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愛される世界?
14:5歳になりました
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5歳になった。
と言っても、俺は基本的に
屋敷の中で過ごしているので
生活に変化はない。
俺と見合いをして欲しいと言う釣り書きが
山ほど届いているらしいが
すべてお断りだ。
……俺が言っているのではなく、
お断りだと怒っているのだ、父が。
まぁ俺も5歳で人生を決めるなんて無理だから
嫌じゃないけど、そんなに過保護で
大丈夫か?と思う。
母も元男性だったからか、
繊細そうな美しい顔をしているのに
「まぁ、うちのアキちゃんを嫁に欲しいですって!
100年早いのよ、欲しいなら腕っぷしを見せなさい」
なんて釣り書きを見ながら呟いている。
そして、義兄だ。
義兄とはあまり会えない。
この世界の貴族は
10歳までは家で家庭教師に勉強を学ぶが
10歳を過ぎると学校に通うことになるので
兄はタウンハウスから学校に通っているのだ。
義兄と出会った時は、12歳ぐらいかと思ったが
義兄は体格が良いだけだったらしく、
この屋敷に来た年が10歳になったばかりだった。
なのですぐに家庭教師が付けられ
成績に問題なしとなり、すぐに学校に行くようになった。
この屋敷は王都に近い公爵家の領地だが、
近いとはいえ、毎日王都にある学校に通うのも
大変になる。
そんなわけで義兄はすぐに王都にある
タウンハウスに住むようになった。
そこから学校に通うのだ。
父や母はたまに王都に行っては
義兄に会っているようだが、
俺はまだ屋敷の外には出たことがない。
完全保護下の元、生活しているので
外に出る日が来るのはまだまだ先だと思う。
長期休暇には義兄もこの屋敷に
戻ってくるが、どうも距離感が変なのだ。
物凄く俺に構ってくるかと思うと、
急に距離を置いて接してきたりする。
年の離れた俺にどう接していいのか
戸惑っているのかもしれない。
とはいえ、俺も戸惑っている。
なにせ、人生初の兄だ。
しかも俺の方が精神的には年上だ。
素直に甘えるのは気恥ずかしいし、
かといって、家族になったのに
他人行儀ではダメだろう。
ということで、俺も義兄も
よくわからない距離感で接している日々だ。
あと5歳になりわかったことがあるのだが、
俺は通常の男性よりも、ひ弱らしい。
自己防衛の手段を手に入れようと
父に剣を学びたいとお願いしたところ
物凄い勢いで却下された。
涙ながらに、危ないとか危険だとか、
綺麗な指が汚れるとか、
よくわからない理由まで付けて。
すると母がそれを補うように
俺を膝に乗せて言ったのだ。
「あのね、アキ。
紫の瞳の男性は女性にもなれるの。
つまりは、男性よりも強くはなれないのよ」
まだ難しいかしら?
と優しく言う母に、俺は理解した。
つまり女性ホルモンが
通常の男性より多い俺は
筋肉ムキムキにはなれず、
か弱い女性よりは、強い筋肉を持つことが
できるかもしれないが、
女性よりも強いかも、という程度にしか
強くはなれないのだと。
しかも母は筋肉どころか
すぐに風邪を引いてしまうなど、
体調的にも弱いところがあるので
俺もそうなるかもしれない、というのだ。
そう言われれば、諦めるしかない。
剣を持って振り回すのはカッコイイと思ったのだが。
代わりに体に魔力があるのなら
魔法を使いたいと思ったが、
その魔力は体を女性に変化させたり
子宮を作ることにしか使えない。
ほんと、使えない魔力だ。
確かにこの世界は愛に満ちているが
俺には残念なことが多すぎる。
もっとも、それが贅沢な悩みだと言うのは
重々承知しているが。
そんな俺に、お茶会の招待状が届いた。
今までどんな誘いもぶった切ってた父が
どうしたのかと思ったが、
招待状の主は、なんと国王陛下だった。
さすがの父も、実の兄でもある国王陛下からの
誘いは無下にできなかったようだ。
俺は当日まで、
茶会の作法や当日の衣装合わせなどを
母や侍女たちとしながら
「行かせたくない。やっぱり嫌だ」と
駄々をこねる父を宥めるのに必死だった。
母曰く、お茶会には王妃様と
恐らくだが王子殿下が来るだろうとのことだった。
将来、俺を王子の伴侶に。
という思惑もあるらしい。
俺はその言葉に慄いた。
だって俺は取り立てて凄い何かがあるわけでもなく
ただ、子どもを生むことができるかも?
というだけの存在だ。
そんな俺に何を求めているんだ!
と思ったが、
どんなに女性の出生率がさがっていようと
王子ともなれば、良家の子女が婚約者に
なるだろううから、心配しなくてもいいと
母はあっけらかんとした様子で言った。
それに「王妃様が可愛いアキに
夢中にならないように
お母様がなんとかしてあげるわ」と
ウインクまでしてくれる。
その言葉に俺は安心した。
いつも可愛い母が頼もしく見える。
しかし王子様か。
すごいな。
本当にそんな存在がいるんだな。
でも王子と言っても俺と同じぐらいの
子どもなんだろう?
なら、純粋に友達を作りに行くと
思えばいいのかもしれない。
俺が友達を作るのは
父の過保護を考えると難しそうだしな。
いいな。
友だちか。
俺はずっと友達が欲しかったんだ。
王子だろうが何だろうが
ようは遊び相手ができるってことだ。
いいじゃないか。
よし、仲良くなって
勉強を教え合ったり、恋バナしたりするぞー!
