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第48話

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 試合当日、俺と豊香が前に出る。

「審判、解説の達也さん、今のお気持ちを一言お願いします」
「集中したいからちょっと待ってな」

 俺の隣でバニーガールの格好をした豊香が笑顔でマイクを向けた。

 訓練場を貸し切り、事故を防ぐため冒険者以外は立ち入り禁止にして勝ち抜きトーナメントが開催された。
 ドローン5機が空中を飛び訓練場を様々な角度から映し出し配信の同時接続数は100万を超えている。
 狙い通りバズっているわけだけど豊香が胸を押し付けてくる。

「バニーガールの魅力で達也さんは集中できないようですね」

『放火ちゃん可愛い』
『放火のスタイルがいいよな。マジで炎上に油を注がなければ最高なんだけど』
『バニーガールで放火が集中砲火だな』

『放火死ね』
『キモイキモイキモイ!』
『バニーガールは露骨すぎ、もう24才なんだから年を考えたら?』
『また胸を押し付けて体をくねらせて、あー気持ち悪い、ほんっとうに気持ち悪いから』

 女性陣と男性陣で豊香への扱いが大分違う。
 沙雪も豊香の事を嫌っているようだったし。
 ヘイト能力が高い。

「豊香、女性へのヘイトを溜めすぎじゃないか?」
「私は悪い事をしていませんよ」

『達也、放火のヘイトは全方位やで』
『女性、だけじゃないんだよなあ』
『放火はまあ、しゃーない』

「……そうか、豊香、進行を頼む」
「はい、ただいまよりレベル6冒険者の勝ち抜きトーナメントを開始します。試合のルールは1試合5分、お互い倒れなかった場合は達也さんが勝者を判定します。そして殺傷能力の高い攻撃、例えば豪己さんの全力斬りは禁止です。達也さんが中止を判断した場合も試合ストップとなり達也さんの判定で勝敗を決めます」

 童子が呼ばれてもいないのに前に出てきた。

「はい、童子選手は待ちきれないようなのですぐに試合を開始します。対戦相手はハンドスピナーの佐々木選手です」

『待ちきれない子供だな』
『童子君犬みたいで可愛い』
『やると思った』

 佐々木選手が前に出る。

「もう少し離れて! お互い後3歩後ろに、OK! 試合開始!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 両手に槍を持った佐々木選手が前に出る。
 そして槍を連続で突きだ出した。
 だが童子は魔眼で攻撃を見切りながら歩いて前に出る。

 童子はすべての攻撃をステップと剣捌きだけで防いだ。
 童子は一切攻撃しない。
 佐々木選手の動きが止まり、下がって手を挙げた。

「降参だ、技量が違いすぎる」
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」

「達也さん、コメントをお願いします」
「佐々木選手は強い、レベル6の戦士だ。でも童子の強さはレベル6を超えようとしている。以上」
「ありがとうございます。続いては豪己選手とハンドスピナーの鈴木選手、前へ」

 ごうは殺傷力を抑える為に小さめの剣に変えていた。
 戦いづらいだろうしルール的にごうに不利だ。
 ごうの持ち味はワンキルの超攻撃。

 致命傷になる攻撃がダメになった時点でごうは持ち味を失う。
 それでもごうは何も言わず人の目を集める為に試合を企画した。
 ごうは本当に凄い。

「それでは、試合開始!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 斧を持った鈴木選手が前に出て斧を振り上げる。

「ふん!」

 ごうが剣を振ると鎧を切り裂いて血が出る。

「ストップだ! 豪己の勝利! もう少し手加減だ」
「わ、悪い!」
「いえ、兄貴! 気合を貰いました! ありがとうございます! 兄貴、握手をお願いします!」

 鈴木選手が血を流しながら握手を求める。

「達也さん、解説をお願いします」
「豪己は全力を出さないようにと思っていたんだろう。でも思ったよりも鈴木選手の動きが早く対峙した豪己は思ったように手加減が出来なかった。そんな感じだ。つまり、鈴木選手は強い、間違いなくレベル6の力を持っている。だがごうはレベル6の中で上位の存在だ」

「達也さん! ありがとうございます! 握手してください」
「それより血を止めよう」
「大丈夫です!」
「そ、そうか」

 鈴木選手と握手をすると治療班がすぐに治療を開始した。


 ◇


 こうしてトーナメントは進み、ごうと童子が最後まで残った。

「童子選手、戦いの前に今の気持ちをどうぞ」
「俺達は豪己の世代を超えていく! 俺は次のレベル7として前に進む!」

「豪己選手、一言お願いします」
「俺を超えていけ! みんなで俺を超えていけ!!」

 ごうの言葉に強い想いを感じた。
 ごうは人を育てようとしてせっかく育ってもごうの元を去っていく冒険者もいた。
 それでもごうは諦めず、根気強く次の世代を育てようとした。
 
 俺も最初はごうに育てて貰った。
 ごうはデュラハンを倒す事を考えず自分の為だけに動いていればもっと強かっただろう。
 だがごうはそれでも人を育て続けた。
 
 そして今は不利な状況で童子と対峙している。
 ごうは言い訳をしない。
 注目を集める役割を果たそうとしている。
 
 贔屓はいけない。
 それでも俺はごうを応援したい。
 そう思う。

「それではこれよりトーナメント決勝戦を行います!」
「2人とも構えて、試合開始!」
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