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愛があるれる世界
344:進化した力
しおりを挟むドロドロに溶けるほど愛し合い、
三人でベットで眠ってしまった翌朝、
私は気恥ずかしくて悶えた。
私が目を覚ました時は
すでに二人はいなくて、
私の体は綺麗になっていたし、
寝間着も着せられている。
シーツを触ると冷たかったので
ディランもマイクもかなり前に
目が覚めたのだろう。
私がベットから下りると
すぐにマイクが天蓋の外から
声を掛けてくれた。
「おはようございます、ユウさま」
「マイク、おはよう」
私が返事をするとすぐに天蓋が開き、
マイクが立っているのが見える。
「お着換えをなさいますか?
先にモーニングティをお持ちしましょうか」
私がマイクのそばまで歩くと、
すぐにマイクは私をエスコートするように
ベットのそばのソファーに座らせた。
「お茶はいいけど、冷たい水が飲みたい」
「かしこまりました。少しお待ちください」
マイクが頭を下げる。
「ディランは?」
「さぁ。賢者殿の所に行くと
息まいて出かけましたが」
パパ先生の所に?
また暴走してなければいいのだけれど。
マイクはすぐに冷たい果実水を持って来てくれて
私はそれを飲んで一息ついた。
眠気は冷めて来たし、
体内の『力』も順調にめぐっている。
何よりも、沢山愛されて
『力』の源……こころの中心のような場所が
とても満たされていた。
「マイク」
「はい」
「ちゃんと戻ってくるから
心配しなくていいからね」
私の言葉に、マイクの身体が震えた。
やっぱり、って思った。
昨日肌を重ねて、
どこかマイクに不安のような
焦りようなものを感じたのだ。
「今は、まだ無理だけど。
いずれは、マイクも隣国とこの国を
私と一緒に行き来できるようになるから。
それまで、待ってて?」
私はそう言ったのだけれど、
マイクは何も言わなかった。
あれ?
違った?
私だけ金聖騎士団の皆がいる隣国へ
戻るのだから、足止めされるとか
戻ってこないかもとか。
そう言う不安を感じているんじゃないかと
心配したけれど、違ったのかな?
そう思ったけれど、
マイクは震える瞳を私に向けた。
あぁやっぱり。
言葉はなかったけれど、
きっと多分。
私と別れてしまうかもしれないと言う不安を
マイクはやっぱり持っていたんだと
改めて思った。
だからこそ、今。
私の言葉を、声が出ない程喜んでいる。
「大好きだからね」
そう言うと、マイクは声を出さずに、
ただ、頭を下げた。
私はゆっくりと果実水を飲み
マイクが落ち着くのを待つ。
それから着替えをして、
部屋を出た。
隣の部屋にいるパパ先生を
迎えに行くためだ。
部屋をノックすると、
驚いたことにディランがいる。
「ディラン?」
「ユウ、おはよう」
「悠……ちゃん、おはよう」
パパ先生は悠子ちゃんと言いそうになったのか
慌てて言葉を濁した。
「おはよう。
なんでディランがここにいるの?」
「俺の家の話をしてた」
「ディランの家?」
「僕の家の隣に建てる約束をしたそうだね」
そうそう、したした。
そう言えば。
「その喜びと希望を僕に伝えに来てくれたんだよ。
あと、結婚の許可とね」
なんという行動力。
パパ先生は笑っていたけれど
朝早くから押しかけて話をする内容ではない。
「ユウ、一緒に朝ご飯を食べよう。
まだ出発まで時間はあるだろう?」
ディランはそう言うが、
私はちらり、とパパ先生を見た。
「それが……ごめんね。
すぐに出発しようと思うの」
「え?」
と後ろからマイクの声がした。
「もう行かれるのですか?」
「うん。早く行ったら、
その分だけ早く帰れる……と思う」
思う、の部分だけ思わず小さくなる。
私はバーナードの結婚式さえ
出席できたらいいけれど、
パパ先生はそうはいかない。
パパ先生と向こうの国の王様たちとの話し合いが
どれぐらい時間がかかるかわからないから
できるだけ、早く隣国に行きたい。
私がそう言うと、
ディランもマイクも仕方がないと頷いた。
「じゃあ、パパ先生、行こう」
私が言うと、ソファーに座っていたパパ先生は立ち上がる。
「そうだね、行こうか」
「二人とも、じゃあ、行くね」
あっけないとは思うけれど、
どうせすぐにまた会うのだからいいだろう。
私の気持ちがわかったのか
二人はそれ以上は何も言わなかった。
代わりにディランは私の頬に。
マイクは私の指先に唇を落とす。
「早く帰って来いよ」
「お戻りをお待ちしております」
二人の声に頷き、
私は『力』を練りながら部屋の扉に手を掛けた。
「パパ先生」
と、手を差し出すと、パパ先生は
私の手を握った。
手を繋いだまま扉を開けると、
真っ暗な空間が見える。
パパ先生は驚いたようだけれど
私に手を引かれ暗い空間の中に入った。
後ろ手で扉を閉めると
すぐに扉は消える。
「すごいね、これが【空間】なのか」
パパ先生は感心したように言う。
「以前はね、物凄く歩いたの。
この暗い中を。
物理的に距離が離れていると、
その分だけ、ここでの距離も離れてるみたいで」
でも、その距離も短くできるかも、と
私はパパ先生に言う。
前回は、物凄く詳細にパパ先生の
キッチンの扉を思い浮かべて扉を開けた。
でも、結局は、扉と扉を繋げることはできなかった。
ならば、まずはこの【空間】に来て、
そこから、繋がる場所をイメージしたら
どうだろうか、と思ったのだ。
そう、たとえば……
私はパパ先生のキッチンの扉を思い浮かべる。
以前も上手くいったから
失敗しない自信はある。
大丈夫。
パパ先生のキッチンの扉なら
ドアノブの位置や感触まで思い出せる。
そう思って指を何もない場所に向けると
ぼんやりと光が灯り、目の前に扉が現れた。
キッチンの扉だ。
おーっ、とパパ先生の感嘆の声が聞こえる。
私がパパ先生と手を繋いだまま
扉を開けると、やはりそこは
パパ先生のキッチンだった。
「すごいね。
やはり女神の力は……あんなのでも
凄いんだね」
パパ先生、さりげなく
女神ちゃんのことを、あんなの、って
言っちゃいましたね?
「それでね、パパ先生。
この部屋と、隣の国の安全な場所の扉とを
繋げたいと思うの。
そこなら安全だし、
ずっと扉と扉を【空間】で
繋いでいても問題はないと思う。
それならパパ先生はいつでも
隣国と行き来できるでしょ?」
「それはそうだけど、いいのかい?」
「うん。
【空間】に入れるのは……扉を
開けて【空間】に入れるのは
私とパパ先生だけ、って制限を付けるから。
他の人が扉を開けても、
そこはただの扉になるの。
「そうか、それはいいね」
「あとね、向こうで金聖騎士団の皆を紹介するけど
向こうの国では、金聖騎士団の皆の誰かと
常に一緒にいて欲しいの。
きっと力になってくれるし、
安全だと思うから」
パパ先生を人質にして
私をどうにかしようと思う人や、
パパ先生を脅して【空間】に入ろうとする人が
今後、出ないとも限らない。
私の言葉にパパ先生は頷いた。
「わかった。
じゃあ、その信頼できる彼らを紹介してもらおうか」
「うん、じゃあ行こう」
私は再びキッチンの扉を開けた。
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