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第74話
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ごうが少し前にアップした配信を動画で見る事が出来る。
全員で動画を見た。
画面にはごうが1人でホテルの部屋に映る。
『ごうだ、今日東北の青森に着いた。空港で市長や村長からダンジョンで手に入れたドロップ品をその街に納品して欲しいと頼まれ俺は皆と相談して話し合うと決めた、だが途中で思った。冒険者までも国や市、色々な団体に縛られてしまえば思うようにモンスターを倒す事が出来なくなる。しがらみに縛られた自衛隊のようになってしまえばモンスターの溢れ出しはさらに増える。だから俺の独断で決めた。要望のあった市町村にあるダンジョンをスキップして他のダンジョンでモンスターを狩るとな。皆には俺から伝える。配信は終わりだ』
ごうは最初から決めていた。
自分1人で矢面に立つと決めていたんだ。
市長の要望が合ったあの時、その場で反論すれば他のメンバーも参戦して口論になっただろう。
そうなればみんなが叩かれる結果になっていたかもしれない。
そこまで考えて話を受け取ったと答えてそのままホテルに向かった。
そして配信で独断で決めたと言ってすべての批判を受け止めるつもりなんだ。
もし冒険者を続けられなくなるまで追い込まれたら俺に託す、ごうはそこまで考えて決めている。
ごうと俺は今の自衛隊や冒険者の在り方に危機感を持っている。
そしてそれを変えたいと思っている。
『防』に縛られ予算が無く給料を多く出来ない為人を集められない自衛隊。
自衛隊は多くの事に縛られ過ぎている。
縛られた自衛隊の分を巻き返すように冒険者に対する横やりが発生し招集も多い。
ドロップ品売却の料金が安く税が重い為海外に移住したりお金を稼いだ後はFIREする冒険者が増えている。
全部は変えられなくてもごうは少しでもその現状を変えたいと思っている。
ごうはいつもこみんなが前に出たくない状況で一番前に出る。
そして何も知らない人間や何もやらない人間ほどごうを叩く。
俺はコメントを見た。
好意的な意見は多かった。
でも否定的な意見も多い。
『溢れ出しが起きそうなダンジョンを見捨てるのか!』
『市長の意見を聞かない脳筋で草』
『独断とか暴君かよ』
批判をする人間はごうがどういう意図で発言したか分かっていない。
どんな理由で発言したか知らない。
どんな想いを背負っているか知らない。
批判の多くは知らない事から始まる。
冒険者も自衛隊もやっていない人間からの批判は多い。
こういうのは嫌だ。
ごうの想いを踏みにじる事になっても本当の事をみんなに伝えよう。
ごうだけの責任にはしない。
ごうは矢面に立ちすぎだ。
俺は異空間から撮影用のドローンを取り出していた。
みんなが俺の後ろに並んだ。
工藤さんが前に出る。
「豪己さんと達也さんに責任を押し付ける気はありません。私も撮影に参加します」
「俺もだ!」
「私も!」
「僕もだよ!」
みんなが同時に声をあげていく。
「分かった、今から配信を始める」
全員が頷いた。
ごうを助けたい気持ちはみんな一緒のようだ。
批判を受けてもいい。
俺はごうの意見に賛成する。
今は、俺の想いを伝えよう。
「配信を始める。達也です。今日はごうの事について配信します。まず経緯から、僕たちは東北にある溢れ出しが起きそうなダンジョンでモンスターを狩る予定で青森まで来ました。空港に降りると青森の市長さんや村長さんからモンスターを狩ったドロップ品はその市町村に納品して欲しいと要望を受けました。しかしそれを受けるとモンスター狩りの効率は低下します」
「ごうは、白金豪己は僕達に批判が来ないように、それでいて溢れ出しの起きるダンジョンを減らすために、独断で要望のあった市町村をスキップして他のダンジョンでモンスターを狩る事を決めました。その事でごうが批判を受けすぎている為今回はごうがどういう想いで、どういった背景で動いているのか話していきます」
