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終章

イツキは魔王を打倒する

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【イツキ視点】

 俺は魔王城に向かったが、魔王城の中にはすんなり入れた。
 なぜ衛兵がいない?
 不自然に感じたが、俺はそのまま進んだ。

 魔王城は広いががらんとしており、中には魔将の気配も魔物の気配も、罠すらない。
 どうなっている?
 なんの妨害も無いだと?

 一本道の回廊をさらに奥に進むと、大部屋があり玉座には子供が座っていた。

「よく来たねぇ」
「お前が魔王だな?子供にしか見えんが」

「僕が魔王だ。人を見た目で判断するのは良くないよ」
「護衛はどうした?なぜ俺をこんなに簡単に引き入れたのだ?」

「僕一人で十分だからさ。それよりも君はどうして一人で来たんだい?魔王である僕を相手に、一人だけで挑みに来た君に言われたくはないねえ。ああ、そうか。君は嫌われ者で、賢者と勇者は力を失い、そしてもう一人は内政しか取り柄の無い投資家だったね。あはははははははは!残ったのは嫌われ者の君だけだ」

「言いたいことはそれだけか?子供の姿をしていようが容赦はせん!」
「そうかい。始めよう」

 そう言った瞬間床に魔法陣が浮かび取り囲んだ
 どごーーん!

 俺は強烈な地面からの爆発で吹き飛ばされた。

「あははははははは!味方を引き連れて来てくれれば一網打尽に出来たのにねえ。もったいないなあ!」
「その程度で、俺を倒せると思うなよ」

「血が出ているじゃないか」
「ヒール!もう治った」

「情報通り打たれ強いようだね。状態異常も解除されるらしいね」
「俺は剣と盾、そして回復魔法すら使いこなす聖騎士だ!姑息な手は通用せん!」

「ふうん」

 大部屋の隅にある12体の甲冑が動き出し、俺を取り囲んだ。
 剣を持ち、俺に襲い掛かって来る。

「舐めるなあ!」

 俺は動く鉄の甲冑に斬りかかった。



 すべての動く鎧を倒した。

「はあ、はあ、ヒール、俺には効かん」
「息が上がってきたようだねぇ」

「すぐ終わる。お前を倒すだけだ」

 その瞬間壁一面に魔法陣が展開された。

 魔法の矢が雨のように降り注ぐ。

「ぐうううう!」

 どごんどごんどごんどごん!

「ヒール!ヒール!卑怯者が!正々堂々と戦え!」
「へえ、やっぱり固いねえ。このまま成長したら手が付けられなくなるよ。ああ、よかった。君を確実に無力化できる」

「何を言っている?」
「こっちの事さ。さあ、僕を殺しに来ないのかい?」
「また罠か?」

「そう思ってもらってもいいよ。僕を殺せないまま帰るかい?」
「笑わせるな!うおおおおおおおおお!」

 魔王の座る玉座に迫る。

 魔王に剣を突き立てると、あっけなく魔王は胸を突かれて倒れた。

「ああ、僕を殺してくれて助かるよ」
「何を、言っている?」

「僕は最弱の魔王だよ。戦闘力は無いんだ。僕は魔将作りの能力と魔道具作りに特化しているのと、もう一つ、まあ、僕が死ねば分かるよ」

「何を、企んでいる?」
「ふふふ、少しだけ教えてあげよう。僕は魔王だけど、僕は死んでもいいんだ。最強は僕が作り出した魔将さ。この魔将がいて、君が力を失えば対抗できる者はいなくなる。ああ、君の悔しがる顔が目に浮かぶようだ。ぎゃははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」

「黙れ!」

 俺は魔王を斬りつけた。

 魔王が霧のように消えていく。

『魔王の呪いが発動しました』

「なん、だ?」

『魔王の呪いの効果により、徐々に力を失います』

『レベルが105から104に下がりました』

『聖騎士の戦闘力補正が25から24に下がりました』

「俺が、弱くなっている?魔王の呪いの力か!」

 俺が魔王を殺したことで発動する呪い!
 そして、効果は緩やかだ。
 俺を殺す強力な呪いなら、俺を殺しきれない可能性があった。

 この、じわじわと効いてくるような地味な呪いは、俺から確実に力を奪うために特化している!
 俺を弱体させる為に魔王の命ですら使うと言うのか!

 そして、奴が言っていた魔将とは何だ?
 くう、俺は魔王を倒した。

 だが、俺は英雄ではなくなる?
 すぐに王都に帰還しよう。
 呪いを解けばいいのだ。
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