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第15話
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メイは展示品のタブレットに一心不乱に絵を書いていた。
目を輝かせ、タッチペンを走らせる。
僕とユキナ先輩は少し離れてその様子を見守る。
「ねえ、少し耳を貸して」
「何ですか?」
僕は少しかがんだ。
ユキナ先輩が耳打ちする。
「最近メイちゃんと仲がいいわね」
「そ、そうですね」
ユキナ先輩は綺麗な笑顔で僕を見る。
そして話す時は必ず口を僕の耳に近づける。
まるで恋人のようで、すれ違う人が僕とユキナ先輩を振り返る。
見るタイミングによってはキスをしているようにも見えてしまうのだ。
「所で、シュウは今年高校3年生ね、大学には行くのかしら?」
「いえ、行きません」
「そう、私と同じね」
「1年もせず卒業ね」
「そうですね」
「そう、所で結婚する相手はいるのかしら?」
「いえ、いませんよ。まだ高校生じゃないですか。はははは」
「そう、私と結婚したら、メイちゃんとも仲良くできるわよ」
僕はユキナ先輩の顔を見た。
ユキナ先輩の顔は赤くて、少し恥ずかしそうだった。
「……先輩?」
「ふ、ふふふ、め、メイちゃんの所に行きましょう」
ユキナ先輩は自分の顔を隠すようにメイの元に向かった。
「メイちゃん、気に入った物はあったかしら?」
「この12,9インチのが、いい。お兄ちゃん、このタブレットとペン買って~」
うわ!高い!
タブレットだけでパソコンと同じくらいする!
それにペンだけで1万円を超えてる!
「私が買うわ」
「え、でも」
流石にメイは遠慮した。
ユキナ先輩はメイの頭を撫でた。
「私の事はお姉ちゃんって呼んでいいのよ。遠慮しなくていいわ」
メイがユキナ先輩に懐柔されているように見える。
「せ、先輩、これ高いですよ!一旦帰ってネットで調べてみましょう」
「お兄ちゃん買って~」
「お姉ちゃんが買ってあげるわ」
「ユキナ先輩、帰って検討しましょう」
「メイちゃんは色々な絵が書けるわ。それに数年絵を書き続けているのよ。絵で食べていく事が出来るかもしれないわ」
「ユキナ先輩はメイの絵の事を知ってるんですか?」
ユキナ先輩が近づいて耳元でささやく。
「エッチな絵の事よね?」
「……はい」
「あー!お兄ちゃんもユキナ先輩も顔が赤い!」
この後3人で議論は続き、僕とユキナ先輩が折半して買う事になった。
「ふ、ふふふ、シュウとの共同作業ね」
「ユキナ先輩顔が赤い!」
ユキナ先輩の顔が赤い。
ユキナ先輩の顔は白いから、赤くなるとすぐ分かる。
「メイ、指差しは良くないよ」
「お姉ちゃんをからかうのは良くないわ」
ユキナ先輩の顔がまた赤くなった。
「少し疲れたわ、カフェに行きましょう」
「そうですね」
僕たちがカフェに入ると、メイは新しく買ったタブレットとペンの入った大きめのバックパックを宝箱のように大事に抱えている。
「メイ、まだ開けないのか?」
「いいの、帰ってから開ける、えへへへ~」
「メイちゃん、好きな物を頼んでいいわよ。お姉ちゃんが奢ってあげるわ」
「次は僕が出しますよ」
「次はお兄ちゃんに出して貰うよ」
「お兄ちゃんに出して貰おうよ……私ケーキセットにする」
「私も同じのにするわ」
「飲み物は何にする?」
「私ココアにする~」
「カフェオレにするわ」
こうして僕は注文を取った。
僕の前にはコーヒー、先輩とメイの前にはケーキセットが運ばれてくる。
「ケーキがおいしそうだね」
「お兄ちゃん食べる?あーん」
メイの差し出したケーキを食べる。
「おいしいよ」
「シュウ、あーん」
ユキナ先輩もメイのマネをする。
ユキナ先輩の顔が赤い。
僕は、気づかないふりをしてユキナ先輩にあーんされたケーキを食べた。
「ふ、ふふふ、メイちゃんは可愛いわね」
そう言ってユキナ先輩は急に話を逸らした。
「ねえ、メイちゃん。私の事お姉ちゃんって呼んでみて」
「お姉ちゃん?」
「面白いから今日はずっとお姉ちゃんって呼びましょう」
「うん、今日はお兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒に買い物したね」
メイが『お兄ちゃんとお姉ちゃん』と言った瞬間にユキナ先輩の表情が変わり、また赤くなった。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、これが終わったらお姉ちゃんの着替えを取りにいこーよ」
ユキナ先輩は小さくささやいた。
「……いいわね」
「ユキナ先輩?」
「な、何でもないわ、そうね、そう、着替えは大事だわ」
ユキナ先輩はお姉さんぶる。
「シュウ、もう一回あーん」
僕にあーんをするユキナ先輩の顔は真っ赤だった。
ユキナ先輩は恥ずかしがり屋だ。
「先輩の住んでいるマンションに始めて来ました」
「1ルームだけど、1人で住むには十分よ」
「ユキナ先輩って物をあまり持たないイメージがあります」
「そう、かもしれないわね。シュウもそうじゃない?」
「僕は男ですから、普通じゃないですかね?」
「お兄ちゃんの部屋は物が少ないよ」
「そう、やっぱりそうなのね」
「外で待ってますね」
「あら、いいのよ、下着を干しているだけだから」
「ほら!やっぱり!待ってます」
「ふふふ、そう?シュウには見られてもいいのよ。それじゃあ準備してくるわね」
絶対にからかってる。
「行きましょう」
ユキナ先輩はキャリーケースを持ってすぐに出て来た。
「早くないですか!」
「お姉ちゃん!出来る女みたいだよ!」
3分も経っていない。
「着替えは入れてあったから、パソコンとスマホ、後は充電ケーブルだけ入れればいいのよ」
「先輩って旅が好きなんですか?」
「行きたいと思っていたのだけれど、指輪をしても声をかけてくる人がいて1回しか行っていないわ。ああ、一人旅をしながら小説を書く生活が夢だったのに残念だわ」
「お姉ちゃん、きゃりあうーまん見たいだよ!」
メイが言い慣れない言葉を言って目を輝かせた。
「メイもお絵描きを頑張れば出来ると思うわ」
ユキナ先輩とメイの距離が近くなっているのを感じた。
目を輝かせ、タッチペンを走らせる。
僕とユキナ先輩は少し離れてその様子を見守る。
「ねえ、少し耳を貸して」
「何ですか?」
僕は少しかがんだ。
ユキナ先輩が耳打ちする。
「最近メイちゃんと仲がいいわね」
「そ、そうですね」
ユキナ先輩は綺麗な笑顔で僕を見る。
そして話す時は必ず口を僕の耳に近づける。
まるで恋人のようで、すれ違う人が僕とユキナ先輩を振り返る。
見るタイミングによってはキスをしているようにも見えてしまうのだ。
「所で、シュウは今年高校3年生ね、大学には行くのかしら?」
「いえ、行きません」
「そう、私と同じね」
「1年もせず卒業ね」
「そうですね」
「そう、所で結婚する相手はいるのかしら?」
「いえ、いませんよ。まだ高校生じゃないですか。はははは」
「そう、私と結婚したら、メイちゃんとも仲良くできるわよ」
僕はユキナ先輩の顔を見た。
ユキナ先輩の顔は赤くて、少し恥ずかしそうだった。
「……先輩?」
「ふ、ふふふ、め、メイちゃんの所に行きましょう」
ユキナ先輩は自分の顔を隠すようにメイの元に向かった。
「メイちゃん、気に入った物はあったかしら?」
「この12,9インチのが、いい。お兄ちゃん、このタブレットとペン買って~」
うわ!高い!
タブレットだけでパソコンと同じくらいする!
それにペンだけで1万円を超えてる!
