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第13話
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僕はダンジョンを出て防壁にたどり着く。
街の周りには丸く防壁が張り巡らされている。
そして街の内部には北東から南西に斜めに都市を分断するように一直線の防壁、スラッシュ防壁がそびえたっている。
多くの人はスラッシュ防壁の西側に住んでいる。
防壁の近くは魔物が攻めてくる為酪農や生産がおこなわれ、中央部に住宅地や商業施設が密集している。
僕はレンガで作られた防壁を眺める。
昔は防壁をぼーっと眺めるのが好きだった。
見ていると不思議な感じがしてその感覚が好きだった。
泥まみれの英雄が昔作ったレンガの防壁。
300年経っても壊れないレンガの防壁。
最近防壁を眺めることが無かった。
……そうか、僕は壁をぼーっと見つめる余裕すらなかったんだ。
僕は余裕が出来た。
心が軽くて、落ち着いている。
時間があるって良いな。
僕はしばらく防壁を眺めた後街の西地区に向かった。
【カモンの父・スモーク視点】
俺が家に戻ると家が取り壊されていた。
「見つけた!スモークだ!」
兵士が声を上げて仲間を呼んだ。
俺は慌てて逃げた。
スラッシュ防壁を超えて東の貧民街に向かう。
国の奴らはスラッシュ防壁の西側しか管理していない。
過疎化が進んだおかげで兵士にすべてを管理する能力は無い。
この東地区はマフィアが支配していて国の兵士も入ってこない。
金はすべて使い切った。
カモンも見つからない。
金がねえ!
酒とたばこ、ギャンブルが出来ねえ!
金さえあればギャンブルで増やしてやるのによお!
俺は東地区で過ごした。
廃墟に住んで、マフィアから場所代を脅し取られそうになるがそのたびに暴れて追い払った。
ふざけんなよ。
俺は鬼人族だ。
ごろつきごときにどうにかできると思うなよ!
しばらくすると10人のマフィアが武器を持ってやってきた。
「出て行け!てめーのようなクズは東地区から出て行け!場所代も払おうとしねえお前はいらねえ!」
マフィアの男が大声で怒鳴る。
「クズはお前だ!」
数を集めただけでいい気になりやがって!
また痛い目に合わせてやる!
「おい!仲間を呼べ!全力でこいつをぼこぼこにしてやる!」
「もう10人もいるじゃねえか!びびりかよ!」
「もっと呼ぶ!ビビってんのはお前だろ!」
「どけよおおおおおお!!!」
俺はそ脇差を抜いて斬りかかりながら逃げ出した。
くそ、腹が減った。
もうたばこがねえ!
俺は酒瓶を持ち、酔っぱらっている男から酒瓶を奪い取りつつ西地区に走る。
「はあ、はあ、こ、ここならマフィアも追ってこねえ」
一気に酒を胃に流し込む。
運動した後の酒がうまい。
ん?カモンがいる!
カモンから金を巻き上げてやろう。
俺は西地区のギルドに入っていくカモンを確認してギルドに入った。
【カモン視点】
僕がギルドに入ると、プロテクタ・インスティ・ティアおばあちゃんがいた。
ティアおばあちゃんは2人の女の子に食事を作り、ギルドのテーブルで食べさせている。
2人の子供が僕をじっと見つめた。
2人とも5才くらいかな?
