上 下
112 / 113
終章

対決

しおりを挟む
「何をこそこそと話をしている」
「気にするな。戦いを始めようか。フィル、頼む」

「はい、すぐに助けます」
「どんな作戦かと思えばマッチョどもの救出か。だが、今頃何をしに来た?剣聖の男は虫の息だ。マッチョ共も女共も皆我一人で倒した!
 それに素手で戦いを挑む気か?

 たった一人で?

 殴る蹴るで我を倒せると思っているのか?
 我は最強の力を持っている!

 あの槍を何とかした程度で調子に乗るなよ!
 あの槍などより我の方が強い!」

「もう始めていいか?ああ、そうか。疲れたんだろ?時間稼ぎとは、案外せこい奴だな」

 俺は挑発する為バカにするように笑った。

「殺す」

 トランスが殴りかかって来る。
 俺は一瞬で懐に飛び込み、殴る。

 トランスが建物にぶつかり、更に隣の建物に激突し、3軒の建物が倒壊する。

 そして、倒れたトランスに追い打ちをかけるようにパンチを叩きこんだ。

「ぐぼおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 トランスがくの字に曲がりながら吹き飛ぶが、更に追いついて殴る。

 トランスの足を掴んで地面に投げ落とし、上からパンチを連打する。

 ……倒した手ごたえはあった。
 でも、体が消え始める気配が無い?
 トランスの体が黒く光り、体が小さくなる。

 俺と同じくらいの大きさになり、細マッチョの体形に変わった。

「三段階目、最終形態だ。格闘家だったとはな。珍しいジョブではあるが、それならあの連撃も納得できる。だが、最終形態になった我は無敵だ」

「投資家だ」
「むう?」
「俺は格闘家じゃない。ジョブは投資家だ」

「嘘をつくな。最弱の投資家な訳が無いだろう」

「投資家だ。投資家は最弱と言われているけど最近違うんじゃないかと思っている」

「何を言っている?投資家は最弱だ」

 トランスの体が黒く光る。
 そして俺にパンチを繰り出した。

 俺は両腕をクロスさせて防ぐが、衝撃を抑えきれず後ろに吹き飛んだ。

「我がモードチェンジする事で、MPは完全回復する。そして、我が小さくなったからと言って侮るべきではなかったな。小さくなった分我は力を凝縮させている。しかも重力魔法で我は攻撃を更に強化しているのだ」

「そうか、フィルの言った通りの力だ。奇遇だな。俺の新しい力も似たようなものだ。グラビティコントロール!」
「重力操作だと!」



【トランス視点】

 奴は重力魔法を身にまとい、一瞬で距離を詰めてきた。

 我の拳と奴の拳がぶつかり、撃ち負けた。
 我が吹き飛ばされつつ飛んで空中に退避しようとした。

 だが奴は重力を完全に操り、空を走って我に迫る。

 我の羽を掴まれ、地面に叩き落されると、上から強烈な蹴りを放たれた。
 その後は一方的だった。

 一方的に殴られ、一方的に倒されていく。

「なぜだ、なぜ、我が倒されようとしている?」

 我の体が黒い霧に変わっていく。

「投資家の力だ。
 確かに投資家は最弱からスタートする。
 投資と言えば、普通は長期投資を意味する。
 企業の成長の為に株を買って、成長するまでじっと待つんだ。

 企業に投資して、100万が1年で5%増えるとしたら30年で何倍になると思う?答えは432万を超えるんだ」

「……それと、強くなる事と何の関係があるのだ?」
「投資家の特性もそれと同じなんだ。最初は中々強くなれなかった。でも、どんどん経験値が入るようになり、経験値が有り余るようになり、俺は強くなった。成長が加速していくんだ」

 全部は理解できない。
 だが、我は完成された者として作られた。

 すなわち、成長しない存在と言い変えることも出来る。
 だが、こいつは恐らく、無限に近い成長をし続ける存在だ。

 ……作られた時点で決まっていたのか。
 戦う以前に負けが決まっていた。

 戦う前から、負けていた、か。

 我が霧になり、消えていく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

ゲーム序盤で死ぬモブ炎使いに転生したので、主人公に先回りしてイベントをクリアしたらヒロインが俺について来た

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで日間・週間・月間総合1位獲得!ありがとうございます。 社畜として働き、いつものように寝て起きると、俺はゲーム『ブレイブクエストファンタジー』とよく似た世界のモブ『ゲット』に転生していた。俺は物語序盤で盗賊に襲われて死ぬ運命だ。しかも主人公のダストは俺を手下のようにこき使う。 「主人公にこき使われるのはもうごめんだ!死ぬのもごめんだ!俺がゲームのストーリーを覆してやる!」 幼いころから努力を続けていると、ゲームヒロインが俺に好意を寄せている? いや、気のせいだ。俺はしょせんモブ! 今は死亡フラグを解決する!そして次のステップに進む! 一方、同じく転生したダストは主人公キャラを利用して成り上がろうとするが、ダンジョンのお宝はすでに無く、仲間にするはずの美人キャラには見限られ、努力を嫌ったことでどんどん衰退していく。

魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。 今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。 あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。 「—っ⁉︎」 私の体は、眩い光に包まれた。 次に目覚めた時、そこは、 「どこ…、ここ……。」 何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。

Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...