『口やかましい所はスキップするのは普通の対応だと思う、市長の言う事を聞けば何も変わらない日本と同じになってしまう』
『兄貴の想いは分かるで、ごちゃごちゃ批判コメをかきこむのはキッズだろ』
『どっちに決めても批判が来る案件だよね。市長の言う事を聞けば効率ダウンになって未来に毒を蒔く決断をした事になる。市長の言う事を聞かないなら市長から批判を受ける』
『今回の遠征はごう・デュラハンキラー・ウエイブウォークでダンジョンの奥でキャンプする事でモンスターを狩る効率を爆上げする計画だった。で、一気にその街にある冒険者組合支所にドロップ品を納品すると職員からしたらこまめに納品しろとなるし職員はドロップ品の集計が遅い。後集計している間ホテルで休みますとかできなかったりする。田舎は人も設備も揃ってない』
『こまめに納品するとなれば効率を下げてモンスターを狩れと言っているのと同じ事になる』
『田舎の冒険者組合支所は役所の時間が終われば閉まるからね。冒険者側は納品の時間を合わせないと悪くなる。もっと言えば役所は土日に閉まる』
『役所が空いてる時間って冒険者が活動している時間と被るんだよな』
『こういう微妙な件はどう動いても批判が来る、気にせず最大効率でモンスターを狩ればいいよ』
『気にしないで兄貴の言う通りで良い』
『未来の事を考えるとモンスターを効率よく間引いた方が安全だと思う』
『多分、ごうと達也が本当に言いたいのは納品指定だけじゃなくて、こういう横やりの1つ1つが毒のように冒険者のモンスター狩り効率を引き下げている事だと思う。日本の冒険者は招集が異様に多い』
『でも、軸を納品指定の1点に絞らないとただ怒ってる感じにしかならん、こういうのは1つ1つ丁寧に伝えないと駄目だ』
『日本ってなんでこんなに口やかましいんだろうな? 結果を出しているトッププレイヤーはそっとしといてやれって』
俺はコメントを読んでいく。
「ここにコメントを書き込んでくれている方は知識を持っていて状況を把握していると思います。ですがよく分かっておられない方もいるようなので今回は詳しく話していきます」
『兄貴は変に切り取りをされて話がおかしくなったり正確に丁寧に説明すると聞いてもらえない事を考えて短く言ったんだろうな』
『短い言葉じゃないと聞かない人がたくさんいる、しゃーない』
『仕事して日々の生活に追われてるからね、分かりやすく言うしかなかったんだろう』
『批判を受けてもいいから皆に分かるように言った』
『短い言葉はネットの小姑プレーを受け入れるのと同じになってしまうからな』
「まず僕の想いから言います。僕も今は効率を重視してモンスターを狩るべきだと思います。もっと言うと今自衛隊は『防』、冒険者は『攻』の役割となっていますが、自衛隊ももっと攻めていいと思っています。この事を説明するためにダンジョンの歴史と現状をざっくり話していきます」
『結構深い所まで話すんだな』
『でもざっくり説明だ』
『ネットを見ていると学校の教科書の基本が分からん奴もいる、丁寧に説明した方がいいと思う』
「世界にダンジョンが出現してモンスターを倒す事でドロップ品と魔石が手に入る事が分かりました。資源の無い日本はエネルギーを手に入れて豊かになると期待されていましたがそうはなりませんでした。日本はエネルギーを自給出来るようになりましたがその代償としてモンスターの溢れ出しにより毎年震災が起きるような被害を発生させました」
『エネルギーは手に入ったけど安全な日本は失われたよね』
『後石油の輸入を減らすと服やプラスチックとかの素材を他の何かで代用しないといけなくなるから思ったよりはうまく行かない』
『みんな戦って死にたくないから冒険者にも自衛隊にもなりたくない』
