上 下
188 / 191

第188話

しおりを挟む
 ハザマから戻って来るとみんなが俺に抱き着いた。

「フトシ君! お疲れ様です!」
「フトシ、ゆっくり休もう」
「フトシ君、お疲れ様」
「フトシ君、もう無理はしないでね」
「無事でよかったよお」
「一件落着です☆」

「一件落着なのか?」
「はい、日本はかなりいい方です☆」

 ネットを見ずにレギオンを倒す事だけに集中していた。
 そう言われると日本や世界がどうなったのか気になってしまう。

「世界は、日本は、どうなったんだ? 俺のやって来た事に、意味は、あったのか?」

「フトシ、今日くらいはゆっくり休もう」
「マイルームに行きましょう!」
「マイルーム、か、そうだな」

「その前に、街に戻りましょう。神殿はすぐに崩壊するわ」
「うん、戻ろう、街へ」

 俺は街に向かい、車に乗ると安心した。
 眠くなって背伸びをしようとした。

 横にいたユイとヒトミが俺を押さえた。

「眠ればいいのに」
「そうですよ、ゆっくりしましょう」
「悪い、しばらく、眠る」

 俺は、眠った。


 ドリーム2の近くで目が覚めた。
 車は止まっている、そうか、俺がぐっすり眠れるように、着いてもそっとしておいてくれたのか。

「あれ? ドリーム2の駐車場じゃなくて結構前で車が止まるんだな」

 車を降りて街を見ると建物が所々廃墟のようになっていた。
 歩いて前に進む。
 ドリーム1の建物が崩れて完全に廃墟になっていた。

「日本は、どう、なったんだ?」

 ゴウタさんが笑顔で手を振って出迎え、近づいた。
 そして俺に肩を置いた。

「犠牲は出たが、新しく発展しようとしている場所もある。まだまだ日本は捨てたもんじゃねえさ」

 ドリーム2を見ると、周りには畑が広がっている。
 トマトや、なす、キュウリが実っていた。
 水魔法の雨を浴びて輝いている。
 ドリーム2は無事だった。

 ドリーム2に入るとたくさんの人がいた。

「フトシ君! お疲れ様!」
「フトシ君、お帰り!」
「お疲れ様」
「今までありがとう!」

 人間は生きていける。
 ラグナロクは絶望ではないのかもしれない。
 そう思いながらドリーム2の中に入った。


 数日後、俺・ユイ・ヒトミは真夏の卒業式を迎えていた。
 体育館に生徒は3人だけ。
 少ない先生、ゴウタさん、そして俺の両親が卒業式を見守る。

 セミの鳴き声と温かい空気が心地いい。
 モンスターを倒して、途中からあまり高校には通っていなかった。
 体育館が懐かしく感じた。

 卒業式が終わるとヒトミが大きな声で言った。

「6人で結婚式です!」
「また!」
「また3人の結婚式をやるので私ももう一回やります!」

「いいんだけど、小さく、ひっそりとやろうな」

 ドリーム2で訓練を受け、前向きに生きていく人だけではない。

 モンスターに襲われて家を無くした人。
 政府に対してデモを行う人と反応は様々だ。
 中には「結婚式をやるくらいなら俺達を守れよ!」とか言ってきそうな人もいる。

「配慮はします!」

 結界が消えて世界が本来の姿に戻りつつある。
 世界の法則は変わり、モンスターが世界に出てくるようになった。
 ラグナロクが起きて日本にもモンスターが増えている。
 犠牲者は増えるだろう。

 でも、何故だろう?
 前より居心地がいい。
 自分の顔が笑顔な事に気づいた。
 俺は、おかしいのか?


 小学校の頃、不良グループに囲まれたあの時を思い出した。

『おーい! 踊ってみろよ!』

 しぶしぶブレイクダンスを踊ると蹴られた。
 笑いながら蹴られた。

『やめて! 痛い痛い!』

 不良グループは笑いながら俺を蹴って遊んだ。

 そうか、俺は、ふて腐れて、ダンスを辞めた。
 ここは居心地がいい、没頭しても何も言われない。
 人が良いんだ。

 久しぶりに空を見上げた。

 きれいな空、

 優しい空気、

 大空をはばたく鳥、

 この世界は、とてもきれいだ。

 END




 あとがき

 これ以降は蛇足の後日談を気まぐれに投稿する予定です。
 あいつどうなった? とか、世界がどうなったのか? などは後日談で触れていく予定です。






 

 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。 遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。 「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。 「異世界転生に興味はありますか?」 こうして遊太は異世界転生を選択する。 異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。 「最弱なんだから努力は必要だよな!」 こうして雄太は修行を開始するのだが……

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

処理中です...