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第54話

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 2日目の大戦が終わり本陣に帰還する。
 変態仙人とマッチョは無事ですぐ元気になった。
 

 味方陣地に帰るとチョコが俺に抱き着いた。

「アキ君、良かったですよ!かっこよかったです!」

 回復したプリンが走って来る。

「アキ!」

 そして俺に抱きついた。

「良かったよお!うええええん!」

 ミルクさんが俺に抱きついてきた。

 皆が拍手する。
 皆が声をかけてくる。

「アキ、お前は英雄だよ!」
「アキ君、ありがとう!」
「次は私を抱いていいんだよ!」

 俺は誰も抱いてないんだけど。

「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺だけの力で倒したわけじゃない!4人のエースが拳の英雄を消耗させた!指揮官の指揮も良かった!右翼みんなの力だろ!」



「さすが英雄だわ!謙虚なのね!」
「アキ、私は確かに指揮をした!だが言おう!この勝利はアキの力によるものだ!」
「指揮官がああ言ってるんだ、やっぱりアキの力だぜ!」

 あ、これ何言っても駄目な流れだ。

 ……3人が抱き着いたまま離れない。
 美女3人にここまで密着されたのは人生初かもしれない。
 いや、油断は禁物だ!

 性欲に負けてはいけない!
 戦いが安定するまで性欲は訓練に変換すると決めている!
 死にたくないのだ!

「英雄が何かを決意した目をしているわ!」
「次もやってくれるぜ!」

 俺はしばらく褒められ続けた。



 ◇



 やっと収まって来た。

 王が左右に英雄を連れて歩いてくる。
 後ろには近衛もいる。

「アキ、よくやってくれた。アキのおかげで今日も救われたのだ!そうだ、プリンを嫁にやろう!他に好みの女性は居ないか?チョコとミルク以外でだ」
「え?」

「僕の娘も嫁にして、ミルクも嫁にするとして、他に誰がいいのかな?」

 グラディウスは本気かどうか分からない言い方で笑いながら言った。

「ちょ、また皆が騒がしくなってきた!グラディウス、冗談はやめてくれ」

 グラディウスが真顔で俺の両肩に手を置いて言った。

「これ本気だから。チョコを見てたら好かれてるって分かるだろ?早く孫を見せる義務があるよ!パパである僕にねえ!僕は孫が見たい!」

「俺は平民だ」
「うむ、平民だが英雄だ。英雄になれば爵位も与える事となる。貴族で英雄となれば子孫を残す事が国の繁栄につながる。プリンを嫁に貰わねばプリンは一生心に傷を負ったまま生きていくであろう」

 クラフトが横から歩いてくる。

「クラフト、止めてくれ。王とグラディウスが俺をからかって来る」
「どう見ても本気で言っている。すぐに3人を嫁にして話を終わらせるのがいいのではないか?」

「クラフトだって英雄みたいなものじゃないか!俺の事を言う前にいつも文句を言うフリをして近づいてくる錬金術師のお姉さんの子供を産んでから言ってくれ」
「結婚していないのだ」
「え?結婚してないのか!」
「……話を逸らすのは良くないのだ」

「静まるのだ。2人共結婚すればいいではないか!私も孫が欲しい!」
「まずはこの闘いを終わらせるのが先だ」

 そのまま豪華な食事が用意され、食事会が始まった。
 こんな感じでいいのか?
 今戦争中だけど?

