上 下
81 / 85

ベアー家

しおりを挟む
 ハルトは当主を引きずりながら叫ぶ。

「動いた奴から倒す!俺の言う事を守れ!」

「ひ!ひいい!」
 逃げ出そうとした熊族をハルトが斬り倒す。
 この行動により逆らったらまずいと分からせる狙いがあった。

「もう一度言う!動いた奴から倒す!俺の言う事を守れ!武器を地面にゆっくりと置け!」
 皆が従う。

「両手を頭の後ろにおけ!」
「手はそのままであお向けに寝ろ!俺が気絶させる!命の保証はする!」

 ハルトは熊族の腹を殴り気絶させていく。

「ギルドを取り戻した!エステルと他の者はここを守ってくれ!」
 ハルトは外に出ていく。
 熊族当主を引きずって。

 倒された当主を見た熊族は戦意を失い逃走を開始した。

 1人逃げ出すと10人、100人とどんどん逃走者は増えていった。
 こうすることで犠牲を最小限に抑え熊族を殺さず助ける作戦をとった。

 ロックは素早く兵に指示を出し、町の安全を確認した後、逃げていった熊族に追撃を仕掛ける準備を始めた。

「追撃して倒すのか?俺は脅すだけで済まそうとしたんだが?」
 熊族の性格には問題があるのは分かっている。
 だが殺すほどかどうかは分からない。

「ハルト、今王都は余裕が無い状態だ。西はレッド家、東はブルー家、南はベアー家3方向から足を引っ張られ続けて今の衰退を招いた。今南だけでも潰しておかねば今王家が助かってもまた民が苦しむ。」

 確かに他の獣人族は苦しんできた。
 だが、

「今王都も危ないんだろ?ブルー領の兵が攻めてくるって話だ。そっちに行くのが良いんじゃないか?」

「確かに王都が危なくなるが、ベアー家を潰せるチャンスは今しかない。今を逃せば機を失う!」

 分からない。
 王都に行くのが良いか、ベアー家を潰すべきか、・・・・・。

「ロックの考えは分かった。他の獣人族の意見を聞いてくる」

「言っておくがベアー家を倒せるなら今倒しておきたいという考えが多数派だ」

「それでも自分で聞いてくる」



 俺はニャムの元へ向かった。
「ニャム、ベアー家について聞きたい。ロックはベアー家を皆倒そうとしているがどう思う?」

「私もベアー家は好きじゃないにゃあ。当主が変わってもきっと同じことを繰り返すにゃあ」
 ニャムがここまで言うなら熊族はよっぽどひどいのだろう。
 だが、一人だけの話じゃ分からない。

 俺は色んな獣人族に意見を聞いて回った。

「熊族は自分に甘くて他人に厳しい人が多数だぴょん」

「僕も今殺した方が良いと思う」

「俺はロックについて行く!」

「熊族は倒しておくべきだよ」

 何人にも話を聞いて回ったが、熊族の悪い話が多すぎる。
 テイカーの集まりのようだ。

 決めたぞ。







 俺はロックについて行く。

 ただ行く前にリコを見てこよう。

 リコの様子を見に行くと、まだ恐怖で震えていた。

 両腕で自身を抱き丸まり、エステルとメイが落ち着かせている。
 きゅうはリコに引っ付き離れない。
 きゅうもリコを慰めようとしているのだろう。

 リコに近づくと、リコは俺の服を両手で掴み離さない。

「リコ、落ち着いて聞いてくれ、今から出かけてくるが、帰って来る頃には怖い者はいなくなっている。だからここでエステルたちと一緒に居てくれ」

 リコの手の力が弱くなる。
 俺はリコの手を引き離し、ロックとともに行く。

 リコが何をされたかは分からない。

 だが、

 リコの反応を見て決めた!

 俺は熊族を倒す!



 ロックの部隊と共に俺は熊族の追跡を開始した。

 熊族は先行して南に逃げたが、数時間準備をし、ビックピヨに騎乗した状態のロック部隊に追いつかれ、熊族はヘロヘロになりながら走る。
 交代で休憩を取りながら熊族を追い込み、疲弊させた。


「来るな!お前らに人の心は無いのか!」

「助けろよお!」

「お前ら人間じゃねえ!」

 熊族は俺達を罵倒してくる。
 なるほど、テイカーにそっくりだ。
 お前らはホワイト領に襲撃を仕掛けて人を殺してるんだぞ。
 自分に甘すぎる!


