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第15話

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【ダスト視点】

 俺は18才になるまで村で過ごしたが、どうにも気に入らねえ。

 村の広場で俺の女になるはずのクレアがゲットと仲良く話をしている。
 アリシアにうまく取り入って、今度はクレアか。
 モブの癖に頭にくるぜ。

 ざまあチケットを何度使ってやろうかと思ったが、ゲットはもうすぐ死ぬ。
 すぐ死ぬモブに使うのはもったいないぜ。
 だが、腹が立つ。

「ゲット、今日も訓練を始めましょう」
「よろしく頼む」
「ふふ、こちらこそ訓練に付き合ってもらっていますよ。ゲットのおかげで剣のスキルは上達しました。行きます!」

 ゲットとクレアが武器で打ち合う。
 クレアの両手剣をゲットが盾で防ぎ、メイスで攻撃しようとするとクレアが後ろに下がる。

 お遊戯だな。
 俺の訓練をする為の3人なのにゲットとばかり訓練している。

 ゲットのやつ、2才上の女3人に囲まれていい気になりやがって、しかもアリシアもたまに訓練に参加してやがる。 
 勇者である俺と違って、あそこまでしねーと武器LVすらまともに鍛えられねーのか。

 だが、もうすぐだ。
 クレアたちが帰って、その後すぐに俺・アリシア・ゲットの3人で旅立ち、ゲットはすぐに村に帰る。
 そして盗賊に殺される。

 ゲットを旅に連れて行く必要もないだろう。
 俺とアリシアで街を目指し、村が襲われた事を知らせに来るまで街で待つ。

 困った村人を俺が救って、ブレイブポイントを大量にゲットし、アリシアを手に入れ、ゲットが死んで気分が良くなる。

 良い未来しかねーな。

 ゲットとクレアの訓練が終わると、魔法使いがゲットに話しかける。

「ゲット君、炎魔法を見て欲しいなあ」
「俺はまだ修行中だ」

「そんな事はありません。私を負かすほどメイスを使いこなし、しかも炎魔法は王宮魔法使いを超える力を持っています。あの高名なゼス殿に長年鍛えられたゲットはもはや国のトップ10に入る力を持っているでしょう」

 ち、女に取り入ってうまいことやりやがって、ゲットめ!

 ゲットはその後魔法使いに手取り足取り魔法を教え、更にヒーラーにも手取り足取り回復魔法を教えていた。
 更にアリシアもゲットに話しかける。

「ゲットの手がゴツゴツしてるにゃあ」
 
 アリシアがゲットの手を触る。

 くそが!

 俺は酒を飲んでダラダラと時間を過ごした。


 ◇


 遂に来た。

 クレアが帰って、俺が旅に出る時が来た。
 ゲットは連れて行ってやらねえ。
 言ってやる。
 俺は村の入り口前に歩いた。

 ゲームでは村人全員が俺を見送る。
 俺達3人を見送るが、俺はゲットを連れて行かない!
 恥をかかせ、更にあいつの無能をみんなに教えてやる!

 思わず走り出す。

 村の入り口にたどり着く……おかしい。
 誰もいない。

 ゲームではみんなが俺を見送る事になっているはずだ。
 皆俺が旅立つ日を間違えているのか?
 村人どころかアリシアもいない!

 おかしい!

 俺はアリシアの家に走った。

 ドンドン!

「アリシア!開けろ!一緒に旅に連れて行ってやる!」

 いないのか?
 教会の近くに人の群れが見える。

 俺は走った。
 教会にはアリシアとゲットもいた。

 多くの村人が集まる。
 何故か村人が戦闘訓練を行っていた。

「何やってんだ!俺が勇者として旅立とうとしてんだよ!見送りはどうした!」

「ダスト、早く旅に出たらいいじゃろ?」
「見送りだろおおおおがああああああああ!」

 ゲットが近づいてくる。

「ダスト、意味が分からない」
「黙れええええ!アリシア!来い!」
「嫌にゃあ」

「いいから来い、俺とアリシアは一緒に行く運命なんだよおおお!」

 アリシアの腕を掴もうとするとアリシアが避けた。

「いいから来いよ!ここは盗賊が来てやばいんだよ!」
「何じゃ、聞いておったか、最近盗賊の情報が街から入って来てのお。今みんなで訓練中じゃ。ダストは旅立ち、ワシらは盗賊対策の訓練中じゃ。分かったらすぐに出て行かんか」

「俺なら盗賊を倒せるんだよ!」
「倒せるもんなら倒して貰いたいもんじゃな」
「俺なら出来るんだよ!ゲットが死んだら倒してやるよおおお!」

「ダスト、お前は何を言っているのか全く分からんのお。少し頭を冷やすんじゃ」

 俺はゼスじいに斬りかかるが、メイスでカウンターを食らって地面に転がった。

「く、くそが!ああああああああああああああ!!」

 俺は走って村を逃げ出した。

 俺は村を出て考える。
 あいつら、俺は勇者だぞ!
 俺を敬えよ!

 このまま村が襲われて村がピンチに陥ってゲットは死ぬ。そして村人にも犠牲が出る。その後に俺が現れてみんなを助ければブレイブポイントをゲット出来て一気に英雄になれる。

 アリシアは死ぬ寸前で助ければ俺についてくるか。
 くっくっく、村の近くで隠れて過ごし、盗賊が襲って来る。
 そこからが俺の出番か。

 しばらく森に隠れて過ごそう。

 ウオーーン!

 俺は気配を感じて隠れる。

 ブラックウルフだと!なんでここにいる!
 盗賊のボスが使役している使い魔か!
 こっちに近づいて来る?俺の隠密スキルを突破してくるか!
 く、ブラックウルフは感知能力が高い。

 俺が走って逃げるとブラックウルフが追ってくる。
 俺は追いつかれて尻を噛まれた。

 振り返って剣で袈裟斬りにしようとするが、避けられ、今度はすねを噛まれた。

「くそ!おりゃああ!」

 何度も攻撃して全部避けられた。
 俺は囲まれていた。
 盗賊が1人、2人、10人いる!

「おとなしくしやがれ!選ばせてやる。1つめは殺されてから奪われる道だ。2つ目の道は殺さずに奪うだけで許してもらう道だ。どっちがいい?」
「お、俺は勇者だ」
 
 その瞬間矢が俺の太ももに刺さる。

「ぐあああああああ!」
「殺されてから奪われたいか」
「ま、待ってくれ!」

「なんだ!?」
「物は差し出す!」
「おい!差し出させてくださいだろ!」

「差し出させてください!」
「すぐに動け!」

 俺はすぐに鎧を外して鎧と剣を置いた。

「おい!ブーツも置け!後服もだ」
「……分かった」

「分かりましただろ!」
「分かりました!!」

 俺は服とブーツを差し出し、パンツ一丁になる。

「お前、顔がむかつくんだよなあ。取り押さえろ!」
「言っている事が違う!」

「おいおい!殺さないとは言ったが、殴らないとは言ってないだろ?」

 そう言って俺は何度も殴られて気を失った。

 目を覚ますとパンツ一丁で誰もいない。

 た、助かったのか?

「くそ!盗賊どもめ、殺してやる!」

 がさがさ!

「なん、だ?」

 6体のゴブリンが現れて、俺に武器を向けた。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 俺は必至で走った。
 必死で逃げ、必死で村を目指した。

 俺は、パンツ一丁で、何度も殴られ、ゴブリンに石を投げられてボロボロになって村に帰った。








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