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テイカーの失敗続き

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 テイカーはハルトを追放した後機嫌が良くなった。
 バッドスキルの無能が俺とパーティーを組んでいる事自体間違いだった。
 後はエステルを追放し、優秀な貴族だけのパーティーを作る!
 これからすべてがうまく行く。
 テイカーは口角を釣り上げた。

 テイカーは10才で父親を亡くし、その頃からテイカーを止めることが出来る者が居なくなった。
 元々の性格と合わせ、さらに止める者が居なくなったテイカーは皆に避けられる。

 テイカーの父は立派な男で、テイカーに思いやりを持ってほしいという考えから、バッドスキル持ちの平民、ハルトとエステルを同じパーティーとして組ませた。
 だが、表では仮面を被り、裏ではハルトに嫌がらせを続ける。
 特に父を亡くしてからのハルトへの行いは常軌を逸していた。

 テイカーは4つ星の大貴族だ。
 貴族は星を1~5まで持ち、星の多い貴族が格上だ。

 テイカー・ブラック 4つ星貴族
 クリム・ポーション 2つ星貴族
 リン・ハウス    1つ星貴族
 リコ・ホワイト   2つ星貴族となる。



 さらにテイカーは戦闘能力も高い。

 テイカー・ブラック 男
 レベル 9
 職業 中級剣士

 ノーマルスキル
 経験値上昇    レベル7
 ライフスラッシュ レベル5

 職業スキル
 剣        レベル4
 スラッシュ    レベル3

 貴族の家に生まれたことで、十分な教育を受けられ、平民ではありえないほどの力を持っていた。
 どんなに才能が無くても貴族の家に生まれ十分な教育を受けることが出来れば平民よりも強くなれる。
 だが、テイカーは才能にも恵まれた。
 才能は生まれた時に授かる職業とノーマルスキルによって決まる。
 将来は剣聖を期待される才能を持つ。
 職業とノーマルスキルにも恵まれたことで、テイカーの性格はさらに歪んだ。

 テイカーは自分に甘く他人に厳しく、人を利用することしか考えない。
 だが大貴族で才能があり、戦闘能力は高いという厄介な存在だ。

 学校の学科が終わるとダンジョンへと向かう為テイカーはパーティーを集めた。

「これからダンジョンに向かう。足手まといのハルトが居ない。前より楽になるだろうな。」

「ハルトが居ねーんだから楽になるわよ!」
 クリムがゲラゲラと笑う。

「あいつが居なくなって楽になるぜ。」
 リンは口角を釣り上げる。

 エステルだけが黙って俯く。

 ダンジョンの中に入り、2階、3階と順調に進んでいく。

「あれ?今日は調子がわりーわよ。いつもより疲れるわ!」
「俺も今日は疲れがとれないぜ!」
 クリムとリンが息を切らす。

「お前ら!早くしろよ!」
 テイカーがせかす。

「・・・きっとハルトの料理を食べていないからだよ。」

 エステルの言葉にテイカーが反応する。

 無言でエステルのみぞおちを蹴り上げる。

「ち、馬鹿いってんじゃねー!これだから無能の平民は嫌なんだよ!」

「げほ、げほ、ごめんなさい。」

「おいエステル!何座ってんだ!サボってねーで行くぞ!」



 4階

 キックラビットの群れに囲まれる。

「13体!数が多いぜ!」

「は、俺が倒す!ライフスラッシュ!」
 テイカーの切り札、ライフスラッシュ。
 通常は生命力を消費して斬撃を飛ばすが、テイカーは生命力を削らず攻撃することが出来る。
 このことによってテイカーは楽をしてレベルを上げてきた。
 ただし、何度も使うと回復力が落ちるため、無限に使えるわけではない。

