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第7話
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次の日、俺は早く起きた。
そして着替えて身だしなみを整えた。
ガチャリ!
「ええ! 起きてる!」
「おはよう」
信じられないモノを見る様な目で沙雪が俺を見た。
沙雪が急いで階段を降りていく。
「おばあちゃん! おじさんが起きてる!」
「えええ……」
降りて食事を食べても沙雪が俺を何度も見る。
「……おかしいよ」
「達也さんも成長するのよねえ」
「その通りだ。キリ!」
「……絶対今日だけだよ」
「あ、あれええ? 沙雪、信じてないなあ?」
「うん!」
「俺、今日から早寝早起きの超健康生活にするから」
「……うっそだあ」
「マジマジ! 今日から早起きして訓練を始めるから」
「……」
「何も答えないだと!」
「ご馳走様」
沙雪は素早く身なりを整えて学校に向かった。
俺の言葉を信じていない。
「遊びに夢中だな」
「可愛いわね……無邪気なのも今だけよ」
「……そっかあ。俺も出かけてこよう。冒険者の免許を返してくる」
「冒険者としてモンスターを倒す方が基礎訓練よりも簡単なんでしょう?」
「おばあちゃん、俺は沙雪の両親を殺したモンスターを倒したいんだ」
「うん、私が口を出す事ではないと思うけど、でも仲間を頼る道もあると思うわ」
「それはごうがやっているから」
「分かったわ。行ってらっしゃい」
「行ってきます」
冒険者組合に入ると受付の奈良君が笑顔で出迎えたが俺の顔を見て真顔になった。
「冒険者の免許を返しに来た」
「どうしても考え直しては頂けませんか? 達也さんなら簡単に億を稼ぐことが出来るでしょう。冒険者レベルもその気になれば簡単に上げられます」
「もう決めたんだ」
「トリプルの道どころかダブルの道でさえまだ到達者はいません」
正確に言えば2つのジョブ能力を使える人間はいる。
だが戦士をメインにして白の魔力で回復魔法を使うようなメインジョブ、サブジョブのような運用にしか至っていない。
そして皆が『1つのジョブに絞った方がいい』と答えている。
だがその人間たちは魔力の才能が1つのジョブに特化している。
魔力が特化していると魔力を意識しやすい為特化した魔力を持つ者は最初に伸びやすい。
なので魔力の質が特化していないと最初の魔力測定で才能が無いと言われ、更に最初の魔力訓練で大きく出遅れる。
俺のように魔力の質に偏りがない人間のサンプルが少ない。
だがそこに希望がある。
「年齢的な時間もある。訓練をして出来る所まで行ってみたい」
「ダブルについては否定的な意見が多いです。このまま冒険者を続ける道もあります」
確かにそうだ。
奈良君の言葉は世の中の風潮そのものだ。
『中途半端になるだけだ』
『前例がない』
『1つのジョブに絞った方が合理的だ』
『未だダブルジョブは実現していない。それが答えだ』
それが多くの者の考え方だ。
ダブルの取り組みは小規模でしかも幼いころから訓練を始めている。
裏を返せば時間をかけなければ魔法を使えるようにならないと言う事だ。
そして新たなる才能とうたってはいるが実際は冒険者不足を解消するための劣化冒険者作りで人員不足を補う試みにも見える。
「そうだな、奈良君」
「何でしょう?」
「君は俺の事を思って言ってくれているんだろう。でも、失敗したらそれはそれであきらめがつく。俺はこういう人間だ。冒険者の免許を返す」
「わかり、ました」
「はあ、はあ、待ってくれ!」
「ごう、それにみんな」
「迷惑かと思いましたがみんなを呼ばせてもらいました」
奈良君がくいっとメガネを上げた。
「冒険者免許を返す必要はねえだろ! また気が変わるかもしれねえ!」
「そうなったらその時に免許を取る」
「もったいないですよ!」
「達也さんならもっと上に行けますって!」
「赤目さんは魔眼持ちですよ、簡単に億を稼げますって!」
みんないい人間だな。
人の意見に反対すれば怒られるかもしれないのにそれでも言ってくれている。
「みんな、ありがとう、でも決めたんだ。俺の事を考えて親身になってくれてありがとう」
俺は頭を下げた。
「俺は、沙雪を育てて、育ててって言ってもおばあちゃんがほとんどやってくれてるんだけど、それ以外の時間はすべて基礎訓練に使いたい。今日から朝早く起きて訓練を始める」
「苦しい基礎訓練を毎日!」
「あの訓練は吐いちゃいますよ」
「は、はははは、吐かない程度に頑張ってみる。俺には年齢的に、もう時間が無いからさ」
「分かった。達也、沙雪の手がかからなくなったら戻ってくるよな?」
「そうしたいと思っている。ただ、訓練がどうなるか分からない」
「戻ってこい、俺は人を育てる。達也は自分と沙雪を育てる。そして数年後にまた一緒にダンジョンに行こうぜ」
「そう、だな。その時は今よりも強い自分を目指す」
「おう、俺はもっと人を育てるぜ。俺より強い人間が現れるようにな」
俺は冒険者免許を返した。
すぐに家に帰り基礎訓練を始めた。
「時間がかかりそうだな」
だが、少しずつ前に進んでいる。
毎日毎日訓練が進んでいく感覚がある。
俺は毎日訓練を積み重ねた。
そして着替えて身だしなみを整えた。
ガチャリ!
