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覚醒の始まり
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俺は朝早く目を覚ましすぐにダンジョンへと向かう。
居ても立っても居られない。
俺は歩きながらステータスをチェックする。
ハルト 男
レベル 5
職業 中級料理人
ノーマルスキル
経験値低下 レベル9
経験値低下 レベル9
職業スキル
包丁 レベル3
料理 レベル6
ストレージ レベル2
感知 レベル2
俺のレベルは5でテイカーはレベル8を超えている。
この時点で俺はテイカーより弱い。
さらに生まれた時に与えられる職業とノーマルスキルにも恵まれなかった。
俺は非戦闘職の料理人だ。
その為戦闘に役立つスキルは包丁のみ。
戦闘職であるテイカーは剣士の職業を持ち、職業スキルだけで剣・スラッシュと2つのスキルを持つ。
さらに俺はノーマルスキル、生まれながらに職業とは関係なく与えられるスキルが経験値低下というバッドスキルを授かった。
バッドスキルとはマイナス効果を及ぼすスキルの事だ。
効果はステータスレベルとスキルの取得経験値を50%に減少する。
しかも2つの経験値低下スキルを持っている為、50%のさらに半分、25%の経験値しか取得できない。
対してテイカーのノーマルスキルは経験値アップとライフスラッシュ。
俺とは逆に経験値アップの効果でステータスレベルとスキルの取得経験値をアップし、さらにライフスラッシュは魔力を消費せず放てる高火力を誇る強スキルだ。
俺は才能が無く、テイカーは将来剣聖と期待される。
俺が唯一優れていると言えるのは料理スキルのレベルだけだ。
料理スキルはレベル6になると食べた者の自然治癒力を高め、回復力を一定時間アップさせる効果があるが、経験値低下のスキルを持つ俺の言う事を信じてもらえなかった。
母の料理の教育能力の高さと俺の努力で頑張ってレベルを上げてきたが、話すら聞いてもらえなかったのだ。
料理スキルの回復力アップとストレージによるスキルを使い頑張って役に立とうとはしてきたが、みんなは俺の事を邪魔者としか思っていない。
俺は深呼吸する。
ステータスレベルを上げるには魔物を倒せば良い。
スキルレベルを上げるにはそのスキルを教わるか使い続ければ良い。
人を助けたければ、強くなれ!それが一番の近道だ。
父親の言葉を思い出し俺は笑う。
「気を取り直して魔物狩りだ!」
ダンジョンに入ると4体のキックラビットが俺に突撃してくる。
腰に装備した牛刀とペティナイフの内、ペティナイフを素早く抜き、キックラビットの蹴りに合わせて刃を突き出す。
素早く包丁を引き、残り3体のキックラビットも危なげなく仕留める。
「いける!問題なく倒せる!」
俺はうさぎ狩りを続けた。
毎日毎日うさぎを狩り、包丁、テント、毛布を新しく買い揃えた。
テイカーたちに文句を言われることも責任を押し付けられることも無い。
俺は充実した生活を送っていた。
魔物狩りを始めててしばらく経過。
俺はキックラビットを一撃で倒す。
頭の中に声が響く。
『経験値低下スキルがレベル9から10に上がりました。』
『経験値低下スキルがレベル9から10に上がりました。』
『スキルの反転を実行します。』
「スキル反転!」
バッドスキルは神に与えられた試練と言われている。
そしてバッドスキルのレベル10、すなわち神の試練をクリアした者にはギフトが与えられる。・・・と言われている。
しかも人によりそのギフトは様々。
俺は自身の内面に集中する。
『経験値アップ・超、レベル10を取得しました。』
俺はすぐにノーマルスキルを確認する。
「取得経験値約500%!」
今まで25%に減少していた取得経験値が500%にアップした。
「今までより20倍多く取得経験値を得られるのか?」
面白くなってきた!
