奪われ続けた少年が助けたおばあちゃんは呪いをかけられたお姫様だった~少年と呪いが解けたお姫様は家族のぬくもりを知る~

ぐうのすけ

文字の大きさ
上 下
2 / 24

第2話

しおりを挟む
 僕はゴリ社長に担がれたまま薬草ダンジョンに入った。
 夜のダンジョンも外と同じで暗くなるけど、真っ暗になるわけではなく少し視界が悪くなるだけでダンジョンの方が外より明るい。

 不人気な薬草ダンジョンは夜の間入場料を取られない。
 日が出ている間は兵士が入り口で見張っていて1人1000ゴールドの入場料を取られるけど、夜は兵士がいない。
 入場料は魔物討伐と治安維持の為と言われているけど、本当は領主がたくさんお金を取りたいだけなんだ。



 斥候の男が走って来る。

「社長!ハーブトレントを見つけました!」
「よし!今日はカモンの再教育だ。可愛がってやれ!」
「も、もう辞めたので大丈夫です!大丈夫なんです!」

「がははははは!遠慮するな!ありがたく思えよ!」

 そう言ってゴリ社長はハーブトレントまで走る。
 ハーブトレントは木の魔物で、根を器用に動かして手足として使い薬草を栽培したり、鞭のようにしならせて攻撃してくる魔物だ。

 周りには10体のスライムがいて、ハーブトレントが育てた薬草を食べる代わりにハーブトレントを守っている。

 ハーブトレントとスライムはセットで出てくるのだ。

 ゴリ社長は走りながら僕を魔物に投げつけた。
 攻撃を受けないと自動防御は発動しない。

「うあああああ!」

 ハーブトレントが根を鞭のようにしならせて攻撃してくる。
 その瞬間僕の着ていたマントがうにょんと動いて攻撃を防ぐ。
 更に地面に落ちる瞬間にマントがクッションのように変形して身を守る。