と言っても、俺は基本的に
屋敷の中で過ごしているので
生活に変化はない。
俺と見合いをして欲しいと言う釣り書きが
山ほど届いているらしいが
すべてお断りだ。
……俺が言っているのではなく、
お断りだと怒っているのだ、父が。
まぁ俺も5歳で人生を決めるなんて無理だから
嫌じゃないけど、そんなに過保護で
大丈夫か?と思う。
母も元男性だったからか、
繊細そうな美しい顔をしているのに
「まぁ、うちのアキちゃんを嫁に欲しいですって!
100年早いのよ、欲しいなら腕っぷしを見せなさい」
なんて釣り書きを見ながら呟いている。
そして、義兄だ。
義兄とはあまり会えない。
この世界の貴族は
10歳までは家で家庭教師に勉強を学ぶが
10歳を過ぎると学校に通うことになるので
兄はタウンハウスから学校に通っているのだ。
義兄と出会った時は、12歳ぐらいかと思ったが
義兄は体格が良いだけだったらしく、
この屋敷に来た年が10歳になったばかりだった。
なのですぐに家庭教師が付けられ
成績に問題なしとなり、すぐに学校に行くようになった。
この屋敷は王都に近い公爵家の領地だが、
近いとはいえ、毎日王都にある学校に通うのも
大変になる。
そんなわけで義兄はすぐに王都にある
タウンハウスに住むようになった。
そこから学校に通うのだ。
父や母はたまに王都に行っては
義兄に会っているようだが、
俺はまだ屋敷の外には出たことがない。
完全保護下の元、生活しているので
外に出る日が来るのはまだまだ先だと思う。
長期休暇には義兄もこの屋敷に
戻ってくるが、どうも距離感が変なのだ。
物凄く俺に構ってくるかと思うと、
急に距離を置いて接してきたりする。
年の離れた俺にどう接していいのか
戸惑っているのかもしれない。
とはいえ、俺も戸惑っている。
なにせ、人生初の兄だ。
しかも俺の方が精神的には年上だ。
素直に甘えるのは気恥ずかしいし、
かといって、家族になったのに
他人行儀ではダメだろう。
ということで、俺も義兄も
よくわからない距離感で接している日々だ。
あと5歳になりわかったことがあるのだが、
俺は通常の男性よりも、ひ弱らしい。
自己防衛の手段を手に入れようと
父に剣を学びたいとお願いしたところ
物凄い勢いで却下された。
涙ながらに、危ないとか危険だとか、
綺麗な指が汚れるとか、
よくわからない理由まで付けて。
すると母がそれを補うように
俺を膝に乗せて言ったのだ。
「あのね、アキ。
紫の瞳の男性は女性にもなれるの。
つまりは、男性よりも強くはなれないのよ」
まだ難しいかしら?
と優しく言う母に、俺は理解した。
つまり女性ホルモンが
通常の男性より多い俺は
筋肉ムキムキにはなれず、
か弱い女性よりは、強い筋肉を持つことが
できるかもしれないが、
女性よりも強いかも、という程度にしか
強くはなれないのだと。
しかも母は筋肉どころか
すぐに風邪を引いてしまうなど、
体調的にも弱いところがあるので
俺もそうなるかもしれない、というのだ。
そう言われれば、諦めるしかない。
剣を持って振り回すのはカッコイイと思ったのだが。
代わりに体に魔力があるのなら
魔法を使いたいと思ったが、
その魔力は体を女性に変化させたり
子宮を作ることにしか使えない。
ほんと、使えない魔力だ。
確かにこの世界は愛に満ちているが
俺には残念なことが多すぎる。
もっとも、それが贅沢な悩みだと言うのは
重々承知しているが。
そんな俺に、お茶会の招待状が届いた。
今までどんな誘いもぶった切ってた父が
どうしたのかと思ったが、
招待状の主は、なんと国王陛下だった。
さすがの父も、実の兄でもある国王陛下からの
誘いは無下にできなかったようだ。
俺は当日まで、
茶会の作法や当日の衣装合わせなどを
母や侍女たちとしながら
「行かせたくない。やっぱり嫌だ」と
駄々をこねる父を宥めるのに必死だった。
母曰く、お茶会には王妃様と
恐らくだが王子殿下が来るだろうとのことだった。
将来、俺を王子の伴侶に。
という思惑もあるらしい。
俺はその言葉に慄いた。
だって俺は取り立てて凄い何かがあるわけでもなく
ただ、子どもを生むことができるかも?
というだけの存在だ。
そんな俺に何を求めているんだ!
と思ったが、
どんなに女性の出生率がさがっていようと
王子ともなれば、良家の子女が婚約者に
なるだろううから、心配しなくてもいいと
母はあっけらかんとした様子で言った。
それに「王妃様が可愛いアキに
夢中にならないように
お母様がなんとかしてあげるわ」と
ウインクまでしてくれる。
その言葉に俺は安心した。
いつも可愛い母が頼もしく見える。
しかし王子様か。
すごいな。
本当にそんな存在がいるんだな。
でも王子と言っても俺と同じぐらいの
子どもなんだろう?
なら、純粋に友達を作りに行くと
思えばいいのかもしれない。
俺が友達を作るのは
父の過保護を考えると難しそうだしな。
いいな。
友だちか。
俺はずっと友達が欲しかったんだ。
王子だろうが何だろうが
ようは遊び相手ができるってことだ。
いいじゃないか。
よし、仲良くなって
勉強を教え合ったり、恋バナしたりするぞー!
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