 いや、でも、戦争だからこそ笑える時には笑っておく方がいい!
 緊張しっぱなしでは壊れるだけだ。





 
【武器の英雄、ウエポン視点】

 私とワッフル様、そしてセバスが席に座って会議を進める。

「やあ、拳の英雄がやられたみたいだね」

 闇の英雄が部屋に入って来る。

「どうしたのだ?会議に興味があるのか?」
「まあね。次どうするのか気になったんだ」

 そう言いながら席に座った。

「では会議を始める。報告を頼む」

 軍師の男が話を始めた、

「敵軍の兵数は6000、フレイム王国軍は17000の兵が残っております。兵数はこちらが3倍ほど上で遥かに優勢です」

「右翼の大勝が効いているようだな」
「そうですわね。2発のブラックホールとライダーの逃走のおかげですわ」
「姫騎士には無理をさせ過ぎた。倒れる者も出てきたのであろう?」
「そう、ですわね」

「うむ、明日は姫騎士とセバスは休ませる。だが完全に余裕があるわけではない!確実に勝利を掴みに行く!こうなってからの敵は底力を見せてくるものだ!」

 闇の英雄が文句を言わぬように配慮しつつ、理由を言ってセバスと姫騎士には休みを宣言した。

「となれば、明日戦える英雄は我と闇の2人だけとなる。拳の英雄が倒された件にも触れねばなるまい」
「はい、拳の英雄は4人のエースクラスと戦った後。ボマー、ものまね士アキに打ち取られたようです」

「う~む、アキは強いのか?いや、軍に強いのは分かっている。だが単体で拳を倒せる力があるのか?」
「それが、敗走した兵に話を聞いてもはっきりしないのです。ある者は拳の英雄が弱っていたと言い、ある者は拳の英雄が拳で撃ち負けたと言っているのです。もう少し時間を頂きもっと聞き取りを重ねたいのです」

 拳とアキは戦場を離れて戦ったという。
 あまりにも目撃情報が少ないのだ。

「うむ、他に気がかりや言う事はあるか?」
「気になる点は先ほどもありました兵士の疲労です。明日の戦いは少し早めに終わらせたい所ではあります」

「うむ、他には?」
「物資の消耗が想定以上に激しい点です」
「ボマー、アキの奇襲の影響か」
「はい、その影響が大きいかと」

「物資の面で考えた場合、いつまで戦える?」
「今のペースですと、後5日前後かと思います」
「十分だな、他には?」

「ありません。気づきがあれば後で報告します。聞き取りを再開してもよろしいですか?」
「うむ、頼む」

 軍師が部屋を出て行った。
 闇の英雄は何か言いたそうに笑っている。

「マター、何かあるのか?あれば聞く」
「次はものまね士と戦いたいんだ」
「悪くは、無いか」

 アキは軍に対して圧倒的な強さを持つ。
 矢と魔法をすべて躱しながら前線に迫り爆炎ナイフを投げ込み陣を崩壊させる。
 奴の厄介な点は斥候の回避能力と錬金術の爆炎ナイフ、両方を使える点にある。
 密集すればアキの爆炎ナイフが飛んでくる。
 散開すれば兵に囲まれて敵軍に各個撃破されていく。
 アキに遠距離攻撃を向ければ敵軍がペースを掴み、アキを放置すれば爆炎ナイフで陣を崩され戦士部隊が転倒した兵士を殺していく。

 常に理不尽な2択を迫られ続け、指揮が混乱する。

 だが、その点で行けばこちらも負けてはいない。
 闇の英雄、マターは1撃のブラックホールで数百の敵を殲滅できる。
 それならば同じ条件に持ち込める。

 更にアキのいる敵右翼に当てるように多くの兵を配置すれば優位に戦いを進められる。
 もっとも、敵が明日も同じ陣で攻めてくるかは分からんがな。

「うむ、そうしようではないか!」
「決まりだね。後は興味ないよ」
「うむ、明日に備えて休んでくれ。後は我と軍師で話を進める」
「頼むよ」

 闇の英雄が出て行くと会議を終わらせた。

 次の配置を考えるのが楽しくなりにやけてしまう。
 私は狂っているのだろう。
 大戦に心が躍る、その狂気を冷静なもう一人の自分が見つめる。

「では会議を終わる!ワッフル様とセバスはゆっくり休むのだ!」

 こうして会議は終わり、我は陣を練り続けた。
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