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第49話 予測を超えろ

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 俺は1人、ゴブリンの軍団に向かって歩いた。

 ステッキを笛に変えた。

 笛を吹きながらゴブリンの軍に歩いていく。
 笛自体には何の効果も無い。
 これは心理戦だ。

 狡猾なロックショットは遊び人を馬鹿にしている。
 でも、ジョーカーの事は異様に意識していた。

 ゴブリンのエース、神出鬼没のジョーカーは遊び人だ。
 ロックショットは遊び人を下に見ているがジョーカーだけは意識している。
 そしてジョーカーは奇策を多用してくるらしい。

 ジョーカーは相手を弱体させる笛の固有スキルを使える。
 俺の作戦は俺をロックショットに意識させる事だ。
 俺とジョーカーダブって見えるように認識させる事だ。

 普通ではありえない単独での軍への接近。

 戦闘の場面で笛を吹く異様さ。

 すべてが演出だ。

 そして顔にはピエロのように笑みを張り付ける。

 ロックショット、俺の思った通りに動いてくれよ!

 ゴブリンの軍団が弓矢を構えた。

 ブラックウルフのようにやられるためにイノシシのように飛び込んで来てくれる魔物とゴブリンは違う。
 ゴブリンは弓を使う敵が多く、そして知恵が回る。

 矢の雨は脅威だ。
 失敗すれば死ぬ。

『固有スキルの封印が解除されました』

 固有スキル:成長のカード
 使用から1時間すべての取得経験値を大幅に引き上げる。
 成長のカードを使用可能な状態でストックしておくことでカードの成長率が上昇していく。
 使用回数は1回。
 使用後一カ月で成長のカードが再生成される


 俺は成長のカードを使った。
 体が光り輝く。
 女神ティアの封印解除はジャストタイミングだ。

 この光輝く体は俺の異様さを引き上げる。

 避けられるかどうか分からない矢の雨、だが、今この時に成長していけばいい!

「何だあの光はああああ!撃て!撃ちまくれええええええええ!」

 良かった、ロックショットは思った通りの反応をしてくれた。

 俺の事が恐ろしいだろ?

 何をやって来るか分からないだろ?

 ジョーカーに重なって見えているんだろう。

 それでいい。

 だが、俺がやる事はシンプルだ。
 ただ1人でゴブリンの軍団に飛び込んで、普通に攻撃する!

 矢の雨が飛んでくる。

 俺は矢を回避し、すかさずスキルを使う。

「パラソル!」

 魔法の傘が開き、矢を受け止める。

『曲芸レベル8→9』
『器用229→241』
『速力161→178』

 攻撃をパラソルでガードした瞬間に、カチッと決まったような快感が体を駆けめぐる。

「奴は10秒間パラソルを使えん!今だ!撃ちまくれ!」

 矢の雨が飛んでくる。

 矢の軌道を読むと、道が見えた。
 最低限の動きでその道を進むと矢を躱しながら前に進む。

『器用241→249』

『速力178→184』

 器用の値が上がりにくくなって来た。
 俺に余裕がある事の裏返しか。
 俺はまだ、本当の意味で追い詰められていない。
 もっと前に出ろ!

 ゴブリンに近づくと矢を避けにくくなって来た。
 それに対抗するように俺の能力値が上がっていく。

『曲芸レベル9→10』

『固有スキルを所得しました』 

『固有スキルを所得しました』 

『固有スキルを所得しました』 

『遊び人をマスターしました。ジョブ、商人を追加可能です』

 く、固有スキルを3つ覚えたが、クールタイムがあって使えないだと!
 集中を切らすな!

 もう少しで射程10メートルだ!

「アタックダイス!ナイフ!」

 俺は左手にステッキを持ち、右手にアタックダイスを出し、すかさず振る。
 ナイフ10本を10体のゴブリンに飛ばして魔石に変えた。

 矢と魔法を躱し、避けきれない攻撃はステッキで叩き落すとアタックダイスに2の目が出た。
 どの目が出ても当たれば倒せる。
 アタックダイスがゴブリンにぶつかると小型の爆発を引き起こした。

 轟音でゴブリンが恐怖する。

『魔力248→250』
『速力184→188』
『器用249→251』

「なぜ攻撃が当たらん!あのカードは何だ!」

 俺はゴブリンの群れに飛び込んだ。
 こうする事で矢を撃たれにくくなる。
 俺の半径10メートル、その魔力に集中して把握しながら戦う。

 ステッキでゴブリンを叩きゴブリンを魔石に変え、スキが出来るとアタックダイスを振る。
 それでも手が空けば殴り、蹴ってゴブリンを魔石に変えていった。

 攻撃を受けるな!

 動きの無駄を減らせ!

 少ない動きで躱し、ゴブリンを倒していく。

 俺はこの1時間に意識を集中させていった。


【副兵士長視点】

「あれが、ユウタ殿の力、モンスターの群れに対して強いと思っていたがあれほどとは!」

 あまりの衝撃で鳥肌が立った。
 すでに1000を超えるゴブリンが魔石に変わっただろう。

「これなら5000のゴブリンを全滅させることも出来るのでは!」
「ユウタに余裕は無い」
「レオナルド様、それは一体」
「あの数のゴブリン相手だ。あの数の敵を相手に集中力を切らさずに戦うのは難しい。それにスタミナの問題がある。ユウタは無茶を承知で無茶をしている」

「た、確かに」
「それに見て見ろ、ゴブリンがユウタから距離を取りだした。ゴブリンは知恵が回る。最初は焦っていたゴブリンだが、今は囲んで矢を放ち、円状の包囲陣を作りユウタに対抗し始めている」

「ユウタ殿の動きが、鈍くなっています!」
「そろそろ頃合いだな、弱っているのはユウタだけじゃない。ゴブリンも恐怖と焦りで精神を消耗している」

 セリア様も前に出た。

「そして、矢を撃ちすぎましたね。あのゴブリンの円陣を一方的に攻撃出来ます」
「そういう事だ、俺が先頭を走る、俺達が突撃する前にセリアはゴブリンに大魔法を使え」

 兵士と冒険者が構えた。

「総員!突撃開始いいいいい!」

 早く、早くユウタ殿を救いに行かねば!
 私は、消耗したゴブリンの軍に走って行く。
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