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第46話
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【味方本陣、ライダー視点】
私は一番槍を任された。
これはピンチではなくチャンスだ。
王は私の有能さを分かっている。
もちろん、凡庸な者にとって最前線はピンチでしかない。
しかし私は違う!
王の期待に応え、私の最強ダッシュドラゴン軍団で敵を蹂躙する。
私の戦果を持ってプリンを正式にもらい受け、そして次期王になるのだ!
王都に残して来た王子など私の活躍に比べれば霞む存在となるに違いない!
「ライダー、君自身が最前線に出るよう言われているはずだよ」
「黙れグラディウス!今精神を集中させているのだ!」
側近が声をかけた。
「ライダー様!敵軍が迫ってきます!矢の撃ち合いも始まりました!今すぐ始めなければ陣が完成しません!」
「うむ、一気に前に出る!最強戦術・車輪の陣!」
車輪の陣、それはナイツ家に伝わる最強戦術だ!
円のように陣を配置し、ダッシュドラゴン部隊が疲れて動けなくならぬよう、ローテーションで円を周りながら戦う戦法だ。
対して敵はただやみくもに前に進むだけだ!
最前線の兵は休めぬまま疲弊し、動けなくなっていく中、こちらは円の後ろにいる兵が休むことができる。
「さあ、5000のダッシュドラゴン部隊よ!蹂躙せよ!」
「ライダー様、円の中心ではなく円に入るのです!それが王命です!」
「私には軍を指揮する重要な役割があるのだ!」
「それは私が行う事になっております!どうかライダー様のお力をお見せください!」
「黙れ!今は時間が無いのだ!」
「しかし王命です!」
「もう敵が迫って来た!時間は無い!」
「く、分かりました。我らが前に出ます!」
「貴様らはここに残れ!」
「ですが我ら500の兵が前に出なければ前線の負担は大きくなります!戦いが進み、ダッシュドラゴン部隊の数が減れば車輪の陣を維持出来ません!いえ、敵の策によっては万全の準備をしてもなお陣を維持できない場合もあるのです!く、もう敵が迫って来たか!」
敵とダッシュドラゴン部隊がぶつかる少し前に空間が歪んだ。
黒い大きな球体に味方の軍が吸い込まれていく。
黒い球体が消えると、原形を失った人間だった物とダッシュドラゴンだった物と思われる死体が地面に落ちる。
「何、だ、あれは!数百の兵が倒されたのか!」
「闇の英雄が放ったブラックホールの魔法でしょう。闇の英雄が使える固有スキルです」
「そ、そうか、だが、ブラックホールを使えるのは1回だけのはずだ」
その瞬間空間がまた歪み。黒い球体が発生した。
更に数百の兵が倒された。
馬鹿な!1回だけしか使えぬはず!
闇の英雄は進化している!
「車輪の陣を小さくするのだ!陣を立て直せ!ライダー様!すぐにお指示を!」
「わ、分かっている!」
「次は500の兵を円に補充するのです!我らが陣に加わります!」
「ま、待て!だ、ダメだ」
「このままでは陣が崩壊します!もうすでに多くの兵が無くなりました!陣が崩壊すれば我らは包囲され数の力で押しつぶされます!今空いた輪に我らが入ればカバーできるのです!」
「だ、ダメだ。後ろに、下がる」
「何を言っているのですか!」
「命令する!陣を下げよ!」
「お待ちください!どうか!これ以上恥をさらすのはおやめください!このまま戦えばまだ勝てます!負けてはいません!」
「陣を下げよ!」
車輪の陣が後ろに後退すると前から奴らが現れた。
300の白い騎士団が走り、その前には漆黒の短剣使いが物凄い速度で走って来る。
そしてダッシュドラゴン部隊を倒していった。
更に拳の英雄が拳を前に突き出した瞬間に兵士が何人も吹き飛ばされ、武器の英雄が武器を宙に浮かせながら迫って来る。
「ああああ、て、撤退だあああ命令だ!撤退しろおおおおおお!」
「我らはまだ負けていません!英雄とて万能ではありません!スタミナはいずれ切れます!我らは誇り高きダッシュドラゴン部隊ではありませんか!まだ十分戦えるのです!!」
「撤退だああ!!」
私は部下を引き連れて本陣と左翼の間を通るように撤退した。
うるさい側近の言う事など聞いてはいられん!
後ろから奴が来た。
漆黒の化け物!
そしてその後ろから300に白騎士!
歩兵とは思えぬ速度で迫って来る。
私の乗るダッシュドラゴンは漆黒に倒され、私は固有スキル・生存本能の力で後ろに下がった。
私の近くにいた500のダッシュドラゴン部隊が倒されていく。
私だ!優秀な私を狙って潰す気だ!
漆黒に殺される!
「撤退だああああ!!!」
そう言いながら私は誰よりも早く、ダッシュドラゴンよりも早く後ろに下がった。
無事に逃げると側近が言った。
「今がチャンスです!敵側面からダッシュドラゴン部隊による奇襲を仕掛けるのです」
「だ、ダメだ。命令する!今日はもう終わりだ!」
他の兵士からも奇襲をかけるよう何度も意見されたが私は聞かず、本陣が押されていくのをただ見ていた。
股が湿っているのを感じ、私が失禁している事に気づいた。
私は一番槍を任された。
これはピンチではなくチャンスだ。
王は私の有能さを分かっている。
もちろん、凡庸な者にとって最前線はピンチでしかない。
しかし私は違う!
