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第80話 新ルート奥へ

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 放課後、4人でショップに来た。
 ショップに入るとリツカとメイはウインドウショッピングを楽しむが、マナが魔法弾の前で唸っていた。

「買ったらいいだろ?」
「迷うわね、弾は欲しいけど、自分で作ったほうが安いのよ」
「まだゲートの奥に行くまで3日ある。今決めなくてもいいぞ」

 マナは自分で魔法弾を安く作れる、でも数を確保するには時間がかかる。

「う~ん、やめておくわ、家に帰って作る」
「分かった」

 あと3日、錬金術師の生徒から魔石と魔法弾を交換してもらおう。
 この方法なら安く調達できる。

「用は終わった。帰ろう」
「待ってください! アキラ、これを着てみませんか?」
「これは、クラックが逃亡時に着ていた外套と似ている、商品名はクラックコートか」
「父さんの会社が作ったシリーズだよ!」

 女性の店員さんがにこにこしながら言った。

「ぜひ着てみてください。写真をネットにアップしてもいいでしょうか?」
「は、ははは、いえ、今度にしますね」

 がし!

「いえいえ、ぜひ着てみましょう!」
「いえいえいえ、結構です」
「いえいえいえいえ、今なら魔法弾を1000発プレゼントしますのでどうぞどうぞ!」

「面白そうなので着てみましょう☆」
「配信をしてもいい?」
「どうぞどうぞ! いい宣伝になります。ショップの名前を言っていただければぜひ配信をお願いします」

 俺は結局クラックコートを試着して配信し、写真のモデルとなった。

「アキラ、お疲れ様、はい、コーヒー」
「マナ、ありがとう。はい、魔法弾1000発」
「いいわよ」
「メインで銃を使うのはマナだ。リツカはたくさん魔法弾を持っている」

「それは悪いわ」
「俺が危なくなった時にマナの銃撃が必要になるかもしれない」
「……分かったわ。大切に使うわね」

「性格イケメンですね☆」
「まだ配信中だったのか」
「ばっちりだよ」

『性格イケメンか、俺もそう呼ばれたいわ』
『マナからはいコーヒーされたいわ』
『羨ましすぎる』
『アキラはあのコートを買っても良かったと思うの』

 こうして、皆のコメントが聞こえつつ配信は終わった。


 皆ゲート奥に向かう準備を整えた。

【新ルート探索当日】

 4人でゲートの前に向かう。
 朝早かったのでメイはリツカがおんぶしている。

「兄さんとライカさんはもう来てる」
「アキラ、また立派になったな」
「皆、よろしくお願いするわね」

 ライカさんが優しい。
 兄さんと結ばれたからか?

「このまま配信を続けてもいいかな?」
「いいわよ」
「行こう」

 俺達は自己紹介や説明をしつつ先を目指した。
 ライカさんと兄さんは俺達を見守るように後ろからついてくる。


「まだ奥の探索は終わってないのか?」
「調査班はまだ調べていないみたいだよ?」
「穴場だから他の冒険者が群がったりしないのか?」

「無いわ、険しい道を超えて6日かかるのよ? 未知のルートは事故も多いわ。それに最後のモンスターの群れがあったあの場所、あの群れに囲まれれれば並みの冒険者は命を落とすわね」
「いい場所だと思うんだけどな」
「きゅう♪」

「きゅうもお気に入りか」
「きゅう♪」
「並の冒険者なら危ないです、でもここにはアキラとキドウとライカさん、3人のソウルランクBがいます☆」

『リツカとメイもソウルランクCだ。このパーティーは強いぞ』
『あんまり言うな、Dランクのマナがいるんだから』
『マナは錬金術があるから気にしないで!』

 マナの顔が少し曇った気がしたが、気づかないふりをした。
 何か言っても逆効果だろう。

『普通の冒険者なら奥には行かないだろう。調査隊も他の仕事があるから後回しになっている』
『モンスターがうじゃうじゃいる長いルートが穴場と言えるアキラはもう強者なんだと思う』
『みんなが思う険しい道はアキラにとって普通の道か』

 俺達はモンスターを倒しながら進むが、兄さんとライカさんは明らかに変わっていた。

 俺達がモンスターを倒している時に、兄さんが前に出てこない。
 ライカさんの影響で落ち着いたのかもしれない。
 そしてライカさんがかなり優しくなっている。

「皆汗を掻いているわね。タオルで拭きましょう」

 ライカさんが笑顔で皆にタオルを渡して兄さんの体を拭く。

「ありがとう」
「こうしているのが幸せなのよ」

 メイが2人を見て驚く。

「キドウとライカさんは変わりましたね」
「うむ、色々あった」
「私もキドウの影響を受けているのかもしれないわね」

『きあああああいまだあ?』
『きああああああいを聞きに来た俺はどうすればいいんだ?』
『気合侍が出てくるのはまだ早い』
『いつ出るんだ?』
『それは来るべき時だ』

『来るべき時とは?』
『ふ、それを言っちゃあおしまいよ』

 みんなは間延びしているせいかネタ発言が始まった。

「洞窟まで足を速めよう!」

 俺はマナをおんぶした。

「あう、自分で走れるわ」
「マナは温存したいからね。このまま行こう!」
「行きましょう! 走りますよ☆」

 みんなで走って洞窟に向かった。
 前回6日かかった道のりを、俺達は4日で駆け抜けた。


【カドマツ視点】

 私は皆を尾行する。
 

 途中から変化があった。
 みんなが走り出したのだ。
 今度は走って池に潜って急な斜面を上り下りする罰ゲームですか!

「カドマツ、追うぞ」
「……分かりました」

 私は皆を追った。
 尾行しているみんなは楽しそうなのに、私はあまり話さないヤナギと一緒。
 池に飛び込んでブラが擦れた。
 
 体調が悪い。
 なんで、尾行しているんだろう?
 3人がBランクで、しかも私より強そうな魔法使いがいる。
 私1人が助けに行って助かる事があるのだろうか?

 そして、陰から尾行をする意味はあるのだろうか?
 そろそろリツカちゃんは私を超えて強くなるだろう。
 この尾行、無駄では?
 
「ヤナギ、私達が尾行する意味ってあるんですか?」
「思う所があればオウセイに言ってくれ」
「分かりました。もしもし、実はですね……」

 私はリツカパパに現状と想いを伝えた。

『話は分かった。ヤナギと変わってくれ』
「分かりました」

 ヤナギとリツカパパが話をする。

「分かった。カドマツは帰らせよう。調子が悪そうに見える。いや、そこまでではないが、調子が悪くなるとネガティブにもなるだろう。いや、俺から伝える」

 ヤナギがスマホを返しながら言った。

「今回、尾行は俺1人でやる。気をつけて帰ってくれ」
「……いいんですか?」
「いい、それと、尾行する方針も見直す。皆が急速に強くなりすぎた。尾行もバレている。今の体制を見直すために俺が帰ってから3人で話をする事になった」

「やっぱり、途中から、この尾行、意味ないなーって思ってました」
「分かる」

「疲れました」
「調子が悪いんだろ?」
「少しだけ」
「ゆっくり帰ってくれ」

「はい、頑張ってください」
「ああ、気をつけてな」
「お疲れ様です」

 私はその日、ゆっくり眠って、ゆっくりとお家に帰った。


 
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