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投資の基本は節約と自己投資だよな

魔将の決意【スカルボーン視点】

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 馬鹿な!6体すべてのデーモンを勇者一人が打ち取ったというのか!
 すぐにレンズを取り出す。
 レンズは虫メガネ型の魔道具で使用する事で相手のステータスを知ることが出来る。

 レンズで勇者をのぞき込む。
 ばかな!+25ポイントの戦闘力を+23ポイントまでしか削れなかったというのか!
 たった2ポイントだけしか削れなかった!
 役目を終えたレンズが粉々に砕け散る。

 6体のデーモンすべてに我の呪いの加護を授けた。
 我の力を削ってまで施した渾身の加護をデーモンに施した。
 そこまでしてたったこれだけしか効果が無いというのか!

 いや!そもそもステータスを偽装している可能性すらある!
 底が見えん。
 勇者の底が見えん!

 勇者は化け物だ。
 甘かった。
 我の身を犠牲にして女神の加護を消してやる!

 死霊の魂を集める。
 死霊部隊が消滅し、その魂がスカルボーンの体に集める。

 我の体が大きくなり、10メートルほどの身長に巨大化した。
 この力を使う事で死霊部隊は消滅する。
 しかも我の体も時間経過で崩れ落ちる。
 だが、ここまでしてもなお、勇者は油断出来ん!

 人間どもの兵士は恐怖の声をあげる。
 だが、勇者は我を睨みつけて全く動かん。
 ここまでの恐怖を与えてなお動じる事が無いか。

 危険!
 勇者は危険だ!

 


【勇者タケル視点】

 走りすぎて、スタミナを削られた。
 さっきの連撃でもう動けない。
 息が苦しい。
 スカルボーンが大きくなって俺を両手で掴んだ。

「ぐう!呪いか!」
 呪いの力が流れ込んでくる。

『勇者の戦闘力アップ効果が+23から+17に減少しました。+11に減少しました+5に減少しました戦闘力強化の効果が無くなりました』

 女神の加護が、消えたのか!
 馬鹿な!俺は選ばれた人間だ!
 俺は最強!

『勇者のジョブを維持できません。ジョブを剣士にランクダウンします』
 嘘だ!
 俺は、俺は特別な人間だ!
 こ、これは夢だ!

「離せえええ!ぐおおおおおお!!離せよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

『剣士の戦闘力アップ効果が+5から+3に減少しました。+1に減少しました』
 ただの剣士に変わったのか!?
 剣士の力さえ初期値に下げられる。
 新米兵士と同じになった?
 この俺が?
 馬鹿な!

『レベルが20から17に減少しました』
 レベルまで消す気か!
 
『レベルが13に減少しました。レベルが6に減少しました。レベルが1に減少しました』
「違う!これは、ゆめ、だ」
 俺は意識を失った。




【スカルボーン視点】
 
「くくくくく、ふふははははははははは!力を消してやった!次は聖騎士と賢者だ!」
 興味を失った勇者を投げ捨てる。
 加護を消し去る確かな手ごたえを感じた。

「撤退だ!」
「ひいい!」

 逃げようとする聖騎士と賢者を右手と左手で掴んで呪いの力を流し込む。
 左足が崩壊を開始して地面に倒れる。

「ぐうう!まだだ!」
 渾身の力を込め、女神の加護を消し去ってやる!

 聖騎士と賢者の加護を消し去った。
 更にレベルも消し去る!

 その時、スカルボーンの両腕が腐り落ちるように地面に落ちた。

 限界か。
 スカルボーンの体が崩壊し黒い霧へと変わっていく。


 

 崩壊した体の中から小さなスケルトンが姿を現す。
 肋骨に収まっていたガイコツが本体だったのだ。
「ひひひひ!我はまだ滅びはせん。この黒い霧に乗じてここを抜け出し、時間をかけて力を取り戻す。待っていろ!人間ども」