「なあ、考えがある。ダークスフィアの大きさを見てきたい。小さめなら叩き割って熊族にぶつける」

「・・・・・分かった。合図があれば部隊を撤退させる。俺は奴らを南に誘導する」

「ああ、頼んだぞ!」
 こうして俺はダークスフィアへと向かった。




「少し小さいが大きすぎるよりはいいか!」
 俺は躊躇なくダークスフィアを斬り壊し、魔物を引き連れて熊族の元へと向かう。

「ロック!撤退しろ!」

「総員撤退いいいいい!」
 ロックの部隊は素早く撤退する。

 ダークスフィアを破壊した魔物はきっちり熊族になすりつけた。

 これ以上走れなくなった熊族が他の熊族の肩を掴み我先に前に進もうとする。
 肩を掴まれた熊族は掴んだ腕を武器で斬り落とし、腹に蹴りをいれて置き去りにする。

 逃げ遅れた熊族が魔物に囲まれあっという間に殺される。

 強い熊族が弱い熊族を斬り、魔物のターゲットを押し付けていく。

 更に南に残った熊族のキャンプに走り仲間を犠牲に逃げ延びようとした。

 その場にハルトはおらず、すでに北へと向かっていた。





 俺は走ってロックに追いつく。

「ロック、熊族を全部倒したか見てはいないが、多分熊族は助からない。皆で足を引っ張りながら逃げていた。協力すれば魔物を全滅させることも出来たと思うが、そうじゃなかった」

「そうか」





 この出来事があった頃、ブルー領の王都襲撃が行われていた。




しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸
ファンタジー
高等魔術学園に入学した主人公の新田伸。彼は大人しく高校生活を送りたいのに、友人たちが問題を持ち込んでくる。嫌々ながら巻き込まれつつ、彼は徹底的に目立たないようにやり過ごそうとする。例え相手が高校最強と呼ばれる人間だろうと、やり過ごす自信が彼にはあった。何故なら、彼こそが世界最強の魔術使いなのだから……。最強の魔術使いの高校生が、平穏な学園生活のために実力を隠しながら、迫り来る問題を解決していく物語。 ※主人公はできる限り本気を出さず、ずっと実力を誤魔化し続けます ※小説家になろう、ノベルアップ+、ノベルバ、カクヨムにも投稿しています。

かの世界この世界

武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
人生のミス、ちょっとしたミスや、とんでもないミス、でも、人類全体、あるいは、地球的規模で見ると、どうでもいい些細な事。それを修正しようとすると異世界にぶっ飛んで、宇宙的規模で世界をひっくり返すことになるかもしれない。

ゴブリンしか召喚出来なくても最強になる方法 ~無能とののしられて追放された宮廷召喚士、ボクっ娘王女と二人きりの冒険者パーティーで無双する~

石矢天
ファンタジー
「ラキス・トライク。貴様は今日限りでクビだ」 「ゴブリンしか召喚できない無能」 「平民あがりのクズ」  強大で希少なモンスターを召喚できるエリート貴族が集まる宮廷召喚士の中で、ゴブリンしか召喚できない平民出身のラキスはついに宮廷をクビになる。  ラキスはクビになったことは気にしていない。  宮廷で働けば楽な暮らしが出来ると聞いていたのに、政治だ派閥だといつも騒がしいばかりだったから良い機会だ。  だが無能だとかクズだとか言われたことは根に持っていた。  自分をクビにした宮廷召喚士長の企みを邪魔しようと思ったら、なぜか国の第二王女を暗殺計画から救ってしまった。 「ボクを助けた責任を取って」 「いくら払える?」 「……ではらう」 「なに?」 「対価はボクのカラダで払うって言ったんだ!!」  ただ楽な生活をして生きていたいラキスは、本人が望まないままボクっ娘王女と二人きりの冒険者パーティで無双し、なぜか国まで救ってしまうことになる。 本作品は三人称一元視点です。 「なろうRawi」でタイトルとあらすじを磨いてみました。 タイトル:S スコア9156 あらすじ:S スコア9175

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【完結】誰でも持っているはずの7つのスキルの内の1つ、運び屋スキルしか持っていなかったけど、最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
誰でも持っているはずの7つのスキルの内1つ【運び屋】スキルしか持っていなかったトリスが転移魔法スキルを覚え『運び屋トリス』となり、その後『青の錬金術師』として目覚め、最強の冒険者として語り継がれるようになる物語

処理中です...