「ええ! 起きてる!」
「おはよう」
信じられないモノを見る様な目で沙雪が俺を見た。
沙雪が急いで階段を降りていく。
「おばあちゃん! おじさんが起きてる!」
「えええ……」
降りて食事を食べても沙雪が俺を何度も見る。
「……おかしいよ」
「達也さんも成長するのよねえ」
「その通りだ。キリ!」
「……絶対今日だけだよ」
「あ、あれええ? 沙雪、信じてないなあ?」
「うん!」
「俺、今日から早寝早起きの超健康生活にするから」
「……うっそだあ」
「マジマジ! 今日から早起きして訓練を始めるから」
「……」
「何も答えないだと!」
「ご馳走様」
沙雪は素早く身なりを整えて学校に向かった。
俺の言葉を信じていない。
「遊びに夢中だな」
「可愛いわね……無邪気なのも今だけよ」
「……そっかあ。俺も出かけてこよう。冒険者の免許を返してくる」
「冒険者としてモンスターを倒す方が基礎訓練よりも簡単なんでしょう?」
「おばあちゃん、俺は沙雪の両親を殺したモンスターを倒したいんだ」
「うん、私が口を出す事ではないと思うけど、でも仲間を頼る道もあると思うわ」
「それはごうがやっているから」
「分かったわ。行ってらっしゃい」
「行ってきます」
冒険者組合に入ると受付の奈良君が笑顔で出迎えたが俺の顔を見て真顔になった。
「冒険者の免許を返しに来た」
「どうしても考え直しては頂けませんか? 達也さんなら簡単に億を稼ぐことが出来るでしょう。冒険者レベルもその気になれば簡単に上げられます」
「もう決めたんだ」
「トリプルの道どころかダブルの道でさえまだ到達者はいません」
正確に言えば2つのジョブ能力を使える人間はいる。
だが戦士をメインにして白の魔力で回復魔法を使うようなメインジョブ、サブジョブのような運用にしか至っていない。
そして皆が『1つのジョブに絞った方がいい』と答えている。
だがその人間たちは魔力の才能が1つのジョブに特化している。
魔力が特化していると魔力を意識しやすい為特化した魔力を持つ者は最初に伸びやすい。
なので魔力の質が特化していないと最初の魔力測定で才能が無いと言われ、更に最初の魔力訓練で大きく出遅れる。
俺のように魔力の質に偏りがない人間のサンプルが少ない。
だがそこに希望がある。
「年齢的な時間もある。訓練をして出来る所まで行ってみたい」
「ダブルについては否定的な意見が多いです。このまま冒険者を続ける道もあります」
確かにそうだ。
奈良君の言葉は世の中の風潮そのものだ。
『中途半端になるだけだ』
『前例がない』
『1つのジョブに絞った方が合理的だ』
『未だダブルジョブは実現していない。それが答えだ』
それが多くの者の考え方だ。
ダブルの取り組みは小規模でしかも幼いころから訓練を始めている。
裏を返せば時間をかけなければ魔法を使えるようにならないと言う事だ。
そして新たなる才能とうたってはいるが実際は冒険者不足を解消するための劣化冒険者作りで人員不足を補う試みにも見える。
「そうだな、奈良君」
「何でしょう?」
「君は俺の事を思って言ってくれているんだろう。でも、失敗したらそれはそれであきらめがつく。俺はこういう人間だ。冒険者の免許を返す」
「わかり、ました」
「はあ、はあ、待ってくれ!」
「ごう、それにみんな」
「迷惑かと思いましたがみんなを呼ばせてもらいました」
奈良君がくいっとメガネを上げた。
「冒険者免許を返す必要はねえだろ! また気が変わるかもしれねえ!」
「そうなったらその時に免許を取る」
「もったいないですよ!」
「達也さんならもっと上に行けますって!」
「赤目さんは魔眼持ちですよ、簡単に億を稼げますって!」
みんないい人間だな。
人の意見に反対すれば怒られるかもしれないのにそれでも言ってくれている。
「みんな、ありがとう、でも決めたんだ。俺の事を考えて親身になってくれてありがとう」
俺は頭を下げた。
「俺は、沙雪を育てて、育ててって言ってもおばあちゃんがほとんどやってくれてるんだけど、それ以外の時間はすべて基礎訓練に使いたい。今日から朝早く起きて訓練を始める」
「苦しい基礎訓練を毎日!」
「あの訓練は吐いちゃいますよ」
「は、はははは、吐かない程度に頑張ってみる。俺には年齢的に、もう時間が無いからさ」
「分かった。達也、沙雪の手がかからなくなったら戻ってくるよな?」
「そうしたいと思っている。ただ、訓練がどうなるか分からない」
「戻ってこい、俺は人を育てる。達也は自分と沙雪を育てる。そして数年後にまた一緒にダンジョンに行こうぜ」
「そう、だな。その時は今よりも強い自分を目指す」
「おう、俺はもっと人を育てるぜ。俺より強い人間が現れるようにな」
俺は冒険者免許を返した。
すぐに家に帰り基礎訓練を始めた。
「時間がかかりそうだな」
だが、少しずつ前に進んでいる。
毎日毎日訓練が進んでいく感覚がある。
俺は毎日訓練を積み重ねた。
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