王の期待に応え、私の最強ダッシュドラゴン軍団で敵を蹂躙する。
私の戦果を持ってプリンを正式にもらい受け、そして次期王になるのだ!
王都に残して来た王子など私の活躍に比べれば霞む存在となるに違いない!
「ライダー、君自身が最前線に出るよう言われているはずだよ」
「黙れグラディウス!今精神を集中させているのだ!」
側近が声をかけた。
「ライダー様!敵軍が迫ってきます!矢の撃ち合いも始まりました!今すぐ始めなければ陣が完成しません!」
「うむ、一気に前に出る!最強戦術・車輪の陣!」
車輪の陣、それはナイツ家に伝わる最強戦術だ!
円のように陣を配置し、ダッシュドラゴン部隊が疲れて動けなくならぬよう、ローテーションで円を周りながら戦う戦法だ。
対して敵はただやみくもに前に進むだけだ!
最前線の兵は休めぬまま疲弊し、動けなくなっていく中、こちらは円の後ろにいる兵が休むことができる。
「さあ、5000のダッシュドラゴン部隊よ!蹂躙せよ!」
「ライダー様、円の中心ではなく円に入るのです!それが王命です!」
「私には軍を指揮する重要な役割があるのだ!」
「それは私が行う事になっております!どうかライダー様のお力をお見せください!」
「黙れ!今は時間が無いのだ!」
「しかし王命です!」
「もう敵が迫って来た!時間は無い!」
「く、分かりました。我らが前に出ます!」
「貴様らはここに残れ!」
「ですが我ら500の兵が前に出なければ前線の負担は大きくなります!戦いが進み、ダッシュドラゴン部隊の数が減れば車輪の陣を維持出来ません!いえ、敵の策によっては万全の準備をしてもなお陣を維持できない場合もあるのです!く、もう敵が迫って来たか!」
敵とダッシュドラゴン部隊がぶつかる少し前に空間が歪んだ。
黒い大きな球体に味方の軍が吸い込まれていく。
黒い球体が消えると、原形を失った人間だった物とダッシュドラゴンだった物と思われる死体が地面に落ちる。
「何、だ、あれは!数百の兵が倒されたのか!」
「闇の英雄が放ったブラックホールの魔法でしょう。闇の英雄が使える固有スキルです」
「そ、そうか、だが、ブラックホールを使えるのは1回だけのはずだ」
その瞬間空間がまた歪み。黒い球体が発生した。
更に数百の兵が倒された。
馬鹿な!1回だけしか使えぬはず!
闇の英雄は進化している!
「車輪の陣を小さくするのだ!陣を立て直せ!ライダー様!すぐにお指示を!」
「わ、分かっている!」
「次は500の兵を円に補充するのです!我らが陣に加わります!」
「ま、待て!だ、ダメだ」
「このままでは陣が崩壊します!もうすでに多くの兵が無くなりました!陣が崩壊すれば我らは包囲され数の力で押しつぶされます!今空いた輪に我らが入ればカバーできるのです!」
「だ、ダメだ。後ろに、下がる」
「何を言っているのですか!」
「命令する!陣を下げよ!」
「お待ちください!どうか!これ以上恥をさらすのはおやめください!このまま戦えばまだ勝てます!負けてはいません!」
「陣を下げよ!」
車輪の陣が後ろに後退すると前から奴らが現れた。
300の白い騎士団が走り、その前には漆黒の短剣使いが物凄い速度で走って来る。
そしてダッシュドラゴン部隊を倒していった。
更に拳の英雄が拳を前に突き出した瞬間に兵士が何人も吹き飛ばされ、武器の英雄が武器を宙に浮かせながら迫って来る。
「ああああ、て、撤退だあああ命令だ!撤退しろおおおおおお!」
「我らはまだ負けていません!英雄とて万能ではありません!スタミナはいずれ切れます!我らは誇り高きダッシュドラゴン部隊ではありませんか!まだ十分戦えるのです!!」
「撤退だああ!!」
私は部下を引き連れて本陣と左翼の間を通るように撤退した。
うるさい側近の言う事など聞いてはいられん!
後ろから奴が来た。
漆黒の化け物!
そしてその後ろから300に白騎士!
歩兵とは思えぬ速度で迫って来る。
私の乗るダッシュドラゴンは漆黒に倒され、私は固有スキル・生存本能の力で後ろに下がった。
私の近くにいた500のダッシュドラゴン部隊が倒されていく。
私だ!優秀な私を狙って潰す気だ!
漆黒に殺される!
「撤退だああああ!!!」
そう言いながら私は誰よりも早く、ダッシュドラゴンよりも早く後ろに下がった。
無事に逃げると側近が言った。
「今がチャンスです!敵側面からダッシュドラゴン部隊による奇襲を仕掛けるのです」
「だ、ダメだ。命令する!今日はもう終わりだ!」
他の兵士からも奇襲をかけるよう何度も意見されたが私は聞かず、本陣が押されていくのをただ見ていた。
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