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第78話
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俺達は東北に行った時と同じメンバーで九州の福岡に到着した。
九州をぐるっと一回転するように移動しつつ溢れ出しが起きそうなダンジョンにいるモンスターを倒して福岡に戻ってくる計画だ。
最初は順調だった。
だが問題が起きた。
モンスター狩りを始めて7日目、ごうが倒れた。
俺は配信の最中コメントを見ていなかった。
スマホもマナーモードにしていて帰るまで気が付かなかった。
俺は病院に走った。
病院に入ると病室の前にみんながいた。
工藤さんが悲しそうに言う。
「過労です豪己さんには無理をさせ続けていました」
「ごうは起きてる?」
「はい、ですが、疲れています。休ませてあげましょう」
俺は構わず病室に入った。
体調の悪そうなごうの顔があった。
それでもごうは俺に笑顔を向ける。
「……よう、がはは、ははは、そんな顔すんな」
「……」
「……俺も、年を取っちまったなあ」
「違う! ごうに無理をさせ過ぎたせいだ!」
「おいおい、病院では静かにな」
「あ、ああ、悪い」
「年なのは本当だ。少しずつ、少しずつ、体が動かなくなっちまう。特にスタミナがなあ、すぐに息切れしちまう。一緒にダンジョンに潜ったみんなはどんどん伸びている、だが俺は年を取っていく、人は年を取って衰えていく。普通の事だぜ」
ごうの顔を見て分かった。
ごうには時間が無い。
いつまでも元気ではいられない。
そして無理をさせ続けてきた。
人は命の時間を使って生きている。
ごうは目の前で黒矢を殺され、白帆を担いで逃げた。
どんなに悔しかっただろう。
ごうは目の前で死ぬ白帆を見送った。
どんなに悔しかっただろう。
ごうが無理をする気持ちが分かる。
ごうは皆をまとめ、育てた。
そこに多くの時間を人に使った。
協力者は増えた。
でも訓練を受けて多くの人がごうの元を去っていった。
ごうはそれでも人を育て続けた。
「達也、ダンジョンのモンスターを倒してくれ」
「分かった」
「期待してるぜ」
「任せてくれ」
俺は病室を出た。
「工藤さん、ごうの代わりにダンジョンで指揮をお願いします」
「分かりました! みんな、明日から豪己さんがいない、それでもついて来て欲しい!」
みんなが頷いた。
「今日は帰ろう、明日からだ」
ホテルに戻るとひまわりから連絡があった。
「もしもし」
『もしもし、豪己さんの実家、住所が分かったよ』
「そうか、ありがとう」
『メッセージに豪己さんの住所と電話番号を送っておくね』
「うん、それじゃ」
『ばいばい』
ごうの実家が分かった。
だがごうからモンスター狩りを託さた。
『達也、ダンジョンのモンスターを倒してくれ』
俺は任せてくれと言った。
だが、ごうの実家に行きたい。
ごうの約束よりも家族の方が大事だ。
俺1人でごうの実家に行こう。
うまくいくかどうか分からない。
それでもごうがもし家族と和解できるならどんなにいいだろう。
俺は即ホテルの部屋を出た。
工藤さんの部屋に向かい歩きながら工藤さんに電話した。
「もしもし、工藤さん。今から話をいいですか? いや、話をしたい」
「はい、どう、しました?」
工藤さんが部屋を出るとすぐに俺がいた為工藤さんが驚く。
「お!」
「丁度いい、私用が出来ました。少し休みます」
「私用、というのは?」
「私用です、急ぎなのですぐに出かけます。モンスター狩りはしばらく俺抜きでお願いします」
「え、ちょ!」
俺はすぐにチェックアウトして部屋を出た。
そして東京、ごうのいる実家に向かった。
◇
空港に着くと外にハンドスピナーの5人がいた。
配信をしている。
「達也さん、待っていました」
ハンドスピナーがいつものようにハンドスピナーを回さない。
リーダーが前に出た。
「ど、どうしたの?」
「工藤から聞きました。いえ、工藤がひまわりさんに事情を聞いてその話を聞きました」
「でも、今福岡に行くとあれだよね?」
政府の方から高レベル冒険者はここに残って欲しいと要望を受けている。
「強い要請はあくまで要請です。今は、ハンドスピナーを回している場合じゃない!」
ぐしゃぐしゃ!