【ジュン視点】
 
「5体もデーモンを倒したし、俺仕事したわ。やった感がある。頑張った自分を褒めてあげたい」

 女神からメッセージが届いた。
 嫌な予感がする。
 女神からのメッセージで今まで良いことは無かった。

 最近女神に対して疑念がある。
 女神は悪い女神ではないと思う。
 だが指示が曖昧で信頼できない。

 こっちは命の危険があるわけだが、女神は、「たぶん~」とか「きっと大丈夫」とかそういう発言が多い。
 女神からは計画性の無さを感じている。

 仕方ない。
 メッセージを見るか。
 いや、でも知らないふりをするのもありか。
 元の世界でも既読スルーって言葉もあるし。

 急に目の前に女神の映像が映し出される。
「びっくりした!」

「急いでスカルボーンを倒して!早くしないと逃げられるよ!」
「あの強そうな気色悪い骨か?」
「肋骨に収まっていたスケルトンが本体だと思うの!早く倒して!ね?きっと弱いから」

 本当かよ?
 ゆるふわJK女神の言う事はたまに説得力が無い。
 やる気が出ない。
 なんだろう?は!これは英雄の直感か!?

 行くのは良くないと俺の直感が囁いていると!そういう言う事か!?

「……」
 ジト目で女神が見つめてくる。
 視線を逸らすと俺の視界を塞ぐように俺の顔の真ん前に女神の顔が写る。
 うわ!うざ!
 断ったらしばらくこれが続きそうだ。


「分かった分かった」
 そういえば俺女神に敬語を使わなくなった。
 尊敬の念の欠如か。

 俺は走って城の外に出る。
 だが外は黒い霧が立ち込める。

「居ないか。もう手遅れのようだ」
 居ないものは仕方がない。
「帰ろう」

 また女神の姿が映し出される。
「北に向かって!」




【スカルボーン視点】

 城を抜け出し、夜に紛れてこの街を出る。
 あと少しで街の外だ。
 その時、後ろから強い衝撃を感じた。

 体が宙を舞い回転しながら地面に落ちる。
「両足が、無い!我の両足!」

 目の前には黒目黒髪の男が居た。
「貴様!転移者か!」

「そうだけど?」
 男が上からパンチを繰り出す。
 咄嗟に両腕でガードするが、ガードの上から強烈な衝撃を受けて地面に埋まった。

 こいつ!勇者より強いのか!
 回避できなかった!
 我は思い違いをしていた?
 勇者が出来損ないと言っていた投資家!?
 この動き、勇者より強い!
 まさか!?

「ま、待て!貴様デーモンを倒したか!?」
「さっき5体倒した」

 やはりか!
 こいつだった!
 厄介なのはこいつだったのだ!

 勇者はただプライドが高いだけの大口叩きだったのか!
 おかしいと思ったのだ。
 勇者の加護を消し去った時、あっさり行き過ぎた。
 簡単に加護を消し去った感覚に違和感を覚えていた。

 我は無駄に力を使い、今倒されようとしている!
 こいつだ!すべての呪いをこいつに使うべきだったのだ!
「騙したな!我を謀った!」

「何を言っている?俺と話すのは初めてだろ!?いつ騙すんだ?」

 ……確かにその通りだ。
 我が思い違いをして自爆した。
「所で魔将ってあと何体居るんだ?デーモンはあと何体居る?魔王は今何をしている?」

「我が、言うと思っているのか?我が本当の事を言うと思っているのか!?侮るなああああああ!我は魔王様の忠実なるしもべ!」

「お前、勇者よりはまともなのかもな」
「最後に聞きたい。我の元の戦闘力は108だった。我がもしお前と闘っていれば我はお前に勝てたか?」

「……勝てたと思う」
「そうか」

「最後に言っておく。お前の敗因は勇者の言う事を真に受けたからだ。勇者はビックマウスだ。自分を大きく見せる癖がある」
「もう、手遅れだ」

 我の体が消えていく。

 奴は最後に言った。
「勇者タケルは、ビックマウスで人を救ったのかもな。どんな過程でも、結果人を救えれば英雄、この世界の英雄の意味が分かってきた」

 我は勇者の大口に踊らされた。
 魔王様、申し訳ございません。
 我は、失敗しました。
 意識が消え、存在そのものも消えていく。
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