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第19話

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 俺は教会で皆に感謝された。

「ゲットのおかげで皆助かっただ」
「ありがとう、ゲットのおかげよ」
「ゲットは真の英雄だよ」

 俺は皆にお礼を言われ、ごちそうが運ばれてきた。
 俺は回復の為、腹に食べ物を詰め込む。

 村に犠牲者は一人も出ず、盗賊は30人ほどまで数を減らした。
 盗賊のアジトの位置も村人が発見し、今は洞窟で休んでいるらしい。

 ゼスじいとアリシアが重傷を負って看病されている。

 そして、アリシアに中ボスを押し付けたダストはみんなに怒られていた。
 だが、「俺は悪くねえ!」と怒鳴り返し、戦った村人の誰よりも元気だった。

 

【ダスト視点】

 ふざけんなよ!
 何で俺が怒られてんだよ!

 俺は英雄になるはずだった。
 何でゲットが勇者のように讃えられて、俺が悪者になってんだ!
 許せねえ!

 俺はゲットを睨みつけた。

「おい、お前何で生きてんだ!」
「はあ?」

「お前はあそこで死ぬはずだったんだよ!何で生きてんだよ!」

「ダスト!言ったらいけない事があるわ!」
「お前おかしいんじゃないのか?」
「いい加減にしろ!お前の発言にはうんざりしている」

 俺は皆に責められる。

「俺は悪くねえ!こいつは死ぬはずだったんだ!俺がギルスを倒すはずだったんだ」

「そこまで言うならお前が倒してくればいいだろ」
「ダストはいつも口だけよ」

「ゲット!お前が倒しに行って死んで来い!お前は死ぬ役目なんだ!お前死んで来いよ!ギルスを倒しに行って死ねよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「いい加減にするにゃあ」

 目覚めたアリシアが俺を責める。

「ダストはいつも逃げて、隠れて、押し付けて、嘘をつくだけにゃあ。

 自分は盗賊に身ぐるみをはがれて殺されかけたのに、ゲットに苦しい事を全部押し付けるのはダメにゃあ」

 俺はみんなから更に責められた。

 ゲットはモブで死ぬ運命なんだよ!
 そうする事で俺のブレイブポイントが貯まり、強くなってアリシアもクレアもエステルも全員俺のものになるんだ!

 何でこいつは運命に逆らうんだ!
 
 何でこいつは死なねえ!
 
 何でこいつが感謝されて俺が責められてんだよ!

 ざまあチケットを使うか?
 俺は新スキル、ストレージを発動させようとした。
 いや、奇襲してゲットを殺すのもいいだろう。

 ざまあチケットを温存する為に、ストレージに入れてある。
 俺様の最高な機転でざまあチケットを使わずに済んだか。

 

「俺は、ギルスのアジトを襲撃しようと思っている」

 俺はゲットの言葉で口角を釣り上げた。
 運命通りになる。

 俺は勇者でゲットはモブだ。
 俺は勇者として英雄になり、モブのあいつはここで死ぬ。

「そうか、やっと死ぬ気になったか。ぎゃはははははははは!そうだよなあ!お前はそうなる運命だ!」

「はあ、はあ、待つんじゃ、まだ危険じゃ」
「ゼスじい、ケガが酷いんだ。寝ていてくれ」
「そうはいかん!はあ、はあ、ワシはおまえに死なれるために訓練をしたわけじゃない!生かすため、生きてもらうために訓練をしたんじゃ!死なせはせんぞお!」

 そう言ってゼスじいは地面に倒れこむ。

「ゼスじい、奇襲をかけて逃げてくるだけだ。問題無い。今はチャンスなんだ。相手は疲れて今頃ぐっすり眠っている。今奇襲をかけて数を減らす」

「疲れておるのはゲットも同じじゃ!」
「いいじゃねーかよ!ゲットが行くって言ってんだ!行かせろよ!」

「っはあ!言っては、いかんことが、あるん、じゃ。はあ!はあ!」

 俺はゼスじいを止める。
 死ぬのを邪魔してんじゃねー!
 あと少しでゲットが死ぬんだ。

 ゼスじいの叫びを聞かず、ゲットは盗賊のアジトに向かう

 俺はみんなに責められつつ、ゲットを見送った。

 始まりのダンジョンでレベルさえ上げれば俺一人でもギルスを倒せる。

 結果さえだせばいいんだ!

 ゲットが盗賊に殺され、俺がその後倒す。
 これだけでいい。

 数は減ったとはいえ、30人もいる盗賊の住処に1人で向かいやがった。
 しかもついて行こうとしたアリシアを置いてな。
 あいつは狂ってやがるぜ、いや、運命には逆らえないか。

 俺はストーリー通り始まりのダンジョンで力をつける。
 そしてギルスを倒す!



 ダストは自分だけはまともな人間だと思っていた。
 だがすでにダストの人間関係は破綻していた。
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