『実際モンスターに攻撃を受けると痛いし訓練はきつい、何もやらない側からの文句は多い。日本は口やかましいんだよな』
『徴兵制が出来ないとか難しい部分がある』
「そこで国は自衛隊によりモンスターから人々を守る方針を打ち出しましたが国の予算は限られています。
命を賭けて戦う自衛隊の給料は安く、自衛隊が仕事をやめて冒険者になるならまだ良かったのですが優秀な冒険者が海外に流出する結果を招きました。
これは日本の国力が衰退しておりドロップ品の報酬を上げれば日本のインフラを維持できない点、更に社会福祉を維持するために多くの税をかけるしかなかった為です。
ですがその話をすると長くなりますのでこのくらいにしておきます。
とにかく今は自衛隊は常時募集中で数が足りていません。
国の財政が厳しく給料を増やす余力もありません。
そして自衛隊はモンスターから人々を守る防衛に特化しています。
ここだけ抑えて頂ければ大丈夫です」
『死ぬかもしれないけど安い給料で自衛隊になって戦争に行って来てって言われたらみんななりたくないよな』
『文句を言ってる奴は冒険者にも自衛隊にもならなかった奴だろうな』
『自衛隊を続ける選択肢はない、あれは訓練を受けて冒険者を始める為にあるものだ。冒険者は学歴が無くてもお金持ちになれる可能性はある、でも死ぬ可能性もあるから普通はやらない』
『自衛隊が足りないから冒険者を招集して防御までやらせられているのが今の冒険者』
『国としてはせっかく育てた人材が海外に流出するのが痛い、でも給料を上げられない』
「自衛隊は予算が足りず、人が足りず、更に防衛をするように命令を受けます。ただ僕としては守りに回った時点で更に多くの手間がかかるのであまり効果的なやり方とは思っていません。
ですが中には『じゃあ自衛隊が攻めている内にモンスターが溢れ出して人が死んだらどうするんだ』と発言する方がいます。
その言葉の発言力が強く自衛隊は防衛をするしかない状態です。
今は1部の自衛隊が実験的にダンジョンに入って攻めているケースもありはしますが自衛隊は基本防衛を優先するしかない状況です」
『積んでるんだよな。今だけその時だけの守りで将来のモンスター溢れ出しを放置している』
『ダンジョンからどのくらいモンスターが出てくるかはその時にならないと分からないからね。守った時点で苦しい戦いになる』
『モンスターが溢れ出してから国民に被害が出たとか言っても、その前段階で放置したのが悪いとしか言えない、でも守りを決めたのは国民の民意なんよな、選挙で議員を選んだ責任も含めてな』
『戦いなんて不確定要素の塊だ。後から自衛隊に対してごちゃごちゃ言ってくる事があるけど後出しじゃんけんは何の意味も無い』
『守りに回った時点で後手に回る道を選んでるんだよな』
『ダンジョンにカメラを設置して監視しようとするとモンスターが壊す、で、無人ドローンで偵察しても壊される。人が入った上でドローンを飛ばせばモンスターの攻撃対象が人になるから結局は人が入るしかないんだよな。無人で出来るのはせいぜいダンジョンの外にカメラを設置するくらいだ、つまりダンジョンからどのくらいモンスターが出てくるか分からない』
「自衛隊は防御をするしかないなら冒険者が攻撃すれば良い、その発想で今僕たちはモンスターを効率よく狩ろうとしています。もちろん冒険者の数も足りませんし育ててすぐに強くなる事はありません。なので僕は1人1人が効率よくモンスターを倒す方向で進めたいと思っています、ごうは日本の未来を考えて効率重視を決めました。僕もそのごうと同じ意見です」
『知識がある場合は冒険者だけじゃなく自衛隊も攻撃に回る方に賛成が多い。でも無知だったり今だけその時だけの人は自衛隊に防衛をさせて今の安全を確保したい人が多い印象』
「現状自衛隊が防衛に専念する事でモンスターの溢れ出しを放置する結果を招き、数の少ない自衛隊ではそれを抑えきれず冒険者に招集や横やりが入り冒険者まで未来の溢れ出しを止める時間を確保しずらい状況に陥っています」
