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第48話 思わぬ一手

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 次の日の朝、ゴブリンの軍勢が現れた。
 5000の軍勢と3人のエース。
 アリーチェが王都に行く前に出てくるとは、本当に邪魔な奴らだ。

 対してこっちは冒険者と兵を合わせて1000人。
 エースはセリアと勇敢なレオナルドの2人だけだ。
 国はゴブリンの動きを察知したがたくさんの軍を送る事は出来なかったようだ。

 レオナルドさんが呟いた。

「防衛設備の無いここを狙われたか。それに嫌な予感がする」
「僕もです」
「転生者の遊び人ユウタ、その予感や考えを何でもいいから聞きたい」

 俺はゴブリンの向こう側を見た。

 狡猾なロックショット
 神出鬼没のジョーカー
 剛腕のゴッズオ

 3体を眺めた。
 指揮をしているのは狡猾なロックショットだろう。
 ゴブリンの陣を見ると、セリアに大魔法を撃たせようとしているように見える。

 狡猾なロックショットは転生前にいた上司に似ている。
 何となく、考えが分かった。

「狡猾なロックショットはゴブリンの軍を使いセリアに魔法を使わせてレオナルドさんを弱らせたうえでエース2人を殺そうとしているように見えます。このまま策に乗れば負けるでしょう」
「ああ、俺も嫌な予感がする」

 考えろ、ロックショットの計算を狂わせる方法は無いか?
 ロックショットは臆病で、ずる賢く、ゴブリンを駒のように使う。
 そして、

「あ!1つあった!」
「なんだ?言ってみろ。何でもいい」
「かなり危険な賭けですが、1つ方法があります。それは」

 俺は策を話した。


 セリアが怒る。

「駄目です!危険すぎます!」
「わたくしも反対ですわ。無茶が過ぎます」
「ダメ!絶対ダメ!死にに行くようなものよ!」

 サーラとアリーチェも反対した。
 周りからも反対の声が出た。

「ユウタ、そりゃ無茶だ。狂ってるぜ」
「でも、狂ったことをしなければロックショットの計算を覆すことは出来ない。俺の案がいいと思う」
「死ぬぜ?」
「危ないのは分かる、でも、これが一番いい、そう思えるんだ」

「喝じゃ!!」

 おさわりじじいがマイクを持って叫んだ。

「ユウタの言う事はワシにもわかる。ワシは思うんじゃ、ユウタは今、この時の為に力を蓄えて来たのではないかとな」

 おさわりじじいの雰囲気がいつもと違い真剣だ。
 みんながおさわりじじいの言葉に耳を傾ける。

「ユウタ、やるのじゃ。なあに、うまくいく。ワシはユウタを信じる。遊び人としての勘が大丈夫だと言っておる」

「ダメ!絶対にダメ!」
「私は納得できません」
「わたくしも反対ですわ」

「アリーチェ、セリア、サーラ、本当は気づいているんじゃろ?ユウタの判断の速さ、行動の的確さ、ステータスだけでは計り知れない異様な回避能力、今は我を捨てるんじゃ!メスの心は捨てるんじゃ!ユウタ、行くんじゃ!今すぐに!」

「分かった。行って来る」

 俺は歩き出した。

【狡猾なロックショット視点】

「がはははははは!焦るがいい!怯えるがいい!セリア、ゴブリンの軍に魔法を使え、レオナルド、ゴブリンの群れに飛び込め!弱った瞬間にエースで袋叩きにしてくれる!」

 駒の数は俺が上!

 エースの数も俺が上!

 普通に戦っても俺が勝つ!

 そこにこの俺の知略が合わされば更に勝利は間違いなしだ!

 ん?なんだ?

 あの生意気な遊び人が1人で歩いてくる?

 何を考えている?



 ユウタはたった一人でゴブリンの大軍に歩いて行った。
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