「えーと、僕の名前はカモンだよ」
「かもん?」
赤髪のロングヘア。
そして赤目の女の子が答えた。
頭から竜の角が生えている。
目がとろんとしていて眠そうに見える。
「あたち、ふぁふ」
「ファフちゃんだね」
赤髪の竜族の女の子がファフちゃんか。
もう一人の女の子が椅子から立ち上がって僕の前に走って来る。
青目青髪のセミロングで、ファフより背が小さい。
頭から猫耳が生えており、後ろを見ると尻尾が揺れている。
気が強そうだ。
「わたしすてっぷ」
「ステップちゃんか、よろしくね」
青紙のねこ族がステップちゃんか。
よく動いてよく跳ねている。
元気がいい。
僕は皆がいるテーブルに近づく。
「やっと恩返しができるよ」
3人が僕を見た瞬間、後ろの扉が音を立てて開いた。
そこには父さんがいた。
右手には酒瓶を持ち、酒を傾けて中身を一気にすべて飲み干した。
そして言った。
「カモン、金を出せ!」
「え!?」
「金出せよ!」
「なんで自分で働かないんだよ!いつも僕からお金を奪って、家に入れてくれないじゃないか!」
「カモン!親を助けるのが当然だろ!表に出ろ!人生の厳しさを教えてやる!」
ファフとステップがティアおばあちゃんにしがみついた。
ティアおばあちゃんが2人の頭を撫でる。
「2人とも止めないの?カモンが危ないよ」
ティアの問いかけにプロテクタとインスティが言った。
「大丈夫だ」
「問題無いですよ」
プロテクタが前に出る。
そして僕の方に手を置いた。
「カモン、大丈夫だ。お前なら勝てる!」
「えー!危ないよ!」
ティアおばあちゃんが止めに入る。
「大丈夫だ!カモンが勝つ!」
「はははははははははははは!冒険者ギルドの連中は頭まで腐っているのか!出来損ないのカモンが俺に勝てるわけねえだろうが!」
「カモン、お前は出来損ないじゃない!お前は出来損ないなんかじゃないんだ!自信を持て!」
「わ、分かったよ」
僕は父さんが怖い。
何度も殴られて、何度もお金を取られた。
でも、プロテクタの言う事を信じたいと思った。
僕が外に出ると、父さんが後ろから酒瓶で殴ってきた。
マントの自動防御が発動してマントが僕を守る。
「なんだ?マントが丈夫になったのか?」
そう言って僕の事は何も気にしていない。
ああ、そうか、この人は、もうダメだ。
僕の事はどうでもいいんだ。
お酒と、たばこと、ギャンブルの方が僕より大事なんだ。
周りを見ると冒険者の野次馬が集まっていた。
周りから父さんにヤジが飛ぶ。
「卑怯だぞ!クズスモーク!」
「クズのスモークだぜ!頭までアルコールが回ってんじゃねーか!」
「小さい息子を後ろから殴るか!?さすがクズだぜ!」
「黙れえええええ!!!」
僕は右手にナイフ、左手に鞘を出現させた。
父さんは脇差を抜き、歩いて近づいてくる。
僕はナイフを振って斬撃を発生させた。
斬撃が父さんに当たり、お腹に赤いマーキングが発生した。
「痛え!俺が折角手加減してやってんのに何本気出してやがる!」
プロテクタが叫ぶ。
「気にせず攻撃を続けろ!スモークは指名手配されている!攻撃しても問題無い!」
僕は何度も斬撃を発生させた。
父さんが僕の斬撃を斬るけど、少しずつ斬撃が当たっていく。
「痛!許さねえぞ!」
父さんを見ると、お腹・右肩・右太ももに赤いマーキングが発生している。
マーキングが成功した。
僕はナイフを鞘に納めた。
「何でナイフを」
父さんが言いかけた瞬間に『マーキングスラッシュ』が発動する。
マーキングスラッシュはナイフを鞘に納めてから1秒後に発動する。
発動すれば赤いマーキングに黒い斬撃が追加発動する。
そしてスキル『紋章魔法』のレベルに応じて攻撃力が上昇する。
今紋章魔法のレベルは1だ。
威力は通常攻撃の110%になる。
攻撃をヒットさせた場所に斬撃が発生するから、傷を受けた所に追加の攻撃を当てる事が出来る為ダメージは大きくなる。
父さんは傷口に追加の斬撃を受けて苦痛の表情を浮かべた。
「痛え!子供だと思って甘く見ていたがもう許さねえ!鬼人族はなあ!鬼人化が使えるから鬼人族なんだよおおおお!鬼人化ああああ!ぐろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
