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52:お茶会の許可
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俺は父の執務室に連れて来られた。
父はオルガノ氏を威嚇するように
俺を膝に乗せている。
ここに来る途中に
俺を抱っこした経緯を聞いたが、
父よ、子どもっぽすぎないか?
俺は父の膝の上で
大人しくしているが
オルガノ氏もこういった父に
慣れているのか、
何も言わずに……いや
笑うのを耐えている様子で
お茶を飲んでいた。
「君がいつまでも若々しく、
老い知らずのことはわかったよ。
だから可愛いご子息を
そろそろ下ろしてあげたらどうだい?」
そのままだとお茶も飲めないだろう?
そう言われて
父はしぶしぶと言う様子で
俺を隣に座らせた。
ふー、やれやれだぜ。
しかし、13歳といえば
前世では中学生だ。
その俺を抱き上げて
膝に乗せてしまうとは、
やはり父は凄いと思う。
いつまでたっても
俺を幼児扱いすることもだ。
溺愛してくれるのは嬉しいが
これではいつまでたっても
独り立ちできそうにない。
このままでは学園を卒業しても
同じ調子で公爵家から
出してもらえないんじゃないかと
今から不安になる。
それから不安と言えば
目の前に座るオルガノ氏だ。
厳つい顔をしているが、
目元が優しく、
何故か俺のことを見つめている。
ただ不快な感じはしなくて、
まるで……親戚の子どもを見るような、
そんな感じだ。
ほのぼのとした、
赤ちゃんを見て、可愛いなぁ、と
自然と思ってしまう。
そんな顔をしている。
俺、オルガノ氏とは初対面だし、
そんな顔をして見つめられるいわれは
無い筈なんだけどな。
「あぁ、ごめんよ。
不躾だったかな」
俺がちらちらオルガノ氏を
見ていたからか、
オルガノ氏はそう言って笑った。
「愚息が良く学校での話を
私にしていてね。
聞いていた通りの方だと
感心していたのだ」
クリムは俺のことを
どう言っていたのだろう。
これは問い詰め案件だな。
「それで、可愛いアキルティア。
急に父様に会いたくなったなんて、
いったい何があったんだい?」
父が俺の顔を覗き込む。
あぁ、そうだった。
茶会の話をしにきたんだった。
「父様、僕は茶会を開きたいです」
「……は?」
父は顔を歪めた。
「それは何故だ?
アキルティアは伴侶を見つけようと
しているのか?
父様とずっと一緒にいると
幼いころに言ってたではないか」
えーっと。
言っていることすべてが
意味不明です、父よ。
どこからツッコんでいいのか
もうさっぱりわからん。
父の言葉に呆然とした俺を
オルガノ氏が笑って声を掛けてくれる。
「確か公爵家では茶会も夜会も
キャンディス様が嫁がれてからは
開かれたことは無かったな」
そうなんだ。
とうことは、そっか。
母が紫の瞳だったから、
それを警戒していたのか。
じゃあ、俺も無理だな。
「そうだったんですね。
知りませんでした。
確かに紫の瞳持ちがいるのに
多くの者を屋敷に呼ぶのは
警備も大変ですし、
控えた方が良いですよね」
教えてくれてありがとうございます、
と俺がオルガノ氏にお礼を言うと、
父がすぐさま俺を抱き上げ
また膝に乗せてしまった。
抵抗したらヤヤコシイので
俺はなすがままだ。
「可愛いアキルティアが望むのなら
絶対に嫌だけど
茶会を開いてもいいよ」
父よ、絶対に嫌なら、
茶会の開催なんてしなくていいから
そんなにぎゅーぎゅー抱きつかないでくれ。
「それで何故、
茶会を開きたいと思ったんだい?」
オルガノ氏がそう聞いてくれるが
さすがに理由は恥ずかしい。
友だちの父親に、
俺、友達がいなくて……、
なんてカミングアウトできるか?
どれだけコミュニケーション能力が低く、
人間関係を築けない人間かと
呆れられるだろ?
と、思ったが。
理由を言わねば父が膝から
下ろしてくれそうにないので
俺は素直に白状した。
クリムとルシリアンとは
仲良くしてもらっているし、
二人が友達になってくれて
とても嬉しい。
けれど、生涯このまま
友達が二人だけというのは
ダメなのではないかと思ったこと。
そして、今更だけれど
学園では親しい友人を作るのは
どうやら難しそうなこと。
クリムやルシリアンの話を聞くと
当たり前だが、学園以外での
交流もあるようで、
どうやって出会ったのかを聞くと
お茶会で出会い、友だちを作ったと
聞いたこと。
「それで僕は茶会に出たこともないし
父様が僕がどこかに出かけるのが
嫌なんだったら、公爵家で
お茶会をすればいいのかと思って」
紫の瞳のことはすっかり忘れてました。
ごめんなさい。
と俺は素直に謝る。
母のことなど、まったく頭から抜け落ちていた。
「アキルティアはクマ以外の
友達も欲しかったのか」
父がそんなことを言う。
いや、クマはぬいぐるみだから。
13歳にもなって、
友だちがクマのぬいぐるみだけって
どう考えても変だから。
わははは、と大きな笑い声がした。
俺がオルガノ氏を見ると、
大きな口を開けて豪快に笑っている。
「学生の頃から常識が無いと
思っていたが、子どもが出来ても
変わらんなぁ」
ということは、
オルガノ氏は父と学園時代からの
友人ということか。
「公爵家で茶会は難しそうだな。
それなら私のところで茶会を
開いたら来てくれるかい?」
「はい!」
もちろん、喜んで!
