上 下
19 / 113
投資の基本は節約と自己投資だよな

爵位

しおりを挟む
 俺はイツキとリンが謁見の間から出て行くのを見送ると、女神も消えた。

「さて、ジュン殿、今回の戦い。うさぎ族からのポーションの寄付など・・色々と世話になった」
 俺は横のグレスの顔を見ると笑顔で返してくる。

 ポーションの件だけでなく、俺が城に侵入した死霊部隊を全滅させたことを言っているんだろう。

「そこでジュン殿に子爵の爵位を与える。これからも影ながら・・・・我らを助けて欲しい」

「いや、僕は何も、うさぎ族が優秀なんです。それに転移してすぐに王から腕輪を貰いました。そのおかげで俺は助かったんです」

「戦闘力の腕輪と回復の腕輪の事か?ジュン殿に渡した腕輪の価値は2億ゴールドだが、売ることも出来ず倉庫で埃をかぶっていた腕輪だ。それにうさぎ族の働きにより今後その100倍の価値を生むだろう。そしてうさぎ族の苦境を救ったのはジュン殿だ」

「男爵ではなくいきなり子爵になるのは、どうなんでしょう?」
「ジュン殿の爵位を子爵にせねばうさぎ族が拗ねてしまう」
 
 王がさわやかに笑うと周りの者も笑った。
「分かりました」
「うむ、すぐに儀式を済ませよう」 




 爵位の授与が終わると俺はため息をついた。
「やっと終わった」

「疲れさせてしまったか」
 王が苦笑いを浮かべる。
「儀式は苦手です」

「うむ、だが皆にジュンが子爵になった事を示す意味もあるのだ。疲れたついでに少数で話がしたい」
 すぐに話は進み、俺達は城を出て俺の住む家に向かう。



 護衛の兵士が庭の前で待つが、グレスと王の態度で何かを察したのか俺への態度が異様に丁寧だ。
 家のホールにテーブルが用意され、俺の隣にウサットとラビイが座り、対面には王が座り、グレスは王の後ろに控えた。

「グレス、私の後ろではなく椅子に座ってくれ」
「しかし」
「命令だ。早く話を進めたい」
「分かりました」

「さて、話を進める前に、うさぎ族はジュン殿の能力を知っていると取っていいか?遠慮なく話をしたいのだ」

 ウサットが胸を張って答える。
「ジュン様のお力は心得ております。王様とグレス様はご存じと、そう取ってもよろしいのですかな?」

「うむ、力を持っている事は知っている。だがうさぎ族よりジュン殿の事を把握しているわけではないのだ。簡易ではあるが結界を張った。今後の方針を聞きジュン殿と連携を取りたい」

「僕達ががやろうとしているのは、うさぎ族のレベルを上げです」
「ジュン殿、敬語は不要で普通に話して構わない」
 無意識に敬語を使っていた。
 王様のイケメンオーラか。

「分かった。希望者を募り、うさぎ族で中級ダンジョンに行きたい。最終的にはうさぎ族のレベルを30まで引き上げたい」

「30!最強の部隊が完成するだろう」
 グレスは驚愕した。

「疑問がある。なぜうさぎ族なのだ?うさぎ族は生産ジョブしかおらず戦いには向かない」
「うさぎ族のレベルを上げ、生産力の強化を狙っている。俺の元居た世界の歴史では、大国が南北に分かれて戦争をした。一方は兵の質が高く、一方は兵の質では劣る代わりに物資の生産力が高かった。どっちが勝ったと思う?」

 そう、アメリカの南北戦争だ。
「その文脈で考えると、生産力の高い方が勝った、か?」

「その通りだ。もちろん元居た世界では武器の性能が戦闘力に直結する。この世界の法則と違う部分もあるが、この世界でも弱い武具はすぐ壊れ、ポーションが不足し、食料が枯渇すれば戦力はダウンする」

 この世界では武器の性能を上げても戦闘力は高くならない。
 だが、剣士の場合レベルに合わない質の低い武器を使えば剣がすぐに壊れる。
 壊れた剣を持った剣士の戦闘力は当然下がる。
 質の高い武器を作る意味はあるのだ。

 いつも紳士的なグレスが声をあげる。
「確かに!その通りです!もっとポーションがあれば!もっと食料があれば!もっと質の高い武具があれば犠牲を少なく出来ます!」

 俺はグレスの様子を見て確信に変わった。
 この王都は生産力が低い。

 生産性が低いと兵士に十分な物資を持たせることが出来ない。
 そうなれば兵の犠牲が大きくなり、徐々に劣勢に立たされる。
 
「だが、生産系ジョブの育成には多大な手間と時間がかかる……おかしい。なぜうさぎ族はこの短期間で大きな力を手にしたのだ?成長が早すぎる!?」

 ラビイが胸を張った。
 何故か自慢するように語り出す。
「ジュンのスキル、【経験値投資】の力なのです。ジュンの経験値投資の能力は、一人につき、戦闘力を10ポイント貸し出せるのです!しかも1度に10人まで契約できるのです!」

「なん、だと!その能力は女神の加護とほぼ同格!戦闘力が10アップすればだれでも簡単にレベルを上げられる!いや、だからこその英雄か」

「ただ、弱点もあるのです。【経験値投資】のスキルを使うとジュンは力を無くし、苦しみを味わうのです」
 
 そこまで苦しくないけどな。
「いや、弱点は経験値の半分を俺が吸い取る事になる」
「それでも強力だ!」

 王は驚愕し、その後酒が運ばれ、宴会が始まった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

ゲーム序盤で死ぬモブ炎使いに転生したので、主人公に先回りしてイベントをクリアしたらヒロインが俺について来た

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで日間・週間・月間総合1位獲得!ありがとうございます。 社畜として働き、いつものように寝て起きると、俺はゲーム『ブレイブクエストファンタジー』とよく似た世界のモブ『ゲット』に転生していた。俺は物語序盤で盗賊に襲われて死ぬ運命だ。しかも主人公のダストは俺を手下のようにこき使う。 「主人公にこき使われるのはもうごめんだ!死ぬのもごめんだ!俺がゲームのストーリーを覆してやる!」 幼いころから努力を続けていると、ゲームヒロインが俺に好意を寄せている? いや、気のせいだ。俺はしょせんモブ! 今は死亡フラグを解決する!そして次のステップに進む! 一方、同じく転生したダストは主人公キャラを利用して成り上がろうとするが、ダンジョンのお宝はすでに無く、仲間にするはずの美人キャラには見限られ、努力を嫌ったことでどんどん衰退していく。

Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?

魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。 今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。 あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。 「—っ⁉︎」 私の体は、眩い光に包まれた。 次に目覚めた時、そこは、 「どこ…、ここ……。」 何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

処理中です...