俺はダンジョンの奥へと進んだ。
◇
ギルド
「最近ハルトを見かけませんわ。無事にやっていますでしょうか?」
リコが隣の受付嬢に話を振る。
「無事みたいよ。なんでもダンジョンでキックラビットを狩ってるんだって。」
そこに冒険者が話に加わる。
「ハルトなら無事だぜ。楽しそうにキックラビットを狩ってた。本当に楽しそうだったな。」
「そうですか。それなら良いのですが、子供が一人でダンジョンに寝泊まりするのは感心できませんわ。」
「ははは!お前も同い年でギルドの受付と領の管理ををやってるだろ。自分だけ大人みたいなこと言うなよ!」
リコの頭をわしゃわしゃと撫でる。
リコのほっぺがぷくっと膨らむ。
「お、噂をすれば帰ってきたようだぜ。」
リコはハルトを見て驚愕する。
「成長5倍!」
ハルトがリコの所まで歩み寄る。
「ん?何か言ったか?」
「い、いえ、何でもありませんわ。」
「キックラビットを納品したい。」
「か、かしこまりましたわ。こちらへどうぞ。」
ギルド裏の解体室に案内されると、ハルトはストレージからキックラビットを取り出す。
山のようにキックラビットが積まれ、ギルド職員全員がハルトを見る。
あまりにも数が多すぎるのだ。
「俺は買い出しと食事をしてくる。しばらくしたら戻ってくる。」
ハルトがすっと部屋から出ていく。
数秒の沈黙の後、
「な、何なんです!?この数は多すぎますわ!」
リコが大声を上げる。
「もう日が暮れる。今日この数の解体は無理だぞ。」
解体が終わらないとハルトに払うお金の計算が出来ないのだ。
「すぐにハルトと交渉してまいります。」
リコはすぐに料金の後払いのお願いに向かう。
「というわけで後払いをお願いしたいのですわ。」
「それは大丈夫だけど、こっちからもお願いがある。助けてもらったお礼にみんなにお金を渡して欲しい。」
「発見した兵士の方に配る形でよろしいでしょうか?」
「それもあるけど、ギルドのみんなにも払いたい。皆に10万ゴールドずつ払えればいいんだけど、あの魔物で足りるかな?」
「足りるとは思うのですが、一人10万ゴールドは多すぎると思いますわ。」
10万ゴールドあれば、贅沢さえしなければ一か月は暮らせる。
どう考えても高すぎるお礼なのだ。
「うーん、それでも払いたい。一旦払って嫌なら孤児院や領に寄付してもらえれば大丈夫だ。」
「かしこまりました。」
リコは礼儀正しくスカートをつまんで礼をした。
その後ハルトはまたすぐにダンジョンへと出かけて行った。
その後ハルトの『10万ゴールドの恩返し』は評判となる。
ただし、解体室にキックラビットの山を出した『キックラビットの山事件』は違う意味で噂の種となった。
◇
リコは学校から帰るとすぐにギルドへと向かう。
ギルドに入ると冒険者の男と受付嬢が話し込んでいる。
「最近ダンジョンの低階層に魔物が居なくなった。」
「うーん、原因が分からないわ。」
リコはふとハルトの顔を思い浮かべた。
「まさかハルトが狩りつくしているのでは!?」
リコは鑑定のスキルを持っており、ハルトのステータスを把握していたのだ。
「そういえばハルト君を見てないよね。」
「ハルトならあり得るな。あいつは見かけるといつも魔物を狩ってる。」
「ハルトを連れ戻しませんと!今すぐに!このままでは『キックラビットの山事件』を超える被害を出してしまいますわ。」
慢性的に資金不足なホワイト領はハルトの持って来たキックラビットを早く資金に変えるため、数日間に及ぶ4時間残業を強いられた。
もちろん、領地経営にはプラスに働き、職員の給料もその時は上昇したのだが、ピリピリとした緊張感が職場を支配し、ギルドの雰囲気はかなり悪くなった。
リコの言葉に受付嬢の顔が青ざめる。
「そうね!早く呼び戻さないと大変なことになるわ。」
「おいおい。大げさじゃねーか?」
「あなたは分かっていないのです!」
「知らないからそういう事が言えるのよ!」
「お、おう、そうか。」
冒険者は二人の怒鳴り声におとなしくなる。
リコの素早い対応により、ハルトの連れ戻し依頼は素早く遂行され、ハルトはダンジョンから連れ戻される。
◇
ギルドでは、ハルトがダンジョンから出た瞬間にハルトの帰還が伝えられる。
「おい!ハルトが戻ってきたぞ!」
ハルトがギルドに入ると、受付嬢とリコがハルトの腕に抱き着く。
素早くギルドの裏の解体場へと連行される。
ギルド員と野次馬の冒険者がずらりと並んぶ。
小さい領の為、ハルトの『キックラビットの山事件』はすぐにホワイト領全員に広まった為だ。
リコが口を開いた。