「あの、じつはクリムと
ルシリアンにも、
そう言って貰えたんです」
俺は茶会に出たことが無いし、
開催するにしても
何をすればいいかもわからない。
だから二人が屋敷で茶会をするから
そこで練習したらどうかと
言ってくれたと伝えると、
オルガノ氏はそれなら話は早いと
父を見る。
「俺と宰相の所の茶会なら
いいだろう?
子どものためにならん。
そろそろ過保護はやめろ」
うひゃーっ。
父に意見する人、初めて見た。
カッコイイー!
「アキ、父様とそいつと
どっちがいカッコイイ?」
父が俺を抱きしめたまま
うなだれたように言う。
あれ?
俺また口に出てた?
「父様、僕は父様が大好きですよ。
僕のことを誰よりも愛してくれて、
僕を守ってくれている
カッコイイ父様です」
「そうか!
そうだろう、そうだろう」
父は嬉しそうに笑う。
「あまり甘やかさない方がいい」
小声でオルガノ氏が
俺にそう言ったが
大喜びの父には聞こえなかったようだ。
「それで父様。
クリムとルシリアンのお茶会に
行ってもいいですか?」
俺が父に頬ずりされながら
そう聞くと、父は一瞬だけ
動きを止めた。
「アキルティアは行ってみたい?」
「はい」
「……いいだろう」
しぶしぶと言った様子で父は
返事をした。
やったぜ!
「父様、大好きです」
俺は父に愛情の大盤振る舞いをして
頬にキスをして抱きついた。
オルガノ氏は呆れた顔をしていたが
父は嬉しそうだったし、
俺もお茶会に行けるし、
問題なしだ。
父はオルガノ氏を威嚇するように
俺を膝に乗せている。
ここに来る途中に
俺を抱っこした経緯を聞いたが、
父よ、子どもっぽすぎないか?
俺は父の膝の上で
大人しくしているが
オルガノ氏もこういった父に
慣れているのか、
何も言わずに……いや
笑うのを耐えている様子で
お茶を飲んでいた。
「君がいつまでも若々しく、
老い知らずのことはわかったよ。
だから可愛いご子息を
そろそろ下ろしてあげたらどうだい?」
そのままだとお茶も飲めないだろう?
そう言われて
父はしぶしぶと言う様子で
俺を隣に座らせた。
ふー、やれやれだぜ。
しかし、13歳といえば
前世では中学生だ。
その俺を抱き上げて
膝に乗せてしまうとは、
やはり父は凄いと思う。
いつまでたっても
俺を幼児扱いすることもだ。
溺愛してくれるのは嬉しいが
これではいつまでたっても
独り立ちできそうにない。
このままでは学園を卒業しても
同じ調子で公爵家から
出してもらえないんじゃないかと
今から不安になる。
それから不安と言えば
目の前に座るオルガノ氏だ。
厳つい顔をしているが、
目元が優しく、
何故か俺のことを見つめている。
ただ不快な感じはしなくて、
まるで……親戚の子どもを見るような、
そんな感じだ。
ほのぼのとした、
赤ちゃんを見て、可愛いなぁ、と
自然と思ってしまう。
そんな顔をしている。
俺、オルガノ氏とは初対面だし、
そんな顔をして見つめられるいわれは
無い筈なんだけどな。
「あぁ、ごめんよ。
不躾だったかな」
俺がちらちらオルガノ氏を
見ていたからか、
オルガノ氏はそう言って笑った。
「愚息が良く学校での話を
私にしていてね。
聞いていた通りの方だと
感心していたのだ」
クリムは俺のことを
どう言っていたのだろう。
これは問い詰め案件だな。
「それで、可愛いアキルティア。
急に父様に会いたくなったなんて、
いったい何があったんだい?」
父が俺の顔を覗き込む。
あぁ、そうだった。
茶会の話をしにきたんだった。
「父様、僕は茶会を開きたいです」
「……は?」
父は顔を歪めた。
「それは何故だ?
アキルティアは伴侶を見つけようと
しているのか?
