完了します」
「ゴーレムは出てこなかったか?」

「いえ、そのような情報はありません」

 ガンズの所には魔道ゴーレムがあるはずだが何故か出してこない。
 意味が分からん。
 
「ルンバはどうなっている?」
「生かさず殺さず、ルンバは必死で戦っております。ですが頬はこけ、目は常軌を逸したような狂気の表情を浮かべています。まるで亡霊のようです」

 食べる事が出来ず、ろくに眠る事も出来ない。
 その中で死の恐怖に晒され続けるのだ。
 そうなるのが当然!

「くっくっく、そうだろう」

 ルンバは瀕死状態のまま追い詰めている。
 気になるのはガンズの方だ。
 それに駒である魔物が減ってきた。
 集めて使役する必要もあるか。

「これより私自ら出兵する!」
「かしこまりました!すぐに通達いたします!」

 兵士は走って行った。

 私は魔物を使役しつつガンズの元に向かう。



 ガンズの領地にたどり着く頃にはガンズの周辺領地は私の制圧下にあった。
 ガンズの領地に入ると兵が出てきたが、私の使役する魔物と兵士の軍勢により次々と逃げ出していった。

 私はガンズの領地にいる平民に見学させつつガンズの居る城の前に立った。
 ガンズが上から顔を覗かせる。

「王都から出たがらないシャドウジャイア様が何故出てこられたのですか?」
「裏切者の顔を見ておきたくてな!門を開けろ!」

「そ、そんな事よりどうしてここに!」
「門を開けろと言っている、ふむ、やはり裏切り者か」

「ま、待ってください城から出たがらないあなたが何故!」
「それは言ったはずだ。裏切者の顔を最後に見る為だ、ついでに才能値をすべて上げておきたくてな」

「魔王!やはり魔王だ!人を苦しめる事で才能値を上げる魔王であーる!」

 ガンズは平民に向かって叫んだ。
 やはり裏切り者か。

「何のことだ?私は魔物を使役する力を得たまでの事、そこの平民、私が魔王だと思うか?答えよ!?」
「い、いえ!シャドウジャイア様は魔王ではありません。王様です!」
「だそうだぞ?ガンズ、王の顔に泥を塗るか!貴様は裏切り者決定だ!王を魔王呼ばわりしたその罪!死んで償え!」

 ガンズの取り巻きが門を開けて外に出てくる。

「わ、私はシャドウジャイア様にしたがいます!我らはガンズに脅されていたのです」

 ゴミ貴族共が。

「そうか、ではここで死ね!」

 魔物が貴族を殺していく。

「ひいいいいい!どうか助けてください!」
「断る!ははははははは!その顔が見たかった!私に逆らうお前たちが悪いのだ!はははははははは!ガンズ!役立たずのゴミを始末してやった!ありがたく思うのだな!」

 ガンズ以外の貴族を皆殺しにするとガンズが叫ぶ。

「二正面作戦は愚策なのです!私と手を組みましょう!さすれば帝国をいとも簡単に打倒できます!」
「私は常人とは違うのだ!」

 手を組むだと?
 従うの間違いだろう?

「ルンバをどうするのです!私の力が必要でしょう!」
「余計なお世話だ!裏切者は必要ない!」
「1000の魔道ゴーレムがお役に立てるはずです」
「私の命令でなぜすぐ出せなかった?なぜ命令してすぐに出さなかった!?それが答えだ!苦しんで死ね!」

「魔道ゴーレム!全機起動!」
「はははははは!やっと本気を出したか!せいぜい魔物と闘い続けるがいい!」

 だが魔道ゴーレムは確かに侮れん。私も魔物をもっと集めるべきだろう

「シャドウジャイアあああああああああああああああああああああ!」
「私が直々に魔物を集めてやる。感謝するのだな!」

 そう言って私は戦場から去って行く。

 1000の魔道ゴーレムは体長2メートルの人型で、手の平には宝石のように輝く丸い球が取り付けられている。

 魔道ゴーレムと魔物の戦闘が始まると平民が逃げ出す。

「焼き尽くすのであーる!」

 魔道ゴーレムが手のひらを魔物に向けると、両手から2つの火球が発生する。
 火球が魔物に飛んでいき、魔物を焼け死んでいった。

 1000の魔道ゴーレムが放つ炎は魔物を圧倒し、魔道ゴーレムの勝利が決まる。

「私の勝利であーる!」

 周りにいたガンズの兵士が歓声を上げた。

「私につけば安心であーる!皆任務を全うするのであーる!」

 私は叫ぶガンズを遠くから眺めた。
 くっくっく、魔道ゴーレムの運用には手間と金がかかる。

 魔道ゴーレムはメンテナンスの膨大な時間、大量の金、そして錬金術師を食べさせる食事や施設も必要になる。

 消耗戦を耐えられるか見ものだな。

 それにガンズのあの顔、明らかに余裕が無い。
 連れて来た魔物はあれですべてではないのだ。
 更に魔物を集めて使役し、消耗戦を仕掛け続ける。

 魔物を集めるのが楽しみになってきた。
 くっくっく、私が自ら王都の外に出て魔物を集めて回るのだ。
 生きていられると思うなよ!
 もっとも、私の才能値を高める為、死の恐怖を与え続けたつつ生かしておいてやろう。

 だが、才能値が上がればお前は用済みだ。

「はははははははは!ははははははははははははははは!」

 魔物の攻撃は毎日、昼夜問わず続く。
 ガンズ・ペンセイバーは消耗戦を強いられ、城に閉じ込められた。



【ガンズ・ペンセイバー視点】

 なぜだ!なぜこうなった!

「錬金術師がまた倒れました!」

「食料の備蓄がもう残りわずかです!」

「ゴーレム用の部材が足りません!」

「今度は東から魔物が攻めて来ます!」

 私はほとんど眠れないまま兵士を指揮し、魔物が私に襲い掛かって来る。

 キシャアア!

 ガーゴイルが爪で私の背中を切り裂く。

「うあああ!ゴーレム!倒すのだ!」

 魔道ゴーレムがガーゴイルを殴り倒す。

「ガンズ様!すぐに手当てを!」
「くう!私を苦しめているのであーる!すぐに殺せると分かっていて、私を苦しめ続けているのであーる!」

 シャドウジャイア、奴を侮った。

 これならば前王の方がまだ良かった。

 私に、未来はあるのか?

 生き残る道はあるのか?

 キシャアア!
 グルオオオオ!
 ガルルルルルル!

 魔物の雄たけびが聞こえる。

「地獄だ。ここは地獄なのであーる!」







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