「魔物を出してください!全部出してください!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!何でみんな集まってるんだ!?後怒ることないよな?」
「ハルト!たくさんストレージに入っておりますね?いますぐお出しください!」
「これ恐喝か?」
「そのようなことはございません。報酬は後でお支払いいたします。早くお出ししてください。」
ハルトは無言でストレージのスキルを発動させる。
足の踏み場が無いほどの魔物の山で解体場は埋め尽くされた。
「「おおおお!」」
野次馬から歓声が上がる。
「ハルト、これで全部でしょうか?まだあるのではないですか?」
まるで尋問の取り調べのような口調でリコが問い詰める。
「あるけど置ききれないだろ?」
「ストレージスキルをお願いいたします。」
リコの合図とともに3人のギルド員がストレージのスキルで魔物の肉を回収する。
「すべての素材を出すのです!」
こうしてハルトのストレージから魔物が吐き出され、リコと受付嬢に連行された後、ギルド2階の一室で厳重注意を受けた。
一か月に一回は戻ってきて魔物を受け渡すこと。
1階から5階までの魔物を狩りすぎないこと。
この2つを何度も言い聞かされる。
◇
【ダンジョン】
「ふう、やはりダンジョンの移動は疲れますわね。」
「リコ、もう少しだぞ。」
冒険者に案内され、リコはダンジョンの奥へと向かう。
「リコ、あれだ!」
ハルトは笑顔でアサルトボアの群れと対峙する。
牛刀を右手に構え、突撃するアサルトボアの眉間に刃を突き立てる。
アサルトボアは力を失い横に倒れる。
「一撃で倒したのか!」
「ハルトって俺より強くね?」
リコは確信した。
あの楽しそうな表情。
成長率5倍の恩恵。
ハルトはもっと強くなる。
ハルト 男
レベル 15
職業 中級料理人
ノーマルスキル
経験値上・超レベル10
職業スキル
包丁 レベル5
料理 レベル6
ストレージ レベル4
感知 レベル3
私と同い年でレベル15。
恐らくグレー王国全体を探しても同い年でハルトと同じレベルに到達した者は居ない。
戦闘職の場合レベル5の中級職で兵士の資格あり、レベル15以上の中級職で隊長クラスと言われている。
職業のランクもすでに上級に爪がかかっている。あと少しで上級職。
職業は初級・中級・上級・特級と職業スキルのレベルをアップさせることで上昇していく。
ランクアップすることで新たな職業スキルを得ることが出来る。
ハルトはあと少しで上級料理人になる。
思った通り!
これは!あの憎き魔物を倒せる逸材が現れたのでは!?
リコは満面の笑顔でハルトの元へと歩き出す。
居ても立っても居られない。
俺は歩きながらステータスをチェックする。
ハルト 男
レベル 5
職業 中級料理人
ノーマルスキル
経験値低下 レベル9
経験値低下 レベル9
職業スキル
包丁 レベル3
料理 レベル6
ストレージ レベル2
感知 レベル2
俺のレベルは5でテイカーはレベル8を超えている。
この時点で俺はテイカーより弱い。
さらに生まれた時に与えられる職業とノーマルスキルにも恵まれなかった。
俺は非戦闘職の料理人だ。
その為戦闘に役立つスキルは包丁のみ。
戦闘職であるテイカーは剣士の職業を持ち、職業スキルだけで剣・スラッシュと2つのスキルを持つ。
さらに俺はノーマルスキル、生まれながらに職業とは関係なく与えられるスキルが経験値低下というバッドスキルを授かった。
バッドスキルとはマイナス効果を及ぼすスキルの事だ。
効果はステータスレベルとスキルの取得経験値を50%に減少する。
しかも2つの経験値低下スキルを持っている為、50%のさらに半分、25%の経験値しか取得できない。
対してテイカーのノーマルスキルは経験値アップとライフスラッシュ。
俺とは逆に経験値アップの効果でステータスレベルとスキルの取得経験値をアップし、さらにライフスラッシュは魔力を消費せず放てる高火力を誇る強スキルだ。
俺は才能が無く、テイカーは将来剣聖と期待される。
俺が唯一優れていると言えるのは料理スキルのレベルだけだ。
料理スキルはレベル6になると食べた者の自然治癒力を高め、回復力を一定時間アップさせる効果があるが、経験値低下のスキルを持つ俺の言う事を信じてもらえなかった。
母の料理の教育能力の高さと俺の努力で頑張ってレベルを上げてきたが、話すら聞いてもらえなかったのだ。
料理スキルの回復力アップとストレージによるスキルを使い頑張って役に立とうとはしてきたが、みんなは俺の事を邪魔者としか思っていない。
