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高等部に進級しました
182:親友の意外?な過去
しおりを挟む俺が話を終えると、
ルイは、はぁ? と
呆れたような顔をした。
「なんだよ、その顔」
「いや、だって。
頬にキスされた?
ハンカチ越しに?
そんなので焦ったのか?」
いや、まて。
そうじゃない。
俺が焦ったのは
プロポーズされたからだ。
「どんだけお子ちゃまなんだよ。
前世で女の子と遊んでこなかったせいだな」
「悪かったな。
恋愛経験ゼロで」
どうせ俺は
恋人と呼べる相手なんて
一度もいなかったし、
片思いの相手すら
いなかったからな。
「……拗ねるぞ」
俺が言うと、
ルイは、悪い、悪い、と
軽く言う。
「しかし、
あのティス殿下が
プロポーズねぇ。
ちょっと煽り過ぎたか」
「うん?」
「いや、何でもない。
そんで?
返事ができないからって
引きこもってるってことか」
そうなのだが、
真顔で言われると、へこむ。
「落ち込むから
ほんとのこと言うな」
「いや、ここは言わないと
次に進めないだろうが」
ルイは呆れたように言う。
「わかってるよ。
いつまでもここで
逃げてるわけにはいかないし。
でもさ。
俺、絶対に王妃とか無理だし」
ルイ相手だからか、
つい、泣き言を言ってしまう。
「まぁ、そうだな。
おまえは誰かの上に立つより
その下で策を練る方が好きだもんな」
「だろ?
ティスに告白された時は
驚いて考えられなかったけど、
冷静になったら、
俺に王妃なんて無理だし。
ティスとは一緒に
楽しく遊んで来たけど、
恋愛とか結婚とか言われたら
どうしたらいいかわからん。
思考が固まって動かないんだ」
「……重症だな」
「うん」
考えるのが好きな俺が
何も考えれないなんて重症すぎる。
ルイはうなだれる俺を見ながら
紅茶に手を付けた。
一口飲み、ふーっと息を吐く。
「思ったんだが」
「うん」
「なんで王妃の話なんだ?」
ルイの質問に、
なに言ってんだ?って思う。
「だってティスは次期国王だし。
ティスと結婚するなら王妃だろ?」
「そうじゃなくてさ。
アキラの気持ちの話をしてんだよ」
「俺?」
「そう。
おまえ、最初から王妃が
どうとか悩んでてさ。
俺の時みたいに
友情しかないから
嫁も婿も無理だとか、
弟君の時みたいに、
兄弟だから結婚は無理とか
そんなんじゃなくて。
なんで結婚することを
最初から仮定して悩んでるんだ?」
ルイの指摘に、
俺は一瞬、呼吸を止めた。
確かにそうだ。
俺はルイの時も義兄の時も、
結婚の話を持ち出されたら
すぐに却下してた。
無理だとしか思えなかったから。
でもティスが相手だと
絶対に無理とは思わなかった。
もしティスと一緒にいるとしたら、って
最初から、一緒にいることを
前提で考えていた。
「でも、ティスは親友で
ずっと一緒にいたいって思っててて」
「じゃあ俺は?
俺もアキラの親友で
ずっと一緒にいたいって
思っててくれてんだろ?」
「あたりまえだ」
俺が即効応えると、
ルイは苦笑する。
「じゃあ、俺とルイ殿下と
どこが違うんだよ」
俺は言葉に詰まった。
ルイにもティスにも
友情を感じているし
ずっと一緒にいたいと思う。
同じだと言えば同じだ。
でも、違う。
ルイとは結婚できないって
無理ってすぐに思った。
でも、ティスは?
俺はティスとは
結婚はできると思うから
結婚の先の王妃という肩書で
悩んでいるんじゃないのか?
ルイの指摘に俺は何も言えなくなる。
「アキラは、どうしたいわけ?
言えよ。手ぇ貸してやるから」
ルイはそう言うと、
手を伸ばして俺の髪を
ぐしゃぐじゃ撫でた。
「ルイ、優しすぎ」
ずっと勝手にいじけて
引きこもっていた俺には
ルイの優しさが嬉しくて。
俺は目頭が熱くなって
思わずうつむく。
「親友だからな」
ルイの言葉に、
俺は頷くしかできない。
「俺、めちゃくちゃ
弱くなって、みっともない」
前世では絶対に、
こんなことぐらいで泣いたり
しなかったのに。
「そうか?
俺はおまえがこうやって
俺の前だけ、
弱いとこ見せてくれるの
結構好きだったけどな」
「悪趣味だな」
恥ずかしさをごまかすように
俺が言うとルイは笑う。
「そんなの今更だ。
俺は前世からずっと
悪趣味なんだよ」
ルイの口調は軽いものだったけど
俺の髪をぐしゃぐしゃと
撫でる手つきは優しかった。
「俺、ティスのこと
好きなのかな?」
「おまえな。
そういうのは自分で考えろ」
呆れたように言われる。
「でも俺、よくわからない。
ルイも義兄もティスも好きだし。
ティスだけ恋愛として
好きってどうやって見分けるんだ?」
俺が聞くと
ルイは俺から手を離して
「重症だ」と呟いた。
俺はムっとして
「じゃあ、ルイは好きな相手が
できたら、どんな感じなんだよ」
と聞いてやった。
ルイは前世では
女子社員からも人気があったし、
恋人だって、何人もいたハズだ。
だって俺が知ってるだけでも
3人はいたし。
全員、交際期間は短かったけど。
これって付き合う前は
ルイのこと素敵、って思ってたのに
実際に付き合ったら
そうでもなかった、っていう
パターンなんだろうか。
「アキラ、なんか俺の悪口とか
考えてないか?」
「そんなことないって」
目ざといルイに俺は手を
ブンブン振って否定した。
「ルイはさ、
女性と付き合う時
なんで付き合おうって
思ったんだ?」
「あー、そうだな。
俺のこと好きって言うから?」
「……真面目に答えろよ、
怒るぞ」
「いや、まぁ、一応マジメに
応えたんだけどな」
ルイは小声でゴニョニョ言う。
それから俺を見て
少しだけ照れたような顔をした。
「とにかく。
好きって気持ちだろ?
そうだな。
ちょっと会えなかったら
どうしてるかな、とか
つい考えていたり、
仕事でたまたま
すれ違ってるだけなのに
嫌われたかな?とか
勝手に考えて落ち込んだり……」
物凄くリアルな言葉に
俺は驚いた。
ルイの好きな相手って
前世では同じ会社の女性社員
だったんだろうか。
本命の好きな相手がいたけど
相手は既婚者とかそんな感じで
付き合うのは無理だと
思ったから、告白された相手と
付き合ってただけ……だとか?
俺はルイのことを
自信満々のモテ男だとばかり
思っていたが、
違っていたらしい。
「おい、聞いてんのか?
俺がせっかく話してやってんのに」
「あ、ごめん」
俺が驚いた顔をしていたせいか
ルイが怒る。
俺は慌ててルイの話に
耳を傾けたけれど、
意外なルイの過去を知って
親友だと思っていたのに
俺はまだルイのことで
知らないこともあったんだな、
なんてそんなことを思ってしまった。
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