『自衛隊が攻めている内にモンスターが溢れ出して人が死んだらどうするんだ? の言葉でモンスターの溢れ出しを放置してる。で、未来に毒をばら撒き続ける政策を続けてるよな』
『今だけその時だけの議論でハードモードで済んでいたのがベリーハードになってる』
『たくさん食べて太っておいて『もっと税金取らないとやっていけないよ』って言ってるのが今の日本だから、あらゆるところで今だけその時だけが行われてるで』
効率よくモンスターを狩らないとダンジョンからモンスターが溢れ出す。
溢れ出しが起きてしまえば自衛隊は不利な戦いを強いられる。
それをごうは少しでも止めようとしている。
そして批判を受けている。
この現状を変えたい。
「負の連鎖を少しでも止める為に動こうとしたごうは今批判を受け続けています。その対応によりごうはモンスターを倒す時間を削られるでしょう。ごうは昔からそうです。矢面に立って批判を受けています。今は後世の冒険者の事を考えて前に出ているごうが叩かれている状況です。こちらとしてはあまりにも度が過ぎるコメントはブロックする、もしくは弁護士に相談する対応を取ると決めましたがまだ動き出したばかりでもあります」
『たまにいるよな、有名な人に絡んで存在感をアピールする奴』
『批判をするほど自分たちの首を絞めるヤバいやつはいる』
『何だろう? 自衛隊が攻めている内にモンスターが溢れ出して人が死んだらどうするんだよとか言う奴は未来に殺す人の事を考えてないのかな?』
『てか厄災レベルのモンスター、デュラハンが出てきたのも人災だ。きっちり攻めてダンジョンのモンスターを狩っていれば厄災レベルは発生しないらしいからな』
「そこで僕から提案したい事があります」
『さらに言うことある?』
『何も思いつかないぞ』
『でも達也は無駄な事はしない。俺達の想像できない何かがあるはずだ』
ここまではごうの置かれた状況を言った。
ごうを批判をする事でモンスターの溢れ出しが起きやすくなる事実を伝えた。
その上で俺は更に動く。
全員で動画を見た。
画面にはごうが1人でホテルの部屋に映る。
『ごうだ、今日東北の青森に着いた。空港で市長や村長からダンジョンで手に入れたドロップ品をその街に納品して欲しいと頼まれ俺は皆と相談して話し合うと決めた、だが途中で思った。冒険者までも国や市、色々な団体に縛られてしまえば思うようにモンスターを倒す事が出来なくなる。しがらみに縛られた自衛隊のようになってしまえばモンスターの溢れ出しはさらに増える。だから俺の独断で決めた。要望のあった市町村にあるダンジョンをスキップして他のダンジョンでモンスターを狩るとな。皆には俺から伝える。配信は終わりだ』
ごうは最初から決めていた。
自分1人で矢面に立つと決めていたんだ。
市長の要望が合ったあの時、その場で反論すれば他のメンバーも参戦して口論になっただろう。
そうなればみんなが叩かれる結果になっていたかもしれない。
そこまで考えて話を受け取ったと答えてそのままホテルに向かった。
そして配信で独断で決めたと言ってすべての批判を受け止めるつもりなんだ。
もし冒険者を続けられなくなるまで追い込まれたら俺に託す、ごうはそこまで考えて決めている。
ごうと俺は今の自衛隊や冒険者の在り方に危機感を持っている。
そしてそれを変えたいと思っている。
『防』に縛られ予算が無く給料を多く出来ない為人を集められない自衛隊。
自衛隊は多くの事に縛られ過ぎている。
縛られた自衛隊の分を巻き返すように冒険者に対する横やりが発生し招集も多い。
ドロップ品売却の料金が安く税が重い為海外に移住したりお金を稼いだ後はFIREする冒険者が増えている。
全部は変えられなくてもごうは少しでもその現状を変えたいと思っている。
ごうはいつもこみんなが前に出たくない状況で一番前に出る。
そして何も知らない人間や何もやらない人間ほどごうを叩く。
