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隣国の王子

116:夜這い?・2【ティスSIDE】

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 な、な、なんでお尻?

僕はパニックだ。

でも、目はアキルティアから
離せない。

アキルティアは白い足を
シーツに絡ませて
僕に背を向けるように
横を向いている。

クマとは反対側に顔があるから
どんな顔で寝ているのかはわからない。

アキルティアの上半身は
シーツに包まっているから
シャツは見えないが、
腰から下は大きくシャツが
めくれて足とお尻が丸見えだった。

なんで下着を履いてないんだ?

そう思って。
そういえば、急いで着替えを
用意させたので、
侍従が持って来た寝間着が
成人男性用の物だったことを
僕は思い出した。

きっと寝間着のズボンも
大きかっただろうし、
替えの下着も大きかったのだろう。

あの時、アキルティアを
着替えさせたのは
ジェルロイドだったが。

ジェルロイドがこんなミスを
するとは思えないので、
よほど急いでいたと推測できる。

きっと下着と寝間着のズボンを
アキルティアに履かせたけれど、
大きくて両方とも
床にずり落ちてしまったのだ。

けれど、僕たちがいたから
ジェルロイドはそれに気が付かず
急いでアキルティアを
ベットに押し込んだに違いない。

ジェルロイドはアキルティアを
大切にしているからな。

兄弟愛以上の感情は無いと
はっきり言われてはいるが、
それでもあからさまに
僕を牽制するようなことを
されると、やっぱりモヤモヤしてしまう。

いや、あの時は
ルティクラウン殿下がいたから
彼を牽制したのだろうか。

ルティクラウン殿下も、
アキルティアとかなり親しそうだった。

二人の出会いには驚いたが、
魔法と言うのは、やはり凄い。

あんな魔法を見せられると
隣国との戦争など
絶対にしたくないし、
できるだけ友好関係を保ちたい。

そういえば、
公爵がアキルティアと
ルティクラウン殿下が
抱き合っていたと報告があった時

戦争だ!って
誰も止めれない勢いで
騎士団長と宰相と、僕の父を
呼び出して公爵が
謁見の間で暴れた時は、
正直、怖かったな。

アキルティアがうまく
まとめてくれたから
良かったけど。

父は僕に向かって

「弟は昔から暴走すると
手が付けられなくなるから
大変だよ」

と力なく笑っていたが、
アキルティアがあの場にいなければ
隣国との戦争は回避できたとしても
誰かが犠牲になっていたかもしれない。

いや、そんな記憶を
呼び出して現実逃避を
している場合ではない。

どうする?
アキルティアの小さくて
白くて、きゅっと引き締まった。

可愛い赤ちゃんみたいな
まるいお尻をどうしたらいい?

シーツを掛け直す?

でも、それでアキルティアが
目を覚ましたら?

僕にやましいことは
何一つない……はずだけど
でも、もしアキルティアに
「いやらしい」と言われたら?

いや、アキルティアは
そんなこと言わない……か?

どうする?

このまま見なかったことにして
部屋を出るか?

だが、こんなに無防備に
素肌を晒して、
風邪を引いたりしないだろうか。

アキルティアは病弱だったし
体力だって無いのに。

なら、侍女に言って
新しいシーツを持ってこさせるか。

いや、ダメだ。
侍女だろうがメイドだろうが
アキルティアのこんな姿を
誰かに見られるわけにはいかない。

僕がおろおろしていると、
アキルティアが小さな声を漏らした。

そしてシーツに絡んでいた足が
伸びをするように
まっすぐになり、
またアキルティアは
コロン、と今度は僕の
方に寝返りを打つ。

お尻は隠れた。良かった。

と安堵した僕の目の前で、
アキルティアは目を開けた。

僕はどくん、と心臓が鳴って。
でも何も言えなくて。

そしたらアキルティアは
じーっと僕を見て、
寝ぼけているのか、
首を傾げた。

「ティス?」

「う、うん、ごめんね。
起こしちゃって。

アキルティアが
寂しくないか心配で」

言い訳のように
僕は早口で言った。

アキルティアは理解しているのか
していないのか
よくわからない様子で僕を見て、
クマを反対側に移動させた。

何をするのだろうと
思っていると、
アキルティアはクマがいた場所を
ぽん、ぽん、と叩く。

「おいで、一緒に寝よ」

僕は本当に、固まってしまった。

おいで?

アキルティアが僕を誘ってる?

「大丈夫」

ってアキルティアは
笑うけれど。

何が大丈夫なの?

「早く」と手を伸ばされ
僕は震える手で、
アキルティアの白い指を掴む。

「ほら、早く」

アキルティアに促されて
僕はアキルティアと同じ
シーツに潜った。

客間のベットは広いから
僕とアキルティアと
クマがいても狭くはなかったけれど。

僕は心臓が壊れそうなぐらい
ドキドキしていて、
体中が熱くなっている。

アキルティアは僕が
シーツに潜り込むと
僕の頭をゆっくりと撫でて、
僕の身体を抱き込んだ。

まるでさっきの
クマにしていたみたいに。

「あったかいね。
こうしてたら、
すぐに眠れるよ」

眠そうな声でアキルティアは言う。

もしかしてアキルティアは
僕を寝かしつけようと
してくれているのだろうか。

僕の顔は、アキルティアの
胸に押し付けられていて、
薄いシャツ越しに、
暖かいアキルティアの
素肌を感じてしまう。

こ、こんな状態で
眠れるはずがない。

だというのに、
アキルティアはまたすぐに
寝息を立て始めた。

甘い寝息が、僕の髪をくすぐる。

だめだ、だめだ。
早くベットから抜け出さないと!

そう思ったけれど、
アキルティアの腕の力は
意外にも強くて。

無理に外すとアキルティアを
起こしてしまいそうで、
僕は指一本すら動くことさえできなかった。

そして僕は体を
強張らせたまま、ひたすら
朝が来るのを待った。

僕がアキルティアの
腕から抜け出すことができたのは
明け方近く。

アキルティアの腕の力が緩み、
逆隣のクマを、細い指が掴んだ時だった。

僕はその瞬間、大慌てで
ベットから音を立てないように下りて
自室へと必死で戻った。

体中が熱くて、
心臓がバクバクしてて。

アキルティアに全身で
しがみつかれていた感触は
まだ腕や背中に残っていて。

だめだ。

もう朝が来るのに、
アキルティアと普通に話せる気がしない。

だって。
だって。

アキルティアの白い足が
僕の足に絡みついてきて、
下着すらつけていなかった
アキルティアの下半身が……

僕の腰あたりに
押し付けられていたのだから。

きっとクマと間違えたのだ。
そう思ったけれど、
けれど、あの感触を
忘れることなどできやしない。

「うあぁ」

僕は意味も無く呻き、
現実逃避をするべく
ベットの中に潜り込んだ。


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