上 下
6 / 43

第6話

しおりを挟む
 朝起きてステータスを見る。




 フィール・バイブレーション
 体力レベル  30(+18)
 魔力レベル  20(+7)
 速力レベル  18(+8)
 生産レベル  10
 知力レベル   100(+23)
 魅力レベル   150(+27)
 スキル
『☆秀才』『☆風魔法の才能』『☆イケメン』『☆妖精契約・チンカウバイン』『剣術:下級』『炎魔法:下級』『水・氷魔法:下級』『風魔法:【下級→中級】』『土魔法:下級』『聖魔法:下級』『闇魔法:下級』『生産魔法:下級』
 内政力
 爵位:男爵家の息子
 兵力レベル:無し
 収入レベル:無し
 領地レベル:無し


 ゲーム序盤の能力値は良く伸びる。
 ダッシュ・筋トレ・恋愛相談によって体力・魔力・速力が伸びた。
 更にチンカウバインの意識を共有する事で知識が上がった。

 チンカウバインの意識にある美しい動きを実践する事で魅力も増した。
 魅力はどの能力値をあげても上昇するが上げにくい。
 イケメンのスキルは地味に助かる。


 学園初日は死にかけて学園の講義を受けていない。
 食堂は使っていたがクラスメートがいる学園の教室に行くのは今日が初だ。

 教室の前まで歩くだけでみんなが俺を見る。
 チンカウバインが珍しいのだろう。

「緊張しなくていいよ。フィールはもう悪人じゃなからね」
「そうだな」

 ガラガラ。

 俺が教室に入ると全員が俺を見る。

「おはようございます!」

 俺は挨拶をする。
 そう、挨拶は大事だ。

 席に着くと女子生徒が話しかけてきた。

「フィール君、おはよう」
「うん、おはよう」
「今日から恋愛相談を始めるの?」
「そうだね。放課後に懺悔室で始めるよ。詳しくは教師から連絡があると思う」

 1人の女子生徒が俺に話しかけた事で皆が集まって来る。

「フィール君はもう恋愛マスターなの?」
「え?俺、僕は彼女が出来た事はないよ」
「「えええええええ!」」

「絶対にモテるのに」

 チンカウバインが飛び上がった。

「君はそこにいる子と相性が」

 俺はチンカウバインを掴む。

「やめろ!円卓会議でやらかしたばかりだろ!」
「私は愛を届けているだけだよ」
「……俺の中に憑依しててくれ。恋愛相談は懺悔室でする。俺の魔力をたくさん使っていいから!」
「約束だよ」

 チンカウバインが俺にキスをして俺の中に入ると歓声が上がる。

「ふう、すまなかったね」
「みんなに気を使いすぎだよ?普通に話してもいいのに」
「そうかもな。うん、これからは」

 ガラガラガラ!

「席に着きなさい!早く!」

 女性教師が入って来ると生徒が慌てて席に着いた。
 学園は問題無くやって行けそうだ。
 俺は教師の連絡を聞きながら安堵した。



「……連絡は以上です。所でフィール君」
「はい?なんでしょう?」
「あなたは入試の成績が良かったですね?学科が優秀な生徒には単位免除の試験を受ける権利があります。受けませんか?」

「え、と、入学初日は休んで、今日は授業を受けずに試験ですが、その、大丈夫なんでしょうか?」
「問題ありません。理解している授業を受けさせる事も無駄でしょう?」
「受けます」