俺はコメントを見た。
好意的な意見は多かった。
でも否定的な意見も多い。
『溢れ出しが起きそうなダンジョンを見捨てるのか!』
『市長の意見を聞かない脳筋で草』
『独断とか暴君かよ』
批判をする人間はごうがどういう意図で発言したか分かっていない。
どんな理由で発言したか知らない。
どんな想いを背負っているか知らない。
批判の多くは知らない事から始まる。
冒険者も自衛隊もやっていない人間からの批判は多い。
こういうのは嫌だ。
ごうの想いを踏みにじる事になっても本当の事をみんなに伝えよう。
ごうだけの責任にはしない。
ごうは矢面に立ちすぎだ。
俺は異空間から撮影用のドローンを取り出していた。
みんなが俺の後ろに並んだ。
工藤さんが前に出る。
「豪己さんと達也さんに責任を押し付ける気はありません。私も撮影に参加します」
「俺もだ!」
「私も!」
「僕もだよ!」
みんなが同時に声をあげていく。
「分かった、今から配信を始める」
全員が頷いた。
ごうを助けたい気持ちはみんな一緒のようだ。
批判を受けてもいい。
俺はごうの意見に賛成する。
今は、俺の想いを伝えよう。
「配信を始める。達也です。今日はごうの事について配信します。まず経緯から、僕たちは東北にある溢れ出しが起きそうなダンジョンでモンスターを狩る予定で青森まで来ました。空港に降りると青森の市長さんや村長さんからモンスターを狩ったドロップ品はその市町村に納品して欲しいと要望を受けました。しかしそれを受けるとモンスター狩りの効率は低下します」
「ごうは、白金豪己は僕達に批判が来ないように、それでいて溢れ出しの起きるダンジョンを減らすために、独断で要望のあった市町村をスキップして他のダンジョンでモンスターを狩る事を決めました。その事でごうが批判を受けすぎている為今回はごうがどういう想いで、どういった背景で動いているのか話していきます」
『口やかましい所はスキップするのは普通の対応だと思う、市長の言う事を聞けば何も変わらない日本と同じになってしまう』
『兄貴の想いは分かるで、ごちゃごちゃ批判コメをかきこむのはキッズだろ』
『どっちに決めても批判が来る案件だよね。市長の言う事を聞けば効率ダウンになって未来に毒を蒔く決断をした事になる。市長の言う事を聞かないなら市長から批判を受ける』
『今回の遠征はごう・デュラハンキラー・ウエイブウォークでダンジョンの奥でキャンプする事でモンスターを狩る効率を爆上げする計画だった。で、一気にその街にある冒険者組合支所にドロップ品を納品すると職員からしたらこまめに納品しろとなるし職員はドロップ品の集計が遅い。後集計している間ホテルで休みますとかできなかったりする。田舎は人も設備も揃ってない』
『こまめに納品するとなれば効率を下げてモンスターを狩れと言っているのと同じ事になる』
『田舎の冒険者組合支所は役所の時間が終われば閉まるからね。冒険者側は納品の時間を合わせないと悪くなる。もっと言えば役所は土日に閉まる』
『役所が空いてる時間って冒険者が活動している時間と被るんだよな』
『こういう微妙な件はどう動いても批判が来る、気にせず最大効率でモンスターを狩ればいいよ』
『気にしないで兄貴の言う通りで良い』
『未来の事を考えるとモンスターを効率よく間引いた方が安全だと思う』
『多分、ごうと達也が本当に言いたいのは納品指定だけじゃなくて、こういう横やりの1つ1つが毒のように冒険者のモンスター狩り効率を引き下げている事だと思う。日本の冒険者は招集が異様に多い』
『でも、軸を納品指定の1点に絞らないとただ怒ってる感じにしかならん、こういうのは1つ1つ丁寧に伝えないと駄目だ』
『日本ってなんでこんなに口やかましいんだろうな? 結果を出しているトッププレイヤーはそっとしといてやれって』
俺はコメントを読んでいく。
「ここにコメントを書き込んでくれている方は知識を持っていて状況を把握していると思います。ですがよく分かっておられない方もいるようなので今回は詳しく話していきます」
