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創造神の愛し子
162:母に会いに
しおりを挟む俺たちはその後、
一旦解散になった。
俺もルイも学園に
戻ってもすでに授業は
終わっている時間だし、
学園に戻る必要はない。
義兄は今日はもう
帰ることができるというので
俺たちは部屋を出てすぐに
ティスと別れた。
さすがに二日続けて
ティスを連れて
タウンハウスには戻れないだろう。
寂しそうなティスを慰め
俺は「また学園で」と
ティスと手を振って別れる。
その後は義兄とルイと一緒に
タウンハウスに戻るだけだ。
と思ったが、ふと領地の
母のことを思いだした。
「ルイ、悪いけど
タウンハウスには一人で
戻ってくれる?」
「それは構わないが
アキラは?」
「領地の母に会いに行ってくる」
「義母上に?」
義兄も不思議そうな声を出す。
「うん。母様も紫の瞳だし
ちょっと様子を
見に行きたい思って。
紫の瞳の魔力に関しても
伝えておいた方が良いと思うし」
「魔力を使うことができたら
元気になるんだったな」
ルイの言葉に俺は頷く。
「まだどうなるかわからないから
詳しくは話さないけど、
元気になれるかもしれない、
ってことぐらいは
言っておきたくて」
「そうか。
では私は……」
「兄様も一緒に行こう」
遠慮しそうな態度の
義兄を俺は強引に誘う。
「兄様も家族だから
一緒に行こう」
俺がそう言うと
義兄は嬉しそうに頷いた。
「いいなー。家族」
ルイが言いながら
俺に抱きついて来たが
義兄に即効引きはがされる。
俺は笑った。
「ルイには俺がいるだろ?
ルイも家族だからな」
ルイは俺の言葉に
嬉しそうにしたが義兄は
「そういうのは
墓穴を掘るからヤメロ」と
小声でつぶやいた。
何が墓穴なんだ?
と思ったが、義兄は首を振る。
そして近くに控えていたキールに
馬車の手配と父への伝言を頼んだ。
馬車はルイをタウンハウスに
送る1台と、俺と義兄を
領地へ送る1台だ。
最悪俺が明日、
学園に行かなくても
ルイにはちゃんと馬車が
用意されるはずだし、
朝ご飯もタウンハウスに
準備される。
馬車の時間も朝ご飯の
時間も決まっているから
それに合わせてルイが動けば
俺がいなくても大丈夫だ。
「ルイ、時間は守れよ」
「なんだ?
領地に泊まる気か?」
「どうなるかわかんないから。
ほら、父が帰ってくるし」
俺が言うと、
ルイは納得したような顔をした。
俺たちが馬車停めまで行くと
すでに公爵家の馬車が
準備されていて、
俺はルイを先に馬車に乗せた。
「じゃあ、先行くぜ」
ルイがそう言い、
キールが馬車の扉を
閉めた時だ。
大きな声がした。
「……そうなるよな」
俺は呟いてしまう。
義兄は大きなため息をついた。
ルイの馬車が門を出たぐらいで
父が猛スピードで走ってくる。
キールは素早く
俺の後ろに下がり、
義兄はあからさまに俺から離れた。
父は走ってきた勢いのまま
俺を抱き上げる。
「領地に帰ると聞いたぞ!
父様と一緒に帰るか!?」
すりすりされるが、
父よ、仕事はどうした?
「父様、お仕事は良いのですか?」
「かまわん!」
いや、構うだろう。
普通は。
俺は義兄に視線を向けた。
一緒に帰るか?
と視線で問うと、
義兄は首を振る。
勘弁してくれ、の顔だ。
仕方が無い。
「父様。お仕事は
ちゃんとした方がいいです。
それに僕は、母様と
兄様と一緒に
お仕事を頑張って帰って来た
父様に、おかえりなさい、
ってしたいんです」
「おかえりなさい?」
「はい。
家族みんなで、父様の帰りを待って
おかえりなさい、って
全力でお出迎えするんです」
俺が言うと、
父はみるみる笑顔になり
「可愛い、可愛いなぁ」と
更に俺にすりすりした。
「では、すぐに仕事を
片付けてくる。
屋敷で待っててくれ」
「はい。父様。
頑張ってる父様は
恰好良くて大好きです」
父はデレっとして
俺を地面に下ろしてくれた。
そして今度はスキップでも
しそうな足取りで
来た道を戻っていく。
「義父にはアキルティアの
言葉が一番効くな」
さりげない義兄の言葉に
キールが頷くのが見える。
「父様は半分本気で
半分は僕の我が儘をわざと
聞いてくれてるんだと
思うけどね」
あんなにチョロくて
公爵家当主など
できるはずがないから
俺に合わせてくれてるのだと思う。
「いや、80%ぐらいは
本心だな」
義兄は言う。
「王宮では義父は
アキルティアが絡むときだけ
残念な親バカになるだけで
それ以外は素晴らしい
能力を持っていると評判だ」
義兄の言葉に俺はつい
笑ってしまった。
顔を見合わせて笑う俺たちに
キールが声を掛けてくれる。
急に2台、馬車を用意させたので
御者はキールがしてくれるらしい。
ルイを送った馬車に
伝言を頼んでいるから
御者と護衛の追加がおそらく
派遣されるだろう。
キールはおそらく
彼らとはすぐに
合流できると言う。
王宮とタウンハウスは
距離も近いし、
心配なら護衛たちが
到着するのを
待っても構わないと
キールは言うが、
俺はすぐに出発することにした。
キールの護衛の腕前も
義兄の剣の腕前も
俺は信頼しているし、
まぁ、大丈夫だろう。
王宮を出てすぐに
誰かに襲われるとも思えない。
俺の返事を聞いて
キールは俺と義兄を
馬車に乗せて、すぐに
馬車を出発させた。
俺は義兄の隣に座る。
義兄は何も言わずに
俺を見た。
「内緒話してもいい?」
俺がキールに聞こえないように
小さな声で言うと
義兄は頷く。
きっと俺の様子に
内密に話があると
気が付いていたのだと思う。
「前世の話か?」
義兄も小さな声で言うので
俺も頷いた。
「前世の俺たちの母さんのことだ」
「母さん?」
さすがに出て来た言葉が
想像できないワードだったのだろう。
義兄は声は小さかったものの
目を見開いて俺を見つめる。
「あのさ。
ちゃんと伝えてなかったんだけど。
領地にいる母様さ。
たぶん、俺たちの母さんだと思う」
義兄は俺の言葉に
俺をじっと見つめたまま
動きを止めてしまった。
衝撃が強すぎたか?
だろうな。
俺はできるだけ小さな声で、
カミサマに聞かされた話を
兄に説明することにした。
ずっと黙っててスマンっ。
許してくれ。
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