48 / 81
第48話
しおりを挟む
試合当日、俺と豊香が前に出る。
「審判、解説の達也さん、今のお気持ちを一言お願いします」
「集中したいからちょっと待ってな」
俺の隣でバニーガールの格好をした豊香が笑顔でマイクを向けた。
訓練場を貸し切り、事故を防ぐため冒険者以外は立ち入り禁止にして勝ち抜きトーナメントが開催された。
ドローン5機が空中を飛び訓練場を様々な角度から映し出し配信の同時接続数は100万を超えている。
狙い通りバズっているわけだけど豊香が胸を押し付けてくる。
「バニーガールの魅力で達也さんは集中できないようですね」
『放火ちゃん可愛い』
『放火のスタイルがいいよな。マジで炎上に油を注がなければ最高なんだけど』
『バニーガールで放火が集中砲火だな』
『放火死ね』
『キモイキモイキモイ!』
『バニーガールは露骨すぎ、もう24才なんだから年を考えたら?』
『また胸を押し付けて体をくねらせて、あー気持ち悪い、ほんっとうに気持ち悪いから』
女性陣と男性陣で豊香への扱いが大分違う。
沙雪も豊香の事を嫌っているようだったし。
ヘイト能力が高い。
「豊香、女性へのヘイトを溜めすぎじゃないか?」
「私は悪い事をしていませんよ」
『達也、放火のヘイトは全方位やで』
『女性、だけじゃないんだよなあ』
『放火はまあ、しゃーない』
「……そうか、豊香、進行を頼む」
「はい、ただいまよりレベル6冒険者の勝ち抜きトーナメントを開始します。試合のルールは1試合5分、お互い倒れなかった場合は達也さんが勝者を判定します。そして殺傷能力の高い攻撃、例えば豪己さんの全力斬りは禁止です。達也さんが中止を判断した場合も試合ストップとなり達也さんの判定で勝敗を決めます」
童子が呼ばれてもいないのに前に出てきた。
「はい、童子選手は待ちきれないようなのですぐに試合を開始します。対戦相手はハンドスピナーの佐々木選手です」
『待ちきれない子供だな』
『童子君犬みたいで可愛い』
『やると思った』
佐々木選手が前に出る。
「もう少し離れて! お互い後3歩後ろに、OK! 試合開始!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
両手に槍を持った佐々木選手が前に出る。
そして槍を連続で突きだ出した。
だが童子は魔眼で攻撃を見切りながら歩いて前に出る。
童子はすべての攻撃をステップと剣捌きだけで防いだ。
童子は一切攻撃しない。
佐々木選手の動きが止まり、下がって手を挙げた。
「降参だ、技量が違いすぎる」
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」
「達也さん、コメントをお願いします」
「佐々木選手は強い、レベル6の戦士だ。でも童子の強さはレベル6を超えようとしている。以上」
「ありがとうございます。続いては豪己選手とハンドスピナーの鈴木選手、前へ」
ごうは殺傷力を抑える為に小さめの剣に変えていた。
戦いづらいだろうしルール的にごうに不利だ。
ごうの持ち味はワンキルの超攻撃。
致命傷になる攻撃がダメになった時点でごうは持ち味を失う。
それでもごうは何も言わず人の目を集める為に試合を企画した。
ごうは本当に凄い。
「それでは、試合開始!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
斧を持った鈴木選手が前に出て斧を振り上げる。
「ふん!」
ごうが剣を振ると鎧を切り裂いて血が出る。
「ストップだ! 豪己の勝利! もう少し手加減だ」
「わ、悪い!」
「いえ、兄貴! 気合を貰いました! ありがとうございます! 兄貴、握手をお願いします!」
鈴木選手が血を流しながら握手を求める。
「達也さん、解説をお願いします」
「豪己は全力を出さないようにと思っていたんだろう。でも思ったよりも鈴木選手の動きが早く対峙した豪己は思ったように手加減が出来なかった。そんな感じだ。つまり、鈴木選手は強い、間違いなくレベル6の力を持っている。だがごうはレベル6の中で上位の存在だ」
