ゲーム序盤で死ぬモブ炎使いに転生したので、主人公に先回りしてイベントをクリアしたらヒロインが俺について来た

第1話

　俺は日本に住む２５歳の社畜で、夜遅くに帰ってゲームをやるのが趣味だ。

　俺はゲームを立ち上げて、アクションRPGゲーム・ブレイブクエストファンタジーをプレイする。

　このゲームの魅力はブレイブシステムだ。
　主人公は魔物から人々を助ける事でブレイブポイントが貯まり、主人公の才能値を強化できる。　
　そして主人公以外のメインパーティーキャラはすべて女性で、キャラデザが凄く良い。


　◇


「おっし！5周目クリア！夜中の３時……明日も仕事か」

　ゲームが終わって時計を見た瞬間に現実に引き戻される。
　俺は布団に入り、就寝した。


　◇


　朝日がまぶしい。
　起きると、知らない天井がある？

　顔を触るとふっくらした感触が伝わって来る。

　手も、顔もふっくらとしている。

「あら？ゲット、もう起きたの？」

　ゲットはブレイブクエストファンタジーのモブだ。
　俺の５才までの記憶がよみがえる。
　そして日本にいた頃の記憶も一緒に混在している！

　俺は急いで起き上がり鏡を見る。
　その後家を出て走る。



「はあ、はあ、やっぱり、ゲームの世界と一緒だ。俺は、５才のモブに転生したんだ！」

　ゲームに出てくる始まりの村と一緒だ！
　俺は歩いて家に戻る。

「どうしたの？いつも朝はゆっくり起きるのに」
「俺って武器屋の息子のゲットだよね？」

「うふふふ、それ誰のマネかしら？面白いわねえ」

　そう言って美人の母さんが俺を抱きしめる。
　母さんに抱きしめられて興奮してしまう。

　だめだ、このキャラで話そう。

「面白いと思って言ったんだ。母さん。ご飯まだあ？」
「すぐに出来るわよ」

　俺は、ゲットのキャラとして振る舞い、朝食を食べて武器屋に入る。

　やっぱり！武器屋なのに防具も食料もポーションも何でも売っている、ゲームと同じだ。
　父さんが不思議そうに俺を見つめていた。

　俺は武器屋を出てすぐに広場に向かう。

　
　はあ、はあ、疲れる。
　子供の体で太っているから、もう息切れを起こす。

　広場に着くとゲームの主人公ダストが俺を見る。
　ダストは金色の髪と逆毛でライオンのたてがみを思わせるワイルドな髪型と見た目をしている。
　でも性格はやさしさと勇気に溢れた男だ。

　……でも、目つきが悪い様な気がする。

「おせーよデブが！」

　主人公の言葉とは思えない意外な声に俺は固まる。

「ダストはひどいにゃあ！いつもならそういう事は言わないにゃあ！」

　ゲームのパーティーキャラ、アリシアがダストを止める。
　アリシアはネコ族で人の耳の他に頭から猫耳が生え、後ろから尻尾が見える。
　亜麻色の髪とセミロングの髪形、そして亜麻色瞳は優しい印象を受ける。
　成長したアリシアは下半身がむっちりしていてかなり魅力的だが、今は５才の子供だ。



「ち！ガキが！」

「今日のダストはおかしいにゃあ。今日はゲットと一緒に遊ぶにゃあ」

　そう言って俺はアリシアと遊ぶ。

「今日は何をするにゃあ？お魚を取って食べるかにゃ？」
「そうだね、魚を取って焼いて食べよう」

　俺とアリシアは川に向かう。

　川に着くと俺は後ろから押されて川に落ちた。

「あぶ！ぷへえ！げほ！げほ！」

　後ろを見るとダストが俺を指差して笑う。

「ぎゃははははははは！デブが転がってるぜ！ぎゃはははははははははは！」

　おかしい、ダストはゲームではこんな人間ではなかったはずだ。
　明らかに目つきがおかしい。
　子供の頃は悪ガキだったのか？いや、ゲットの記憶ではもっと優しくてこんなことをする人間ではなかった。

「ひどいにゃあ！ゲットが風邪を引いてお魚も逃げるにゃあ！」

「こういう事はやめて欲しい」

「おいおい！俺はデブのお前が痩せられるように手助けしただけなんだぜ！」

　そう言ってダストは笑いながら去って行く。
　僕は服を乾かして焚火をした。

　アリシアが火を起こしてくれたのだ。

「大丈夫かにゃ？」
「大丈夫だよ」

「今日のダストはおかしいにゃあ」
「そうだね。機嫌が悪いのかな？」
「まるで違う人間のようだにゃあ」

　その後アリシアが取った魚を食べて家に戻った。



　次の日も俺はダストにいじめられた。
　
　剣術ごっこをやるといって俺を何度も木の棒でつつき、叩いた。

「痛い！痛いよ！やめてよ！」
「ぎゃははは！のろまが！、お前どんくさいんだよ！汗臭いんだからせめて早く動けよデブが！」

　そう言って何度も何度も叩かれるが、アリシアがいる前ではそこまでひどい事はしなかった。

　集めた木の実は奪われ、はちみつを取るためにおとりにされ、取った魚は奪われた。
　基本食べ物は奪われる。

　更に他の子どもには、俺と遊ばないように孤立させ、アリシアにばれないように俺をいじめ続けた。

　転生から４日目に俺は言われた。

「お前どうせ１８才で死ぬんだから生きてても意味ねーんだよ！」
「え？どういう事？」
「何も知らない馬鹿が」

　そう言って俺の質問には一切答えず、ダストは去って行った。
　
　何で、俺が死ぬと知ってるんだ？
　ダストは、ダストも転生者なのか？