魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は世界に1人のトリプルジョブに至る~

ぐうのすけ

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第75話

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「僕はまだ出来ていない部分がありました」

『あれだけやってまだ俺は出来ていないとか、鳥肌が立つわ』
『達也は高ランク冒険者が効率よくモンスターを狩るヒントをみんなに見せた。ダブルの10人を完成させた。今は合計110億の寄付で次の冒険者を育てる為に未来に種を蒔いている。更に北海道の溢れ出しが起きそうなダンジョンを狩った。その上で秘書を雇いごうの負担を減らすべく悪質コメントのブロックや弁護士相談に動き出した。レベル6冒険者の指導もした。使い魔を用いた戦い方を補助するようにうさぎを大量テイムして市場に流した。達也は数えきれないほどの功績を残している』

『1人でバズリ散らかしまくって日本の閉塞感を変えつつある』
『達也からしたらやりすぎたじゃなく、俺はまだできる事があるなんだな』
『でも、出来る事は全部やってるよね?』
『ごうがやってきた』

「達也、矢面に立たなくていい、達也はエースだ」
「ごう、バレたか」
「俺は人を育ててまとめる。達也は自分を高めてくれと約束したはずだ。俺が人をまとめる!」

『涙が出てきた』
『豪己の兄貴っぷりに心が震える』
『それを分かった上で前に出る達也もカッコよすぎるぜ』
『ワイも、こんな友人がいれば人生変わったかもしれん』

「待て待て、話をだな」
「俺は大丈夫だ、批判には慣れている」
「慣れるまで耐える今の状況が問題だと俺は思う」

「達也、本当に大丈夫だぜ!」
「皆はそう思うか?」

 工藤さんが泣きながら言った。

「大丈夫じゃありません!」

 工藤さんに続いてみんなが一斉に叫ぶ。
 全員が同時に叫んでごうに訴える。
 その想いが伝わってきた。

『兄貴! 1人で背負い込まなくていい!』
『兄貴、みんなの善意を受け取ってくれ!』
『兄キイイイイイイイイイイイイイイイいいいいいいいいいいいいい!』

 兄貴コールのコメントでスクロールが加速する。

「ごう、コメント見てみ?」
「……」

「ごうは批判も受けているかもしれない、でも分かる人にはちゃんと分かる。ちゃんと見て分かっている人もいる。ごうは矢面に立ちすぎている」

 スマホが震える。
 ごうのスマホも同時に震えた。

「ハンドスピナーから励ましのメッセージだ。ごうにも届いたんじゃないか?」
「……ああ」
「話を戻そう、俺がやっていなかった事、それは政府に要望を出す事だ」

 俺はこの配信で発言した上で政府に要望を出す。
 政治家は意外と話を聞いてくれるらしい。

 というか官僚も政治家も思ったよりは話を聞いてくれるし思ったよりも動く。
 もちろん門前払いや鼻で笑うような人間も一部いると思う。
 だが対応をする人間はまともな人が選ばれている場合が多い。

 会社も、国民も、思ったよりも案を出さない。
 多くの人が俺は知らないという態度だ。

 官僚と政治家は批判を受けている。
 みんなは案を出さないが出来て当たり前、ちょっとでも悪い事があれば叩かれる。
 それが政治家と官僚の立場だ。

 政治も官僚も批判にはうんざりしているが提案なら聞くし動く可能性が高い。
 もちろんこの配信で意見を言う事で圧力をかけている。
 圧力をかけた上で発言する。
 冒険者レベル6の立場なら実績ある者の案として聞き入れられやすくなる。

 批判は駄目だ、政治家の立場に立って伝える。
 政治家に『批判だけの人間』と思わせてはいけない。

「要望案を出す前に説明を聞いてもらえないと意味が分からないと思う。その案は自衛隊の一部を防から攻に変える事だ、それにより冒険者の横やりや多すぎる招集の回数を緩和したい」

『いやいや、無理だろ?』
『文句だけの野党と騒ぐ国民に潰されるわ』
『でも説明があると言った。説明を聞いてみよう』

「まず前提から言いたい。自衛隊を完全に防から攻に変える事は出来ていないし難しい。そしてこの問題を今の政治家の問題として考える人がいるけど実際は違う、昔の政治家が防衛する方針を打ち出してそれを変えようとする与党が野党の反対によって案が潰され続けている。それが今の現状だ」