「達也さん! ありがとうございます! 握手してください」
「それより血を止めよう」
「大丈夫です!」
「そ、そうか」
鈴木選手と握手をすると治療班がすぐに治療を開始した。
◇
こうしてトーナメントは進み、ごうと童子が最後まで残った。
「童子選手、戦いの前に今の気持ちをどうぞ」
「俺達は豪己の世代を超えていく! 俺は次のレベル7として前に進む!」
「豪己選手、一言お願いします」
「俺を超えていけ! みんなで俺を超えていけ!!」
ごうの言葉に強い想いを感じた。
ごうは人を育てようとしてせっかく育ってもごうの元を去っていく冒険者もいた。
それでもごうは諦めず、根気強く次の世代を育てようとした。
俺も最初はごうに育てて貰った。
ごうはデュラハンを倒す事を考えず自分の為だけに動いていればもっと強かっただろう。
だがごうはそれでも人を育て続けた。
そして今は不利な状況で童子と対峙している。
ごうは言い訳をしない。
注目を集める役割を果たそうとしている。
贔屓はいけない。
それでも俺はごうを応援したい。
そう思う。
「それではこれよりトーナメント決勝戦を行います!」
「2人とも構えて、試合開始!」
「審判、解説の達也さん、今のお気持ちを一言お願いします」
「集中したいからちょっと待ってな」
俺の隣でバニーガールの格好をした豊香が笑顔でマイクを向けた。
訓練場を貸し切り、事故を防ぐため冒険者以外は立ち入り禁止にして勝ち抜きトーナメントが開催された。
ドローン5機が空中を飛び訓練場を様々な角度から映し出し配信の同時接続数は100万を超えている。
狙い通りバズっているわけだけど豊香が胸を押し付けてくる。
「バニーガールの魅力で達也さんは集中できないようですね」
『放火ちゃん可愛い』
『放火のスタイルがいいよな。マジで炎上に油を注がなければ最高なんだけど』
『バニーガールで放火が集中砲火だな』
『放火死ね』
『キモイキモイキモイ!』
『バニーガールは露骨すぎ、もう24才なんだから年を考えたら?』
『また胸を押し付けて体をくねらせて、あー気持ち悪い、ほんっとうに気持ち悪いから』
女性陣と男性陣で豊香への扱いが大分違う。
沙雪も豊香の事を嫌っているようだったし。
ヘイト能力が高い。
「豊香、女性へのヘイトを溜めすぎじゃないか?」
「私は悪い事をしていませんよ」
『達也、放火のヘイトは全方位やで』
『女性、だけじゃないんだよなあ』
『放火はまあ、しゃーない』
「……そうか、豊香、進行を頼む」
「はい、ただいまよりレベル6冒険者の勝ち抜きトーナメントを開始します。試合のルールは1試合5分、お互い倒れなかった場合は達也さんが勝者を判定します。そして殺傷能力の高い攻撃、例えば豪己さんの全力斬りは禁止です。達也さんが中止を判断した場合も試合ストップとなり達也さんの判定で勝敗を決めます」
童子が呼ばれてもいないのに前に出てきた。
「はい、童子選手は待ちきれないようなのですぐに試合を開始します。対戦相手はハンドスピナーの佐々木選手です」
『待ちきれない子供だな』
『童子君犬みたいで可愛い』
『やると思った』
佐々木選手が前に出る。
「もう少し離れて! お互い後3歩後ろに、OK! 試合開始!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
両手に槍を持った佐々木選手が前に出る。
そして槍を連続で突きだ出した。
だが童子は魔眼で攻撃を見切りながら歩いて前に出る。
童子はすべての攻撃をステップと剣捌きだけで防いだ。
童子は一切攻撃しない。
佐々木選手の動きが止まり、下がって手を挙げた。
「降参だ、技量が違いすぎる」
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」
「達也さん、コメントをお願いします」
「佐々木選手は強い、レベル6の戦士だ。でも童子の強さはレベル6を超えようとしている。以上」
「ありがとうございます。続いては豪己選手とハンドスピナーの鈴木選手、前へ」
ごうは殺傷力を抑える為に小さめの剣に変えていた。