「私が買うわ」
「え、でも」
流石にメイは遠慮した。
ユキナ先輩はメイの頭を撫でた。
「私の事はお姉ちゃんって呼んでいいのよ。遠慮しなくていいわ」
メイがユキナ先輩に懐柔されているように見える。
「せ、先輩、これ高いですよ!一旦帰ってネットで調べてみましょう」
「お兄ちゃん買って~」
「お姉ちゃんが買ってあげるわ」
「ユキナ先輩、帰って検討しましょう」
「メイちゃんは色々な絵が書けるわ。それに数年絵を書き続けているのよ。絵で食べていく事が出来るかもしれないわ」
「ユキナ先輩はメイの絵の事を知ってるんですか?」
ユキナ先輩が近づいて耳元でささやく。
「エッチな絵の事よね?」
「……はい」
「あー!お兄ちゃんもユキナ先輩も顔が赤い!」
この後3人で議論は続き、僕とユキナ先輩が折半して買う事になった。
「ふ、ふふふ、シュウとの共同作業ね」
「ユキナ先輩顔が赤い!」
ユキナ先輩の顔が赤い。
ユキナ先輩の顔は白いから、赤くなるとすぐ分かる。
「メイ、指差しは良くないよ」
「お姉ちゃんをからかうのは良くないわ」
ユキナ先輩の顔がまた赤くなった。
「少し疲れたわ、カフェに行きましょう」
「そうですね」
僕たちがカフェに入ると、メイは新しく買ったタブレットとペンの入った大きめのバックパックを宝箱のように大事に抱えている。
「メイ、まだ開けないのか?」
「いいの、帰ってから開ける、えへへへ~」
「メイちゃん、好きな物を頼んでいいわよ。お姉ちゃんが奢ってあげるわ」
「次は僕が出しますよ」
「次はお兄ちゃんに出して貰うよ」
「お兄ちゃんに出して貰おうよ……私ケーキセットにする」
「私も同じのにするわ」
「飲み物は何にする?」
「私ココアにする~」
「カフェオレにするわ」
こうして僕は注文を取った。
僕の前にはコーヒー、先輩とメイの前にはケーキセットが運ばれてくる。
「ケーキがおいしそうだね」
「お兄ちゃん食べる?あーん」
メイの差し出したケーキを食べる。
「おいしいよ」
「シュウ、あーん」
ユキナ先輩もメイのマネをする。
ユキナ先輩の顔が赤い。
僕は、気づかないふりをしてユキナ先輩にあーんされたケーキを食べた。
「ふ、ふふふ、メイちゃんは可愛いわね」
そう言ってユキナ先輩は急に話を逸らした。
「ねえ、メイちゃん。私の事お姉ちゃんって呼んでみて」
「お姉ちゃん?」
「面白いから今日はずっとお姉ちゃんって呼びましょう」
「うん、今日はお兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒に買い物したね」
メイが『お兄ちゃんとお姉ちゃん』と言った瞬間にユキナ先輩の表情が変わり、また赤くなった。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、これが終わったらお姉ちゃんの着替えを取りにいこーよ」
ユキナ先輩は小さくささやいた。
「……いいわね」
「ユキナ先輩?」
「な、何でもないわ、そうね、そう、着替えは大事だわ」
ユキナ先輩はお姉さんぶる。
「シュウ、もう一回あーん」
僕にあーんをするユキナ先輩の顔は真っ赤だった。
ユキナ先輩は恥ずかしがり屋だ。
「先輩の住んでいるマンションに始めて来ました」
「1ルームだけど、1人で住むには十分よ」
「ユキナ先輩って物をあまり持たないイメージがあります」
「そう、かもしれないわね。シュウもそうじゃない?」
「僕は男ですから、普通じゃないですかね?」
「お兄ちゃんの部屋は物が少ないよ」
「そう、やっぱりそうなのね」
「外で待ってますね」
「あら、いいのよ、下着を干しているだけだから」
「ほら!やっぱり!待ってます」
「ふふふ、そう?シュウには見られてもいいのよ。それじゃあ準備してくるわね」
絶対にからかってる。
「行きましょう」
ユキナ先輩はキャリーケースを持ってすぐに出て来た。
「早くないですか!」
「お姉ちゃん!出来る女みたいだよ!」
3分も経っていない。
「着替えは入れてあったから、パソコンとスマホ、後は充電ケーブルだけ入れればいいのよ」
「先輩って旅が好きなんですか?」
「行きたいと思っていたのだけれど、指輪をしても声をかけてくる人がいて1回しか行っていないわ。ああ、一人旅をしながら小説を書く生活が夢だったのに残念だわ」
「お姉ちゃん、きゃりあうーまん見たいだよ!」
メイが言い慣れない言葉を言って目を輝かせた。
「メイもお絵描きを頑張れば出来ると思うわ」
ユキナ先輩とメイの距離が近くなっているのを感じた。
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