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獣人の国

254:女神のノート

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 それから私は白い世界で
女神と、拗ねたような顔をしている
女神ちゃんと、これからのことを話し合った。

細かい取り決めややり取りは
女神のノートを使うことにして、
獣人の国をどうするかを話し合ったのだ。

私は獣人の国の周囲にはびこる
闇の魔素を何とかしないとダメだと訴え、
女神はその原因について
調べてくれると約束をした。

あと『聖樹』だ。
あのサクランボ聖樹。

あの国の人間が規制できればいいけれど
それが無理そうなら、一旦『聖樹』の実が生る速度や
量を調整した方が良いと思うのだ。

どんなに『聖樹』の本数を増やしても、
闇の魔素が無くなったとしても、
人口がどんどん鈴なりに増えてしまったら
結局、問題は解決しない。

獣人の国の人たちも
いきなり『聖樹』の実が生らなくなったら
驚くだろうから、いきなりは無理だけど、
散歩している子どもが摘まんで食べるような
そんな気軽な実では、ダメだとは思うのよね。

それを言うと、女神はそれも
女神ちゃんと一緒に検討してくれると言う。

本当に頼りになる!
助かる!

思わず手を合わせて拝んでしまうわ。

そんな私の様子を見て、
女神ちゃんが私の名を呼んだ。

『ユウ……すまん。
迷惑ばかり……かけて』

うるうると悲しそうな顔で
私を見るゴスロリ少女!

私は慌てて立ち上がり、
女神ちゃんの手を取る。

「迷惑なんかじゃ……」

ない、とは言えない。
うん。
言えない。

から、言葉を変えよう。
嘘は付けない。

「女神ちゃんが頑張ってるの、
ちゃんとわかってるよ。

それにね。
さっきは後悔とか言ったけど、
女神ちゃんの世界に行ったから
私は沢山愛してもらってるし、
幸せだって感じてる。

ずっと愛されたかったから、
嫉妬されるぐらい愛されて、
困ることもあるけど、嬉しいの」

そう言うと、女神ちゃんは
ようやく笑った。

『甘やかさなくてもいいのよ』
と後ろから女神の声がしたけれど、
本心だから、甘やかしてるわけじゃ
無いと思う。

『ユウ、ユウ、わしはユウのことが
大好きじゃーっ』

わーん!と泣きながらしがみつく女神ちゃんは
やっぱり施設の弟妹達と同じにしか見えなくて。

私は、しょうがないなー、と笑う。

どんなに迷惑を掛けられても、
怒っても、結局私は女神ちゃんが
好きなのだ。

だから、許してしまう。

私の初めての友達だしね。

よしよし、と女神ちゃんの頭を
撫でていると、ふと、女神の
視線を感じた。

女神を見ると、
何故か真剣な顔をして私を見ている。

首を傾げると、女神は
『なんでもないわ、この子が
ごめんなさいね』と
取り繕うように言った。

今更だけど、女神にとって
女神ちゃんは、子どもの扱いなんだな、って
ふと思う。

まぁ、私も妹みたいに思ってるから
同じような感覚なのかもしれない。

『じゃあ、とりあえず今回のお茶会は
ここでお開きにしましょう。

次のお茶会までにノートを活用して、
少しでも状況を勧めておくこと。

いいわね?』

いきなりお茶会認定にも驚いたけど、
次回もちゃんとあるんだ、とか
まるで業務連絡みたいだとか、
いろんなことを考えてしまった。

なので、女神の言葉に
頷くのが一拍遅れる。

『返事がないわよ』
と、すぐに女神に言われ、私は慌てて
「はい!」と元気よく返事をした。

優しいけど厳しい先輩女神か。
頼もしいし、女神ちゃんも
この先輩女神と一緒に頑張ったら
物凄く成長できると思う。

女神ちゃんにそのことを伝えよう、
そう思ったのに。

『じゃあ、またね』
と、女神は言ったかと思うと、
突然、目の前が真っ白になった。

なんだ、あの女神も
女神ちゃんと同じで、自分都合で
いきなり終わるタイプか。

女神って、やっぱり神様なのね。

なんて思って、次に目を開けると、
心配そうなディランとマイクの顔が目に入った。

「ユウ!」

「ユウさま!」

あぁ、戻って来た。

二人の顔を見て、私は息を吐く。

心配かけたかな。
でも、女神に会えて物凄く状況が進展した。

胸の中には希望が湧いている。

どうやらソファーに寝かされているらしい私は
ゆっくりと起き上がった。

体に薄い毛布が掛けられていたけれど、
その下で私はしっかり女神ノートを持っていた。

よし、行けそうだ。

「ユウさま、お身体は?」

「うん、大丈夫。ありがとう」

「いきなり倒れて……俺、焦って…」

マイクはほっとしたような顔をして
ご心配しました、なんて言ってくれて
それで終わったけれど。

ディランの様子が少し変だ。

涙目に……なってる?

「ディラン?」

「俺、ユウがいなくなったらどうしようって、
めちゃくちゃ焦って、それで」

獣化の影響なのか、
よくわからないけど、
ディランは感情が制御できないようで、
私が大丈夫、とか心配かけてごめんね、とか
言ってみたけれど、全然聞いてないみたいだった。

そして毛布の上からいきなり
がばっと抱きしめられて、
もしこれが二人っきりだったら
大泣きしてたんじゃないか、ってぐらいに
名前を何度も呼ばれた。

何時にない様子のディランに
いつもだったらディランの行動を
止めているマイクも、困惑気味だ。

私はディランの頭をよしよしと撫でて
もし国民全員が獣化の影響を受けて
感情の制御が利かなくなったら
大変なのでは……?

と、ぼんやり思った。

うん、これもパパ先生との
検討案件だな。





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