戦いづらいだろうしルール的にごうに不利だ。
ごうの持ち味はワンキルの超攻撃。
致命傷になる攻撃がダメになった時点でごうは持ち味を失う。
それでもごうは何も言わず人の目を集める為に試合を企画した。
ごうは本当に凄い。
「それでは、試合開始!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
斧を持った鈴木選手が前に出て斧を振り上げる。
「ふん!」
ごうが剣を振ると鎧を切り裂いて血が出る。
「ストップだ! 豪己の勝利! もう少し手加減だ」
「わ、悪い!」
「いえ、兄貴! 気合を貰いました! ありがとうございます! 兄貴、握手をお願いします!」
鈴木選手が血を流しながら握手を求める。
「達也さん、解説をお願いします」
「豪己は全力を出さないようにと思っていたんだろう。でも思ったよりも鈴木選手の動きが早く対峙した豪己は思ったように手加減が出来なかった。そんな感じだ。つまり、鈴木選手は強い、間違いなくレベル6の力を持っている。だがごうはレベル6の中で上位の存在だ」
「達也さん! ありがとうございます! 握手してください」
「それより血を止めよう」
「大丈夫です!」
「そ、そうか」
鈴木選手と握手をすると治療班がすぐに治療を開始した。
◇
こうしてトーナメントは進み、ごうと童子が最後まで残った。
「童子選手、戦いの前に今の気持ちをどうぞ」
「俺達は豪己の世代を超えていく! 俺は次のレベル7として前に進む!」
「豪己選手、一言お願いします」
「俺を超えていけ! みんなで俺を超えていけ!!」
ごうの言葉に強い想いを感じた。
ごうは人を育てようとしてせっかく育ってもごうの元を去っていく冒険者もいた。
それでもごうは諦めず、根気強く次の世代を育てようとした。
俺も最初はごうに育てて貰った。
ごうはデュラハンを倒す事を考えず自分の為だけに動いていればもっと強かっただろう。
だがごうはそれでも人を育て続けた。
そして今は不利な状況で童子と対峙している。
ごうは言い訳をしない。
注目を集める役割を果たそうとしている。
贔屓はいけない。
それでも俺はごうを応援したい。
そう思う。
「それではこれよりトーナメント決勝戦を行います!」
「2人とも構えて、試合開始!」
94
お気に入りに追加
519
あなたにおすすめの小説
思わず呆れる婚約破棄
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある国のとある夜会、その場にて、その国の王子が婚約破棄を言い渡した。
だがしかし、その内容がずさんというか、あまりにもひどいというか……呆れるしかない。
余りにもひどい内容に、思わず誰もが呆れてしまうのであった。
……ネタバレのような気がする。しかし、良い紹介分が思いつかなかった。
よくあるざまぁ系婚約破棄物ですが、第3者視点よりお送りいたします。
どうぞ「ざまぁ」を続けてくださいな
こうやさい
ファンタジー
わたくしは婚約者や義妹に断罪され、学園から追放を命じられました。
これが「ざまぁ」されるというものなんですのね。
義妹に冤罪着せられて殿下に皆の前で婚約破棄のうえ学園からの追放される令嬢とかいったら頑張ってる感じなんだけどなぁ。
とりあえずお兄さま頑張れ。
PCがエラーがどうこうほざいているので消えたら察してください、どのみち不定期だけど。
やっぱスマホでも更新できるようにしとかないとなぁ、と毎度の事を思うだけ思う。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話
Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」
「よっしゃー!! ありがとうございます!!」
婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。
果たして国王との賭けの内容とは――
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる