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第40話

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 俺は重鎮と一緒に座っている。

 長いテーブルにサイフィス王・短剣の英雄グラディウス・竜の英雄アーチェリー、そしてクラフト公爵が座っている。

「アキ、緊張するな。それと普通に話していい」

 クラフト公爵の話で俺は少し緊張が解けた。

「うん、アルケミストと呼べばいいかな?クラフトと呼べばいいかな?」

 その瞬間王と2人の英雄が笑った。

「はっはっは、クラフトは人と話すのが苦手なのだ。そう言う所がある」
「クラフトはいつもそうよね」
「クラフトだからねえ。諦めよう。それとクラフトと呼べばいい」

「何を話してもいいのか?」
「構わないのだ」

「ふ~。さっきの王様の質問が怖かった。俺を睨んで見透かしてくるような目が怖い」
「むう、それはすまなかった」

 3公爵がまた笑う。

「王も人の事は言えないのだ」

 クラフトはぽつりと言った事でグラディウスはつぼにハマったように笑う。

「私も精進が必要だな。さて、話は本題に戻る。わが軍は色々と問題を抱えている。軍備が足りない点、その素材が足りない点、隣国のフレイム王国に比べ兵数も英雄の数も劣っている点。アキ、何かできる事はあるか?」

「軍備は武具の事か?」
「その通りだが、食料なども全体的に不足している」
「俺は3人で奈落のダンジョンで暮らしていた。チョコやプリンが良ければ素材を渡したい。その中に魔石がある」

 クラフトが急に立ち上がった。

「魔石!早く出すのだ!」

 魔石は魔道具の材料になったり、武具を強化したり、魔力を引き出す事でMPを消費せず武具を作る事が出来る。

「だからチョコとプリンの確認を取りたい」
「事前に確認は取ってある。2人共判断はアキに任せると言った」
「なら出そう。クラフト、落ち着いてくれ。すぐに出す」
「来るのだ!それと私のものまねをしつつ錬金術を手伝うのだ!」

「会議は?」
「終わりよね?」
「やる事は決まったのだ!時間との戦いなのだ!」
「深刻な問題としては最速で終わったのではないか?」
「そうね」
「クラフトとアキにまかせようじゃあないか」


 俺はクラフトに連れられ砦に入った。

「あれ?みんな先に進んでいくけど?」
「遅れてもいいのだ!大戦に間に合わせるのだ!」

 数十人の錬金術師とその護衛は砦に泊まって錬金術を行う事になっているらしい。
 俺はそのメンバーと一緒に砦に泊まる事になった。

「ん~と、何が必要なんだ?」
「リストがあるのだ」

「ふむふむ、ポーション5万、5万だと!剣が3450、槍が2500、項目が多い。1品ごとの数も多い!こんなに足りないのに戦争しようとしていたのか?」

「うむ、だが、間に合わせる。みんな集まるのだ!」

 錬金術師が集まって来る。

「アキ、出すのだ」

 俺はストレージからダンジョンで取った素材を出す。

「「おおおおおおおおお!!」」

 錬金術師の目が輝いた。

「これだけあればたくさん作れるぜ!」
「魔石よ!魔石だわ!」
「おい!アースドラゴンの鱗とモグドラゴンの毛皮だ!」
「防具は一気に進むな」

「毎日肉が食えるぜ!」
「お前食いすぎるなよ!」
「あなた食べ過ぎなのよ!痩せたら?」
「う、うるさい!」

 太った錬金術師は涙目になっていた。

「鉄鉱石もたくさんある!」
「武器もいける!」
「へっへっへ!魔石を使い放題だ!」

「遅れを一気に取り戻すのだ!」
「元はと言えば数年前にクラフト公爵が勝手に旅に出たのが悪いんですよ!」

 クラフトの奥さんか?

「過去の過ちを蒸し返しても何も生まない!生まないのだ!すぐに錬金術を始めるのだ!」

 こうして錬金術を使い物資を作り始めた。
 俺はクラフトのものまねをしてポーションを作る。

『錬金術7→8』

「え?もうレベルが上がった!クラフトの錬金レベルが高いのか!」
「年中無休だったのだ」

 クラフトが空を見ながら言った。
 嫌な事があったようだ。
 しかも奥さんに見張られてるし。

 俺は黙々とポーションを作り、武具を作る。



 2日が経ち俺の錬金術がレベル10になった頃やっとノルマが終わる。
 最近スキルの伸びが速い。
 一流の仕事を見て、俺は興奮しながら錬金術を使っていた。
 クラフトがしばらく眠り、部屋から出てくると俺に話しかけた。

「助かったのだ」
「それはこっちの方だ。錬金術のレベルが10になった」
「到達したか」
「ああ、到達だ」

「固有スキルは覚えたか?」
「いや、ものまね士だからか、まったく覚えられていない」
「ふむ、私はものまね士でも固有スキルを覚えられると思っているのだ」

「固有スキルのイメージが全く湧かない」
「まずは思い込みを捨てるのだ、と言っても難しいか。私の固有スキルを見せるのだ。今から作るのはグラディウスが使う短剣なのだ」

 そう言ってクラフトはテーブルに材料を置き、両手をかざして集中する。

「固有スキル・至高錬成!」

 クラフトの手には薄く光を放つ短剣が握られていた。

「このスキルは、ただ強く錬金術を使った、それだけのスキルなのだ」
「強く、使う」
「そうなのだ。斥候の場合は速度強化と短剣や弓を一瞬だけ強く使う事でアーツ系のスキルを使用出来るのだ。戦士の場合も身体強化と武器スキルを一瞬だけ強く使う事で技にまで昇華させている。魔導士の場合は炎と風を合わせてファイアストームを使うなど、要は組み合わせと強化、これだけなのだ」

「俺はものまね士で戦士のように身体強化や武器を強化出来ない。斥候のような強力なスピード攻撃も出来ない。錬金術の強化も魔導士の組み合わせも全部ダメだった。魔力の質が器用貧乏なんだ」

「ふむ、人の場合を考えてみるのだ。最初は皆親のマネをするのだ。これはものまねに似ているのだ。だが、親のマネをやめて自分で考えるようになることで自分の色が出るのだ。ものまね士は器用貧乏だが、中途半端でも、今出来るすべてを込めてみるのだ。上げられるスキルを上げてしまった後でもいいのだ。試してみるのだ」

「今できるすべてを、込める、か」
「ものまねの向こう側はきっとあるのだ」

 そう言って普段笑わないクラフトが笑った。

『ものまねの向こう側』

 その言葉が、俺の中にしばらく響いていた。
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