父様とずっと一緒にいると
幼いころに言ってたではないか」
えーっと。
言っていることすべてが
意味不明です、父よ。
どこからツッコんでいいのか
もうさっぱりわからん。
父の言葉に呆然とした俺を
オルガノ氏が笑って声を掛けてくれる。
「確か公爵家では茶会も夜会も
キャンディス様が嫁がれてからは
開かれたことは無かったな」
そうなんだ。
とうことは、そっか。
母が紫の瞳だったから、
それを警戒していたのか。
じゃあ、俺も無理だな。
「そうだったんですね。
知りませんでした。
確かに紫の瞳持ちがいるのに
多くの者を屋敷に呼ぶのは
警備も大変ですし、
控えた方が良いですよね」
教えてくれてありがとうございます、
と俺がオルガノ氏にお礼を言うと、
父がすぐさま俺を抱き上げ
また膝に乗せてしまった。
抵抗したらヤヤコシイので
俺はなすがままだ。
「可愛いアキルティアが望むのなら
絶対に嫌だけど
茶会を開いてもいいよ」
父よ、絶対に嫌なら、
茶会の開催なんてしなくていいから
そんなにぎゅーぎゅー抱きつかないでくれ。
「それで何故、
茶会を開きたいと思ったんだい?」
オルガノ氏がそう聞いてくれるが
さすがに理由は恥ずかしい。
友だちの父親に、
俺、友達がいなくて……、
なんてカミングアウトできるか?
どれだけコミュニケーション能力が低く、
人間関係を築けない人間かと
呆れられるだろ?
と、思ったが。
理由を言わねば父が膝から
下ろしてくれそうにないので
俺は素直に白状した。
クリムとルシリアンとは
仲良くしてもらっているし、
二人が友達になってくれて
とても嬉しい。
けれど、生涯このまま
友達が二人だけというのは
ダメなのではないかと思ったこと。
そして、今更だけれど
学園では親しい友人を作るのは
どうやら難しそうなこと。
クリムやルシリアンの話を聞くと
当たり前だが、学園以外での
交流もあるようで、
どうやって出会ったのかを聞くと
お茶会で出会い、友だちを作ったと
聞いたこと。
「それで僕は茶会に出たこともないし
父様が僕がどこかに出かけるのが
嫌なんだったら、公爵家で
お茶会をすればいいのかと思って」
紫の瞳のことはすっかり忘れてました。
ごめんなさい。
と俺は素直に謝る。
母のことなど、まったく頭から抜け落ちていた。
「アキルティアはクマ以外の
友達も欲しかったのか」
父がそんなことを言う。
いや、クマはぬいぐるみだから。
13歳にもなって、
友だちがクマのぬいぐるみだけって
どう考えても変だから。
わははは、と大きな笑い声がした。
俺がオルガノ氏を見ると、
大きな口を開けて豪快に笑っている。
「学生の頃から常識が無いと
思っていたが、子どもが出来ても
変わらんなぁ」
ということは、
オルガノ氏は父と学園時代からの
友人ということか。
「公爵家で茶会は難しそうだな。
それなら私のところで茶会を
開いたら来てくれるかい?」
「はい!」
もちろん、喜んで!
「あの、じつはクリムと
ルシリアンにも、
そう言って貰えたんです」
俺は茶会に出たことが無いし、
開催するにしても
何をすればいいかもわからない。
だから二人が屋敷で茶会をするから
そこで練習したらどうかと
言ってくれたと伝えると、
オルガノ氏はそれなら話は早いと
父を見る。
「俺と宰相の所の茶会なら
いいだろう?
子どものためにならん。
そろそろ過保護はやめろ」
うひゃーっ。
父に意見する人、初めて見た。
カッコイイー!
「アキ、父様とそいつと
どっちがいカッコイイ?」
父が俺を抱きしめたまま
うなだれたように言う。
あれ?
俺また口に出てた?
「父様、僕は父様が大好きですよ。
僕のことを誰よりも愛してくれて、
僕を守ってくれている
カッコイイ父様です」
「そうか!
そうだろう、そうだろう」
父は嬉しそうに笑う。
「あまり甘やかさない方がいい」
小声でオルガノ氏が
俺にそう言ったが
大喜びの父には聞こえなかったようだ。
「それで父様。
クリムとルシリアンのお茶会に
行ってもいいですか?」
俺が父に頬ずりされながら
そう聞くと、父は一瞬だけ
動きを止めた。
「アキルティアは行ってみたい?」
「はい」
「……いいだろう」
しぶしぶと言った様子で父は
返事をした。
やったぜ!
「父様、大好きです」
俺は父に愛情の大盤振る舞いをして
頬にキスをして抱きついた。
オルガノ氏は呆れた顔をしていたが
父は嬉しそうだったし、
俺もお茶会に行けるし、
問題なしだ。
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