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第36話 トンテキ王子

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「トンテキ第三王子、落ち着くのだ」
「僕はずっとここでサーラが来るのを待ってたんだ!」

 トンテキ王子はキンキンと耳に響く声で言った。
 太っておりダラダラと汗をかいている。

「僕は大国、リンク王国の第三王子だぞ!父様に言いつければこの国との関係は悪くなる!サーラ!僕のモノになれえええええええええええええ!」
「落ち着くのだ」

「サーラを渡せば帝国は多額の援助を行う!サーラ、僕のモノになれええええ!」
「トンテキ王子!落ち着くのだ!」

 トンテキ王子はサーラに近づこうとして兵士に止められ、それでも騒ぐのをやめずに騒ぎ続けた。
 王が何度も止めようとするが話を聞かない。
 

 ◇


「ふー!ふー!ふー!ふー!」
「と、トンテキ王子!落ち着いてください!偉大なるリンク王国の王はこの国との友好な関係を望んでいます」

 部下の男がトンテキ王子を止める。

「黙れえええええ!」

 バチン!
 トンテキ王子は護衛の兵士を右手で平手打ちにした。

「王はこの国との友好を!」

 バチン!
 今度は左手で護衛をビンタした。

「トンテキ王子!やめるのだ!」

「王は友好を」

 バチン!バチン!バチン!バチン!バチン!バチン!バチン!バチン!バチン!バチン!

「トンテキ王子!やめるのだ!」

 トンテキ王子はビンタをやめない。
 周りから止めるよう声がかかるがそれも聞かず王の言葉も聞かずビンタをやめない。
 バチン!バチン!バチン!バチン!バチン!バチン!バチン!バチン!バチン!バチン!

 回りで見ていた者の多くが顔を歪め。中には泣きそうになる女性もいた。
 護衛の兵士はどんどん顔が腫れあがっていく。

「トンテキ王子!やめるのだ!」
「ふー!ふー!ふー!ふー!ふー!今回は王に免じて許してやろう!貴様のせいで手が痛くなった!逆らうな!僕に逆らうなあああ!」

 よく分かった。
 トンテキ王子はやばい奴だ。

 何かいい手はないか。

「あの、よろしいですか?」
「ユウタ、どうした?言ってみろ?」
「王位継承権を今回破棄するかどうか賭けで決めませんか?」

 このゲームのポイントはあくまで王位継承権を今回破棄するかどうかを決めるだけだ。
 決してトンテキ王子との結婚を決める軸では無い。

 ギャンブルはこの世界では、おみくじのような宗教的文化がある。

「女神ティアがどう選ぶか、ルーレットで決めたいのです。僕は転生してこの国に来る事になりました。これも女神ティアの意思が働いているのかもしれません」

「なるほどな、今回は王位継承権を破棄するかどうかを決めるのだな?」
「そうです」
「ルールを聞こう」

 俺はルーレットを出した。
 黒と赤のマスがあり、球を転がすカジノのルーレットだ。

「赤と黒、どちらかでルーレットが止まるかで決めます」
「む、だが、緑が1つだけあるが?」
「緑が出た場合、サーラに決めて貰いましょう」

「トンテキ王子、どうする?女神ティアの運命から逃げるか、それとも挑むか、もちろん逃げたいならそれでいいが、そんな事をすれば悪い噂が広がるだろうな」

 聞き方がうまい。
 いいえと言わせないように聞いている。

「ふ、僕は女神ティアに愛されている!受けてやる」
「では後日、ルーレットショーを開催する」

 こうして謁見は終わった。

「ユウタ、助かりましたわ」
「いや、結局運任せになる」
「ですが、半分の確立なら悪い賭けではありませんわ。それに、今回は、とする事で、次回のチャンスもありますわね」

「他に小さな策がある。もし賭けに勝てば次の段取りで動きたい。それは……」

 俺は策の説明をした。
 俺はトンテキ王子の行動に違和感を感じていた。
 俺の予想通りなら、トンテキ王子には策を使う必要がある。


「分かりましたわ。お父様に伝えておきますわね。それにしても」
「ん?」
「そこまで頭が回りますのに、その知略で女性と重なる行為に及ぼうとしないのですわね」

「そういう事をしたら、サーラにはバレるだろ?」
「アリーチェやセリアにはバレませんわ」
「……うーん、悪い事をしているようで気が進まない」
「今の策も悪いと言えば悪い事ですわ」
「はっはっは、そうだったな」

 俺は数日の間ギャンブルのディーラーとして過ごした。
 王から「大きなルーレットを出せるようにレベルを上げてくれ」と言われたためだ。

 スキルレベルの上昇は無駄ではない。
 それにギャンブルのスキルは幸運値を強化する。
 運を上げておきたいのだ。
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