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第20話

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『フィール!お手柄だよ!君の責めでアイラは何度も天国のような夢見心地を味わったよ!フィールの快楽はアイラの脳内に刻まれて一生消えないだろうね!2人が1つになる、これこそが愛の力を育むんだよ!今までたくさん愛の力を浴びてきたけど、フィールとアイラの愛は別格だよ。私は大幅にパワーアップしたよ!弱かった魔力量が増えただけじゃないんだ!新しいスキルを覚えたよ!』

 うるさい。
 テンションマックスかよ。
 後チンカウバインがパワーアップってやばくね?
 しばらく魔力不足で寝ててくれないかな?
 しばらくしおれていても放置したくなって来た。

 チンカウバインの意識が流れ込んでくるけど、チンカウバインが覚えた新スキルには不吉なモノしか感じない。
 このスキルはやばいだろ。

 こいつどうしよ?
 憑依を解除するか?
 解除したらしたでまずい。
 チンカウバインを解き放つのはまずい。

 解き放たなかったとしてもこいつは勝手に憑依を解除する。
 仮に出てこなかったとしても、チンカウバインが脳内で話を続けるだろう。
 こいつはテンションが上がればひたすらしゃべり続ける。

 チンカウバインが憑依を解除し、光を放ち目の前に現れた。

「まずは両親に報告だね」
「自分で言うからいい」
「遠慮はいらないよ!」

 ブーーーーン!

 チンカウバインが飛び去った。

 いやな予感しかしない。
 チンカウバインとは意識を共有していたが、俺の恥ずかしさとかそういうのは無視をする。
 存在そのものが人と違うのだ。

「ううん、フィール、君?」
「おはよう、まずい事になった。チンカウバインが両親に報告に行った」
「……何を?」
「昨日の夜の事だ」

 アイラが布団を被った。

「もう手遅れだ。というか1回止めた所で無駄だし、何を言っても俺の言う事を聞かない。今日は諦めよう」
「しばらく、休むね。腰が痛くて」
「……そうか。両親が色々聞いてくるだろう。しばらくすれば落ち着くと思うけど……俺が4人と話をする」

 俺は、部屋を出た。

 アイラの母、そして両親がチンカウバインの話を熱心に聞く。
 メイドも会話に参加していた。

「フィールが来たよ」
「おはよう」
「「おめでとう!」」

「あ、ああ。アイラは疲れてしばらく起きないと思う」
「昨日の激しい愛でアイラは何度も体を反らせて、最高の夜を味わったんだ!」

「2人で一緒に学園に戻る事にしたんだ」

「これから昨日と同じ夜を何度も体験するんだ!」

 やりにくい。
 チンカウバインがうるさい。

「おほん、今日はゆっくり休みなさい」
「でも、今日も恋占いで集まっている子がいるのよ?」
「私に任せて!パワーアップした私の力でたくさんの愛を実らせるよ!」

 チンカウバインは飛んでいった。

「そろそろ食事にしましょう」

 執事は淡々と仕事をこなすが、聞き耳は立てている。

 俺以外のみんなはにこにこしながら食事を摂った。



 次の日、ファインのパーティーは学園に帰って行った。
 俺とアイラも誘われたが断った。
 何日か学園を欠席しても問題無い。

 チンカウバインは人が少なくなってくるまで毎日恋愛相談を続けた。
 その効果もあって他の領地から来た人がアイラの父の商店を利用して帰って行った。



「ここは十分愛で満たしたよ!」
「学園に戻ろうか、アイラ、おんぶするぞ」
「よろしくね」

 俺はバックパックをお腹に背負い、チンカウバインを憑依させ、アイラをおんぶした。


 フィール・バイブレーション
 体力レベル  256(+60)
 魔力レベル  195(+20)
 速力レベル  400(+7)
 生産レベル   10
 知力レベル    158(+7)
 魅力レベル    694(+101)
 スキル
『☆秀才』『☆風魔法の才能』『☆イケメン』『☆妖精契約・チンカウバイン』『剣術:中級』『炎魔法:下級』『水・氷魔法:下級』『風魔法:上級』『土魔法:下級』『聖魔法:下級』『闇魔法:下級』『生産魔法:下級』
 内政力
 爵位:男爵家の息子
 兵力レベル:無し
 収入レベル:無し
 領地レベル:無し



 アイラと同じ夜を過ごしたことで魅力レベルが大幅に上がった。
 そして恋愛ポイントも101ポイント貯まったが まだ使わない。
 アイラと、いやエチエチイベントをスルと恋愛ポイントがたくさん貰えるようだ。

「行くぞ」

 俺は風魔法をまとった。
 そして、風圧を軽減するように操作して走る。

「はや!速いよ!」
『今アイラの言葉に興奮したね。ベッドの上と同じ言葉だよ』

 チンカウバインの言葉を無視して走る。
 馬よりも速く走る。
 そうする事で野営回数を抑え、荷物を減らす事が出来る。



 ◇



 止まって野営の準備を始めるが、アイラが胸を押さえている。

「大丈夫か?」

 チンカウバインが憑依を解いて出てきた。

「胸が大きいから擦れて痛いよね。薬があるから使うといいよ」

 チンカウバインがバックパックからごそごそと薬を取り出して満面の笑みで渡す。

「私が塗ってあげるよ」
「い、いいよ。自分で塗れるから」

「しかし2人だけの夜景と周りには誰もいないこの大自然、スルにはいいよね」
「チンカウバインは急にこういう事を言う。まずは食事だ。固いパンと干し肉だけじゃ疲れが取れにくくなる。野菜を煮て食べよう」

 俺は薪を集め火を起こした。
 アイラが携帯用の鍋に水を入れて干し肉と切った野菜を入れた。
 俺は周りの見回りを兼ねて野草とキノコを探してきて鍋に追加して貰った。
 アイラが塩と香辛料を追加して味を調える。

「作ってみたけど、どうかな?」

 鍋の蓋を皿として使い、1つしかないお玉をスプーンとして2人で使う。

「うまい」
「よかった」

 スープと一緒に軽く温めた大きめのパンを2人で分け合って食べる。
 俺はアイラに毛布を掛けた。

「ありがとう」
「どういたしまして、焚火は落ち着くよな」
「幻想的な夜は2人が1つになるにはとてもいいね」

 チンカウバインのせいでいい雰囲気がぶち壊しだ。

「チンカウバイン、人は雰囲気も大事にするんだ。俺の中に入っていてくれ」
「応援してるよ」

 そう言ってチンカウバインは俺の中に入った。
 風魔法で探知用の空間を作り俺とアイラは身を寄せ合った。

 チンカウバインが頭の中で騒いでいたが、今日は疲れているのだ。

 2人でそのまま眠った。
 
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