「ははは!余裕だな!ライフスラッシュ!ライフスラッシュ!」

「テイカー、スゲーわよ!」

「ふ、この調子でどんどん行くぞ!」

 この後の戦闘でテイカーに異変が起きた。

「ライフスラッシュ!ライフスラッシュ!ち、腕に傷を負ったか。」
 テイカーは腕をなめ、先に進む。

「テイカー。腕の血が止まってねーぜ!」

「おかしい、俺も調子が悪いのか?」
 テイカーはポーションを飲み傷を癒す。

「今日はみんな疲れてるのよ。帰りましょう。」

 エステルの言葉にテイカーも納得する。
「そうか、お、俺は疲れてないが、みんなは疲れているな。今日は帰るぞ。」

「人が減って疲れがたまるぜ。」

 リンの言葉にテイカーはようやくハルトの存在を少し認める。
「ハルトは役立たずだったが、魔物のターゲット取りだけは出来ていたのかもな。」

「でもあいつの無能に変わりはねーわよ!」

 エステルは気づいていた。
 ハルトが居たことによる恩恵を。

 料理スキルによる回復ブースト。
 ストレージスキルによる荷物運び。
 感知スキルによる奇襲の防止。
 魔物の注意を引き付けることで皆が挟み撃ちにならないよう立ち回っていた事。

 テイカーのライフスラッシュは生命力ではなく、回復力を一時的に低下させる。
 料理スキルの回復ブーストの効果でテイカーはライフスラッシュを連発出来ていたのだ。

 その後何度も何度もダンジョンに挑戦するが、ハルトがいた頃のように奥まで進めなくなっていた。

 さらに、テイカーはポーションを大量に飲むようになった。
 ライフスラッシュで回復力を失ったテイカーは大量のポーションを必要とした。
 ポーションはクリムの領地から送られてくるが、ポーションの大量消費にクリムの領地は利益を圧迫される。

 さらに、ストレージスキルを持たないため、魔物の肉を回収できず、魔物の魔石を回収するだけで終わり、パーティーの利益を減らした。

 エステルは大きなバックパックを持たされ、体力を消耗しながらみんなについていく。
 戦闘が始まるころには消耗していた。

 テイカーはパーティーを集め、パーティーの増員を宣言する。
「後二人パーティーに追加する。」

「わかったぜ。」
「それしかねーわね。」
「それが良いよ。」

 だが、パーティーの増員はうまく行かなかった。
 テイカー・クリム・リンの評判が悪すぎるのだ。

「おい、お前!俺のパーティーに入れ!」

「ぼ、僕は弱すぎるからテイカー君についていけないよ。」

「良いから入れ!殺すぞ!」

「ひ、ひい!わ、分かったよ。」

「どうだ、うまく行っただろ。」
 テイカーは得意げだった。

 だが次の日。

「あいつは休みか?」

 テイカーは近くにいる生徒の胸倉を掴んで質問する。
「ひいい!お、親の仕事の都合で学校をやめたよ。」

 こうして何故かテイカーが誘った生徒は学校を去っていく。

 50人以上の人間がテイカーに誘われて学園を去った。

 テイカーは先生を呼びつけ、パーティーを集めさせた。

 そこで一人なんとか見つけたのがメイ。

「メイもエステルと同じでバッドスキル持ちですが大丈夫ですか?」
 先生はおびえた様子でテイカーの様子を伺う。

「ち、しょうがない。あいつで勘弁してやる。」
 先生は、バッドスキル持ちで、親の居ないメイに白羽の矢を立てた。
 簡単に学校をやめることが出来ず、逆らうことが出来ない弱者。
 パーティーを集めるには弱みに付け込むしかなかった。

 メイがパーティーに挨拶をする。

「メイです。職業はメイドです。よろしくお願いします。」
 茶髪のツインテールで、顔立ちの整った美少女だ。
 制服の上からエプロンを着用している。

「これで人は揃った。ダンジョンに行くぞ!」

 テイカーはみんなを引き連れ、自信満々でダンジョンに向かい歩き出す。

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