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終章

奇襲

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「さて、王都に魔物の軍が迫っているって言ってたけど、あいつの話を信用していいものか、あいつ嘘つきだし」
「ですが、もし本当なら王都の危機、すぐに向かうべきでしょう」

 周りを見渡すと兵が疲れている。
 1000のオークに3000で挑み、余裕ではあったが、さすがにすぐに移動を再開して王都での連戦はきついだろう。 
 
 戦わなくても行軍するだけで体力を使うのだ。

「俺達精鋭だけで先に向かうか。グレスには軍をまとめて後で来てもらおう」
「分かりました。お任せください」

 俺は幹部、そしてとくに元気そうなマッスルと旦那、うさぎ族メイドを連れて王都に戻る。



 ◇



「居た。本当に王都が襲撃されている」
「10000の魔物と、斬の魔将ですな」

 イツキは魔物に囲まれながら戦っていた。

「イツキも居るし、防衛は余裕だな」

「おいおい!待ってくれよ!後ろに魔将がいるじゃねーか」
「隙だらけなのであーる!」
「わたくしどもにお任せいただけませんか?」

「マッチョ3強に任せて良いか?」
「ぜひ、お任せを!」

「私達も行くよ!」
「まだ元気だよ!」
「うさぎ族メイド!」

「私も行くです!」
「幹部達!え?みんなで行くのか!」

 こうして、元気が有り余っている皆で魔将に突撃する事になった。

 斬の魔将カマーは王都を見つめ、こちらに気づいていない。
 周りには最低限の護衛しかいない。
 カマーは背は高いが痩せており、人型だが、腕から先がカマになっており、目がぎょろぎょろと動く。
 動きや腕のカマを見るとカマキリを連想させる。

 奇襲が始まった。

「アイスアローレイン!」

 エルルが遠距離から無数の氷の矢を作ると、雨のように敵に降り注ぐ。
 カマーの周りにいる護衛が倒れ、カマーにも氷の矢が刺さっていく。

「な、何カマ!?」

「アイスアローレイン!」

 2発目か。
 えげつない。

 しかもその後にリースが残った敵に手裏剣を投げ込み、皆が突撃していく。
 終わったな。

「ひ、卑怯カマ!奇襲はずるいカマ!」

 カマーがフルボッコにされていく。

 マッチョ3強がカマーを囲む。

「ふぉおおおおおおおお!」
「うおおおおおおおおお!」
「とどめであーる!」

 地面が轟音とともに振動し、カマーが魔石に変わった。

「まだまだ戦えますな!?」
「余裕であーる!」
「へへ、ウサットその言葉を待ってたぜ!」

 皆が残った魔物に突撃していく。



 さらに遅れて到着したグレス率いる軍が突撃し、魔物は全滅した。
 俺はその様子をただ見ていた。
 明らかに過剰戦力だ。

「圧倒的だな」

 俺達が王都に入ると、ビッグ王国の国民から歓声が沸き上がる。

「グレス様!!素敵です!」
「あんたの筋肉、俺は尊敬するぜ!」

 そしてイツキの機嫌は悪い。

「皆の者、よくやってくれた。皆に感謝する」

 王に呼ばれ俺達は讃えられるがイツキが俺達を睨んでいる。

「この国の守りもなんとかなるであろう。次は魔王城の攻略だが、引き続きジュン殿の軍に攻略をお願いしたい」
「待て!こいつはずる賢く立ち回っただけだ!俺が魔物の群れに果敢に飛び込み魔物を引きつけた事で王城は救われた!」

「イツキの働きも評価している。それで魔王城はこの国の北部にあり」
「待てーい!魔王城には俺が行く!」
「たった一人でか?」

「そうだ」
「勝てるのか?」
「俺は今まで魔将との戦いを繰り広げてきた!」

「……だが、ジュン殿の部隊と同時に攻めた方がいいのではないか?」
「不要だ」

「俺はイツキ一人で行っても構わないぞ。だがもし時間がかかるようなら俺達も魔王城に向かう」
「漁夫の利を狙うつもりか!そうはさせん!7日だ。7日で攻略して見せる!貴様は卑怯な手しか使っていない。敵が疲弊したタイミングを突き、1体の魔将を取り囲んで総攻撃する。しかもさっきは奇襲を仕掛けていた!」

「そうだけど?何?強襲とかそういうのは元の世界じゃ常識だろ?」
「黙れ!貴様には騎士道が無い!」
「そうだけど魔将は倒している」

「もう邪魔はするな!」
「7日間魔王城に行かなければいいんだな?分かった分かった。早く行ってきて倒してくれ。魔王を倒してくれるなら俺も助かる」

 イツキは怒って城を出て行った。
 俺が成功すると怒りだすし、戦う前から不利な状況を自ら作り出す。
 更には皆を敵に回し、助けてくれる仲間を踏みつけ孤立する。
 イツキ、お前は変わらないな。

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