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第22話 ギャンブルの興奮

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 おさわりじじいがスタッフに運ばれて退場するとサーラさんがスカートを手で押さえた。

「失礼しましたわ」
「素晴らしい黒げふんげふん!素晴らしい回し蹴りでした。アサシンの方ですか?」
「惜しいですわね。スカウトですわ。わたくしにかまわずゲームを再開なさってください。銀貨30枚を使いますわ」

 後ろにいた護衛が起き上がって銀貨30枚をサーラさんに渡す。

「奇数に10枚賭けますわ」

 他のお客様も賭けが決まると俺はステッキでダイスを出して振った。

「3の目です」
「ふふふ、勝ちですわね。銀貨が8枚増えましたわ」

 奇数偶数の勝負だと勝てば1.8倍、負ければ賭け分が無くなる。
 続ければ続けるほどお客様が損をし、カジノの運営側が得をする仕組みになっている。

「次も奇数に10枚賭けますわ」
「ダイスを振ります。5の目、奇数です」
「また勝ちましたわね。次で最後にしますわ。銀貨10枚、偶数にしますわ」

「ダイスを振ります。1の目、奇数です」
「あらあら、3回目は負け、ですが勝ち、勝ち、負け……悪くはありませんわね。女神ティアの加護を信じますわ。決めました」

「はい?」
「いえいえ、こちらの事ですわ。ユウタさん、カジノのお仕事が終わったらお話をしません?」
「いいですよ。カジノが終わってからですね」
「ええ、お待ちしておりますわ」

 そう言って去って行った。

 ん?俺自己紹介したか?
 それにどこに集合すればいいんだ?


 カジノが終わり外に出ると、護衛の一人に案内され、街で一番豪華な宿屋の上の部屋に案内された。
 そしていつの間にか復活したおさわりじじいも付いてきた。
 本当にしぶとい。

「おさわりじじい、変な事をするならついてこないでくれ」
「ワシは紳士中の紳士じゃ!心配はいらん」

 おさわりじじいの言葉に耳を疑った。
 いつも適当な事を言っている。
 席に案内されるとおさわりじじいだけは2人の護衛に槍を向けられている。
 ですよね~。
 おさわりじじいを信頼しちゃ駄目だ。

「お待ちしておりましたわ。わたくしはサーラと申します。アイアン王国の王女、と言っても王位継承権は17番目なので位は下です。気楽になさってください」
「どうも、ユウタです。所でお呼びいただいたのはどのような用件でしょうか?」

「気楽になさってください。ですが、そうですわね。いつまでも用件を言わないのも良くありませんわ。ギャンブルのお話をしたくて来ましたわ。ギャンブルの内容はダイス勝負ですわ」
「勝った場合と負けた場合の報酬やペナルティをはよしゃべらんかい!」

 おさわりじじいが話の段取りを無視して口を出してくる。

「もしわたくしが勝ったらユウタさんには7日間この都市周辺の魔物狩りのお手伝いをして欲しいですわ。もしわたくしが負けた場合」

 サーラさんが髪をかき上げて、上品なしぐさで俺に近づいた。
 そして俺の耳に吐息がかかるように耳元で囁いた。

「一晩、わたくしの体を好きにマッサージしていいですわ。どこを触ってもいいですよ」

 その瞬間にぞわっと鳥肌が立った。
 胸がドキドキと高鳴り、体が熱くなる。
 サーラさんの体を触り放題と聞くと一気に興奮してくる。

 まるでサーラさんに心を操られているかのようだ。

「ワシワシ!ワシがヤル!ワシに任せるんじゃ!」

 地獄耳め!
 おさわりじじいが騒いだ瞬間に槍の先端がおさわりじじいを狙う。

「残念ですが、あなたは信頼できませんわ。ですが、ユウタさんなら信頼できそうです」
「人の内面を見抜く魔眼か、アイアン王国王女の中で最も美しく、最もレアなスキルを持っておると噂のサーラ王女、ふむ、確かにおさわりしがいがありそうじゃのお、じゅるり」

 カチャ!
 槍の先端がチクチクとおさわりじじいを刺す。

「暴力はいかん!」

 魔眼か、俺の心は見透かされている。
 俺に出して来た条件も俺がドキドキするような、中毒にさせる麻薬のような刺激があった。

「もう我慢できんわい!サーラをおさわりぐべええ!」

 飛び込んだおさわりじじいにサーラさんが素早く回し蹴りを食らわせて開いていた窓に蹴り落とした。
 ホームランのようだ。
 ふわっとスカートが舞って黒い下着が見える。

「失礼しましたわ。話を続けますわね。勝負方法はダイス、奇数か偶数好きな方を選んでくださって結構ですわ。受けてくださいます?」
「受けますが、何故体を張るような賭けをするのか気になりました」
「色々複雑ですが、王位継承権を捨てて気楽に生きたいのですわ」

「失礼しました。言いにくい事は言わなくても大丈夫です。まずはギャンブルをしましょう」
「そうですわね。どっちに転んでも、2人でいる時間は取れそうですし、お話をする時間はおいおい取りましょう」
「では、奇数と偶数どちらにします?」
「偶数が出たら僕の勝ちで」
「分かりました。では、ダイスをお願いしますわね」

 俺はダイスを振った。


 ◇


 俺は、賭けに負けた。

 そしてギャンブルのレベルが上がった。
 俺は、ギャンブルが好きじゃないと思っていた。
 
 でも、サーラさんの顔を見ながら、

 サーラさんをマッサージできるかもしれないと思いながらダイスを振るあの瞬間、

 俺は興奮していた。

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