父さんの体を紫色の怪しい光が包み、目が赤く光る。
父さんは僕に鬼人化を使ったんだ。
「これで俺の速度は2倍に跳ね上がる!お前にはもう捕らえられねえ!出来損ないのカモンには出来ねえ力だ!鬼人族はなあ!鬼人化が使えるから鬼人族なんだよ!」
そうか。
父さんは僕が死んでもいいと思っている。
僕は、首にかけたプレートと母さんの形見をプロテクタに投げた。
「持っていて!それとみんな離れて!鬼人化を制御できないから!」
「任せろ!」
「鬼人化!」
紫色のオーラが僕を包んで、そして僕の理性が飛んでいく。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
◇
鬼人化の効果が切れると、父さんが地面に倒れて、プロテクタが僕の前に立ち腕を抑えていた。
「はあ、はあ、はあ、僕は?また制御出来なかった?記憶がないんだ」
「気にしなくていい」
「め、迷惑をかけたかな?」
「そんな事はねえよ。ガキが気にすんな」
「でも、プロテクタが僕を止めた。僕が何かしたんじゃ?」
「あれだ、スモークが死にそうだった。だから止めた。それだけだ」
「そっか」
僕は、鬼人化を使うとその時の記憶が無くなる。
鬼人化を使った後の、記憶がない。
でも、父さんに勝てた。
もう、父さんからは奪われない。
街の周りには丸く防壁が張り巡らされている。
そして街の内部には北東から南西に斜めに都市を分断するように一直線の防壁、スラッシュ防壁がそびえたっている。
多くの人はスラッシュ防壁の西側に住んでいる。
防壁の近くは魔物が攻めてくる為酪農や生産がおこなわれ、中央部に住宅地や商業施設が密集している。
僕はレンガで作られた防壁を眺める。
昔は防壁をぼーっと眺めるのが好きだった。
見ていると不思議な感じがしてその感覚が好きだった。
泥まみれの英雄が昔作ったレンガの防壁。
300年経っても壊れないレンガの防壁。
最近防壁を眺めることが無かった。
……そうか、僕は壁をぼーっと見つめる余裕すらなかったんだ。
僕は余裕が出来た。
心が軽くて、落ち着いている。
時間があるって良いな。
僕はしばらく防壁を眺めた後街の西地区に向かった。
【カモンの父・スモーク視点】
俺が家に戻ると家が取り壊されていた。
「見つけた!スモークだ!」
兵士が声を上げて仲間を呼んだ。
俺は慌てて逃げた。
スラッシュ防壁を超えて東の貧民街に向かう。
国の奴らはスラッシュ防壁の西側しか管理していない。
過疎化が進んだおかげで兵士にすべてを管理する能力は無い。
この東地区はマフィアが支配していて国の兵士も入ってこない。
金はすべて使い切った。
カモンも見つからない。
金がねえ!
酒とたばこ、ギャンブルが出来ねえ!
金さえあればギャンブルで増やしてやるのによお!
俺は東地区で過ごした。
廃墟に住んで、マフィアから場所代を脅し取られそうになるがそのたびに暴れて追い払った。
ふざけんなよ。
俺は鬼人族だ。
ごろつきごときにどうにかできると思うなよ!
しばらくすると10人のマフィアが武器を持ってやってきた。
「出て行け!てめーのようなクズは東地区から出て行け!場所代も払おうとしねえお前はいらねえ!」
マフィアの男が大声で怒鳴る。
「クズはお前だ!」
数を集めただけでいい気になりやがって!
また痛い目に合わせてやる!
「おい!仲間を呼べ!全力でこいつをぼこぼこにしてやる!」
「もう10人もいるじゃねえか!びびりかよ!」
「もっと呼ぶ!ビビってんのはお前だろ!」
「どけよおおおおおお!!!」
俺はそ脇差を抜いて斬りかかりながら逃げ出した。
くそ、腹が減った。
もうたばこがねえ!
俺は酒瓶を持ち、酔っぱらっている男から酒瓶を奪い取りつつ西地区に走る。
「はあ、はあ、こ、ここならマフィアも追ってこねえ」
一気に酒を胃に流し込む。
運動した後の酒がうまい。
ん?カモンがいる!
カモンから金を巻き上げてやろう。
俺は西地区のギルドに入っていくカモンを確認してギルドに入った。
【カモン視点】
僕がギルドに入ると、プロテクタ・インスティ・ティアおばあちゃんがいた。
ティアおばあちゃんは2人の女の子に食事を作り、ギルドのテーブルで食べさせている。
2人の子供が僕をじっと見つめた。
2人とも5才くらいかな?
