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第40話

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 僕は最近集中できていない。
 4人とのキスが頭から中々離れないのだ。
 時間があれば小説を執筆して過ごすけど、集中しきれない。
 でも、ギアをチェンジした。

 僕は性欲を解放するように執筆をする。



 ……あれ?結構いいのでは?
 エロくないけどドキドキするシチュエーションを書けている。
 僕の中にある煩悩を隠さず執筆にぶつけるのは悪くないのかもしれない。
 部屋で執筆を続けると、メイの声が聞こえる。

「お兄ちゃん!夕食はお店で食べるよ!」

 メイの機嫌がいい。
 いつもテンションは高いけど、いつにも増してメイが元気だ。
 顔は見ていないけど声だけで分かる。

「うん、分かった」

 僕は少し遅れて部屋を出ると、ヒマリとばったり会った。

「こんばんは」
「こ、こんばんは!」

 何故か咄嗟に挨拶をしてしまった。
 しかもヒマリもオウム返しをして来る。

「……こんばんわはおかしいか」
「そ、そうかも」

 まだヒマリとは距離が遠い。
 そう感じる。

 僕とヒマリは無言で母さんの店に向かった。



 僕とヒマリ以外は全員席についており、メイが楽しそうに話をしている。

「明日から私服で登校できるよ!」

「そうだな、やっと始まるか」
「遅かったわねえ」

 父さんと母さんの考え方は先進的だ。
 LGBT問題に対処する為、男子でもスカートを履いていいし、女子がパンツスタイルでもいい。
 明日からそうなる。

 私服で登校して良いし、制服を着てもいい。
 卒業式なども制服ではなくスーツで出席する事も出来る。
 色々自由になるけど、僕はまだ制服で高校に行く。
 
 私服が目立たなくなった瞬間に私服に切り替えるのだ。

 服だけじゃなく、本当はあだ名禁止のルールもある。
 先生がいない時は3馬鹿の事をあだ名で呼ぶし逆に僕の事もモブと呼ぶ。
 お互いが気にしないのならそれでいいと思うけど、先生が居る時だけはうっかりあだ名で呼ぶと注意を受ける。
 そこは注意が必要なのだ。

「明日はヒマリに貰った服を着て行こうかな。ヒマリは何を着ていくの?」

 ヒマリは制服に決まっているだろ。

「私は、制服だよ」
「え~!もったいないよ!せっかく自由なのに」

「メイ、押し付けは良くないよ。それに、ヒマリが私服を着て行ったら3馬鹿や男子生徒の注目を集めるよ。メイだってそうだ」
「私のクラスにはいないからいいもーん」

 3馬鹿が居なければいいのか。
 でも、メイは四天王だ。
 男子生徒は絶対にチェックするだろう。

「ユズキとユキナはもし高校生で制服が自由化されていたらどうするかな?」
「私は、制服のままだと思うわ」
「う~ん、私は好きな服を着ていくわね」

 イメージ通りユキナは制服、ユヅキは私服か。
 どちらにしても2人は目立つだろう。

 この日は特に目立った事件も無く終わった。



【次の日】

 僕はぼーっとしながらリビングに行くと、珍しくメイが元気に食事を出してくれた。

「お兄ちゃん、起きるのが遅いよ!」
「メイ、何時に起きたんだ?」

「朝の4時だよ!」
「それ、夜だよ」

「今日はヒマリに貰った服で登校するんだ~」

 メイが元気な理由はすぐ分かった。
 その後3人が起きるけど、メイが元気な理由をみんながすぐ察した。

「学校に行って来るね!」
「まだ1時間早いけど?」
「いいの!」

 メイは元気だな。

「シュウとヒマリはやっぱり制服なのね」
「そうなるね。様子を見てからどうするか決めるよ」
「わ、私は制服のままでいいかな」
「うん、自由だから良いと思うよ」

 僕は空いた時間に小説を執筆をしてから学校に向かった。



 教室に入ると3馬鹿が黒い。
 皆が黒い皮服とか、黒いジャケットを着ている。

「3馬鹿、おはよう。威圧感が凄いよ」
「「おはよう」」

「モブよ、ずいぶんと失礼な物言いでおじゃるなあ」
「やはりモブは様子を見て制服で登校したか」
「おめーもっと攻めて行こうぜ!」

「僕は良いんだ。ただでさえユキナと手を繋いで攻めているつもりなんだよ」
「して、いつ制服をやめるでおじゃる?」
「ガリ、さすが先が見えているね。3割の生徒が私服になった瞬間にジャケットに変えるよ」

「ミリタリージャケットでおじゃるな。モブがあれを着る理由は効率重視。おおかたポケットが4つある点に惹かれたのでおじゃろう」
「良く分かったね。教科書以外スマホも筆記用具もすべてポケットに入れるよ」

「モブならば、何を着ても様になるでおじゃろう。所で、メイ殿の私服、見たでおじゃるか?」

「白いワイシャツとスカートだね。ほとんど制服と変わらないと思うよ」

「「カツ!」」

「おめー分かってねーよ!」
「ただそこにある雰囲気、まとうモノが変われば、そこに夢があるのだ」

「想像するでおじゃる。ただでさえ刺激的なビキニ姿があるでおじゃる」
「……ビキニね。分かった」

「コスブレとして、ビキニ姿に薄い布をまとった者が現れた場合、ビキニを着た状態より興奮するでおじゃろう?」

 ガリの言っている事は分かる。
 でも、周りの女子生徒が引いている。

「ガリ、ここで言うのはやめよう」

「いや、譲れないでおじゃる!しかも、高級で完成度の高いオーダー品よりも、安く買ったコスプレ姿の方がアクシデントを想像して興奮するでおじゃる」
「ガリ、やめろ!」

 女子生徒が3馬鹿から離れていく。

 そして、教室に入ろうとしたメイがすっと反転して戻っていく。



 僕はしばらく制服で過ごし、私服が多くなったタイミングでオリーブ色のミリタリージャケットを着て登校するようになった。

 父さんに貰ったお下がりで、ファッションなんか気にしていない。
 でも、僕が教室に入ると何故か女子から声をかけられた。

 その様子をヒマリとメイが見ている。

「シュウさん、記念に写メを一緒に撮って欲しいです」

 女子生徒の後輩と僕はツーショットの写真を撮った。

 その後、女子生徒が並びホームルームの5分前まで写真撮影が行われた。

「おかしい。適当に父さんのお下がりを着て、ポケットにペンを差して作業服のように使っているのに、何で!」

「お兄ちゃん、顔とスタイルが良かったら何を着ても良く見えるんだよ。それに制服でも写真を撮ってたよね?」

「そうだけど、思ったようにはいかないな」
「お兄ちゃんは女子人気ナンバーワンなんだよ?」

「いや?でも、僕はユキナと付き合っているんだ」

「モブよ、それすら突破して写真を撮って貰いに来るのでおじゃるよ」

 3馬鹿が来た瞬間にメイが退避した。

 リスのメイっぽいな。
 小動物並みの危機回避能力だ。


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