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獣人の国

292:パパ先生に相談

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 ふわふわの感触に目を開けると、
私は宮殿のベットに寝ていた。

寝ていたはずなのに、
物凄く疲れた気がするのは
女神との会話のせいだろう。

周囲を見回したが、
マイクもディランもいない。

起き上がり、身体を見ると
着ていたローブは無くなり、
簡素な部屋着に着替えてあった。

マイクがきっと着替えさせてくれたのだろう。

ベットから下りて、
私は窓辺に立った。

街作りを終わった時は夕方だったけれど
今は日が登っている。

つまり少なくとも、今日は
あの日の翌日以降なのだと思う。

女神の世界に行くと、
どうも時間感覚がわからなくなる。

外を見ていると軽く扉を叩く音がした。
マイクだと思って振り返ると、
扉を開けてパパ先生が入って来た。

「悠子ちゃん、目が覚めたんだね」

嬉しそうなパパ先生の声に
私は頷いてからパパ先生に駆け寄った。

まさか宮殿にパパ先生がいるとは思わなかった。

「パパ先生、心配して泊ってくれたの?」

パパ先生の顔を下から見上げると
パパ先生は私の髪をわしゃわしゃ撫でる。

「大事な娘が急に気を失ったら
そりゃ心配もするさ」

「……ごめんなさい」

でも私が悪いんじゃないの。
女神のせいなの。

と心の中で思っていると、
パパ先生は軽く笑った。

「わかってるよ。
女神の世界に行っていたんだろう?

どんな話をしたか聞きたくて、
この宮に泊めてもらったのさ」

パパ先生はそう言って、
私の背中を押した。

「さぁ、果実水を貰って来たんだ。
ソファーに座って、話を聞かせてくれるかい?

それともまだ眠いのなら
子守唄を歌ってあげようか」

私は笑ってソファーに座る。

パパ先生は、ガラスのデキャンタから
果実水をグラスに注いで渡してくれた。

パパ先生は私の前に座り、
私が聞く前に、あれからどうなったかを
話してくれた。

街を創ったのは昨日だった。

街は完璧に仕上がっていて
今日も朝から住民たちが
引っ越し作業をしているらしい。

マイクとディランは昨日から
ずっと私のそばにいたけれど、
パパ先生は、きっと女神の世界に
魂が呼び出されているだけだから
心配ないと言って、二人を休ませたそうだ。

そして二人は、今朝、私がまだ
寝ているのを確認して、
新しい街へ出かけたらしい。

デビアンさんたち王宮の人たちと
手分けをして、新しい街や
引っ越しした人たちに問題がないか
確認しにいってくれてるんだとか。

ちゃんとフォローも考えていたなんて
さすがデビアンさんだ。

と褒めたら、パパ先生がちょっと
拗ねた顔をして「僕が進言したんだけどな」
なんて言う。

「パパ先生、凄い!
さすが、最高!」

と、ちょっと大げさに褒めたら
パパ先生は物凄く嬉しそうな顔をした。

私は笑って果実水を飲む。

まだ冷たくて美味しかった。

思わずゴクゴク飲むと
パパ先生はおかわりを入れてくれる。

「何か食べるかい?
準備してもらおうか」

「ううん、大丈夫。
沢山食べて来たから」

女神のところで、と付け加えると
パパ先生はそうか、と頷く。

「じつはね、この国の制度をもっと
獣人寄りに調えた方が良いと思ってるんだ」

パパ先生はいきなり話を始める。

「そのことで女神に協力を得たいんだけど
……地球の女神は、まだ僕たちに
手を貸してくれるだろうか」

「大丈夫……だと思う。
女神はこの国は落ち着いたから、とか
言っていたけど、私とはまだ繋がってるし。

女神のノートだって
回収するとか言ってなかったから
ノートに書いたら返事を貰えるんじゃないかな」

「よかった。
女神の力がないと難しいことだから
国王に進言する前に、先にできるか
女神に確認しないといけないと思ったんだ」

「何をするの?」

「この国の人たちは
いきなり自分が獣人だと気がついたけれど
自分が何の獣人で、どんな特性があるのか
ちゃんとは理解できていないだろう?

だから教会で、自分が何の獣人で
どんな特徴、特性を持つ者なのかを
知るシステムがあれば、と思ったんだ。

いずれは子どもが生まれたら
出生届と一緒にそれを届けるようにしたら
どの獣人が多く国にいるかも把握できるから
保護すべき獣人を見つけやすくなるだろう?

将来、肉食系の獣人ばかりの国に
もしなっていたら、どこかでそれ以外の
獣人たちが虐げられているということになる。

そういうことが無いように、と思ってね」

凄い。
そんな未来のことまで考えているなんて!

私は自分のことばかりなのに、
パパ先生はみんなのために頑張ってるんだ。

思わず俯くと、
パパ先生の大きな手のひらが
私の頭にぽん、と乗った。

「というのが現状なんだけど、
悠子ちゃんは女神のところで
どんな話をしてきたんだい?」

優しく言われ、
私はすべてをパパ先生に言おうと思った。

女神ちゃんが地球の女神のところに
修行にでていることや、
私の『力』を無くすことはできないこと。

代わりに『祝福』は変化して
ための
『祝福』ではなくなったこと。

そして。
私の母だという女神のことを。

私は果実水を飲みながら
努めて冷静い話をしようと心がけた。

感情的になったら
説明できないと思ったからだ。

それにパパ先生にはきちんと
私のことを知って欲しい。

パパ先生ならきっと
私の欲しい言葉を言ってくれる。

私はそんな期待を持って
私は女神の最後の言葉まで。

本当にすべてをパパ先生に話した。



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