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愛があるれる世界

312:プロポーズ2

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 私は二人のぬくもりを感じて、
ゆっくりと言葉を吐く。

「あのね、結婚は……
ううん、プロポーズはね。
ヴァレリアンたちからしてもらったの。

ディランはわかる?

ヴァレリアン、カーティス、スタンリー。
一度、教会で会ったよね?」

私が隣に座るディランを見ると
ディランは頷いた。

不機嫌そうな顔だったけれど
私はそのまま続ける。

「私ね。
皆で一緒に結婚しよう、って
言われたの。

でも、私はマイクやディランと
今は一緒にいるから
できないって返事をしたの」

そこまで言うと、
両側から安堵の空気を感じた。

「そしたらヴァレリアンたちが、じゃあ
で一緒ならいいだろう」って。

意味がわかるだろうか。

私はさらに言葉を紡ぐ。

「みんなで。
ヴァレリアンたちと、
マイクとディランと一緒に
皆で結婚してたらいいって」

私がそこまで言うと、
ディランもマイクも
驚いた顔をしていた。

やっぱり驚くよね?
びっくりだよね?

どう思う? と私がマイクを見ると、
マイクは驚いた表情を緩めて
首を振った。

恐れ多い、と。

聞くと、マイクは、もともとから
一妻多夫の国で育っていたし、
その思想を持っていたので
違和感はないらしい。

けれど自分が王族と一緒に、
私と婚姻することは
考えることができなかったらしい。

もし私がヴァレリアンたちと結婚したら
身分的にも下位になるマイクは
排除されると思っていたらしく、
だからこそ、家族と縁を切ってでも
私を連れてこの国にきたというのだ。

まさかそこまで考えてくれていたとは
私は思いもしなかったので、
マイクの想いの深さに感動してしまう。

確かにディランもこの国の王子様だし、
身分を言い出したらマイクが一番下になる。

恐れ多いというのも頷けた。

「ディランは?」

反対側に座っているディランに
話を振る。

ディランも何やら難しい顔をしていた。

「俺は……一般論だが」

と前置きをして、
ディランは話をする。

この国でも結婚に関しては
人それぞれという感覚らしい。

確かにこの国の人たちは獣人なので、
思想を統一するのは難しいだろう。

獣人たちの種族の中で
多くのパートナーを持つ種族もいれば
一人の人を愛し続ける種族もあるのだと思う。

だから、皆で結婚ということに対して
忌避感は無い。

「ただ、俺はユウを独り占めしたい」

ディランはきっぱりと言った。

「でも、でも。
ユウはセイジョだ。

ことも
俺は理解している。

それでも俺はユウに惚れた。
一緒にいたいって思った。

だから……。

ユウを独り占めできないのなら、
皆でユウを愛するのも、我慢する」

でも、たまには二人っきりになりたい。

ディランはとても辛そうな顔で
そう言った。

そんな顔に、私は心が震える。

私の甘えを受け入れ、
それでも愛してくれる存在に
私は喜んでいる。

そんな自分に罪悪感を持つけれど、
でも、嬉しいとも感じてしまうのだ。

こんなに愛してくれる彼らの想いに
甘えていいのかと、私を叱咤する心も
もちろん、ある。

けれど、現状維持を望む気持ちもある。

私の心は、また揺れ動く。

「でも、でもね。
まだ結婚とかは早いと思うし、
この国と隣の国との交流が
普通にできるまでは、
この話は進まないと思うの」

私は、まだ結論を出さなくてもいいと
大きな声で言った。

いや。私が結論を出したくないのだ。

「私は二人が大好きだし、
この国が発展していく姿を
一緒に見たいもの」

そういうと、二人の顔に
安堵が広がった。

「それでね、今後のことなんだけど」

私は二人の顔に背中を押され、
隣国にパパ先生の家を創ることを伝えた。

空間を繋げる扉を使えるのは、
私とパパ先生だけだと、
ヴァレリアンたちには伝えている。

けれど、2つのパパ先生の家は
こっそり扉を繋げておくので、
パパ先生はいつでも行き来できるし、
マイクも必要であれば
その扉を使って家族に会いに行ってもいい。

当分は、パパ先生に二つの国の
間を取り持つ役割を担ってもらって
私はそんなパパ先生について
二つの国を行き来しようと思っている。

「通い婚ということか?」

真面目な顔でディランが言う。

「か、通い……っ」

結婚はまだまだ考えてないと伝えたとに
ディランがそんなことを言うので
私は慌ててしまう。

「だが、俺はまだユウに
プロポーズしてない」

が、突然落ち込むディランに
そういえば、ディランとも
マイクとも、結婚の話など
今まで一度もしていなかったと思いあたる。

私は勝手に二人なら私と結婚してくれると
思っていたけれど、それは私が思っているだけで
二人から、そんな意思表示は受けたことがない。

先走り過ぎたと言うか、
自意識過剰というか。

二人が私を愛してくれていると言う
自信があったからこそだけれど、
なんて自分勝手なことを、と
私は顔を熱くして俯いた。

何が、愛されない、いらない子だ、と
私は思う。

過去はどうあれ、
今では、私はこんなに身勝手に
愛してもらえると言う自信を持っている。

成長といえば成長かもしれないが
この自信を持たせてくれたのは
私を愛してくれた皆のおかげだ。

そして私は勝手に
皆が私と結婚することを望んでいると
思い込んでいたけれど、
皆にはそれを拒否する権利があることに
気が付いた。

「えっとね。
ヴァレリアンたちとはそんな話になって
私は二人にその話をしようと
戻って来たけどね。

嫌だったら、いいの。
結婚だってまだ先の話のつもりだし、
好きな人ができたら、
私じゃなくてその人と……」

「そんなやつはいない」

ディランが私の言葉を遮った。

「ユウよりも、好きな奴なんて
今後も出会うはずがない」

根拠何て何一つないのに、
ディランの言葉が嬉しくなる。

「私もです、ユウさま」

マイクが繋いでいた私の手を引き寄せ
指先に口づけた。

「私のこの想いも、命さえも
とうにユウさまに捧げたのです。

ユウさまのお気持ちが
どのように変化したとしても
私はずっとお傍に」

「……うん」

私が迷っても、うろたえても、
二人は私を見捨てたりはしない。

そのことを確認できた気がして
私は息を吐いた。

伝えたいことはまだまだある。

でも私は、絶対に伝えなければならない
『結婚』の話が出来ただけで、
だいぶ満足していた。

というか、疲れ果ててきた。

でもここで逃げるわけにはいかないので
私は二人から体を離して、
もう一度、座り直す。

私の様子に二人もソファーに
座り直してくれた。

でもすぐに、ディランは
私の腰に手を回し、
マイクは私の手を取ったけれど。

折角座り直したのに、
二人の距離感は、物凄く近い。

まぁ、いいか。
嬉しいし。

よし。
じゃあ、次の話だ。


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