上 下
11 / 308
愛される世界?

3:1歳の誕生日

しおりを挟む
俺は1歳になるまで、大切に大切に育てられた。

何故そこまで言うかというと、
俺は同じ部屋から1歩も外に出れなかったからだ。

俺が一人でハイハイしてほふく前進をするようになっても、
ようやく立てるようになってからも。

つかまり立ちをして歩いてもなお、
誰ひとり俺を外には連れて行かなかった。

箱入り娘というのは、こういうことか、と思った。

ただ、俺はようやく俺が女子ではないことに
気が付くことができた。

それは俺の1歳のお披露目の誕生日パーティーの
衣装を作るときに、両親とデザイナーさんたちが
一生懸命話をしているのを聞いたからだ。

「女の子だったらドレスにしたいけれど、
さすがにアキにドレスを着せるわけにもいかないものね」

と、ため息を付くように言う母の言葉に、
俺は「女子ではなかったー!!」と
安堵の叫びをしたのは言うまでもない。

もっとも、俺の叫びは赤ちゃん語になるので
「あうぅううぅーっ」と叫んだら、
「あらあら、どうしたの?」と
母に抱っこされる羽目になったのだが。

何にせよ、俺は1歳になった。

今日はお披露目パーティーだ。

正直、楽しみだ。
楽しみ過ぎて仕方がない。

なんたってこの部屋から
初めて外にでれるのだから。

俺は鏡の前でナニーの手で着替えさせられ
髪を梳いてもらう。

俺は母と同じで
黄金色の髪をして、瞳は濃い青みがかった紫だった。

そして自分で言うのもなんだが、
かなり、可愛い。

丸く大きな目も、長いまつげも、
赤く小さな唇も、白い肌も。

自分でなければ、
あまりの可愛さに、
等身大の精巧な人形ではないかと
思ってしまう程だ。

もっとも、さすがに自分なので、
中身がこれで申し訳ない、と思ってはいる。

だが、黙っていれば
アイドルぐらいにでもなれそうだと思う。

黙っていれば、だが。

俺は中身がこれなので、
1歳とは思えない思考をしている。

何故前世の記憶を持ったまま
生まれ変わったのかはわからないが、
とにかく、思考が子どもでは無いのだ。

子どもらしくない、と知られたら
異端児として虐められるかもしれない。

子どもは、少しの違いを見つけては
攻撃する生き物だから
俺はとにかく目立たず、ひっそり
両親に愛されて生きて行こう。

1歳にしてはかなり地味な抱負だが
俺はそう心に決める。

それに俺はまだ上手くしゃべれない。

おそらく通常の1歳の子どもよりは
沢山の言葉を話せるとは思う。

俺の前世での弟は、
1歳半を過ぎても話が出来ず
保育園の先生に相談したぐらいだ。
……俺が。

その記憶から考えても
俺はかなり成長の早い赤ちゃんだとは思う。

だが、頭で考えたことを
口に出そうとすると
舌が成長していないせいか
上手く言葉にならないのだ。

幼い口調と、
言いたいことが上手く伝わらないことに
俺はすぐイライラしてしまう。

だから俺は極力、知らない人の前では
しゃべらないようにしていた。

と言っても、俺が会うのは
両親とナニー。
そしてメイドさんたちだけだ。

つまり俺は、見慣れぬメイドさんには
全くしゃべりもせず、
両親とナニーにだけしゃべりかけるという
「まぁ、アキ様は本当に人見知りでいらっしゃる」と
感心するように言われる状態なのだ。

もちろん、この1歳のお披露目会でも
同じ状態を貫くつもりだ。

それにこの体はすぐに眠くなるしな。

俺の髪は肩まで伸びていて、
ナニーが紫のリボンで俺の髪を結んでくれる。

「可愛らしいですよ、アキ様」

俺はカッコイイと言われたいが、
まぁ、仕方がない。
可愛いしな、この顔。

俺が諦めていると
扉が開き、両親が入ってくる。

「準備ができたかい、アキ」

「まぁ、可愛らしいわ」

でれでれ顔の両親が俺の頬にキスをする。

「旦那様、お時間が迫っております」

と知らない声が聞こえてきて
俺は固まった。

「ほら、いきなり冷たい顔をするから
可愛いアキが怖がってるじゃないか」

「冷たい顔などしておりません」

というが、声が厳しい。

俺は声の方を見ようと思ったけれど
体が動かない。

そんな俺を父が抱っこした。

「ほら、この屋敷の執事のセバスティアンだよ」

「ようやくお目にかかることができましたね。
セバスティアンと申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
アキルティア様」

うやうやしくセバスティアンが頭を下げる。

え?
俺の名前って、本当はアキルティアだったの?

それって女性の名前なんじゃない?
大丈夫?

俺、女子じゃないんだよね?

色々不安になったが、
そんなことを言っても仕方がない。

「さぁ、行こう」

と父が言うので
俺は抱っこされたまま会場に向かう。

おぉ!

廊下が長い!

しかも廊下に絨毯が!

いや、窓もデカイ。
あちこちに高そうな絵画とか
彫刻とか、ツボとか飾ってあるーっ!

俺は会場に付くまでにテンションが
あがりまくってしまい、
広間と言う会場に着いたときには
既に疲れ果ててしまっていた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。 現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。 最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです

魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。 ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。 そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。 このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。 前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。 ※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)

フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 チートなんてない。 日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。 自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。 魔法?生活魔法しか使えませんけど。 物作り?こんな田舎で何ができるんだ。 狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。 そんな僕も15歳。成人の年になる。 何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。 こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。 になればいいと思っています。 皆様の感想。いただけたら嬉しいです。 面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。 よろしくお願いします! カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。 続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。

転生するにしても、これは無いだろ! ~死ぬ間際に読んでいた小説の悪役に転生しましたが、自分を殺すはずの最強主人公が逃がしてくれません~

槿 資紀
BL
駅のホームでネット小説を読んでいたところ、不慮の事故で電車に撥ねられ、死んでしまった平凡な男子高校生。しかし、二度と目覚めるはずのなかった彼は、死ぬ直前まで読んでいた小説に登場する悪役として再び目覚める。このままでは、自分のことを憎む最強主人公に殺されてしまうため、何とか逃げ出そうとするのだが、当の最強主人公の態度は、小説とはどこか違って――――。 最強スパダリ主人公×薄幸悪役転生者 R‐18展開は今のところ予定しておりません。ご了承ください。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?

み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました! 志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

処理中です...