 マント召喚スキルの自動防御が僕を守ってくれる。
 でも、衝撃が強いとマントで攻撃を防ぎきれない。
 1度にたくさん攻撃されると防ぎきれず攻撃を受けてしまう。

 急いで立ち上がるとスライムが僕を囲んでバウンドし、タックルしてくる。
 マントが変形してスライムの攻撃を防ぐけど、数が多い。

「うあああああああああああ!」

 僕はナイフを抜いて必死で攻撃する。
 1体に狙いを定めて何度もナイフを突き刺して何とかスライムを1体倒す。

 スライムが一斉に攻撃を仕掛けてくると、僕は地面に転がって何とか攻撃を避ける。
 泥にまみれ、スライムの粘液を浴び、マントで防御しきれず衝撃を受ける。

「助け!助けてください!」

 その様子をゴリ社長と会社のみんなは笑いながら見ていた。

「がははははは!ありがたく思え!可愛がってやってるんだからよお!てめえが余計な事を言うからこうなるんだよ!がはははははは!」

 周りにいたみんなも一緒に笑う。

「ビビりのカモンにはぴったりの能力だなおい!ひらひらしたマントでカメのように守る事しか出来ねえ!しかも防御力も弱い!お前は何一つまともに出来ねえ無能なんだよ!」

 僕は馬鹿にされ続けた。

「鬼人化も使えねえ鬼人族は意味がねえんだよ!鬼人族はなあ、鬼人化を使えるから鬼人族なんだよ!」

「髪の色が黒くて角も無い鬼人族なんてお前くらいだぜ!お前は種族能力もジョブもスキルも全部落ちこぼれなんだよ!」

 僕は叫びながらスライムにナイフを突き立てる。

「うあああああああ!」

 攻撃を受けながら2体目のスライムを倒す。
 でも他のスライムに攻撃されてよろける。

「おいおい!攻撃を防ぎきる事すら出来てねーじゃねーか!さすが無能のノービスだぜ!」

 死の恐怖を感じながら何度も何度もナイフを突き立てた。
 


 何度も攻撃を受けながら5体のスライムを倒すとゴリ社長が怒り出す。

「カモン!雑魚相手にいつまで時間を掛けてやがる!」

 そう言いながらゴリ社長は魔物を倒そうとしない。
 何度もナイフを突き立てる右腕が痺れて来た。
 左手に持ち替えてナイフを突き立てる。

 時間を掛ければ何とか、倒せる。



「早くしろ!後2体程度すぐに倒せねえのか!汚いスライムを倒すのはお前の仕事だろうが!」

 元々僕は魔物の解体と皮なめしの為にブラックポーションに入社した。
 皮なめしは裁縫のスキルを持っていれば糸や生地だけじゃなく、革も扱えるようになるんだ。

 でも、ゴリ社長が僕の配置を移動し、ダンジョンで壁役をやらされるようになった。
 しかも解体と皮なめしのノルマは配置移動前と変わらず、やったノルマすら奪われた。

 スライムは後2体、それとハーブトレントを倒せば終わる。
 でも、そこにアンデット系の魔物がやってきた。

「げえ!スケルトンとゴーストだ!逃げろ!」
「カモン!しっかり引き付けろ!」

 そう言ってみんなが離れる。

 2体のスケルトンと2体のゴーストが迫って来る。
 スケルトンは子供と同じ大きさの魔物で木の棒を持って走ってくる。
 ダンジョンに入ってすぐの魔物は基本小さい。

 ゴーストはスケルトンと同じサイズだ。
 人型だけど足だけは無くて浮いている。

 この薬草ダンジョンが嫌われる1番の理由はゴーストとスケルトンがいるからなんだ。

 ゴーストとスケルトンは僕に近づくと左手を僕にかざした。 
 ゴーストとスケルトンの左手が光る。

『EXPスティール』

 スケルトンとゴーストは体力・魔力・器用値のEXPを奪おうとする。
 何度も奪われると体力・魔力・器用のがどんどん低くなっていく。
 でも、体力・魔力・器用が10まで下がると奪えなくなる。
 僕は常におとりにされてゴーストとスケルトンにEXPを吸われ続けてきた。

 だから体力・魔力・器用値を10より上に上げられないんだ。
 クラッシュには自己投資の意識が無いと言わ続けた。
 でもゴリ社長にはおとりと壁役をやらされ続ける。
 意見を言えばいじめられる。
 能力を上げたいのにEXPスティールで奪われるからどうしたらいいか分からないんだ。

 ゴーストとスケルトンは何度もEXPスティールを僕に使った後僕に攻撃を仕掛けてきた。

 ゴーストは魔法攻撃を使い、炎と氷の攻撃を僕に放つ。
 マントで攻撃を防いでも痛い。

 そしてゴーストが魔法を撃ち尽くすとスケルトンが木の棒で殴りかかって来る。

「うあああああああああああああああああ!」

 僕は叫び声を上げながら攻撃し続けた。

『マント召喚レベル6→7』

『防御力30→35』

 レベルが上がった。
 スキルは使い続けるだけじゃなく、危機感があった方が上がりやすい。
 ぼーっとしてスキルを使うより意識して使う事でレベルは上がりやすくなっていくんだ。
 僕はいつも怖い思いをしてきた。

 ハーブトレント以外を倒す。

「おい!遅すぎだ!ちんたらやってんじゃねえ!」

 そう言ってゴリ社長が残ったハーブトレントを倒す。

 もう、疲れた。

 手が、痺れる。

「もたもたすんな!薬草採取だろうが!」
「……はい」

 僕はゴリ社長に怒鳴られながら薬草を採取し続けた。

 ゴリ社長はゴーストとスケルトンを倒した後の魔石を拾って自分に使い、EXPを上げていく。
 本当は会社として倒したものを自分に使うと泥棒になるけど、この会社にルールは無い。

 僕は皆が休む中、休むことが出来ずひたすら薬草採取をし続けた。


 僕はポーション王子と呼ばれ成功したクラッシュに憧れてブラックポーションに入った。
 クラッシュは本当の王子じゃないけど、若いのに経営者になって強くて、見た目もカッコよかった。

 けど現実は違った。

 ポーション王子のクラッシュは冷たい。
 
 ゴリ社長は僕をいじめる。

 苦しい。

 奪われるのは嫌だ。

 会社を辞めて、会社から奪われなくなってから……

 僕はどうやって生きて行けばいいんだろう?
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

処理中です...