 政治家は批判を受け続けている。
 そして政治家は言い訳を出来ない、言い訳をした時点で叩かれるからだ。
 さらにだ、政治家は意見を伝える発信力に欠ける。
 俺のチャンネル登録者数を使って主張したい事はあるはずだ。
 飴を出せば政治家は乗ってくる可能性が高い。

「政治家の方と配信をしながら自衛隊の在り方について話を聞きたい、実際裏で何が行われているか俺は知らない。どういう事があって議論を潰されているのか実際にやっている側ではないからだ。このチャンネルで政治家の方と一緒に配信をして政治家の方に主張をして貰っても構わない。その上で伝えたい」

 この場にいるみんなが俺の話を聞く。

「今はダンジョンの緊急事態だ。皆はダンジョンの緊急事態に慣れ過ぎている。デュラハンが発生するまでダンジョンのモンスターが増えた。何度もダンジョンからモンスターが溢れ出している。これは明らかに緊急事態だ。日本にいるみんなは震災に慣れ過ぎてモンスターの溢れ出しに慣れ過ぎて麻痺しているが今は緊急事態だ。防御の為にレンジャー(精鋭)だけでもダンジョンに送り込みたい、攻撃は最大の防御だ」

 緊急事態だからモンスターの溢れ出しを防ぐ防御のためレンジャーを攻撃に回す、これは屁理屈ではある。
 一気に全部を変える事が出来なくてもレンジャーが結果を出せば自衛隊を攻撃に転換したいと思っている議員の発言力が増す。
 官僚は失敗したくない、だが試験的にやってみてうまく行けば動き出す可能性がある。

 攻撃しない事でモンスターの溢れ出しが何度も起きる日本では自衛隊を『攻』に回すべきと考える人も多く意見が割れている。
 その民意を刺激する。

「一方で防衛を優先したい意見の人もいると思う、でもそのやり方は今だけ、その時だけのやり方だ。病気で言ったら対処療法で根本を治す仕組みじゃない。そして自衛隊に防衛を重視させた結果が今のモンスターが溢れ出す日本だ。自衛隊が防衛に回ったままでは未来に起こるダンジョンの溢れ出しを放置して更なるモンスターの溢れ出しを発生させる」

『自衛隊には皆を守る為にダンジョンのモンスターを倒したいと思っている人は結構いる』
『日本を守る為に自衛隊になってもモンスターを倒せなくて冒険者になった人のドキュメンタリーを見たわ』
『自衛隊じゃなくその上の意思決定に問題がある感じよね?』
『自衛隊にもっと攻めて欲しいぜ』

「それとダンジョンに入った経験がある人間なら分かると思う。守るよりダンジョンに入って戦った方が楽だ。防衛の場合、後ろに避難民がいれば自衛隊は逃げられない。でも攻撃ならまずいと思えばダンジョンから撤退できる」

『ほんとそれな、自衛隊が逃げるとめっちゃ叩かれる。でも批判する側は自衛隊を楯にしておいて逃げた上で自衛隊を叩くからな。おかしいと思うわ』
『叩く側は自分の事を棚に上げて叩くからな。そこまで言うならお前が戦えといつも思う』
『叩く側って自衛隊を攻撃させずにどうしようもない状況の防衛に追い込んで無理ゲーにしてまた叩くよね?』

『誰だって死にたくはないんだよなあ』
『ダンジョンからどのくらいモンスターが溢れてくるか分からない状況で自衛隊はよくやっていると思うわ』
『自衛隊には感謝しかないんだよなあ。防衛を強いられているのは上と民意の問題』

『批判だけでなんの案も無い議員に投票する国民は本当にまずいと思う』
『つか自衛隊を防衛に回しているせいで自衛隊の死亡率が多くなって自衛隊になりたい人が減る悪循環が起きてる気がする』

 コメントが高速で流れる。
 俺は配信を終わらせた。
 やってみなければうまく進むは分からない。

 でもやってみなければ日本はこのままだ。
 批判を受けるかもしれない。
 でもこれでいい。
 これがいい。

 ごうの批判を減らす。
 そして自衛隊を防から攻へ少しでも変える主張をする。
 冒険者の横やりと招集を減らして冒険者の時間を確保する。
 政治家に要望を出す。

 主張自体はシンプルだ。
 だがみんなはその結論に至る背景をあまりに知らなすぎる。
 主張が通らなくてもごうがどういう想いで言葉を話しているか少しでも想像できるようになれば良いと思う。


 配信を終わらせると俺の動画は伸びてバズった。
 ひまわりに政府への要望を送って貰い俺は眠った。
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