上 下
83 / 105

第83話

しおりを挟む
 ライターは俺と一緒にルンバを追い出した経緯を説明したが、リリスもダイヤも怒っていないようだった。

 だが俺の背中に猿のようにしがみついているエムルをちらちら見ていた。

「エムルが気になるか。スムーズに話を進める為同じ6将としてエムルをおとなしく出来ないか?」
「無理!」
「無理だな!」

 俺が言い終わる前に断られただと!
 しかも2人とも語気が強い!
 エムル関連で態度が変わりすぎだ!

 ルンバを押し付けたのは許してくれるのにエムル関連は決して許さない強い姿勢が見えた。

 俺とダイヤはすぐにみんなの住む場所や仕事の簡単なすり合わせをして、話はすんなり決まって行った。

「所でエムルのおかしな行動」
「それは無理だ!」

 黒騎士は両手の手に平を前に出し、顔を横に背けながら言った。
 エムルの時だけは言い終わる前なのに速攻で拒否される。

 こいつ!いつも落ち着いているのにエムルの時だけは反応が早いしオーバーリアクションになる!
 だが、集まって来る者は皆、善良な者がほとんどで、問題は起きず、南の島は発展していった。
 エムル以外は問題無しか。

 しかし、まさかあのルンバが帝国の皇帝になるとは、予想できなかった。
 演説で皆を扇動するって、まるで独裁者だな。



 ◇卍



【ルンバ視点】

 私はやっと優雅な生活を手に入れる事が出来た。
 ゴールデンオーク用の餌はたくさんある。
 金は教会から集めて、城にいたメイドに私の世話をさせればいい。

 私に対抗する力を持った6将は悪者にして追い出せた。
 後は皆に金を運ばせて私は贅沢をして過ごす。

 大臣が面会を求めてきた。

「皇帝陛下、そろそろ最強の魔物を使役し、魔物を倒して欲しいのです」
「もう少ししたら動きましょう」

「で、ですが、すでに数か月この城で豪遊しています。このままでは国庫が枯渇してしまうのです。お力をどうかお示しください」

「あなたの大臣としての役目は今日で終わりです」
「それは、どういう事でしょう?」
「はあ、分かりませんか?首です。首にされた理由は分かりますか?」
「……いえ、分かりません」

「だからダメなのです。私の望む働きを出来ず、自分で成果を上げず私にお願いするばかり。あなたは大臣としての役割を果たしていません。
 具体的に言うと、私が休息中にも関わらず無遠慮に面会を求めてくるその厚かましさ。
 更にお金が無いと言いますが、あなたがお金を生み出せば問題無いはずですが、それを出来ていません。
 それと、支出を削減するよう指示を出しましたがわずか10%の削減も達成できていませんね。
 そして私への悪評を消すように言ったはずですが、まったく効果が見えません。
 兵士の管理も出来ていないようですね、どんどん兵士がいなくなっています。
 そして魔物の分布情報も間違いだらけのようです。
 あなた自身の無能を分かっていただけましたか?」

 大臣は大きな声で言った。

「申し訳ありませんでした!今すぐに出て行きます!」
「声のボリューム位わきまえてください。うるさいです」

 大臣は速足で部屋を出て行った。
 大臣を慕っていた城の者は城から逃げ出し始めた。



 ルンバは何か言えば何倍も批判が返って来るような人間で、自分の事を棚に上げて相手を批判する。
 そしてルンバは帝国の富を吸いつくすように豪遊を続け、周りには金を生み出すよう脅しをかけていくのだ。
 この事でルンバの悪評は瞬く間に広がった。

 元々戦争と魔王の誕生により不安定になった民衆の不安を煽る形でルンバは皇帝になった。
 だがそれは裏を返せばこの国の経済が落ち込み、民の生活が苦しくなっている事への裏返しでもあった。
 貧困や魔物に怯える生活、このはけ口は皇帝であるルンバに向かった。



 帝都ではルンバの悪口で酒場は男たちは盛り上がっていた。

「ルンバの野郎、城で豪遊してやがるみてえだぜ」
「俺も聞いた。こっちは頑張って魔物を狩ってるってのに、何もせず豪遊とは頭がいかれてんのかねえ?」

「大臣が首になって、城にいる奴らも逃げ出してるって話だ」
「6将がいた方が生活は良かったよな?」
「そうだな」

「また税を取り立てるらしいぜ」
「はあ?またか?」
「今度は6将損害復興税らしい」

「意味が分からねえ。しばらく前に6将は追い出してるだろ?」
「6将のせいにして金を巻き上げてるようにしか見えねえよなあ。所でよお、俺、マイルド王国のさらに南にある、南の島に行こうと思うんだ」

「給金は安いが、仕事さえすりゃ衣食住は何とかなるって聞いたがほんとかねぇ?それにあそこはマイルド王国の元王と英雄ゲットが作った国だろ?帝国の俺達が行っても受け入れられるもんかね?」
「黒騎士のダイヤと竜化のリリスが幹部をやっているらしい」

「受け入れられるとしても、マイルド王国の陸路を通って南の海に出るんだろ?マイルド王国の兵士と魔物が心配ではある」
「兵士と俺達冒険者が亡命するついでに民を連れて行くらしい」

「南の島ねえ。作ったばかりの国なら仕事はいくらでもありそうだ」
「お前も行かないか?お前は酒飲みではあるが、よく働く」
「そうだなあ。悪くねえかもな」



 こうしてアイアンレッド帝国の民は南の島に流れ始めた。
 マイルド王国とアイアンレッド帝国はまともな人間だけが南の国に引き抜かれ続けた。
 そして両国は自らの首を絞めていた。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

処理中です...