リーダーがハンドスピナーを握り潰すと残る4人もハンドスピナーを握りつぶした。
「みんな、漢だな」
「達也さんがいない間! 九州は任せてください!!」
「「任せてください!!」」
ハンドスピナーの5人が叫ぶと周りにいた人が全員振り返る。
リーダーが右手を挙げた。
俺も右手を上げてハイタッチをした。
残る4人も俺とハイタッチをする。
『どういう事?』
『何でハンドスピナーを握りつぶした?』
『ハンドスピナーを回している場合じゃないってなんだ?』
『今回のハンドスピナーはシュール過ぎてついていけない』
『でも達也の顔は真剣だ』
『てか九州は今追い込まれてないよね?』
俺は空港を出て歩き、ハンドスピナーの5人は空港に入って行く。
ハンドスピナー、ありがとう。
九州をぐるっと一回転するように移動しつつ溢れ出しが起きそうなダンジョンにいるモンスターを倒して福岡に戻ってくる計画だ。
最初は順調だった。
だが問題が起きた。
モンスター狩りを始めて7日目、ごうが倒れた。
俺は配信の最中コメントを見ていなかった。
スマホもマナーモードにしていて帰るまで気が付かなかった。
俺は病院に走った。
病院に入ると病室の前にみんながいた。
工藤さんが悲しそうに言う。
「過労です豪己さんには無理をさせ続けていました」
「ごうは起きてる?」
「はい、ですが、疲れています。休ませてあげましょう」
俺は構わず病室に入った。
体調の悪そうなごうの顔があった。
それでもごうは俺に笑顔を向ける。
「……よう、がはは、ははは、そんな顔すんな」
「……」
「……俺も、年を取っちまったなあ」
「違う! ごうに無理をさせ過ぎたせいだ!」
「おいおい、病院では静かにな」
「あ、ああ、悪い」
「年なのは本当だ。少しずつ、少しずつ、体が動かなくなっちまう。特にスタミナがなあ、すぐに息切れしちまう。一緒にダンジョンに潜ったみんなはどんどん伸びている、だが俺は年を取っていく、人は年を取って衰えていく。普通の事だぜ」
ごうの顔を見て分かった。
ごうには時間が無い。
いつまでも元気ではいられない。
そして無理をさせ続けてきた。
人は命の時間を使って生きている。
ごうは目の前で黒矢を殺され、白帆を担いで逃げた。
どんなに悔しかっただろう。
ごうは目の前で死ぬ白帆を見送った。
どんなに悔しかっただろう。
ごうが無理をする気持ちが分かる。
ごうは皆をまとめ、育てた。
そこに多くの時間を人に使った。
協力者は増えた。
でも訓練を受けて多くの人がごうの元を去っていった。
ごうはそれでも人を育て続けた。
「達也、ダンジョンのモンスターを倒してくれ」
「分かった」
「期待してるぜ」
「任せてくれ」
俺は病室を出た。
「工藤さん、ごうの代わりにダンジョンで指揮をお願いします」
「分かりました! みんな、明日から豪己さんがいない、それでもついて来て欲しい!」
みんなが頷いた。
「今日は帰ろう、明日からだ」
ホテルに戻るとひまわりから連絡があった。
「もしもし」
『もしもし、豪己さんの実家、住所が分かったよ』
「そうか、ありがとう」
『メッセージに豪己さんの住所と電話番号を送っておくね』
「うん、それじゃ」
『ばいばい』
ごうの実家が分かった。
だがごうからモンスター狩りを託さた。
『達也、ダンジョンのモンスターを倒してくれ』
俺は任せてくれと言った。
だが、ごうの実家に行きたい。
ごうの約束よりも家族の方が大事だ。
俺1人でごうの実家に行こう。
うまくいくかどうか分からない。
それでもごうがもし家族と和解できるならどんなにいいだろう。
俺は即ホテルの部屋を出た。
工藤さんの部屋に向かい歩きながら工藤さんに電話した。
「もしもし、工藤さん。今から話をいいですか? いや、話をしたい」
「はい、どう、しました?」
工藤さんが部屋を出るとすぐに俺がいた為工藤さんが驚く。
「お!」
「丁度いい、私用が出来ました。少し休みます」
「私用、というのは?」
「私用です、急ぎなのですぐに出かけます。モンスター狩りはしばらく俺抜きでお願いします」
「え、ちょ!」
俺はすぐにチェックアウトして部屋を出た。
そして東京、ごうのいる実家に向かった。
◇
空港に着くと外にハンドスピナーの5人がいた。
配信をしている。
「達也さん、待っていました」
ハンドスピナーがいつものようにハンドスピナーを回さない。
リーダーが前に出た。
「ど、どうしたの?」
「工藤から聞きました。いえ、工藤がひまわりさんに事情を聞いてその話を聞きました」
「でも、今福岡に行くとあれだよね?」
政府の方から高レベル冒険者はここに残って欲しいと要望を受けている。
「強い要請はあくまで要請です。今は、ハンドスピナーを回している場合じゃない!」
ぐしゃぐしゃ!
リーダーがハンドスピナーを握り潰すと残る4人もハンドスピナーを握りつぶした。
「みんな、漢だな」
「達也さんがいない間! 九州は任せてください!!」
「「任せてください!!」」
ハンドスピナーの5人が叫ぶと周りにいた人が全員振り返る。
リーダーが右手を挙げた。
俺も右手を上げてハイタッチをした。
残る4人も俺とハイタッチをする。
『どういう事?』
『何でハンドスピナーを握りつぶした?』
『ハンドスピナーを回している場合じゃないってなんだ?』
『今回のハンドスピナーはシュール過ぎてついていけない』
『でも達也の顔は真剣だ』
『てか九州は今追い込まれてないよね?』
俺は空港を出て歩き、ハンドスピナーの5人は空港に入って行く。
ハンドスピナー、ありがとう。
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