俺は深呼吸する。
ステータスレベルを上げるには魔物を倒せば良い。
スキルレベルを上げるにはそのスキルを教わるか使い続ければ良い。
人を助けたければ、強くなれ!それが一番の近道だ。
父親の言葉を思い出し俺は笑う。
「気を取り直して魔物狩りだ!」
ダンジョンに入ると4体のキックラビットが俺に突撃してくる。
腰に装備した牛刀とペティナイフの内、ペティナイフを素早く抜き、キックラビットの蹴りに合わせて刃を突き出す。
素早く包丁を引き、残り3体のキックラビットも危なげなく仕留める。
「いける!問題なく倒せる!」
俺はうさぎ狩りを続けた。
毎日毎日うさぎを狩り、包丁、テント、毛布を新しく買い揃えた。
テイカーたちに文句を言われることも責任を押し付けられることも無い。
俺は充実した生活を送っていた。
魔物狩りを始めててしばらく経過。
俺はキックラビットを一撃で倒す。
頭の中に声が響く。
『経験値低下スキルがレベル9から10に上がりました。』
『経験値低下スキルがレベル9から10に上がりました。』
『スキルの反転を実行します。』
「スキル反転!」
バッドスキルは神に与えられた試練と言われている。
そしてバッドスキルのレベル10、すなわち神の試練をクリアした者にはギフトが与えられる。・・・と言われている。
しかも人によりそのギフトは様々。
俺は自身の内面に集中する。
『経験値アップ・超、レベル10を取得しました。』
俺はすぐにノーマルスキルを確認する。
「取得経験値約500%!」
今まで25%に減少していた取得経験値が500%にアップした。
「今までより20倍多く取得経験値を得られるのか?」
面白くなってきた!
俺はダンジョンの奥へと進んだ。
◇
ギルド
「最近ハルトを見かけませんわ。無事にやっていますでしょうか?」
リコが隣の受付嬢に話を振る。
「無事みたいよ。なんでもダンジョンでキックラビットを狩ってるんだって。」
そこに冒険者が話に加わる。
「ハルトなら無事だぜ。楽しそうにキックラビットを狩ってた。本当に楽しそうだったな。」
「そうですか。それなら良いのですが、子供が一人でダンジョンに寝泊まりするのは感心できませんわ。」
「ははは!お前も同い年でギルドの受付と領の管理ををやってるだろ。自分だけ大人みたいなこと言うなよ!」
リコの頭をわしゃわしゃと撫でる。
リコのほっぺがぷくっと膨らむ。
「お、噂をすれば帰ってきたようだぜ。」
リコはハルトを見て驚愕する。
「成長5倍!」
ハルトがリコの所まで歩み寄る。
「ん?何か言ったか?」
「い、いえ、何でもありませんわ。」
「キックラビットを納品したい。」
「か、かしこまりましたわ。こちらへどうぞ。」
ギルド裏の解体室に案内されると、ハルトはストレージからキックラビットを取り出す。
山のようにキックラビットが積まれ、ギルド職員全員がハルトを見る。
あまりにも数が多すぎるのだ。
「俺は買い出しと食事をしてくる。しばらくしたら戻ってくる。」
ハルトがすっと部屋から出ていく。
数秒の沈黙の後、
「な、何なんです!?この数は多すぎますわ!」
リコが大声を上げる。
「もう日が暮れる。今日この数の解体は無理だぞ。」
解体が終わらないとハルトに払うお金の計算が出来ないのだ。
「すぐにハルトと交渉してまいります。」
リコはすぐに料金の後払いのお願いに向かう。
「というわけで後払いをお願いしたいのですわ。」
「それは大丈夫だけど、こっちからもお願いがある。助けてもらったお礼にみんなにお金を渡して欲しい。」
「発見した兵士の方に配る形でよろしいでしょうか?」
「それもあるけど、ギルドのみんなにも払いたい。皆に10万ゴールドずつ払えればいいんだけど、あの魔物で足りるかな?」
「足りるとは思うのですが、一人10万ゴールドは多すぎると思いますわ。」
10万ゴールドあれば、贅沢さえしなければ一か月は暮らせる。
どう考えても高すぎるお礼なのだ。
「うーん、それでも払いたい。一旦払って嫌なら孤児院や領に寄付してもらえれば大丈夫だ。」
「かしこまりました。」
リコは礼儀正しくスカートをつまんで礼をした。
その後ハルトはまたすぐにダンジョンへと出かけて行った。
その後ハルトの『10万ゴールドの恩返し』は評判となる。
ただし、解体室にキックラビットの山を出した『キックラビットの山事件』は違う意味で噂の種となった。
◇
リコは学校から帰るとすぐにギルドへと向かう。
ギルドに入ると冒険者の男と受付嬢が話し込んでいる。
