上 下
38 / 85

キュキュクラブ不在のホワイト領

しおりを挟む
「リコ!やっと帰ってきた!」
 受付嬢がリコに抱き着く。

「ご迷惑をおかけしましたわ。」

「良いのよ。今日はゆっくり休んでね。」

「皆さんはゆっくり休みましょう。わたくしは明日の朝までに資料をまとめますわ。」

「私も手伝いましょう。」

「カイ、それではお願いしますわ。」

 朝になり、目を覚ますと、リコは机で眠っていた。
 肩には毛布が掛けられる。
 は!今日までに資料を作らねば!

「おはようございます。コーヒーを淹れてまいります。」

「カイ、ありがとうございます。わたくしは会議の時間までに資料をまとめますわ。」

「資料でしたら作ってあります。後はリコ様の確認をお願いします。」

「助かりますわ。」
 リコがほっとした表情を浮かべる。
 ゆっくりとコーヒーを啜りながら資料のチェックをする。
「うん、素晴らしい出来ですわ。さすがカイ。」

「早速皆を集めます。」

「本当に助かりますわ。」

 ギルド員・騎士ジーク・ゲン・カイを集めてすぐに会議が始まる。

「ホワイト領の問題ですが、家が足りない・無職者が多い・食料が足りない、この3つですわ。」

 ゲンさんが嬉しそうに腕を鳴らす。
「家なら俺がたくさん作るぜ!それと大工と木材加工スキル持ちは俺に預けな!育ててやるぜ!」

「では、すぐにでもお願いしますわ。」
 ゲンはやることが決まればじっとしていられない。
 リコは皆の性格を見抜き、伸ばすように指示を出す。

 ゲンは嬉しそうに仕事へと向かう。

「無職者の問題ですが、私が資料を作成してもよろしいですか?」
 カイが立候補する。

「お願いしますわ。ですが、この会議が終わったら、いったん休息を取って頂きたいのですわ。疲れが顔に出ております。皆からも休ませるよう進言がありましたわ。」

「かしこまりました。」

「食料問題ですが、騎士ジークに手伝いをお願いしたいのですわ。」
 農地開拓はすぐに結果が出るわけではない。今すぐ出来ることは魔物の肉の供給量を増やすことなのだ。

「俺の剣レベルは6だ。剣の訓練も、魔物狩りも出来る。」

「ジークにはダンジョン合宿で剣の教育をしつつ皆を守り、レベル上げの手伝いをして欲しいのですわ。」

「了解した。」

 こうして大きな3つの問題すべてに対策を取った。
 ここにハルトが居ればもっと楽だった。
 そう思いつつ仕事をする。

 リコは前回の治安悪化を反省し、鑑定スキルで街のみんなをチェックして回る。
 鑑定スキルで大まかな性格を知ることが出来るのだ。
 これにより事前に悪人をあぶりだすことが出来た。

 ゲンがホワイト領の建設を取り仕切るようになったことで、大工の教育速度は飛躍的に向上した。

 カイも優秀で、計画の作成から人材の候補まで揃えてくる。
 生き生きと仕事をし、うまく行かない部分が出ればすぐに修正案を出してきた。
 すでにリコの右腕として周りからも一目置かれる存在となる。
 更にリコが人材の鑑定結果をまとめ、カイが周りの人間の性格や領の特徴を把握するとカイの計画作成の質はさらに上がっていく。

 ブラック領は逸材を手放したのだ。

 ジークは最初だけは怖がられたものの、粘り強く何度も反復して訓練を繰り返し、何度同じことを聞いても丁寧に答えるまじめさが伝わり、今では護衛としても剣の先生としても優秀な結果を見せ始めた。

 やっと難民受け入れの目途が立って来た。

 しかし、まとまりつつあるホワイト領にシーフ家の魔の手が忍び寄る。



しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

処理中です...