『兄貴は変に切り取りをされて話がおかしくなったり正確に丁寧に説明すると聞いてもらえない事を考えて短く言ったんだろうな』
『短い言葉じゃないと聞かない人がたくさんいる、しゃーない』
『仕事して日々の生活に追われてるからね、分かりやすく言うしかなかったんだろう』
『批判を受けてもいいから皆に分かるように言った』
『短い言葉はネットの小姑プレーを受け入れるのと同じになってしまうからな』
「まず僕の想いから言います。僕も今は効率を重視してモンスターを狩るべきだと思います。もっと言うと今自衛隊は『防』、冒険者は『攻』の役割となっていますが、自衛隊ももっと攻めていいと思っています。この事を説明するためにダンジョンの歴史と現状をざっくり話していきます」
『結構深い所まで話すんだな』
『でもざっくり説明だ』
『ネットを見ていると学校の教科書の基本が分からん奴もいる、丁寧に説明した方がいいと思う』
「世界にダンジョンが出現してモンスターを倒す事でドロップ品と魔石が手に入る事が分かりました。資源の無い日本はエネルギーを手に入れて豊かになると期待されていましたがそうはなりませんでした。日本はエネルギーを自給出来るようになりましたがその代償としてモンスターの溢れ出しにより毎年震災が起きるような被害を発生させました」
『エネルギーは手に入ったけど安全な日本は失われたよね』
『後石油の輸入を減らすと服やプラスチックとかの素材を他の何かで代用しないといけなくなるから思ったよりはうまく行かない』
『みんな戦って死にたくないから冒険者にも自衛隊にもなりたくない』
『実際モンスターに攻撃を受けると痛いし訓練はきつい、何もやらない側からの文句は多い。日本は口やかましいんだよな』
『徴兵制が出来ないとか難しい部分がある』
「そこで国は自衛隊によりモンスターから人々を守る方針を打ち出しましたが国の予算は限られています。
命を賭けて戦う自衛隊の給料は安く、自衛隊が仕事をやめて冒険者になるならまだ良かったのですが優秀な冒険者が海外に流出する結果を招きました。
これは日本の国力が衰退しておりドロップ品の報酬を上げれば日本のインフラを維持できない点、更に社会福祉を維持するために多くの税をかけるしかなかった為です。
ですがその話をすると長くなりますのでこのくらいにしておきます。
とにかく今は自衛隊は常時募集中で数が足りていません。
国の財政が厳しく給料を増やす余力もありません。
そして自衛隊はモンスターから人々を守る防衛に特化しています。
ここだけ抑えて頂ければ大丈夫です」
『死ぬかもしれないけど安い給料で自衛隊になって戦争に行って来てって言われたらみんななりたくないよな』
『文句を言ってる奴は冒険者にも自衛隊にもならなかった奴だろうな』
『自衛隊を続ける選択肢はない、あれは訓練を受けて冒険者を始める為にあるものだ。冒険者は学歴が無くてもお金持ちになれる可能性はある、でも死ぬ可能性もあるから普通はやらない』
『自衛隊が足りないから冒険者を招集して防御までやらせられているのが今の冒険者』
『国としてはせっかく育てた人材が海外に流出するのが痛い、でも給料を上げられない』
「自衛隊は予算が足りず、人が足りず、更に防衛をするように命令を受けます。ただ僕としては守りに回った時点で更に多くの手間がかかるのであまり効果的なやり方とは思っていません。
ですが中には『じゃあ自衛隊が攻めている内にモンスターが溢れ出して人が死んだらどうするんだ』と発言する方がいます。
その言葉の発言力が強く自衛隊は防衛をするしかない状態です。
今は1部の自衛隊が実験的にダンジョンに入って攻めているケースもありはしますが自衛隊は基本防衛を優先するしかない状況です」
『積んでるんだよな。今だけその時だけの守りで将来のモンスター溢れ出しを放置している』