「最近ダンジョンの低階層に魔物が居なくなった。」
「うーん、原因が分からないわ。」
リコはふとハルトの顔を思い浮かべた。
「まさかハルトが狩りつくしているのでは!?」
リコは鑑定のスキルを持っており、ハルトのステータスを把握していたのだ。
「そういえばハルト君を見てないよね。」
「ハルトならあり得るな。あいつは見かけるといつも魔物を狩ってる。」
「ハルトを連れ戻しませんと!今すぐに!このままでは『キックラビットの山事件』を超える被害を出してしまいますわ。」
慢性的に資金不足なホワイト領はハルトの持って来たキックラビットを早く資金に変えるため、数日間に及ぶ4時間残業を強いられた。
もちろん、領地経営にはプラスに働き、職員の給料もその時は上昇したのだが、ピリピリとした緊張感が職場を支配し、ギルドの雰囲気はかなり悪くなった。
リコの言葉に受付嬢の顔が青ざめる。
「そうね!早く呼び戻さないと大変なことになるわ。」
「おいおい。大げさじゃねーか?」
「あなたは分かっていないのです!」
「知らないからそういう事が言えるのよ!」
「お、おう、そうか。」
冒険者は二人の怒鳴り声におとなしくなる。
リコの素早い対応により、ハルトの連れ戻し依頼は素早く遂行され、ハルトはダンジョンから連れ戻される。
◇
ギルドでは、ハルトがダンジョンから出た瞬間にハルトの帰還が伝えられる。
「おい!ハルトが戻ってきたぞ!」
ハルトがギルドに入ると、受付嬢とリコがハルトの腕に抱き着く。
素早くギルドの裏の解体場へと連行される。
ギルド員と野次馬の冒険者がずらりと並んぶ。
小さい領の為、ハルトの『キックラビットの山事件』はすぐにホワイト領全員に広まった為だ。
リコが口を開いた。
「魔物を出してください!全部出してください!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!何でみんな集まってるんだ!?後怒ることないよな?」
「ハルト!たくさんストレージに入っておりますね?いますぐお出しください!」
「これ恐喝か?」
「そのようなことはございません。報酬は後でお支払いいたします。早くお出ししてください。」
ハルトは無言でストレージのスキルを発動させる。
足の踏み場が無いほどの魔物の山で解体場は埋め尽くされた。
「「おおおお!」」
野次馬から歓声が上がる。
「ハルト、これで全部でしょうか?まだあるのではないですか?」
まるで尋問の取り調べのような口調でリコが問い詰める。
「あるけど置ききれないだろ?」
「ストレージスキルをお願いいたします。」
リコの合図とともに3人のギルド員がストレージのスキルで魔物の肉を回収する。
「すべての素材を出すのです!」
こうしてハルトのストレージから魔物が吐き出され、リコと受付嬢に連行された後、ギルド2階の一室で厳重注意を受けた。
一か月に一回は戻ってきて魔物を受け渡すこと。
1階から5階までの魔物を狩りすぎないこと。
この2つを何度も言い聞かされる。
◇
【ダンジョン】
「ふう、やはりダンジョンの移動は疲れますわね。」
「リコ、もう少しだぞ。」
冒険者に案内され、リコはダンジョンの奥へと向かう。
「リコ、あれだ!」
ハルトは笑顔でアサルトボアの群れと対峙する。
牛刀を右手に構え、突撃するアサルトボアの眉間に刃を突き立てる。
アサルトボアは力を失い横に倒れる。
「一撃で倒したのか!」
「ハルトって俺より強くね?」
リコは確信した。
あの楽しそうな表情。
成長率5倍の恩恵。
ハルトはもっと強くなる。
ハルト 男
レベル 15
職業 中級料理人
ノーマルスキル
経験値上・超レベル10
職業スキル
包丁 レベル5
料理 レベル6
ストレージ レベル4
感知 レベル3
私と同い年でレベル15。
恐らくグレー王国全体を探しても同い年でハルトと同じレベルに到達した者は居ない。
戦闘職の場合レベル5の中級職で兵士の資格あり、レベル15以上の中級職で隊長クラスと言われている。
職業のランクもすでに上級に爪がかかっている。あと少しで上級職。
職業は初級・中級・上級・特級と職業スキルのレベルをアップさせることで上昇していく。
ランクアップすることで新たな職業スキルを得ることが出来る。
ハルトはあと少しで上級料理人になる。
思った通り!
これは!あの憎き魔物を倒せる逸材が現れたのでは!?
リコは満面の笑顔でハルトの元へと歩き出す。
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