「いいでしょう。それと、フィール君は自己紹介がまだでしたね。あなたが何になりたいのか?そして何を成したいのか。聞かせてください」

 全員が俺に注目する。

「今ですか?俺だけ?」
「ええ、どうぞ。自分の話し方で、ありのままをお願いします」

 やりずれえ!
 プレッシャーが凄い。

「僕は、」

 自分話し方で、飾らず、か

「俺は、性格の悪い人間でした。優しくて怒らない親の愛に甘えて、迷惑をかけて来ました」

 これはフィールの成り立ちだ。
 過去は消す事は出来ないし人のせいにはできない。
 俺がやった事じゃないなんて言い訳は通用しないのだ。

「誰かを助けても、痛い目に合う、そう思っていました」

 これは日本にいた頃の俺の想い。
 人間関係は乾いていて、よく責任を押し付けられていた。
 人を助ければ次から当たり前のように助けを強要される。


「でも、この学園に来て自分の悪さに気づきました。親の愛に気づきました。俺は、今まで楽をしようと思っていました。だから俺には力がありません。でも、この心の熱が冷めるまでは!全力で訓練を行います!何が出来るか、何をしたいかはその後に決めます!以上です!」

 教師が涙を流す。

「いい、自己紹介でした。感動しました」

 周りを見渡すと好意的な視線が多かったが、馬鹿にするような視線も一部あった。
 口だけならば何とでも言える。
 悪いやつに限って自分の失敗をごまかす能力が高かったりする。
 日本でそれを何度も見て、何度も被害を受けてきた。

 ますますやる気に火が着いた。
 この世界では、
 実力の無い者=努力出来ない者でもある。

 特にこの場は学園という学べる場所が与えられている。
 ここまでお膳立てされて出来ませんでしたはただの言い訳だ。

 日本と違って仕事をやればやるほど押し付けられるような事もない。
 この世界は頑張れば責任だけではなく、恩恵も同時に与えられる。
 まずは訓練、の前に試験だ!
 俺は先生に連れられて試験場所に向かった。



 ◇



 俺は試験を受け、すぐに採点された。

「まる、まる……優秀ですね。すべての学科を免除します」

 おし!おし!
 これで訓練に集中できる。

 放課後は毎日恋愛相談を受けた。
 学科を免除された俺は毎日学園を走った。
 毎日筋トレを行った。
 チンカウバインは俺の訓練中、懺悔室を使って恋占いをしている。

 やればやるほど力が増していく。
 能力値が上がっていくのが気持ちいい。

 日本にいた頃の俺は若いのに体の調子が悪く、老人のような気分だった。
 だが今の俺は心が若返ったように気分も変わっている。
 話す人は善人が多いし、時間がゆっくり流れているような心地よさがあった。



 フィールの訓練を生徒が眺める。
 今フィールは学園内をダッシュしていた。 

「フィール君って、かっこいいよね」
「また速くなってるよ」
「本当に頑張っているんだね」

 女子生徒の話を聞いていた男子生徒が会話に割り込む。

「ふん!どうせ頑張っている所を見せているだけだ!あいつはただの口だけ野郎だよ!」
「そ、そんな事ないよ。学科は免除されてるでしょ?勉強を頑張ったからだよ」

「勉強はな!それにあいつは秀才のスキルを持っている!秀才なのにあんなに弱いのはおかしい!口だけだからだ!」
「そこ!静かにしなさい!」

 教師が男子生徒を注意するがそれでも話をやめない。

「フィールの奴が授業中に走り回っていて目障りなんだよ!努力アピールがうざすぎるぜ」
「あのルートは学園で認められています。文句があるならフィール君のように学科を免除されてから言いなさい」

「ぐ!勉強は認めるよ!!だがあいつは弱い!今まで得意のお勉強ばかりで訓練を怠ってきたからだ!その証拠にあいつは学園登校初日で決闘を挑んで死にかけている!!」
「それを認めて努力しているのでしょう」
「いいや!あいつは顔がいいからって俺達に見せつけているだけだ!」

「分かりました!フィール君と実戦戦闘の訓練をしなさい!今は授業を続けます!」

「おお!楽しそうだ!」
「私達も見学したいです!」
「いいでしょう、放課後に開催します!」

 男子生徒は口角を釣り上げて笑った。
 そしてこの事件は瞬く間に学園中に知れ渡る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

処理中です...