『ダンジョンからどのくらいモンスターが出てくるかはその時にならないと分からないからね。守った時点で苦しい戦いになる』
『モンスターが溢れ出してから国民に被害が出たとか言っても、その前段階で放置したのが悪いとしか言えない、でも守りを決めたのは国民の民意なんよな、選挙で議員を選んだ責任も含めてな』
『戦いなんて不確定要素の塊だ。後から自衛隊に対してごちゃごちゃ言ってくる事があるけど後出しじゃんけんは何の意味も無い』
『守りに回った時点で後手に回る道を選んでるんだよな』
『ダンジョンにカメラを設置して監視しようとするとモンスターが壊す、で、無人ドローンで偵察しても壊される。人が入った上でドローンを飛ばせばモンスターの攻撃対象が人になるから結局は人が入るしかないんだよな。無人で出来るのはせいぜいダンジョンの外にカメラを設置するくらいだ、つまりダンジョンからどのくらいモンスターが出てくるか分からない』
「自衛隊は防御をするしかないなら冒険者が攻撃すれば良い、その発想で今僕たちはモンスターを効率よく狩ろうとしています。もちろん冒険者の数も足りませんし育ててすぐに強くなる事はありません。なので僕は1人1人が効率よくモンスターを倒す方向で進めたいと思っています、ごうは日本の未来を考えて効率重視を決めました。僕もそのごうと同じ意見です」
『知識がある場合は冒険者だけじゃなく自衛隊も攻撃に回る方に賛成が多い。でも無知だったり今だけその時だけの人は自衛隊に防衛をさせて今の安全を確保したい人が多い印象』
「現状自衛隊が防衛に専念する事でモンスターの溢れ出しを放置する結果を招き、数の少ない自衛隊ではそれを抑えきれず冒険者に招集や横やりが入り冒険者まで未来の溢れ出しを止める時間を確保しずらい状況に陥っています」
『自衛隊が攻めている内にモンスターが溢れ出して人が死んだらどうするんだ? の言葉でモンスターの溢れ出しを放置してる。で、未来に毒をばら撒き続ける政策を続けてるよな』
『今だけその時だけの議論でハードモードで済んでいたのがベリーハードになってる』
『たくさん食べて太っておいて『もっと税金取らないとやっていけないよ』って言ってるのが今の日本だから、あらゆるところで今だけその時だけが行われてるで』
効率よくモンスターを狩らないとダンジョンからモンスターが溢れ出す。
溢れ出しが起きてしまえば自衛隊は不利な戦いを強いられる。
それをごうは少しでも止めようとしている。
そして批判を受けている。
この現状を変えたい。
「負の連鎖を少しでも止める為に動こうとしたごうは今批判を受け続けています。その対応によりごうはモンスターを倒す時間を削られるでしょう。ごうは昔からそうです。矢面に立って批判を受けています。今は後世の冒険者の事を考えて前に出ているごうが叩かれている状況です。こちらとしてはあまりにも度が過ぎるコメントはブロックする、もしくは弁護士に相談する対応を取ると決めましたがまだ動き出したばかりでもあります」
『たまにいるよな、有名な人に絡んで存在感をアピールする奴』
『批判をするほど自分たちの首を絞めるヤバいやつはいる』
『何だろう? 自衛隊が攻めている内にモンスターが溢れ出して人が死んだらどうするんだよとか言う奴は未来に殺す人の事を考えてないのかな?』
『てか厄災レベルのモンスター、デュラハンが出てきたのも人災だ。きっちり攻めてダンジョンのモンスターを狩っていれば厄災レベルは発生しないらしいからな』
「そこで僕から提案したい事があります」
『さらに言うことある?』
『何も思いつかないぞ』
『でも達也は無駄な事はしない。俺達の想像できない何かがあるはずだ』
ここまではごうの置かれた状況を言った。
ごうを批判をする事でモンスターの溢れ出しが起きやすくなる事実を伝えた。
その上で俺は更に動く。
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