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第5話

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「く、くっくっく。早速ダンジョンに向かう」
「はい!」
「走ってついてくるのだ!」
「はい!」

 俺とアクアマリンはダンジョンに出かけた。



「スライムダンジョンは足場が悪い。洞窟には水が流れている為所々湿っている。洞窟が光っている為見えはするが薄暗くて視界が悪い。足を滑らせないように気を付けるのだな」
「はい!」

「早速1体出て来たか。アクアマリン、戦ってみるのだ」
「はい!」

 俺は何度もアクアマリンの名前を呼ぶ。
 こうする事で名前を憶えてもらうのだ。

 スライムは青くて丸いジェルタイプの魔物だ。
 ナメクジのように動きは遅い。

 アクアマリンがスライムに近づいた瞬間にスライムが身をかがめた。
 そして地面を蹴ってバウンドし、アクアマリンにタックルを仕掛けた。

 アクアマリンが剣で受ける。
 スライムが真っ二つに両断された。

「え?」

「うむ、よくやった」
「え、この武器、力を入れてないのに斬れました」
「うむ、次は俺が行こう。見学しているのだ」

 3体のスライムが俺を狙う。

「スライムは動きが遅い。だが近づくと潰れるモーションの後、地面を蹴るジャンプタックルを仕掛けてくる。タイミングを読むのだ」

 俺はナイフを取り出す。
 潰れてタックルを仕掛けるスライムを半身で躱しつつすれ違うようにカウンターの斬撃を加える。

「タックルの瞬間にすれ違うようにカウンターを入れるのだ」

 3体のスライムが地面に落ちて動かなくなった。

「それより武器がおかしいです」
「普通よりはマシな物を用意した。タックルを受けないようにすれ違うように倒すのだ。次が来た。やってみるのだ」

 2体のスライムが迫る。

 アクアマリンは1体に近づき、意図的にタックルを促す。
 そしてタックルの瞬間に横に避けながら横なぎの一線を食らわせた。
 同じ要領でもう一体も倒す。

「はあ、はあ、倒しました」
「うむ、それでいい。さて、帰るとするか」

「もうですか?」
「初戦はストレスで疲れが溜まっているものだ。それよりも、魔物を持ち運び納品が終わるまで油断するな」

「はい!」

 アクアマリンはスライム2体をバックパックに入れ、残りの1体を肩で担ぐ。

「くっくっく、生活魔法の訓練を続ける事で収納を使えるようになる。繰り返し使う事で小物だけでなく魔物すら収納可能だ」

 俺は生活魔法でスライム3体を収納した。

「くっくっく、帰ったら生活魔法の訓練をするのだな!さもなくば惨めに魔物の死骸を運び続ける事になるだろう。くっくっく」

 こうしてスライムを納品して初回の配信は終わった。
 配信が終わった動画は自動的にいつでも見られる動画として投稿される。

 俺はアクアマリンの動画をチェックする。
 チェックするのは動画そのものではなくコメントだ。

 ちっちゃくておっきいひと『アクアマリン、コラボしよ』

 俺はアクアマリンのギルドカードをすっと抜きとり、秒で『ちっちゃくておっきいひと』をブロックした。

「これでいい」

「消しちゃうんですか?初めてのコメントなのに」
「これでいいのだ」

 ギルドカードでちっちゃくておっきいひとを動画検索する。
 動画のチャンネル登録数は、508か、まだ脅威ではない。
 最近動画投稿を始めたようだ。

 動画を見る。
 やはりアクリスピだ。
 小さい背丈だが胸が大きい。
 黒髪ツインテールと赤い瞳。
 整った顔立ちと漆黒のバトルドレスに背丈より大きいバトルアックスでくるくると回転しながら魔物を倒している。

 アクアマリンが近くで動画を覗き込む。

「知り合いですか?」
「何のことだ?それよりも今日はゆっくり休むのだ」
「……はい」

「次から一人で動画配信を出来るか?」
「ゴレショの使い方が不安です」
「操作、そうだったな。ゴレショを渡しておく。使い方は明日教えるとしよう。食事にするのだ」
「はい」

 アクアマリンはステーキセットと戦士セット、そしてパスタセットを平らげた。
 育ち盛りか。

 ギルドカードが振動する。

 アクリスピだったら無視しよう。
 孤児院協会からか。

 俺は通話モードで出た。

「もしもし、何か問題か?」
『おはようございます。いえ、年に一度の救い手孤児院協会会議に出ていただきたくて』
「もし問題がなければ進行は任せる」
『そう言わずに出てくれませんか?」

「リモートでの出席なら問題無く行える」
『会長が何年も欠席となれば困ってしまいます』

 何かむずかしい案件が発生した可能性もある。

「分かった。出席しよう。問題点があれば事前に打ち合わせもしたい」
『分かりました。ではお願いします。いつでも構いませんので第一孤児院までお越しください』

「了解した。出発は明後日になる。会議に間に合わない可能性もあるが大丈夫か?」
『会議時期を調整します。問題ありません』

「リモートではまずいのだな?」
『出来れば直接お顔をお見せください』
「分かった」

 俺は通話を切った。

「明後日から用事がある。一人でダンジョンに行く事になるが入り口から離れては危険だ。それと無理をしてはいけない。いいな?」
「はい」

 
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