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第67話

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 家に帰るとひまわり、おばあちゃん、しろまろが出迎えた。

「「おかえりなさい」」

 その言葉で落ち着く。
 しろまろはおばあちゃんとひまわりの足の間に挟まる。
 しろまろは狭い場所が好きなのだ。

「お茶とコーヒー、紅茶、サイダー、どれにします?」
「サイダーにする」
「珍しいわね」
「達也さんは疲れたんだよね?」

「疲れているのかもしれない」

 リビングの椅子に座るとひまわりはノートパソコンで動画の編集を始める。
 おばあちゃんはサイダーとどら焼きとせんべいを出して自分はお茶を飲む。

「ひまわりは何か飲む?」
「うん、私もサイダーにする」
「分かったわ」

 しろまろはテーブルの下で俺の足に寄り添う。
 温かいぬくもりに癒された。
 
 みんなで座るとサイダーを喉に流し込んだ。
 炭酸の刺激で少しすっきりした。
 おばあちゃんセレクトのどら焼きは甘味だけでなくほのかな塩味と小麦の甘さと味が口に広がる。
 そしてせんべいもぼりぼりとした食感と焼いた醤油の香ばしい香りが口に広がり落ち着く。

「私も食べたくなってくるなあ」

 ひまわりもせんべいを食べる。

「達也さんは本当に美味しそうに食べるわね」

 おばあちゃんは1個だけどら焼きに手を伸ばした。

「お茶漬けのCM、行けるかな?」
「行けるわね」
「依頼が来ても受けないけどさ」
「でも、もし気が変わったら言って、多分仕事なら取れるから」

「俺一般人だからな」

 おばあちゃんとひまわりが同時に俺を見た。

「ドームの主役だったのに?」
「また100億円の寄付でバズったのに?」
「毎日モンスターを狩ってて、よく分からないんだよな。……ひまわり、その顔なに?」

「……今から動画を見せるね」
「ん? うん」

 ひまわりがテレビにノートパソコンを繋いだ。
 そして丁寧に俺にバズった動画を見せ、解説していく。


 ◇


 俺は真実を知った。
 しろまろがバズったのはしろまろが勇気を持って前に出たのと、ひまわりが何とか声を出してしろまろに声をかけたおかげだ。
 他のバズリはごうの意思を感じる。

 それとひまわりの編集がうますぎる。
 ハイセンス&説明が丁寧だ。
 子供が見ても理解できる作りになっている。
 相手の事を考えて親切に動画を作っている。

 バズったのはみんなの力が大きい。

 それと俺がいない間に沙雪や他の冒険者が家に遊びに来てそれも動画になっていた。
 ウエイブウォーク、ごう、デュラハンキラー、ハンドスピナーまで!

 驚いたのはハンドスピナーのシュールな動画も結構伸びていた事だ。
 ただハンドスピナーが遊びに来ておばあちゃんからご飯を食べさせてもらう動画でも伸びている。

 ハンドスピナーは独特の雰囲気があって不思議な味がある。
 ハンドスピナーの5人がおばあちゃんにご飯を作って貰った時、5人はほっこりとした顔でお礼を言う、何だろう、くすっと笑いながらずっと見ていられる。
 ハンドスピナーに固定ファンがいるのも分かる気がする。

「この動画は終わり、これも1000万再生を超えてバズってるよ、達也さんのチャンネル登録者数は300万越えで今も伸びてるし、このままだと500万登録は行くと思う。配信でバズった動画は海外にも見て貰えるように多言語翻訳を入れるようにしているからもっと伸びるはず」

 ひまわりは俺が出来ないスキルを身につけつつあった。
 まだ2ヶ月も経っていないのに動画編集の能力が上がりまくっている。

「ひまわり、給料アップね」
「いいよ」
「いや、アップだ。他にも何か頼むかもしれない。今日の夕食は何だろう?」

 俺は即話を切り替えた。
 ひまわりなら横領の心配が無い。
 オートで動画を作ってくれてそれが収益を生むしデュラハンを倒す宣伝になる。
 まずは年収1000万だ。
 月80万くらいだけど手取りにすると結構引かれるからそこまでの手取りにはならない。

「そうねえ、達也さんは何が食べたい?」
「カツカレー」

 おばあちゃんとひまわりが笑った。

「好みがはっきりしているのは良い事よ、お買い物に行ってくるわね」
「あ、私もいく、しろまろ、おいで」

 俺は短い基礎訓練を行い、カツカレーをおかわりした。

 布団に入るとすぐに眠りに落ちていく。

 家が、落ち、着く。

 人がいて、みんなが、温かいからか。
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