「えーと、僕の名前はカモンだよ」
「かもん?」
赤髪のロングヘア。
そして赤目の女の子が答えた。
頭から竜の角が生えている。
目がとろんとしていて眠そうに見える。
「あたち、ふぁふ」
「ファフちゃんだね」
赤髪の竜族の女の子がファフちゃんか。
もう一人の女の子が椅子から立ち上がって僕の前に走って来る。
青目青髪のセミロングで、ファフより背が小さい。
頭から猫耳が生えており、後ろを見ると尻尾が揺れている。
気が強そうだ。
「わたしすてっぷ」
「ステップちゃんか、よろしくね」
青紙のねこ族がステップちゃんか。
よく動いてよく跳ねている。
元気がいい。
僕は皆がいるテーブルに近づく。
「やっと恩返しができるよ」
3人が僕を見た瞬間、後ろの扉が音を立てて開いた。
そこには父さんがいた。
右手には酒瓶を持ち、酒を傾けて中身を一気にすべて飲み干した。
そして言った。
「カモン、金を出せ!」
「え!?」
「金出せよ!」
「なんで自分で働かないんだよ!いつも僕からお金を奪って、家に入れてくれないじゃないか!」
「カモン!親を助けるのが当然だろ!表に出ろ!人生の厳しさを教えてやる!」
ファフとステップがティアおばあちゃんにしがみついた。
ティアおばあちゃんが2人の頭を撫でる。
「2人とも止めないの?カモンが危ないよ」
ティアの問いかけにプロテクタとインスティが言った。
「大丈夫だ」
「問題無いですよ」
プロテクタが前に出る。
そして僕の方に手を置いた。
「カモン、大丈夫だ。お前なら勝てる!」
「えー!危ないよ!」
ティアおばあちゃんが止めに入る。
「大丈夫だ!カモンが勝つ!」
「はははははははははははは!冒険者ギルドの連中は頭まで腐っているのか!出来損ないのカモンが俺に勝てるわけねえだろうが!」
「カモン、お前は出来損ないじゃない!お前は出来損ないなんかじゃないんだ!自信を持て!」
「わ、分かったよ」
僕は父さんが怖い。
何度も殴られて、何度もお金を取られた。
でも、プロテクタの言う事を信じたいと思った。
僕が外に出ると、父さんが後ろから酒瓶で殴ってきた。
マントの自動防御が発動してマントが僕を守る。
「なんだ?マントが丈夫になったのか?」
そう言って僕の事は何も気にしていない。
ああ、そうか、この人は、もうダメだ。
僕の事はどうでもいいんだ。
お酒と、たばこと、ギャンブルの方が僕より大事なんだ。
周りを見ると冒険者の野次馬が集まっていた。
周りから父さんにヤジが飛ぶ。
「卑怯だぞ!クズスモーク!」
「クズのスモークだぜ!頭までアルコールが回ってんじゃねーか!」
「小さい息子を後ろから殴るか!?さすがクズだぜ!」
「黙れえええええ!!!」
僕は右手にナイフ、左手に鞘を出現させた。
父さんは脇差を抜き、歩いて近づいてくる。
僕はナイフを振って斬撃を発生させた。
斬撃が父さんに当たり、お腹に赤いマーキングが発生した。
「痛え!俺が折角手加減してやってんのに何本気出してやがる!」
プロテクタが叫ぶ。
「気にせず攻撃を続けろ!スモークは指名手配されている!攻撃しても問題無い!」
僕は何度も斬撃を発生させた。
父さんが僕の斬撃を斬るけど、少しずつ斬撃が当たっていく。
「痛!許さねえぞ!」
父さんを見ると、お腹・右肩・右太ももに赤いマーキングが発生している。
マーキングが成功した。
僕はナイフを鞘に納めた。
「何でナイフを」
父さんが言いかけた瞬間に『マーキングスラッシュ』が発動する。
マーキングスラッシュはナイフを鞘に納めてから1秒後に発動する。
発動すれば赤いマーキングに黒い斬撃が追加発動する。
そしてスキル『紋章魔法』のレベルに応じて攻撃力が上昇する。
今紋章魔法のレベルは1だ。
威力は通常攻撃の110%になる。
攻撃をヒットさせた場所に斬撃が発生するから、傷を受けた所に追加の攻撃を当てる事が出来る為ダメージは大きくなる。
父さんは傷口に追加の斬撃を受けて苦痛の表情を浮かべた。
「痛え!子供だと思って甘く見ていたがもう許さねえ!鬼人族はなあ!鬼人化が使えるから鬼人族なんだよおおおお!鬼人化ああああ!ぐろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
父さんの体を紫色の怪しい光が包み、目が赤く光る。
父さんは僕に鬼人化を使ったんだ。
「これで俺の速度は2倍に跳ね上がる!お前にはもう捕らえられねえ!出来損ないのカモンには出来ねえ力だ!鬼人族はなあ!鬼人化が使えるから鬼人族なんだよ!」
そうか。
父さんは僕が死んでもいいと思っている。
僕は、首にかけたプレートと母さんの形見をプロテクタに投げた。
「持っていて!それとみんな離れて!鬼人化を制御できないから!」
「任せろ!」
「鬼人化!」
紫色のオーラが僕を包んで、そして僕の理性が飛んでいく。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
◇
鬼人化の効果が切れると、父さんが地面に倒れて、プロテクタが僕の前に立ち腕を抑えていた。
「はあ、はあ、はあ、僕は?また制御出来なかった?記憶がないんだ」
「気にしなくていい」
「め、迷惑をかけたかな?」
「そんな事はねえよ。ガキが気にすんな」
「でも、プロテクタが僕を止めた。僕が何かしたんじゃ?」
「あれだ、スモークが死にそうだった。だから止めた。それだけだ」
「そっか」
僕は、鬼人化を使うとその時の記憶が無くなる。
鬼人化を使った後の、記憶がない。
でも、父さんに勝てた。
もう、父さんからは奪われない。
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